2020.05.01ON AIR

ブルーズ・スタンダード曲集vol.16/
ジャンプ&ジャイヴ・ブルーズ


ジャンプの人気兄弟といえば・・ジョー・リギンス&ジミー・リギンス

Pink Champagne/Joe Liggins and The Honey Drippers (Specialty /ODR-6355)

Pink Champagne/Joe Liggins and The Honey Drippers (Specialty /ODR-6355)

Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins (Specialty /ODR6354)

Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins (Specialty /ODR6354)

BLUE FLAMES(A Sun Blues Collection)(SUN/RHINO R2 70962)

BLUE FLAMES(A Sun Blues Collection)(SUN/RHINO R2 70962)

ON AIR LIST
1.The Honey Dripper/Joe Liggins
2.Pink Champagne/Joe Liggins
3.I’ve Got A Right To Cry/Joe Liggins
4.Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins
5.Cadillac Boogie/Jimmy Liggins
6.Rocket88/Jackie Preston

ブルーズ・スタンダード曲集の16回目でジャンプ&ジャイヴブルーズの3回目
ジャンプ・ブルーズといわれるジャンルでも前回のビッグ・ジョー・ターナーやワイノニー・ハリスのような大きな声で歌うシャウターではない歌手もいます。
今回のジョー・リギンスは柔らかい歌い口の歌手でバンドはジョーのピアノを中心とした小編成のコンボバンドで、そこもシャウターが大人数のオーケストラをバックに歌ったのと違っています。
曲も歌も演奏も激しくなくクラブでカクテルでも飲みながら聞くのにぴったりな音楽。
ジョー・リギンスはオクラホマ州の生まれですが、活躍したのはウエストコースト、ロスアンゼルスで1930年代に19才でデビュー。デビュー前にピアノ、サックスと演奏できてしっかりと音楽理論も勉強していたらしいです。いろんなジャズバンドで演奏して自分でも曲を作っていたのですが、歌のないインストの曲だった次の曲の評判がよくて、じゃ歌詞をつけてみようかとつけたらこれがヒット。
ジャンプ・ブルーズですが次の世代のリズム&ブルーズの匂いがします。ホーン・セクションがもたらす柔らかいサウンドもリギンスのもわっとした歌声も心地よくて当時の女性客たちにウケたのも納得です。
1.The Honey Dripper/Joe Liggins
いまのは1949年にスペシャルティ・レコードで再録音されたものですが、最初は1945年にエクスクルーシヴ・レコードというところからリリースされR&Bチャート1位に18週間も留まっためちゃ売れの曲。
ジョー・リギンスはヒットがたくさんありソングライターとしても才能のある人ですが、次の曲は1950年にR&Bチャート1位になった曲。音楽的にはブルーズ進行ですが、テイストはR&B的です。メロウという言葉が出てくるように全体のサウンドもメロウな感じがします。歌もハーモニーがついていて全体がしっかりとアレンジされていて即興性はなく、曲として全体を作り上げているところにジョー・リギンスのしっかりしたコンセプトを感じます。是非お酒飲みながら聴いてください。いい気持ちになります。
2.Pink Champagne/Joe Liggins
ゆったりとしたグルーヴの中で聴いている気持ちもメロウになる名作だと思います。
ブルーズを聴き始めた頃、この曲を聴いてブルーズという音楽の間口の広さを感じました。例えば戦前のロバート・ジョンソンのような弾き語りのブルーズでもなく、マディ・ウォーターズたちのようなギターやハーモニカを前面に出しているシカゴ・ブルーズでもなく、B.B.キングやボビー・ブランドのようなモダン・ブルーズでもない、何ともゆったりしたこういうブルーズもあるんやと思いました。

次もあまりブルーズ・テイストがある曲ではなくて、ちょっとヨーロッパの、例えばシャンソンのような洒落たメロディやテイストを僕は感じるのですが、40年代ロスの少しお金をもった黒人たちのクラブではこういう音楽が人気があったのでしょう。
3.I’ve Got A Right To Cry/Joe Liggins

まだジョー・リギンスのヒットした曲はあるのですが、僕がブルーズ・スタンダードに選ぶのはこの三曲です。
実はジョー・リギンスにはふたつ違いの弟がいまして、ジミー・リギンスといいます。このジミー君、最初はプロのボクサーやってたんですが親がですね、やっぱりボクサーって危険ですから「あんた、ボクサーなんかやめな」と言われて辞めたんですがこれと言ってもやることはなかったんでしょうか、その頃すでに売れていたアニキのジョーの運転手になります。兄がスポットライト浴びて女性にも人気があるのを見ていて「オレもやりたい」とギターを弾いてデビュー。アニキほど売れはしなかったのですが、一曲、彼を代表するおもしろい曲があるのでそれをブルーズスタンダードに入れておきたいと思います。
給料をもらった土曜日にテンションがめちゃ上がって飲みに行って、まわりの奴にもおごって大騒ぎして気がついたら日曜のお昼になってた。お金はなくなったけどめっちゃ楽しかったからまあええか」という僕が大好きなタイプの曲です。
「土曜日のブギウギ男」です。
4.Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins
やがてこういうダンサブルなジャンプ・ブルーズがR&Rが生まれる下地になっていくのですが、そのR&R誕生の一曲と言われているのが有名な「ロケット88」という曲なんですが、実はこのジミー・リギンスのCadillac BoogieというのがそのRocket 88の元歌ではないかと言われているのですがちょっと聴き比べたいと思います。
5.Cadillac Boogie/Jimmy Liggins
いまのが1947年、その四年後にこれを元にして1951年にリリースされヒットチャートNO.1になりR&R誕生の最初の一曲と言われたロケット88を聴いてみてください。
6.Rocket88/Jackie Preston
まあ、ほとんどメロディはCadillac Boogieですが、歌詞が違うんですね。この歌詞が若い人たちにウケたんですね。そして、50年代のR&RそしてR&Bの時代へと黒人音楽は突入していきます。