2020.08.28 ON AIR

モダン・ゴスペル・カルテットの素晴らしさ/
The Soul StirrersとThe Pilgrim Travelers

Shine On Me/The Soul Stirrers Featuring R.H.Harris (Specialty SPCD-7013-2)

Shine On Me/The Soul Stirrers Featuring R.H.Harris (Specialty SPCD-7013-2)

Walking Rhythm/The Pilgrim Travelers (Specialty CDCHD 463)

Walking Rhythm/The Pilgrim Travelers (Specialty CDCHD 463)

ON AIR LIST
1.By And By/The Soul Stirrers
2.I Have A Right To The Tree Of Life/The Soul Stirrers
3.Shine On Me/The Soul Stirrers
4.Stretch Out/The Pilgrim Travelers
5.Everybody’s Gonna Have A Wonderful Time Up There (Gospel Boogie)/The Pilgrim Travelers

先日、Twitterを通してリスナーの方からゴスペル・カルテットを特集して欲しいというメールをいただきました。リクエストをいただくのは嬉しいです。
今日はまずこの前特集したサム・クックも在籍していたゴスペル・カルテットのパイオニアのグループであるソウル・スターラーズを聞いてみましょう。
サム・クックがスターラーズに加入したのは1951年ですが、その前に在籍していたR.H.ハリスというゴスペル史上に残る偉大なシンガーをリードにしていたスターラーズはサムが加入する前からすでにとても人気のあるグループでした。サムもR.H.ハリスを尊敬し彼の歌い方を研究し、ハリスに直接教えを受けたこともあったようです。ハリスはゴスペルの歌唱においてアドリブを始めるなど画期的なことを成し遂げた人で、ゴスペルを志すシンガーたちに多大な影響を与えました。
ソウル・スターラズのスターラーというのは飲み物を混ぜるマドラーの意味もあるのですが、騒ぎを起こすとか、騒ぎを煽る煽動者という意味もあります。だから「魂を煽動する人たち」という意味で「魂を揺さぶる人たち」という言い方がいいかも知れません。
ゴスペル・カルテットのカルテットというのは歌がベース、バリトン、テナーに分かれてテナーとパリトンはふたりいる場合もあり、ギターが入っているグルーブもあり、リードシンガーがふたりいる場合もあります。大体4人から6人くらいの編成です。1930年代から50年代にかけてたくさんのカルテットが生まれました。
ではアルバム”Shine On”の一曲目に収録されている曲です
「つらい試練がすべての人の中にある。でも、神様が私達を約束の土地へ導いてくださる方法が私達にはわからない。でも神様は導いてくれる。神様にずっと従っていればやがてもっとよくわかるようになるだろう」神様への信仰が揺るぎなければ、やがて約束の地へ私達は行けるだろうという信仰の心を強く持つようにということでしょうね。
1.By And By/The Soul Stirrers

ゴスペル・カルテットは伴奏なしで歌うことが多く、全員のリズム、グルーヴ感が一致することがとても大切です。次の曲など聞いていると違うリズム・パターンが三つ合わさって見事なポリリズムになっています。その中をリードヴォーカルのハリスの歌が自由に空を飛んでいるように聴こえます。こういうアップテンポの曲でのアンサンブルの素晴らしさもスターラズの魅力です。
2.I Have A Right To The Tree Of Life/The Soul Stirrers
スターラズはテキサス出身のグループで結成は1926年でバリトンを歌っているロイ・クレインが自分が行ってた教会の10代の仲間で作ったものです。ゴスペル・カルテットはメンバーがよく変るのですが、この録音の時のスターラーズのメンバーはロイ・クレイン、ポール・フォスター、トーマス・ブラスター、R.Bロビンソン、ジェッシー・ファ-リィそしてR.H.ハリス。彼らはすごく人気があったのでブルーズマンやR&Bのミュージシャンと同じようにツアーをしました。ゴスペルは黒人社会では大きなビジネスになる音楽で、テキサスの片田舎のグルーブだったスターラーズは成功した典型的な例です。
しかしツアーが多過ぎて家庭にいられなかったことを後悔したリードのハリスはスターラーズを辞めてしまい、その後釜に選ばれたのがサム・クックでした。

次の歌はスターラーズのハーモニーの厚さとそれをバックに高音部に舞い上がるハリスの素晴らしいリードの両方聞くことができる名演だと思います。タイトルの”Shine On Me”と言う言葉は、この番組でも何度かON AIRしているブラインド・ウィリー・ジョンソンが歌っているLet Your Light Shine On Me(あなたの光で私を照らしてください)のようにゴスペルにはよく出てくる言葉です。
この歌もドロシー・ノーウッドはじめたくさんのゴスペルシンガーに歌われていますが、僕はこのスターラーズのバージョンがいちばん好きです。
3.Shine On Me/The Soul Stirrers

今日はスターラーズやハリスの影響を受けたカルテットとして同じテキサスで結成されたビルグリム・トラヴェラーズも聞いてみましょう。ビルグリム・トラヴェラーズはテキサス、ヒューストンの教会で結成されたカルテット。ロスに移って1947年にスペシャルティ・レコードと契約してそこから次第に有名になるのですが、そのビルグリム・トラヴェラーズを売り出した時のキャッチコピーが”Walking Rhythm Spirituals,”というもので、この”Walking Rhythm Spirituals,”というのは何かと言うと彼らの足音、つまりストンピング・リズムがレコードに入ってます。ブルーズのジョン・リー・フッカーなんかも足音のリズムを入れてますけどね。
4.Stretch Out/The Pilgrim Travelers ビルグリム・トラヴェラーズ
足音聴こえましたか? このグループはカイロ・ターナーとキース・バーバーというふたりの強力なダブル・リードで人気がありました。
さっきのスターラーズよりちょっとポップなテイストがあるんですが、次の曲などはブルーズというかR&Bのテイストを持っています。歌詞さえ違えばアカペラのコーラスグループです。しかも「ゴスペル・ブギ」なんていうサブ・タイトルが付いています。
5.Everybody’s Gonna Have A Wonderful Time Up There (Gospel Boogie)/The Pilgrim Travelers
ゴスペルもブルーズと同じように奥深い音楽ですが、いまの曲のようなちょっとポップ感のあるところから入ると入りやすいかも知れません。
来週もゴスペル・カルテットをお送りします。