2021.07.09 ONAIR

最近リリースされたお薦めのモダン・ゴスペル・アルバム

The Gospel Truth/The Complete Singles Collection (Stax/Craft Records )

ON AIR LIST
1.Just My Imagination (Just My Salvation)/Rance Allen Group
2.Don’t Let The Green Grass Fool You (Don’t Let The Devil Fool You)/Reverend W. Bernard Avant Jr. & The St. James Gospel Choir
3.Who Is Supposed To Be Raising Who/21st Century
4.That Will Be Good Enough For Me/Rance Allen Group

ゴスペルはブルーズと並んでブラック・ミュージックのルーツのひとつだということは知っていてもどこから入っていいかわからないとか、何を聞いたらいいのかわからないという人も多いと思います。
今日紹介するのはファンクやソウルとほぼ同じ感覚で聴くことができる70年代のモダン・ゴスペルのコピレーション・アルバムです。リリースのレコード会社は60年代から70年代にソウル・ミュージックの名曲をたくさんリリースしたスタックス・レコードのゴスペル・レーベル「the Gospel Truth」 
スタックス・レコードのゴスペルというだけでちょっと興味が持てる人もいると思います。しかも70年代のゴスペルですから当然当時流行りのサウンドやビートの影響を受けています。もちろんトラッドなゴスペルを歌っている人やグループもいるわけですが、流行りのサウンドやビートを取り入れるというのもゴスペルを古い音楽にしたくないという人たちの考えだと思います。
最初に聞いてもらう「ランス・アレン・グループ」の曲はソウル・コーラス・グルーブ「テンプテーションズ」の1971年R&Bチャートトップに輝いた”Just My Imagination”の歌詞だけを変えたものでImagination をJust My Salvationと変えたものです。 salvationというのはキリスト教の罪を犯したことから魂を救う、救済するという意味です。
原曲のJust My Imaginationは毎日窓から好きな女性が通り過ぎるのを見ていた。そしてその娘と付き合うことになったなんて俺は幸せなんだ・・と、でもそれは自分の想像だったのさ、つまりJust my imagination・・・という内容なのですが、それをランス・アレンが「今朝目覚めて新しい朝を神様に感謝する。窓から朝日を見る美しい太陽、それ(神様の愛)は私の燃える魂を救ってくれる。夜にひざまづいて私は神さまに祈る 私からあなたの愛を奪わないでください。神様に感謝します」と書き換えた歌です。
1.Just My Imagination (Just My Salvation)/Rance Allen Group
ランス・アレンの歌は強力でいつも全開、全力みたいな人で聴くこっちもパワーがいるんですが、すばらしいゴスペル・シンガーです。
昔、ロスで観たコンサートで何人か出演した中の1人が彼だったのですが、パワフルでハイテンションで歌がなかなか終わらなかったのを覚えています。お客さんも総立ちで凄かったです。
次もソウルのウィルソン・ピケットが歌った曲の歌詞を変えたものですが、元々の歌は「長い時間付き合って2人で築いて来たものを捨てて他の男に行ってしまおうとする彼女に青い芝生に騙されたらあかんよ。心変わりしたらあかんよ」と。それを悪魔に騙されたらあかんよと書き換えた歌です。歌っている人とグループ名がめちゃ長いです。
2.Don’t Let The Green Grass Fool You (Don’t Let The Devil Fool You)/Reverend W. Bernard Avant Jr. & The St. James Gospel Choir
今の二曲のような馴染みやすい曲からゴスペルを聞いて行くのもいいかと思います。
ゴスペルは昔からブルーズやR&Bの影響も受けているし、ブルースもゴスペルの影響を受けています。結局黒人音楽はブルーズもジャズもソウルもファンクもゴスペルもリンクしているので、ゴスペルもその時代に流行っている音楽の影響を受けるのは普通のことです。
次の曲は70年代のファンク・ミュージックの影響をもろに受けているような曲でこれがゴスペル?と言いたくなるくらいファンクな曲です。
3.Who Is Supposed To Be Raising Who/21st Century

最後にもう一曲ランス・アレン・グループです。
「私は春や秋のパリに行ったことがない。タジ・マハールのインドにも、ウインタースボーツをしにスイスにもカーニバルやマルディ・グラがあるニューオリンズにも霧の日のロンドンにも行ったことがない。私はもし天国に行けたならそれで充分満足なのだ。天国が私の行きたいところなのです」
4.That Will Be Good Enough For Me/Rance Allen Group

僕はアメリカで日曜の朝に黒人教会へ何度か行ったことがあります。もちろんキリスト教の信者ではないので教会の後の方で見学させてもらっている感じです。みんなちゃんとスーツを着て女性もジャケットを着用するようなフォーマルな装いで来ます。やはり遊びではなく教会の神様の前にいくわけですから。僕もジャケットをちゃんと着て行きました。
神父さんの話があって、信徒の人が自分の間違った行いを懺悔するというようなこともあり、それについてまた神父さんが話されるのですがそれがもう歌を歌っているような話し方でした。そして神父さんの話が盛り上がっていくとクワイアの歌が始まります。だから教会には歌だけ、音楽だけがあるのではなく神父さんの話や、集まった人たちのコミュニティの話もあるわけです。その中の音楽がゴスペルというわけです。
ぜひ、皆さんもブルーズと同じように奥深いゴスペルの世界に入ってみてください。
今回は最近リリースされたお薦めのモダン・ゴスペル・アルバム The Gospel Truth/The Complete Singles Collectionを聞きました。