2020.05.22 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 Vol.19

戦後エレクトリック・シカゴブルーズ-3

Moanin’ In The Moonlight/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22004)

Moanin’ In The Moonlight/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22004)

THE REAL FOLK BLUES/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22019)

THE REAL FOLK BLUES/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22019)

ON AIR LIST
1. Red Rooster/Howlin’ Wolf
2.Spoonful/Howlin’ Wolf
3.Killing Floor/Howlin’ Wolf
4.Sitting On Top Of The World/Howlin’ Wolf
5.Back Door Man/Howlin’ Wolf

今日はエレクトリック・シカゴブルーズのスタンダード曲の三回目。前回は有名曲、ヒット曲が多いリトル・ウォルターだけで終わってしまったのですが、今日のハウリン・ウルフもウルフだけでいい曲がたくさんあるのでウルフだけです。
ウルフはシカゴに来る前にメンフィスで活躍していたのでメンフィス録音にもいい曲があるのですが、今日はシカゴ録音の中だけで選曲してみます。

僕が最初にハウリン・ウルフを聞いたのは、1970年に日本ビクターからシカゴ・ブルーズのコンピレーション・アルバムで「シカゴブルース・ゴールデンパッケージ」というのがリリースされていて、そのアルバムにはマディ・ウォーターズ、サニーボーイ・ウィリアムスン、エルモア・ジェイムズなどシカゴのチェスレコードで録音したブルーズマンたちの曲が入ってました。
その中で歌声にまず圧倒されたのがハウリン・ウルフでした。
1. Red Rooster/Howlin’ Wolf
圧倒的なウルフの声にのけぞってしまいますが、バックのサウンドとリズムのグルーヴも素晴らしいこの曲。
歌詞は「オレの赤い雄鶏が怠け者で庭を荒らしてばかりいる。どっかへ行ってしまって帰ってこないけど見つけたら連れて来て欲しい、あいつはめんどうばかり起こすんだ」
R&Bではサム・クック、ロックではローリング・ストーンズがカバーしたブルーズのスタンダード”Red Rooster”です

ウルフは1964年にストーンズが出ているイギリスのテレビ番組に出たり、イギリスのミュージシャンと作ったロンドンセッションというアルバムもあり、イギリスでは大人気でした。次の”Spoonful”もイギリスのクリームがWheels of Fireという二枚組のアルバムでライヴ録音していますが、クリーム・ファンには悪いけど断然このウルフのオリジナルの方がいいです。
ドラムがサム・レイ、ベースがウィリー・ディクソン、ピアノ、ジョニー・ジョーンズ、ギターがジミー・ロジャースとウルフの右腕だったヒューバート・サムリンという鉄壁のウルフのメンバーでの1961年録音
「スプーン一杯のダイヤ、スプーン一杯の金、でもオレの心はスプーン一杯のオマエの大切な愛で満足だよ。金やダイヤでウソをついたり、死んだり、泣いたり、喧嘩の元になるスプーン一杯のことで」
2.Spoonful/Howlin’ Wolf
本名がチェスター・アーサー・バーネットといういい名前なのに一生「吠える狼」ハウリン・ウルフという名前で黒人たちに愛されたブルーズマン。体も歌声も大きくてしかも心も大きい人で仲間のミュージシャンにも慕われました。あまり悪い噂とか話が残っていない人です。そして、ウルフのブルーズを聞いていると歌が上手いとか楽器が上手いとかそいう次元ではない、人間そのものがその人のブルーズだということ感じます。

女性とモメているブルーズは山ほどあるんですが、次のこの歌に同感する男性も多いと思います。でも反対に人称を変えると同感する女性も多いと思います。
「あんな女、早く別れておけばよかった。別れてメキシコへでも行けばよかった。最初にそう思ったんやけどな。別れられんとつき合ってしまっていまや修羅場や。ああ、早く別れておけばよかった」
3.Killing Floor/Howlin’ Wolf
Killing Floorはモンタレー・ポップフェスのライヴ盤でジミ・ヘンドリックスがカバーしています。
すごく印象に残るギターのリフです。ウルフの右腕として生涯ウルフにつき合ったヒューバート・サムリンは決して器用なギタリストではないんですが、すごく印象に残るこういうギターを弾く素晴らしいギタリストです。
次の曲もクリームがカバーしていますが、本当にイギリスのロックミュージシャンに人気のハウリン・ウルフです。元々は「ミシシッピー・シークス」という1930年代に活躍した4人組のグループですごい人気でたくさんの曲を録音しました。
「ある夏の日に彼女は行ってしまった。でも大丈夫、オレは世界のてっぺんに座っているから、そんな気分やから大丈夫や。夏も秋もクリスマスの時期もオレはずっと働き続けたけど、彼女は行ってしまった。でも、大丈夫、オレは世界のてっぺんに座っているから、最高の気分」
なんかすごく男のやせがまんみたいに聴こえるブルーズですが、僕はこの曲すごく好きです。
4.Sitting On Top Of The World/Howlin’ Wolf
いまの曲、調べたらグレートフル・デッド、ナット・キング・コール、フランク・シナトラもカバーしてます。今日はハウリン・ウルフで終わってしまいますが、次の歌はいかにもブルーズらしい曲でどうしてもこのブルーズ・スタンダードに入れたいと思います。
「オレはバックドアマン(間男)、男たちは知らんやろけど、女たちは知ってるよオレのこと。みんなが寝ようとしている頃に夜ばいして、にわとりの鳴き声がしたらさよなら」
バックドアは裏口で裏口のドアからわからんように入ってきて女性とええことしてまた裏口から帰っていくというまさに間男のブルーズ。
5.Back Door Man/Howlin’ Wolf

今日はハウリン・ウルフのブルーズらしいブルーズの曲ばかりでした。ブルーズスタンダード曲集の16回目 シカゴエレクトリック・ブルーズの三回目、今日はハウリン・ウルフの名曲でした。