2020.09.11 ON AIR

踊らずにいられないリトル・リチャードのライヴ盤

Cast A Long Shadow/Little Richard(BSMF-7610)

ON AIR LIST
1.Lucille/Little Richard
2.Tutti Frutti/Little Richard
3.Send Me Some Lovin’i/Little Richard
4.Long Tall Sallyi/Little Richard
5.Good Golly Miss Molly/Little Richard
6.Whole Lotta Shakin’ Goin’ On/Little Richard

R&Rのパイオニアと言えばチャック・ベリーとリトル・リチャードですが、そのリトル・リチャードのライヴ盤”Little Richard’s Greatest Hits”とスタジオ盤”The Explosive Little Richard”の2イン1のアルバムが日本のBSMFレコードから”Cast A Long Shadow”というタイトルで7/22にリリースされました。今日はそのライヴアルバムの方を聞きます。
エピックレコードの傘下のオーケー・レーベルからこのライヴ盤がリリースされた1967年頃は、R&Rのリバイバル・ブームが始まりリトル・リチャード、チャック・ベリー、ボ・ディドリー、ファッツ・ドミノたちが一緒にコンサートもやった時代でした。音楽的にはもうリトル・リチャードたちの50年代の音楽は昔の音楽という時代でした。でも、60年代初期にはイギリスでデビュー直前のビートルズとツアーをやったり、ライヴはずっと続けていてアルバムもリリースはしていましたが、ヒット曲は出ませんでした。
今日聴くライヴ音源はコンサートとかクラブの録音ではなく、スタジオにファンを招いて録音したようです。
本当はアルバムを最初から最後まで全曲聞いてもらってリトル・リチャードのライヴを味わってもらいたいところですが、それはアルバムを買ってください。
最初に”Welcome Ok Club”とMCが言ってますが、これはオーケーのスタジオをクラブに見立てて言ってるのだと思います。
1.Lucille/Little Richard
さすがリトル・リチャード、のっけから突っ走ってます。オリジナルはちょうどこのライヴアルバムの10年前1957年。R&Bチャート1位、ポップチャート21位。リトル・リチャードを代表する一曲です。オリジナルのスタジオ録音よりテンポが早いのですが、スタジオ盤ではこのリズムのリフがユニゾンで鳴っているため低音のヘヴィな感じが最高です。
ビートルズのポール・マッカートニーはリトル・リチャード好きで有名ですが、ポールはビートルズでも自分のバンド「ウイングス」でもそれからソロでもこの歌を歌っています。余っ程好きなんでしょうね。
次はリトル・リチャードの最初のヒット、1955年リリースでR&Bチャート2位ポップで29位。この曲がR&Rの夜明けの一曲でこれ以降57年にかけて彼は”Long Tall Sally,” “Rip It Up,” “The Girl Can’t Help It,”さっきの “Lucille,” そして”Jenny Jenny.とヒットを連発し、それらの曲はR&Rの遺産としていまも歌い継がれています。
2.Tutti Frutti/Little Richard

僕の深読みですが、なぜこの67年にこういうライヴ・アルバムを出したのかと思うに、R&Rのブームはとっくに去っていたのでたぶんレコード会社は彼をどうプロデュースしていいのかわからなかったのだと思います。それでとりあえず昔のヒット曲を歌っているライヴ盤をリリースしょうということになったのだと思います。67年というとビートルズが名盤と言われる「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」をリリースし、ジミ・ヘンドリックスがデビューして「Are You Experienced?」と続けて「Axis: Bold As Love」を発表、クリームも二枚目の「カラフル・クリーム」をリリース。サイケデリック・ロックそしてニューロックと呼ばれる時代に入っていました。黒人音楽はアーサー・コンレイの”Sweet Soul Music”という曲がヒットしたようにソウル・ミュージックが全盛になり、アレサの”I Never Loved a Man the Way I love You/あなただけを愛して”それからジェイムズ・ブラウンの”Cold Sweat”がリリースされてファンク・ミュージックの進撃も始まる頃。
そういう音楽的な状況を考えると「ロックンロールの王様」という大看板を持ってしまっているリトル・リチャードをどう売っていこうかというのは難しいところです。少しソウルっぽい曲を歌ったこともあるのですが、本人がそういうのを好きではなかったようです。
歌唱力は抜群にあり次の曲なんかも個性的ないい歌を聞かせてくれているのですが、67年ではこのスタイルはオールディズの扱いになります。でも、そんなこと関係なく素晴らしいです。
3.Send Me Some Lovin’i/Little Richard
いまのがこのライヴアルバムで唯一のスローの曲です。あとは全部アップのダンスナンバーです
次の歌なんかライヴで聞いたらもう踊るしかないでしょう。これもビートルズがカバーしていたR&Rの名曲です。
4.Long Tall Sally/Little Richard
もうすごい声です。グレート・ビッグ・ヴォイスです。
ずっと聞くとわかるのですが、サックスとかギターのソロがほとんどありません。全部自分のピアノか歌で始まって歌で終わるという徹底の仕方もすごいです。
次の曲はCCRのジョン・フォガティがカバーしていて、それもまた素晴らしいのですが、リトル・リチャードの歌が始まった途端のサァーッと世界が開けるようなインパクトはすごいです。
普通の歌手じゃないです。
5.Good Golly Miss Molly/Little Richard

5月9日に87才で亡くなってしまったリトル・リチャードですが、こうやって聞いてみると見事にワン・アンド・オンリーな存在です。聞く者の心を奮い立たせる彼の歌は熱狂と興奮の喜びを与えてくれて、彼がポール・マッカートニーやジョン・フォガティ、オーティス・レディングなど後進のミュージシャンに与えた影響は計り知れません。R&Rという呼ばれ方でひとくくりにされていますが、彼のようなR&Rを作った人は彼以外にいません。
次の曲は白人のR&Rシンガー、ジェリー・リー・ルイスで有名になりましたが、もともとはブルーズの女性シンガー、ビッグ・メイベルが歌ったものです。リトル・リチャードはまるで自分のオリジナルのように歌っています。
ライヴは佳境でめちゃ盛り上がってます。
6.Whole Lotta Shakin’ Goin’ On/Little Richard

リトル・リチャードは同性愛者だったのですが、その事をたぶんいちばん最初にカミングアウトしたミュージシャンだったと思います。いつも自分の音楽に誇りをもった立派なミュージシャンでした。
僕は20代の中頃、これをカセットでもらってすごく大切に聞いてたのですが、ツアー最中にどこかでなくしまして、そのあとアルバムを手に入れたのですがそれも知合いのブルーズ・バーに貸したらなくなってしまいまして・・だから自分にとってはもうすごく嬉しい今回のリリースです。

“Cast A Long Shadow”と言うタイトルで日本のBSMFレコードからリリースされています。興味のある方はあとでこの番組のHPを見て参考にしてください。いまなら手に入ると思います。