2021.07.23 ON AIR

日本で唯一のブルースとソウルとゴスペルの専門誌「ブルーズ&ソウル・レコーズ」を紹介

ON AIR LIST
1.You’ve Got My Mind Messed Up / James Carr
2.It’s Wonderful To Be In Love / The Ovations
3.Deep Moaning Blues / Ma Rainey
4.Moonshine Blues / Bessie Smith

現在、私がエッセイを寄稿している音楽雑誌「ブルース&ソウル・レコーズ」を皆さんはご存知でしょうか。一年ほど前から”Fool’s Paradise”という連載を書かせてもらってます。私の連載はさておき今日はこの「ブルース&ソウル・レコーズ」という雑誌の紹介をしたいと思います。

「ブルース&ソウル・レコーズ」誌は隔月の発行でその時々のブルーズやソウルに関連した特集やライターの皆さんのエッセイや興味深い連載や、新譜紹介、日本のバンドの紹介、外タレの来日情報など盛りだくさんの雑誌です。コアなコーナーもありますが、私のエッセイ「Fool’s Paradise」などは全くコア感はなく、自分の音楽体験を元に普通のエッセイとして読めるものを目指しています。

この雑誌には毎回、その時の特集にちなんだCDが付録でついています。いちばん新しい160号はメンフィス・ソウルの特集なので、それに関連したゴールドワックスというメンフィスのレーベルに残された音源がついています。

そこからまず一曲聞いてみますか。

君は俺の心をかき乱すという歌です。夜は眠れないし食事も喉が通らない、彼女のためならいちばん高い山でも登るしいちばん深い海でも泳ぐ・・・まあ、何でもするよと。歌ってるのはゴールドワックス・レコードの代表的なソウル・シンガー、ジェイムズ・カー

1.You’ve Got My Mind Messed Up / James Carr

R&Bチャートの7位まで上がった曲です。

もう一曲続けて聞いて見ましょうか。やはり同じゴールドワックスに所属していたソウル・コーラスグループです。すごく有名なシンガーに声が似ているのですが・・・三人編成のコーラスでリードを取っているのはルイス・ウィリアムズです。

君に恋するのは天国のように素晴らしく素敵なことだというめちゃ甘いラヴソング。

2.It’s Wonderful To Be In Love / The Ovations

サム・クックにそっくりなルイス・ウィリアムズ。サム・クックのフォロワーや影響を受けた歌手はゴマンといるのですがそっくりなのはこのルイスさんがだんとつです。

こういう音源のCDが付いていてそれを聴きながら特集記事を読むとあまり知らない音楽のことでも少しずつ身近に感じてきます。

この「ブルース&ソウル・レコーズ」誌は前身の「ブラック・ミュージック・レビュー」そしてそのまた前身の「ザ・ブルーズ」という時代から僕はずっと読んでいます。

最初の「ザ・ブルース」が創刊されたのは1970年。もう50年以上前になります。

創刊したのは音楽評論家の日暮泰文さん。直接日暮さんに創刊の動機などを聞いたことはないのですが、1970年当時まだまだブルーズという音楽が日本で正しく認知されていない中、日本人にちゃんとブルーズを知ってもらいたいという気持ちだったと思います。日暮さんはその前60年代後半に同じ音楽評論家の鈴木啓志さんとブルーズ愛好会を作っていてその機関紙の延長が「ザ・ブルース」の創刊になったと思います。それはちょうど僕がブルーズに興味を持ち始め、歌い始めた頃だったのでブルーズのいろんな知識を得たくて「ザ・ブルース」を毎号隈なく読んでいました。

最初はほとんどブルーズだけをとりあげていたのですが、次第にブルーズと関連のあるゴスペルやソウル、ファンクなども取り上げるようになっていったのですが、そのあたりで「ブラック・ミュージック・レビュー」という名前になり、その後今の「ブルーズ&ソウル・レコーズ」へ名前が変わりました。

ブルーズ・ロックの特集やギターの特集もあり、戦前の古いブルーズの特集もあり前々号でとりあげられていたのが、最近ネットフリックスで公開された映画「マ・レイニーのブラックボトム」に連動したクラシック・ブルースの女性シンガー、マ・レイニーの特集でした。

そういう遠い昔の歴史的なブルーズというのはなかなか接する機会がないと思いますが、この「ブルーズ&ソウル・レコーズ」の特集記事を読んで、付録CDを聴くとクラシック・ブルーズへのすごくいい手引きとなります。CDの一つ一つの曲にも解説が書いてあります。1928年録音

3.Deep Moaning Blues / Ma Rainey     

この号の付録CDにはマ・レイニーと同時代のベッシー・スミスの歌と比較して聴く為にベッシーの歌も入ってます。

曲は「ムーン・シャイン」日本でも昔「どぶろく」と呼ばれるような密造酒がありましたが、次の歌はアメリカの黒人たちが隠れて作っていた密造酒のことで「ムーン・シャイン」と言います。警察に見つからないように月の明かりだけを頼りに酒を隠してある場所へ行ったことから「月の輝き」ムーン・シャインとよばれました。ムーン・シャインって少しロマンティックに聞こえるのであま~い曲かと思ったら密造酒でした。

1924年録音

4.Moonshine Blues / Bessie Smith

こういうCDが本についていてその解説もあるというのはすごくその音楽を理解するのにいいと思います。

自分が知らない音楽に出会うきっかけというのは、なかなか自分だけでは限界があります。そこでこういう「ブルーズ&ソウル・レコーズ」誌のような本があると親しみやすくなります。

毎号読んでいると自然とブルーズやソウル、ファンク、ゴスペルの知識が自然と増えてまた新しい音楽に興味が湧くと思います。

今日は日本で唯一のブルースとソウルとゴスペルの専門誌「ブルーズ&ソウル・レコーズ」の話をしました。ぼくのエッセイもよろしく。

ブルーズ&ソウル・レコーズ→https://bsrmag.com