2021.03.26 ON AIR

あまり知られていないニューオリンズの素晴らしいシンガー、ポピー・ミッチェル

I’m Gonna Be A Wheel Someday / Bobby Mitchell & The Toppers(Night Train NTI CD-7079)

ON AIR LIST
1.I’m Crying / Bobby Mitchell & The Toppers
2.Baby’s Gone/ Bobby Mitchell & The Toppers
3.I Love To Hold You/ Bobby Mitchell & The Toppers
4.Try Rock And Roll/ Bobby Mitchell & The Toppers
5.I’m Gonna Be A Wheel Someday/ Bobby Mitchell

ほとんど知らないミュージシャンのアルバムに出会った時、今ならネットで瞬く間に調べられるが、昔はジャケット写真やレコード会社名、曲目、プロデューサー名、参加ミュージシャン、制作年月日などジャケットに書かれている事柄を自分で吟味して購入を判断していた。今日聞くボビー・ミッチェルもどこかで名前を見たことがあるがよく知らないミュージシャン。ゲットした決めてはジャケ写の顔とCDの裏に書いてある参加ミュージシャンと録音年代。さあ、どうでしょう。

彼のバイオを調べて見ました。
ルイジアナ州のアルジィアルズという地域で生まれたボビー・ミッチェルは17人も兄弟がいたので小さい頃からミシシッピ・リバーで魚を取ったり、木を切るのを手伝ったり、10歳の頃には酒屋の配達などして家計を助けていたという。そして、その酒屋のストリートで歌っていると彼の歌にチップをくれる人たちがいた。子供の頃から歌が上手くて高校に入ると「ルイジアナ・グルーヴァーズ」というコーラス隊に参加。彼に歌の才能を見た音楽の先生が彼にソロ・パートを与えてくれた。それが17歳の頃。その頃特に影響を受けたのが当時人気のR&Bシンガーのロイ・ブラウン(ロイ・ブラウンは40年代に流行ったジャンプ・ブルーズのシンガーで男っぽい豪快な歌いっぷりで大ヒットした「グッド・ロッキン・トゥナイト」などヒットも多かった)
ボビー・ミッチェルは17歳の時に初めて”One Friday Morning”というドゥ・ワップ・スタイルのオリジナル曲を作り、デモ・テープを録音して地元のラジオ局に持って行った。ドゥ・ワップというコーラス・スタイルなのでボビーのバックにコーラス三人とベースとピアノを入れて「トッパーズ」と名付けた。
これがニューオリンズのプロデューサー、デイヴ・バーソロミューの耳に止まりインペリアル・レコードのデモ録音をすることになったが、レコード会社はボビーだけを欲しくてバックのコーラス隊はいらないという考えだった。しかし、ボビーは全員でないと録音はしないと主張したという。
何とかデビューに漕ぎ着け1953年デビュー・シングル・リリースとなる
1.I’m Crying / Bobby Mitchell & The Toppers

ボビーは力強い、すごくいい歌を歌っているし、バックのトッパーズも良かったがこのデビュー曲はあまり売れなかった。この時のレコーディングにはテナーサックスのリー・アレン、ドラムのアール・パーマー、バリトン・サックスのレッド・テイラーそしてプロデュースとトランペットのデイヴ・バーソロミューと当時のニューオリンズの精鋭ミュージシャンが参加している。だからバックのサウンド、グルーヴもいいのに売れなかった。一つの理由は彼らがまだ10代で夜のナイトクラブなどには出れない、つまりプロモーションができず高校のダンス・パーティなどに出てるしかなかったということもあった。また18歳になり徴兵でメンバーが軍隊に行くことになったということもあった。
その徴兵の前にレコーディングが行われた。それが次の曲
2.My Baby’s Gone/ Bobby Mitchell & The Toppers
1954年リリースのこの曲がローカルヒットにはなったけど全国区には届かなかった。
次の曲など少しポップス性もあり、歌もバックもすごく良くてヒットしそうなのになぜかローカル・ヒット止まりの曲がつづく。
いかにもニューオリンズR&Bという。
1957年リリース
3.I Love To Hold You/ Bobby Mitchell

同じニューオリンズのファッツ・ドミノとかロイド・ブライスがR&Rのブームに乗って売れたのとほぼ同時代なのだが、このボビー・ミッチェル&トッパーズは全国区にはなれなかった。
一番売れた曲が次の”Try Rock And Roll”でR&Bチャートの14位のヒットでウエストコーストやニューヨークへもプロモーション・ツアーにも出かけたがこの曲の後が出なかった。
ニューオリンズR&Bのテイストたっぷりのいかにも若者のパーティ・ソングという感じです。
4.Try Rock And Roll/ Bobby Mitchell
いい曲なんですがね。
1954年にはトッパーズが解散してその後ボビーはニューオリンズのソロ・シンガーとして35年にわたって歌い続けることになる。
1958年にはインペリアル・レコードとの契約もなくなり、その後はマイナー・レーベルでの録音を続けたがヒットは出なかった。60年に心臓麻痺に襲われてからはツアーに出かけることができなくなったが、地元ニューオリンズでは歌い続けた。ほぼ同期で同じニューオリンズでレコード会社も同じ、録音の参加ミュージシャンも同じファッツ・ドミノが世界的に売れていく中でボビーはどんな気持ちだったのだろうと思います。歌手としての実力はファッツと同じいやそれ以上くらいあります。1989年に糖尿病や腎臓疾患などを抱え心臓麻痺で亡くなった。
5.I’m Gonna Be A Wheel Someday/ Bobby Mitchell & The Toppers