2023.03.31 ON AIR

追悼:スペンサー・ウィギンス vol.1

Spencer Wiggins/Soul City U.S.A.(Goldwax Records/Vivid Records)

ON AIR LIST
1.Take Me Just As I Am/Spencer Wiggins
2.The Kind Of Woman That’s Got No Heart/Spencer Wiggins
3.Soul City U.S.A./Spencer Wiggins
4.Up Tight Good Woman/Spencer Wiggins
5.I Never Loved a Man the Way I Love You/Spencer Wiggins

“The Soul Singer’s Soul Singer”つまり「ソウルシンガーの中のソウルシンガー」と呼ばれた偉大なサザン・ソウル・シンガー、スペンサー・ウィギンスが2月13日に81歳で亡くなった。60年代から70年代にかけてゴールド・ワックスとかフェイムといった南部のレーベルに名曲を残したスペンサー・ウィギンスを知ったのは70年代中頃。私の中ではO.V.ライトと同じくらい好きなソウル・シンガーです。それで今日から三回にわたってウィギンスの歌の足跡を辿ってみようと思います。
スペンサー・ウィギンスは1942年にメンフィスに生まれ、子供の頃から母親がクワイアに参加していた教会で歌い始めてます。ボビー・ブランドは近所の仲間だったそうだ。高校に入ったときにはアース・ウインド&ファイアのモーリス・ホワイト、スタックスレコードの重鎮となるMG’sのブッカー.T.ジョーンズ、ハイ・レコードのシンガー&ソングライターのドン・ブライアント、そしてゴールド・ワックスのレーベルメイトとなるシンガーのジェイムズ・カーが同級生だったと言うから目が回りそうです。
60年代のソウル・ミュージックの隆盛の中てスペンサーが育ったメンフィスには「スタックス・レコード」という大看板のレコード会社がありましたが、スタックスはニューヨークの有名な「アトランティックレコード」と提携していたこともあって曲がヒットすると全米に名前が知れ渡ることになりました。もうひとつのメンフィスにはアル・グリーンなどを擁した有名なソウルレーベル「ハイ・レコード」がありました。しかしスペンサー・ウィギンスは優れたシンガーであるにも関わらずそういうメジャーな路線に乗ることができず全米では有名になることはできませんでした。自分の看板になるようなヒットが出せなかったことも原因の一つでした。
しかし、70年代の終わりに向けて日本ではジワジワと盛り上がっていくサザン・ソウル・ブームの中、1977年に日本のヴィヴィッド・サウンドから彼のアルバムがリリースされました。アルバム・タイトルは”Soul City USA”。そのアルバムタイトルはなんだか軽い感じがしたのですが、レコードのA面の一曲目はこんな曲ではじまりました。

1.Take Me Just As I Am/Spencer Wiggins

Take Me Just As I Am「ありのままの僕を受け入れてくれ」という歌詞から始まる最初のTake Meがとても衝撃的で、そのあとに続くゴスペルで鍛えられたであろう力強く、よく伸びるしなやかな歌声。この一曲だけで私はスペンサー・ウィギンスの歌の世界に引き込まれました。
曲を作ったのは少し前にこの番組で特集したダン・ペンとスプーナー・オーダム。「ポケットに溢れるようなお金も持ってないし、運転しているのは変な古い車だし、君のような素敵な女性から付き合いを申し込まれたこともない。でも僕の心を受け取ってくれないか、君の愛が必要なんだ」
私のようにうだつの上がらない男の気持ちを代弁するかのようなこの歌に胸が締め付けられた20代後半でした。
次の歌も報われない愛を歌っています。
「君に愛も心も捧げたけれど君はそれを拒み引き裂いた。君は心ない類の女だ」

2.The Kind Of Woman That’s Got No Heart/Spencer Wiggins

スペンサー・ウィギンスはこういうリズムのある歌もグルーヴ感やスピード感を持って歌えるシンガーで、次の歌などはウィルソン・ピケットが歌いそうなジャンプ・ナンバーです。でも、決してピケットにも負けない素晴らしくスピード感とキレのある歌を歌ってます。
アルバム・タイトル曲です。いろんなアメリカの地名とソウル・シンガーの名前が出てきて大ヒットしたアーサー・コンレーの”Sweet Soul Music”を思い出させる曲です。

3.Soul City U.S.A./Spencer Wiggins

他愛ないダンス・ナンバーですが、それでもウイギンスの歌唱の素晴らしさが出てます。
もう少し彼がキャッチーでオリジナリティのあるダンス・ナンバーに巡り合っていたらウィルソン・ピケットやオーティス・レディングばりのスターになっていたと思います。
次は彼のレパートリーの中でまあまあ売れた曲です。
「まっすぐなちゃんとした女にそばいて欲しいんだ」と歌っています。この曲もダン・ペンとスプーナー・オーダム

4.Up Tight Good Woman/Spencer Wiggins

アレサ・フランクリンのアトランティック・レコードからのデビュー曲で大ヒットした” Never Loved a Woman the Way I Love You”をウイギンスがカバーしていて、これはやはりどんな風に歌っているのか聞いてみたいですよね。

5.I Never Loved a Woman the Way I Love You/Spencer Wiggins

どうでしたか。やはりすごく歌の力があるシンガーだと思います。今日聴いてもらったこのゴールド・ワックス・レコードのシングルをまとめたアルバム”Soul City U.S.A.”はほとんど入手できない状況なので是非来週も聴いてください。まだまだ聴いてもらいたいスペンサー・ウィギンスの曲があるので来週も彼の特集をします。