2022.04.15 ON AIR

歴史的な映画”Summer Of Soul”のサントラ盤がリリース!

“Summer Of Soul” Original Motion Picture SoundTrack(Sony Music 19439956872)

ON AIR LIST
1.Why I Sing the Blues/ B.B. King
2.I Heard It Through The Grapevine / Gladys Knight & The Pips
3.Precious Lord, Take My Hand / The Operation Breadbasket Orchestra & Choir feat. Mahalia Jackson and Mavis Staples
4.Everyday People/ Sly & The Family Stone
5.Backlash Blues / Nina Simone

昨年の夏に公開されてこの番組でも10月に二回に分けて特集した映画「サマー・オブ・ソウル」のサウンド・トラックが2/23にリリースされました。スティーヴィー・ワンダーが収録されていないのと、デジタル配信ではあったアビー・リンカーンとマックス・ローチ の“Africa”がCDには収録されていません。
いまグラミー賞では「ベスト・ミュージック・フィルム」部門にノミネート。アカデミー賞もドキュメンタリー賞にノミネートされています。
この映画「サマー・オブ・ソウル」は1969年にニューヨークの公園で開催されたアフリカン・アメリカンたちのコンサート“ハーレム・カルチャラル・フェスティバル”を中心に描かれているのですが、ブルーズ、ジャズ、ゴスペル、ソウル、ファンクと黒人音楽のあらゆるジャンルのミュージシャンが出演しています。まずはブルーズのB.B.キングが映画の最初の方に出てきて歌っています。集まった聴衆がほとんど同胞の黒人たちということもあり他のミュージシャンもそうですが、B.B.もバンドもかなり力が入っていてリズムが少し早く走っているところも面白いです。「なぜ私がブルーズを歌うのか」

1.Why I Sing The Blues/ B.B. King

個人的にはこの映画で若い頃のグラディス・ナイトを見れたのも嬉しかったです。69年です。当時女性に流行っていたミニ・スカートでグラディスも登場します。思えばこの映画に出演しているミュージシャンはもうたくさん亡くなっていて今はコーラスのピップスももうありません。グラディスは今も元気です。いつかもう一度ライヴを聞きたいですね。
67年に全米2位になった大ヒット曲。自分が昔付き合っている男が昔の彼女とよりを戻しているという噂を聞いたという歌です。日本のタイトルは「悲しい噂」

2.I Heard It Through The Grapevine / Gladys Knight & The Pips

この映画のハイライトのひとつはゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンがステイプル・シンガーズのメイヴィス・ステイプルズとデュッエットで歌うシーンです。ゴスペルという音楽を世界に広めた最初のシンガーがマヘリア・ジャクソンでした。もちろんゴスペルの世界でも揺るぎないトップの座にいたマヘリアと一緒に歌うメイヴィスはかなり緊張したらしいですが、その様子は映画のメイヴィスの表情を見ていても感じられます。この時マヘリアは58才、メイヴィスは30才
今もゴスペルを歌い続けているメイヴィスにとっても黒人音楽の世界にとってもこのゴスペルのデュエットは歴史的に貴重な出来事だったと思います。クワイアがバックについて有名なこのゴスペル・ナンバーです。
「神様、光のあるところへ私の手を取り導いてください」
(三分少し前から7分25まで)

3.Precious Lord, Take My Hand / The Operation Breadbasket Orchestra & Choir feat. Mahalia Jackson and Mavis Staples

この時、コンサート会場はふたりの歌声で教会のようなムードになりました。

映画の中で繰り広げられる“ハーレム・カルチャラル・フェスティバル”のコンサートには今のゴスペル、そして最初に聞いたB.B.キングのブルーズ、アビー・リンカーンとマックス・ローチ、ニーナ・シモンのジャズ、グラディス・ナイトやデイヴィッド・ラフィンのソウルそして一番若い、新しい音楽として登場してきたのが、ファンクのスライ&ザ・ファミリーストーンでした。彼らがステージに現れると観客が前に押し寄せるほど当時人気が上がっていたのがわかります。その溌剌とした演奏を。

4.Everyday People/ Sly & The Family Stone

最後はニーナ・シモンです。ニーナ・シモンは早くから人種差別や社会の格差について社会的、政治的発言をしたミュージシャンで特にこのコンサートの前の年にキング牧師が射殺されたこともあって彼女はとてもナーヴァスになっているというか、もう怒っているように見えました。つまり差別や格差、白人と平等でないことや黒人が虐待されることに、そして敬愛する指導者のキング牧師が殺されたことにもう怒りが頂点に達している感じでした。曲名のBacklash BluesのBacklashは反動、政治的な反動、まあ逆戻りです。時の為政者に向かって歌ったものです。「あなたは給料を上げないで税金を上げる。そして私の息子をベトナムに送った」という、つまり良くなりつつあると思った社会をあなたは後戻りさせているという痛烈な批判の歌です。

5.Backlash Blues / Nina Simone

”Summer Of Soul”はできれば映画館で是非観てください。DVDもリリースされています。
今日もリモート収録でお送りしました。