2021.06.25 ON AIR

ブルースピアノの名手、オーティス・スパンの名盤復活

Otis Span Is The Blues/ Otis Spann (CANDID/SOLID CDSOL-47019)

ON AIR LIST
1.The Hard Way / Otis Spann
2.Otis In The Dark/ Otis Spann
3.I Got Rambling On My Mind#2 / Robert Jr.Lockwood
4.Worried Life Blues/Otis Spann

シカゴ・ブルーズのピアニストと言えば必ず名前が上がるオーティス・スパン。シカゴ・ブルーズのボス、マディ・ウォーターズの右腕としてマディを支えて、多くの名曲にその演奏を残してきたピアニスト。そのオーティス・スパンが1960年に発表した名盤”Otis Spann Is The Blues”が現在日本盤で復活リリースされているので今日のON AIRを聴いて気に入った方は是非ゲットしてください。
この”Otis Spann Is The Blues”はスパンとギター名人のロバートJr.ロックウッドのデュオで録音されたアルバムで、ピアノ名人とギター名人の見事なコラボ・ブルーズを聞くことができます。
まずはアルバムの1曲目
幼い頃から白人にコントロールされている社会の中でまともに教育を受けられず、文字の読み書きや算数などができなかった多くのアフリカン・アメリカンの辛く、悔しい気持ちを代弁するブルーズです。厳しい道を自分を奮い立たせて歩んできたと始まるブルーズ。
1.The Hard Way / Otis Spann
ロックウッドのギターのバッキング・サポートも実に見事。ピアノと被らないようにコードワークと単弦のオブリガード、そしてどちらのソロとも言えない絡み合うギターとピアノ。デュオ・ブルーズの名演です。

次はスパンのピアノ・ソロです。ピアノは基本的に打楽器だと僕は思っているのですが、スパンのピアノの素晴らしいグルーヴ感が味わえる曲です。左手のどっしりしたリズム・キープと様々なフレイズを叩き出す右手のコンビネーションが素晴らしいです。
2.Otis In The Dark/ Otis Spann
ピアノの鍵盤を叩くタッチの強さがわかります。そしてピアノから溢れる音の大きさが半端ではありません。ブルーズ・ピアノの基本が詰まった演奏です。

オーティス・スパンはミシシッピのジャクソンで1930年に生まれてます。
お母さんがブルーズギターを弾いてお父さんがブルーズピアニストという、もうブルーズマンになるしかないような環境で育ちました。ミシシッピのジャクソンという街は大きくていろんなブルーズマンが生まれ、訪れた街でもあります。彼は17歳までジャクソンでいろんなミュージシャンと演奏していたのですが、お母さんが亡くなり先にシカゴにいたお父さんを頼ってシカゴに来ました。すでにブルーズピアニストとしては出来上がっていたのでしょう。来て間もなくしてマディ・ウォーターズのバンドのオーディションを受けて合格。そこからずっとマディのバンドで演奏しマディのバンドにはなくてはならないバンマス的な存在になりました。他のブルーズマンとの仕事もしていましたが、1953年から1969年まで16年間マディのバンドに在籍しました。マディも相当信頼していたのがわかります。
ソロ・アルバムは1960年リリースのこの”Otis Spann Is The Blues”が初めて。一応スパン名義のソロ・アルバムですが、内容は半分をロックウッドが歌っているので実質的には双頭アルバムと言っても良いと思います。
一曲、ロックウッドの歌も聞いてみましょう。義理のお父さんのロバート・ジョンソンが原曲ですが、多少歌詞を変えて歌っています。
3.I Got Rambling On My Mind#2 / Robert Jr.Lockwood

次の曲はスパンが大きな影響を受けた1940年代から50年代に活躍したブルーズ・ピアニスト、ビッグ・メイシオが残した名曲。チャック・ベリー、レイ・チャールズ、メンフィス・スリム、ジュニア・ウエルズなどたくさんカバーされています。
「神様、あいつと別れてめちゃ傷ついたけどいつの日かそんなにくよくよすることもなくなるんや。おまえが行ってしまってから毎晩落ち込んで悲しんだけどそれもいつの日かなくなるんや。おまえが居らへんようになってずっと昼も夜も悩んだけどいつの日にか心配しなくてええようになる」
この毎回最後に繰り返す「But Someday Baby I Ain’t Gonna Worry My Life Anymore」という一節はいつの日か死んでしまうから心配しなくていいという意味が含まれていると思います。
人種の差別を受け、貧しいままずっと生きて、愛する人がいることだけが救いだったのに、愛する人にも去られて絶望する日々にいつの日かこの悩みも死んでしまえばなくなり神様の元に行けるという悲しいこの歌が大ヒットしたのはある意味とても辛いことです。
4.Worried Life Blues/Otis Spann

番組HPにアルバム・ジャケットなどもアップしてますので参考にしてください。
原盤のキャンディッドというレコード会社はジャズ系のレーベルです。ニューポート・ジャズ・フェスティバルにマディ・バンドの一員として出演したスパンの歌とピアノに感銘を受けたジャズ評論家のナット・ヘントフがこのアルバムのプロデュースをしました。
「オーティス・スパンはブルーズだ」というアルバム・タイトルに偽りが全くない、純度100パーセントのブルーズ・アルバムで日本盤が再発されたこの機会に是非ゲットしてください。
再発盤にはボーナス・トラックが6曲収録されています。そして、このアルバムの続編と言ってよいスパンの”Walkin’ The Blues”も同時発売です。それにはセントルイス・ジミーがゲスト・ヴォーカルで参加しています。そちらのアルバムもいいので是非。
この発売元は日本のウルトラ・ヴァイヴ/ソリッド レコード。発売は3/10なので早めにどうぞ。ソリッド・レコードからは他にもメンフィス・スリム、ライトニン・ホプキンスのキャンディッド時代のアルバムがリリースされています。