2020.05.08 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集vol.17
ブルーズン・ソウル編-1

We're Gonna Make It/Little Milton(Chess/Checker MCA MVCM22024)

We’re Gonna Make It/Little Milton(Chess/Checker MCA MVCM22024)

Walking The Backstreets And Crying/Little Milton(Stax SCD 8514-2)

Walking The Backstreets And Crying/Little Milton(Stax SCD 8514-2)

RAW BLUES/Johnnie Taylor (Stax/P-Vine PCD-4473)

RAW BLUES/Johnnie Taylor (Stax/P-Vine PCD-4473)

Little BlueBird/Johnnie Taylor (Stax SCD 8558-2)

Little BlueBird/Johnnie Taylor (Stax SCD 8558-2)

ON AIR LIST
1.We’re Gonna Make It/Little Milton
2.Walking The Backstreets And Crying/Little Milton
3.Hello Sundown/Johnnie Taylor
4.Part Time Love/Little Johnnie Taylor
5.The Blues Is Alright/Little Milton

50年代シカゴ・ブルーズがエレクトリック化されマディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、サニーボーイ・ウィリアムスンなどやがて海外でも知られるブルーズマンが登場する。その後ブルーズからロックンロールとR&Bが生まれ、60年代のソウル・ミュージックの誕生へと繋がって行く。そのソウルの時代にブルーズとソウルの両方のテイストを持った音楽が生まれ「ブルーズ&ソウル」「ブルーズン・ソウル」と呼ぶようになった。そのブルーズン・ソウルの息吹はこのリトル・ミルトンの1965年の大ヒットあたりから始まった。人種差別の撤廃や黒人公民権運動が激しく動き出した時代だ。「家賃が払えんかも知れんし、毎日豆ばかり食べなあかんかもしれん、仕事が見つからなくて失業手当の窓口に立たなあかんかも知れん、でも、私たちは愛し合えばやっていけるよ」前向きな歌詞だけど、ある意味あまりに楽観的やないかと思える歌詞でもありますが、これがR&Bチャート1位になりました。いろんな政治的、社会的な動きの中で黒人たちは前向きに自分たちを主張してがんばって生きたいと表明したこの曲を支持したわけです。
1965年R&Bチャート1位
1.We’re Gonna Make It/Little Milton
豪快な歌いっぷりで気持ちいいです。日本にも三回くらい来てくれましたが素晴らしいブルーズシンガーでした。
いまの曲がブルーズかと言われれば、確かにメロディ、コードなどはR&Bと呼んだ方がいいと思うのですが、歌詞の内容がやはり報われない黒人たちの生活を表してして「私達の部屋は寒くて、私達の車は古くなってしまうかも」と歌詞が続きます。つつましい日常の生活にも困る様子が描かれていて、それはやはりブルーズと呼ぶものだと思います。でも、そこで打ちひしがれているだけでなくWe’re Gonna Make It(私達はやっていける)と歌ったところに60年代のソウルの前向きな気持ちが入ってます。だからブルーズン・ソウルと呼ぶのもわかります。ブルーズン・ソウルの初期の名曲です。
実は現在でも多くの黒人やカラードの人たちがこの60年代と同じところで苦しんでいるのは、みなさんご存知だと思います。
いまのはチェスレコードからリリースされた曲ですが、リトル・ミルトンはチェスのあとにメンフィスのスタックス・レコードに移ります。
別れを告げられて裏通りを歩きながら泣いているという歌
2.Walking The Backstreets And Crying/Little Milton
6分30秒くらいある長い曲なんですが、ここでもギターではなく歌で押して行くブルーズ・シンガー、リトル・ミルトンの真骨頂があります。

次のジョニー・テイラーもスタックスレコードで花開いたブルーズン・ソウルのシンガーですが、元々はゴスペルを歌っていてサム・クックの影響を受けサムのレーベルでも録音していました。彼は楽器をやらないシンガーなので日本のブルーズ好きな人たちでもあまり話にでませんが、黒人音楽ではブルーズのヒットもソウルのヒットも持つ超一級のシンガーです
この曲はチャートを上がって売れた曲ではないのですが、僕はブルーズん・ソウルの名曲だと思います。
この曲は不倫の歌です。
タイトルはHello Sundownですから「こんにちは夕暮れ、君に会えて嬉しいよ。君が現れるまで長い時間待っていた」と始まるこの歌は、陽が落ちて夜になると旦那がいる彼女と密会できるという不倫ソングです。こういう不倫の歌がブルーズだけでなく、ソウルにもたくさんあります。3.Hello Sundown/Johnny Taylor
ジョニー・テイラーは”Who’s Makin’ Love”というソウルのヒットで一躍知られるようになったのですが、それも「あんたが外で浮気している間にあんたの嫁はんも誰かとええことしてまっせ」という歌で、そういうのがチャートにあがるところがすごい国です、アメリカは。”Who’s Makin’ Love”はソウルの曲という認識なのでここではブルーズスタンダードには入れません。
次の曲も不倫ソングですが、タイトルがパートタイムラブです。
朝帰りしてきた彼女にどこへ行ってたんやと聴いたら、なんも訊かんといてもう一回出てくから。オレは彼女の欲しいものをなんでもあげた。できる限りのことはした。もうオレも束の間の愛を見つけよ。
4.Part Time Love/Little Johnny Taylor
では最後に僕もよく歌っていますが、ブルーズなんですが前向きな曲です。
「彼女にふられて彼女にブルーズをもらったけどオレかて新しい恋人を見つけるで、大丈夫や」
リトル・ミルトンが80年代ミシシッピーのマラコレコードから出したヒットです。ブルースはまだ死んでないというマラコレコードが宣言したような素晴らしいブルーズです。
”Hey,Hey,The Blues Is Alright!”
5.The Blues Is Alright/Little Milton