2022.02.11 ON AIR

リアル・サザン・ソウル・シンガー、ウィリー・ウォーカーの遺作”Not In My Life”

Not In My Life / Wee Willie Walker (BSMF-2750)

ON AIR LIST
1.Don’t Let Me Get In Your Life/Wee Willie Walker
2.Darling Mine/Wee Willie Walker
3.Warm to Cool to Cold/Wee Willie Walker
4.Let The Lady Dance/Wee Willie Walker

2019年11月19日に亡くなった最後のリアル・サザンソウル・シンガーと言われたウィリー・ウォーカーの遺作”Not In My Life”が昨年10/29に日本のBSMFレコードからリリースされました。少し遅れましたが今日はそのアルバムを聴きながらウィリー・ウォーカーを偲びたいと思います。
昨年亡くなった女性シンガーのキャロル・フランを少し前にON AIRしましたが、ウィリー・ウォーカーもキャロルと同じように若い頃はなかなかヒットが出ず、広く名前を知られることもなかったシンガーでした。その本領が開花したのが60才過ぎてからで本当に遅咲きのソウルシンガーでした。
最近のブルーノ・マーズやジョー・バティーストなど若い才能のあるミュージシャンたちの華やかな活躍振りも興味のあるところですが、ウィリー・ウォーカーのようにトラッドな南部のソウル・スタイルで歌い続けてくれたシンガーはとても頼もしい存在でした。
ずっと続くコロナ禍の中、今こそ黒人クラブで一杯呑みながらゆったりとウィリーのようなサザン・ソウルを聞きたいと思います。77歳でまだまだ歌える力を残して天国へ行ったウィリー・ウォーカーの遺作”Not In My Life”からまず一曲

1.Don’t Let Me Get In Your Life/Wee Willie Walker

ウィリー・ウォーカーはこのアルバムを録音した直後に亡くなりました。
彼は1941年ミシシッピ州生まれ。1959年「Little Girl Echo」という曲で初録音デビューしましたが、ヒットには至らなかったようです。そして1967年にスペンサー・ウィギンスやジェイムズ・カーと言った素晴らしい南部のソウルシンガーをデビューさせたゴールドワックスからビートルズの「Ticket To Ride」のカバーをリリースしたのですがヒットしなくて、翌年にはシカゴのチェス・チェッカーからもシングルを発表し、その後もシングルをリリースしたがヒットには至っていません。
でも彼は工場で機械工として働いたりや医療従事の仕事をして生計を立てながら週末にクラブで歌うという生活を続けました。やっぱり歌うことが好きだったんですね。そこではサム・クックやオーティス・レディングのカバーも歌っていたようです。次の曲もそういう60年代のR&B、ソウルの匂いがするいい感じの曲です。

2.Darling Mine/Wee Willie Walker

いいですね。僕はソウルに入ったのがサザン・ソウルだったのでこういう南部のテイストが好きです。
それでずっと知られていなかったウィリー・ウォーカーが知られるようになったのは、体調を壊し少しリタイアしていてから復活した2002年にリリースしたアルバム『Willie Walker』
これが彼の初アルバムでなんと61歳でした。ずっとシングルしか出したことがなかったんですね。
その後、ギタリストのカーティス・オベダが率いるミネアポリスのバンド「ブタンズ」がバックを務めるようになり、いわゆるメンフィス・ソウル風のしっかりしたバンド・サウンドで歌えるようになったことが彼の復活に繋がりました。
2004年に『Right Where I Belong』2006年『Memphisapolis』(メンフィサポリス)と順調にアルバムリリースを続け、ヨーロッパにもツアーに出かけ2008年には日本にもやってきました。残念ながら仕事で僕はこの来日公演を見れなかったのですが・・・

3.Warm to Cool to Cold/Wee Willie Walker

今日聴いている遺作となった”Not In My Life”のバックアップをしているギタリスト、アンソニー・ポールが率いる「ザ・アンソニー・ポール・ソウル・オーケストラ」が2017年のアルバム”After Awhile”からバックをやるようになりました。それでウィリーはずっと安定したバック・サウンドをバックに歌い続けることができました。アンソニー・ポールはベイ・エリアを中心に活動しているギタリストでボズ・スキャッグスやチャーリー・マッセルホワイトのバックもやってきた腕利きのギタリストです。やはりウィリーのようなソウル・シンガーは安定したバンド・サウンドがあるといい歌を歌えます。ステージの回数を重ねるほどバンド・サウンドも充実するので大切なポイントです。

2015年の『If Nothing Ever Changes』では、ブルース・ミュージック・アワードでアルバム・オブ・ジ・イヤーを含む3部門にノミネート。さらにリビング・ブルース・アワードでは2部門制覇。2017年の『アフター・ア・ホワイル』でも多くの音楽賞を獲得。いくつもの賞にも輝きウィリーにとってはいい晩年だったと思います。しかし2019年11月19日に眠っている間に天国へ行ってしまいました。77歳でした。
有名とは言えないウィリー・ウォーカーは他の仕事をしながらも歌が好きで歌うことを諦めなかった。
その歌声を聴いていると決してスケールの大きなシンガーでもないし、すごく華があるシンガーでもないのですが、歌に対して誠実で心がこもっていることがわかります。それが真のソウル・シンガーということだと思います。

4.Let The Lady Dance/Wee Willie Walker

華々しくはないですが、誠実な歌が聴けるリアル・サザン・ソウルシンガー、ウィー・ウィリー・ウォーカーの遺作「Not In My Life 」を聞きました。また来週。