2023.01.13 ON AIR

86歳バディ・ガイの新譜”Blues Don’t Lie”を聴く

Blues Don’t Lie/Buddy Guy

ON AIR LIST
1.I Let My Guitar Do The Talking/Buddy Guy
2.What’s Wrong With That/Buddy Guy feat.Bobby Rush
3.We Go Back (feat.Mavis Staples)/Buddy Guy
4.Gunsmoke Blues/Buddy Guy
5.King Bee/Buddy Guy

    アルバム・タイトルは”Blues Don’t Lie” 「ブルーズは嘘をつかない」
    ゲストにメイヴィス・ステイプルズ、ボビー・ラッシュ、エルヴィス・コステロまあこの辺まではわからなくもないけどジェイムス・テイラーが参加しているのにびっくり。
    僕は最近のバディ・ガイの音楽をブルーズというよりブルーズ・ロックとして聞いています。というのもオーセンティックなブルーズ・テイストよりもロック・テイストの方が強いからで今回のアルバムも基本的にはそういうサウンドです。恐らく彼自身も白人のロックファンを中心としたブルーズロック好きをターゲットにしていると思います。今回もそれ以前からもバディはインタビューで「ブルーズを死なせてはいけない」「ブルーズを次世代に橋渡ししなければいけない」と言ってますが、オーセンティックな(純正な)ブルースという感じは少なくてロックテイストです。
    ここでひとつ言わせてもらうと僕はブルーズロックがダメと言っているわけではなく、ブルーズロックと呼ばれるオールマン・ブラザーズやジョニー・ウィンターは好きだし、ブルーズの影響から名曲名演をたくさん残したジミ・ヘンドリックスも大好きです。

    まず一曲。アルバムの最初の曲からラウドでパワフルに歪んだギター・サウンドが全編に繰り広げられ、全体のアレンジもサウンドもこれはやはりロックと呼んだ方がいいと思う。

    1.I Let My Guitar Do The Talking/Buddy Guy

    オレはギターに喋らせるという意味ですが、本当によく、うるさいくらい喋ってます(笑)
    近年、バディに関して賛否が分かれていることは「レジェンドのブルーズマン」と呼ばれている割にはあまりブルーズという感じがしないということだと思う。例えばB.B.キングは歌もギターも60年代に作り上げた自分のブルーズ・サウンドからあまり離れることなく終生ずっと自分のブルーズ・サウンドとグルーヴを維持していました。ところがバディは60年代70年代に比べるとギターの音がロック志向になりフレイズの粒がよくわからない。方向性もアルバムごとに変わっていたりであまり確固としたものが感じられない・・そのあたりがオーセンティックなブルーズを好む人たちから敬遠されているのでしょう。
    このアルバムでもブルーズとしての統一感はあまりない。ジェイムズ・テイラーをゲストに迎えた曲もメイヴィス・ステイプルとの曲も悪くはないがアルバム全体のコンセプトがはっきりしてない。
    次のボビー・ラッシュをゲストに迎えたファンキーな曲はブルーズ濃度が濃いかなと思いきや、やはりギターソロになるとロックテイストになる。

    2.What’s Wrong With That/Buddy Guy feat.Bobby Rush

    ゲストがたくさん参加するアルバムも僕はあまり好きではないです。ゲストが多いとコンセプトがしっかりしていないとアルバムの印象がぼやけてしまうというか・・・このアルバムもバディだけで勝負して欲しかった。

    では、メイヴィスと歌っている曲を聴いてみよう。
    「どこもかしこもブルーズだった昔に戻ってる。キング牧師が撃たれた日を忘れない。そして生活は辛かったけどなんとか私たちはやってきた」と、ややゴスペル調の曲です。ゴスペル・ルーツのメイヴィスの音楽性を尊重してこういう選曲になったのだと思います。
    ギターも含めてこのアルバムで一番好きな曲かもしれません。

    3.We Go Back (feat.Mavis Staples)/Buddy Guy

      アメリカはいつまで経っても銃、ピストルを無くせない国でそれによって何度も大量殺人の悲劇が起きています。そういう野蛮な国なのに一番の先進国だと言ってるのが訳わかりません。そういえばシカゴに行った時、夜中のハンバーガー・ショップのカウンターに網と鉄格子みたいな柵があってお金を渡す手が入るだけの場所がありすごく怖いムードでした。しかも入り口に警官が座っていたので一緒に行ってくれた奴に聞いたら夜中になるとこのハンバーガー屋にも強盗がピストル持って入ってくる時があるって・・・どんな先進国やねん。
      次はそういう銃犯罪に反対するメッセージが込められた曲です。

      4.Gunsmoke Blues/Buddy Guy

      最後にバディと同じルイジアナ出身のブルーズマン、スリム・ハーポのブルーズ・スタンダードをアコースティックの弾き語りを録音してます。
      これもやや取って付けたような感じがしないでもない。

      5.King Bee/Buddy Guy

      他にはビートルズの”I Got The Feeling”などもやっているのですが、やはり選曲におけるアルバムの統一感があまり感じられない。
      ギターの音色やアルバムのサウンドの志向はもう聞く人の好き好きです。

      上から目線で申し訳ないが、86歳にしては歌もすごく歌えているし、ギターも弾けている。ツアーからはもう引退すると言ってますがまだやれると思います。今日はちょっと辛口なまた日本にも来て欲しいですし、誰かいいプロデューサーがついてもっといいアルバムも期待しています。