2023.03.24 ON AIR

実力があったのにブレイクしなかったブルース・アンド・ソウルマン、アルバート・ワシントン

Albert Washington / Blues & Soul Man

ON AIR LIST
1.Jealous Woman/Albert Washington
2.Turn on the Bright Lights/Albert Washington
3.He’s Got the Whole World in His Hands/Albert Washington
4.Hold Me Baby/Albert Washington
5.Love Is a Wonderful Thing/Albert Washington

実力があるのに売れなかったミュージシャン、シンガーは音楽の世界にたくさんいるのですが、今回聴いてもらうブルース、R&Bシンガー、アルバート・ワシントンももっと売れて有名になってもおかしくない人でした。
それでもアルバムは3枚、シングルは20枚ほど出して地元のオハイオ州シンシナティあたりのクラブでは名の知れたシンガーでした。
どんな人だったのかちょっと振り返ってみると、アルバート・ワシントンは1937年ジョージ州ロームという町で生まれています。お母さんがとても信心深い人でゴスペルは神様の音楽だけどブルーズやR&Bは”Devil’s Music”つまり「悪魔の音楽」と呼んで息子のアルバートがそういう音楽を聴くのも嫌っていました。その影響で彼の最初の音楽キャリアはゴスペル・グループへの参加でした。でも、このゴスペル時代に彼は鍛えられて力強いハイ・テナーの歌声を自分のものにしたと思います。ゴスペルを歌いながらも世の中で流行っているサム・クックやB.B.キングが好きでギターも覚えたのですが、結局ブルーズ、R&Bの世界の飛び込むのはお母さんが亡くなってからでした。お母さんを悲しませたくなかったのですかね。
1962年に25歳でシングル・デビューするのですが、今回聴いてもらうシングルを集めたコンピレーション盤には67年からの録音しか収録されていません。
アルバート・ワシントンはブルーズからR&Bやファンクっぽい曲、ゴスペルも歌ってるのですが次のようなロックンロール、ロカビリー的な曲も録音してます。
ギターもワシントン本人が弾いているのですが、リズムギターだけでも印象に残ります。1967年アバート・ワシントン30歳です

1.Jealous Woman/Albert Washington

なかなかハイテンションな歌とダンサブルなリズムの曲でライヴでやればウケただろうと思います。
ギターは5歳のときに叔父さんが弾いているのを見て弾きたいと思ったらしいですが、家が貧しかったせいもありギターが買えずに自分でガソリンの缶をボディにしてゴムを弦に見立てて自分なりのギターを作ったりしています。多分ギターとしてはものにならなかったと思いますが。その子供の頃からブルーズマンのブラインド・ボーイ・フラーが好きだったらしいですからやっぱりギター弾いてブルーズを歌いたかったのでしょう。
次はアルバート・ワシントンを代表するブルーズで彼の歌もいいのですが、サポートしているロニー・マックのギターもアグレッシヴで曲のテンションを上げています。

2.Turn on the Bright Lights/Albert Washington

アルバム・タイトルもBlues & Soul Manでブルーズもいいのですが、しかし「三つ子の魂百まで」でしようか、幼いころから歌ってきた次のようなゴスペル、スピリチュアルズに彼の歌の良さが表れていると思います。
“He’s Got the Whole World in His Hands”という曲でHeつまり神様の手の中に全て世界はある。そして吹く風や降る雨も神様の手の中にある。あなたも私も神様の手の中にあるのだ。つまりすべては神様の心のままに・・というトラッドなゴスペル曲です。

3.He’s Got the Whole World In His Hands/Albert Washington

アルバート・ワシントンは16歳のときにゴスペレアーズというゴスペルグループに参加して録音したのが最初でそのあと自分のゴスペルグループ「ザ・ワシントン・シンガーズ」を結成してますから、やはりゴスペルが一番大きなルーツだったんですね。
次の曲は知っている方も多いと思いますが、ソウル・ファンク・グルーブの「アイズレー・ブラザーズ」の”It’s Your Thing”をほとんどそのまま取ってますね。これ大丈夫かと思うくらいですが・・・。
多分ブルーズやR&BにR&Rっぽいものも録音してみたけどなかなかヒットも出ないまま60年代の終わりになって、まあこういうファンク路線もやってみたということなんでしょう。
やたらロニー・マックが弾きまくっている曲です。

4.Hold Me Baby/Albert Washington

なかなか売れなかったんですが、シングルをコンスタントにリリースできたと言うことは売れる可能性をレコード会社の人たちもあると思っていたと思います。最後にとても彼らしい曲を聴いてください。

5.Love Is a Wonderful Thing/Albert Washington

素晴らしい歌が歌えるシンガーなんですが、全米に知られるような大きなヒットには恵まれなかったアルバート・ワシントン。
大きくは売れなかったけれど彼はずっと自分で曲を書き、自宅で録音も続けてました。地元のシンシナティで教会でも歌い、ずっとライヴ活動を続けブルースのフェスティバルをやり慈善活動もしていました。1998年に61歳で亡くなりました。彼の口癖は”No Sinner Here”「ここには罪人はいない」だったそうです。いい人だったのだと思います。