2023.01.20 ON AIR

現役ブルーズン・ソウルシンガー、スタン・モズレーの新譜がいい!

No Soul, No Blues / Stan Mosley

ON AIR LIST
1.I’m Back To Collect/Stan Mosley
2.Blues Man (No Soul, No Blues)/Stan Mosley
3.I Can’t Get Next To You/Stan Mosley
4.Losing Hand/Stan Mosley

    先週はバディ・ガイのニューアルバムを聞きました。86才という高齢とは思えないパワフルなアルバムでしたが、やはり予想通りギター弾きまくりでブルーズのアルバム・・・というよりブルーズロックのアルバムだと僕は思いました。レジェンド・ブルーズマンの新譜ということで期待したバディのアルバムでしたが、歌が中心にないところがどうも諸手を挙げて勧められない気持ちです。
    いつも言ってることですが、新しいブルーズのアルバムを紹介したいのに歌がいいアルバムがなかなかリリースされないというのが昨今の状況ですが、今日は久々に自信を持ってお勧めできるブルーズの新譜というよりブルーズン・ソウルの新譜です。ブルーズン・ソウルというのはブルーズ・アンド・ソウルのことで、ブルーズとソウルのテイストが両方ある歌のことで”The Blues Is Alright”を歌ったリトル・ミルトン、”Who’s Makin Love”を歌ったジョニー・テイラーなどつまりギターではなく歌が中心のタイプのシンガーです。
    今日紹介する現役のブルーズン・ソウル・シンガーはスタン・モズレー。
    1952年生まれなので僕より年下ですね。現在はテキサス、ヒューストンに住んでいるそうですが彼の音楽の礎は生まれ故郷のシカゴで築かれ、ずっとシカゴのあるイリノイ州あたりで活動していました。
    まずは一曲、アルバムの最初の曲です。


    1.I’m Back To Collect/Stan Mosley
    骨太なシンガーということが今の一曲でわかりますが、僕は最初に聞いた時ウィルソン・ピケットやボビー・ウーマックといったソウル系のシンガーを思い出しました。
    今回のアルバムにスタンの先輩であるリトル・ミルトンのコメントが載っているんですが、「スタン・モズレーは偉大なブルーズの声の持ち主だ」と書かれているようにギミックのない、ストレートな強い声を持っていることがわかります。
    本人のライヴ映像をYouTubeで見てみるとブルーズよりもソウルのレパートリーが多いのですが、次の自作のオリジナルではもちろんオレはソウルマンであるけどブルーズマンでもあると歌ってます。
    スタンはインタビューでも「ブルーズとソウルはいとこ同志なんだ」と語っているように、ブルーズとソウルとゴスペルは背中合わせにある音楽でソウルの中にはブルーズとゴスペルの要素がたくさんあるのでジャンルの線引きをするのは難しいです。
    そんなことを歌った次の曲はサブタイトルに「ソウルのないブルーズはブルーズではない」とついています。
    のっけから強烈なシャウトで始まります。俺の名前はスタンでソウルマンだ。でも今夜はお前と一緒にブルーズを歌うよ・・と。

      2.Blues Man (No Soul, No Blues)/Stan Mosley
      今回このアルバムがいい仕上がりになったのはバックの録音ミュージシャンたちのクオリティの高さもあったからだと思う。かってテキサスのブルーズバンド「ファビュラス・サンダーバード」のメンバーだったギターのジョニー・モーラーはじめテキサスのブルーズ&ソウルをよく知ったメンバーというのも良かったのだと思います。
      そしてカバーだけでなく今の曲のようなオリジナルが4曲入っているのも意欲的でいいですね。
      次の曲は1969年にソウルのコーラスグループ。テンプテーションズがオリジナルを歌ってチャート一位になり、アル・グリーンのカバーでも有名な曲です。これもいい感じでアレンジされていて16ビートのアップ・テンポから途中でオリジナルのミディアム・シャッフルへリズムが変わるところなども聞きどころです。


      3.I Can’t Get Next To You/Stan Mosley
      自分は何でもできるけど君を自分のものにできない・・という歌。

      シカゴで歌い始めたスタンはブルーズはもちろんブルーズン・ソウルの先輩リトル・ミルトンやシカゴ・ソウルのタイロン・ディヴィスの影響も受けてます。そのリスペクトするリトル・ミルトンが歌った曲を豪速球でスタンが歌ってます。「ホレたおまえのためにいろいろやってみたけどもうどうすることもできへん」


      4.Losing Hand/Stan Mosley
      やっぱりストレートにこのくらい歌われると気持ちいいです。
      スタンは2000年前後に南部の黒人音楽レーベルとして有名なマラコ・レコードから三枚アルバムを出していましたが、これと言ったヒットはなく僕も名前は知ってましたがアルバムを買って聴くというところまではしませんでした。
      でも、これは久々に気持ちのいいブルーズ&ソウルのニュー・アルバムです。スタン・モズレーお薦めです。

      欲を言えばいいバラードの曲がひとつ欲しかったですね。スタン・モズレーをYou Tubeで検索するとボビー・ウーマックの”Harry Hippie”などバラード系もステージで歌っています。そして、とにかく日本で火をつけるには地方も含めて日本でいくつかライヴツアーをやらないと人気が出るところまではいかないので来日して欲しいです。