2021.07.02 ON AIR

今夜はリクエストにお応えしてロバート・ナイトホーク

Sweet Black Angel/Robert Nighthawk (ROOTS RTS 33056)

ON AIR LIST
1.Black Angel Blues(Sweet Black Angel)/Robert Nighthawk
2.Anna Lee Blues/Robert Nighthawk
3.Handsome Lover/Robert Nighthawk(vo.Ethel Mae)
4.Jackson Town Gal/Robert Nighthawk
5.Someday/Robert Nighthawk

今日はリスナー石尾さんという方からリクエストをいただいたロバート・ナイトホークを聞きます。石尾さん、お待たせしました。
ロバート・ナイトホークはB.B.キングのようなすごく有名なブルーズマンではないのですが、とても味のある塩昆布みたいなブルーズマンです。
そのB.B.キングの大ヒット曲”Sweet Little Angel”の元歌、原曲はこのナイトホークのSweet Black Angelという曲でもっと遡るとタンパ・レッドにたどり着きます。スライド・ギターの上手さでも有名なブルーズマンです。
リクエストされた石尾さんからナイトホークに影響を与えたとスライド・ギターは誰でしょうかという質問も受けているのですが、スライドギターの名人、タンパ・レッドの影響も受けていると思いますが、最初にギターの手ほどきを受けた従兄弟のヒューストン・スタックハウスというブルーズマンからの影響が方が大きかったと思います。
ナイトホークはスタックハウスともう一人トミー・ジョンソンという偉大な南部のブルーズマンの影響も受けています。トミー・ジョンソンはチャーリー・パットンやサン・ハウスと並ぶミシシッピー・ブルーズの偉人で「Big Road Blues」「Canned Heat Blues」などブルーズ史上に名作を残しています。
つまり、ロバート・ナイトホークはトミー・ジョンソンやヒューストン・スタックハウスの南部の泥臭いブルーズに、当時の都会的なタンパ・レッドの洗練された要素も持ったブルーズということができます。
ではナイトホークの有名曲Black Angel Blues別名Sweet Black Angel
「俺には可愛い黒い天使がいるんだ。彼女が羽根を広げているのが好きなんだ。俺の上で羽根をひろげてくれる時なんかもう最高よ。彼女に5セントをおねだりすると10ドルもくれるんや。しかもウィスキーが飲みたいと言うたら瓶ごと買ってくれるんやで」
1.Black Angel Blues(Sweet Black Angel)/Robert Nighthawk
綺麗なスライド・ギターの音色の演奏は絶品です。そして体で響いているようないい声で落ち着いた淡々とした歌いっぷりです。

彼の声質もあると思うのですが全体的にややダークな曲調が多く、今のようなミディアム・テンポのものが多いのですが次もそうです。
アンナ・リーという女性に惚れた歌ですが、彼女がなかなか自分だけの女性にはなってくれない、困ったことに夜遊びする女性なんです。これが最後の通告だなんていうてますがなかなか別れられんでしょ。そういうもんですよ、ホレてしまうと。知らんけど・・・。
2.Anna Lee Blues/Robert Nighthawk

アルバムにはアンナ・リーではなくてエセル・メイという女性シンガーがシングルのカップリングで何曲か収録されてます。ナイトホークの彼女だったらしくどういう経緯で彼女も録音されることになったのかわかりませんが、なかなか歌えるシンガーでちょっとメンフィス・ミニー風なところもあります。
どうなんでしょうね「俺の彼女なんやけどなかなか歌上手いねん、一緒に録音さしてもらわれへんやろか」なんてナイトホークが推したんでしょうか。曲名が「ハンサムな恋人/ハンサムラバー」ですが、ナイトホークのことでしょうか。確かにナイトホークは目鼻立ちのしっかり、キリッとしたなかなかええ男ですが・・・。
3.Handsome Lover/Robert Nighthawk(vo.Ethel Mae)
エセル・メイさん、悪くないんですけど記憶に残るほどのインパクトもないんですよね。結局、ナイトホークはその後メイさんにフラれてめっちゃ落ち込んだらしいです。
ブルーズマンにはオープン・チューニングというイレギュラーなギターのチューニングでスライド・ギターを弾く人が多いのですが、ナイトホークは普通のチューニングでスライドを弾いています。

4.Jackson Town Gal/Robert Nighthawk
やっぱりこのテンポが好きなんでしょうね。
聞いてもらっているようにどの曲もほとんどテンポがミディアムからスローです。そのあたりも彼がもう一つ売れなかった理由ではなかったかと思います。曲のバリエーションがないと言うか。
シカゴの有名なレーベル、チェス・レコードはナイトホークが売れると思い録音していたのですが、あまり売れず1964年に最後のチェスレコードでの録音となります。ハーモニカのウォルター・ホートン、ギターはバディ・ガイ、ベースがジャック・マイヤーズ、ドラムがクリフトン・ジェイムズという当時のバリバリのメンバーです。途中のギターソロはバディ・ガイが弾いていてナイトホークはヴォーカリストに専念していていい味を出している曲でアップテンポのシャフルでいい感じなのですが、チェスはこの曲を売れないと判断してリリースしないで未発表にしてしまいました。
5.Someday/Robert Nighthawk

彼は若いころにいくつか芸名があり、ロバート・リー・マッコイとかランブリン・ボブとかピーティーズ・ボーイとか名乗っていたのですが、最初にレコーディングした曲が”Prowling Night Hawk”、プラウリング・ナイトホーク(獲物を求めてうろつく夜の鷹)という曲名だったのでナイトホークに落ち着きました。
一曲目に聴いてもらったSweet Black Angelが少しヒットしただけであとはヒットがなく、彼はシカゴのマックスウェル・ストリートでストリート・ミュージシャンとして日銭を稼ぐ生活をしていました。でも、彼はずっと生まれ故郷のアーカンソー州ヘレナへ帰りたい気持ちが強かったようです。そして最後は1967年に故郷ヘレナで亡くなっています。58歳でした。心臓を患っていたようです。
ブルーズマンとしてはすごく有名になれなかったのですが、彼が残した美しいスライド・ギターとミディアム・テンポの霧がかかったようなダークなブルーズは彼にしかできないブルーズで多くの人に愛聴されています。