2023.05.12 ON AIR

追悼:鮎川誠 vol.2

ON AIR LIST
1.BE-BOP-A-LULA/鮎川誠
2.RIDE YOUR PONY/鮎川誠
3.RUMBLE/鮎川誠
4.I’M A KING BEE/鮎川誠
5.BE MY BABY/鮎川誠

今年の1月29日に膵臓癌のために74歳で亡くなった僕の数少ない友人の一人であった鮎川誠、マコちゃんの追悼の二回目です。
最後に会ったのは去年の春の日比谷野音の「ブルース・カーニバル」でした。すでにその時に病になっていたことも知らず、僕はいつもと変わらない挨拶を彼にしました。
マコちゃんもいつものように「ホトケ、元気?」と言ってお互いに近況報告を交わしました。
「少し痩せた?」と聞いたら「もうね、年やけんね」とマコちゃんは言って「まあ、俺も筋肉がどんどん落ちるしね。マメに運動なんかするタイプやなしね、お互い・・」と言って笑いあったのですが・・・。でも、それからもロケッツは変わらずライヴを続けていたので僕は元気なんだろうと思ってました。でも、病が進行してたんですね。それでも去年は40本もライヴをやったそうです。最後までライヴの現役のロッカーとして貫いた姿勢は本当に立派です。
マコちゃんはサンハウス、シーナ&ロケッツ、そして自分名義のソロ・アルバムと多くの音源を残しましたが、その中でも僕は1993年に録音された”Makoto Ayukawa London Session#1”が好きです。
これは93年にマコちゃんがロンドンに行って盟友のウィルコ・ジョンソンのバンドと録音したアルバムで、オリジナルも収録されていますがブルーズやR&Bのカバーが主体でマコちゃんがどういうブルーズやR&Bを好きだったのかよくわかる一枚です。
まずはウィルコ・ジョンソンのことを少し。
ウィルコ・ジョンソンは1947年生まれですからマコちゃんより一つ上ですが、まあ同世代です。イギリスのロック・ミュージシャンでいわゆる「パブロック」と呼ばれるパブでやっているロックのボスのような存在でした。
70年代半ばにドクター・フィールグッドのメンバーとして活躍し、ピックを使わずバッキングギターとソロを同時に弾くようなギタースタイルで、ステージをロボットのように前後したり開脚ジャンプするなどのワイルドなアクションでも評判になりました。
ウィルコ・ジョンソンとマコちゃんが意気投合したのはすごくよくわかります。すごく似た音楽テイストを持った二人です。それでウィルコのいるロンドンにマコちゃんが乗り込んで作ったアルバムが今日聴く「ロンドンセッション#1」

一曲目は1956年にジーン・ヴィンセントというロカビリー・シンガーによってリリースされた曲でビートルズのポールやジョンがカバーしたことでも有名。マコちゃんも多分中高校生くらいの時に影響を受けた曲だと思います。
アルバム「ロンドンセッション#1」の一曲目です。

1.BE-BOP-A-LULA/鮎川誠

マコちゃんは本当にウィルコ・ジョンソンと仲が良くて、この録音セッションの音を聞いていても本当に目指している音楽のセンスが一緒なので全く違和感がないです。
二人ともブルーズとR&Rがルーツでそこにパブロックとパンク・ロックのテイストがある感じです。
次の曲はニューオリンズの偉大なシンガー、リー・ドーシーの大ヒット曲で、ちょっと意外な選曲にも思えたのですが、聞いてみるとなるほどと納得の鮎川誠ロックの仕上がりになっています。

2.RIDE YOUR PONY/鮎川誠

僕にコンピューターの楽しさを教えてくれたのはマコちゃんでしたが、彼も僕もコンピューターで音楽を作るミュージシャンではありません。ただコンピューターのネットを通して世界中の音楽が聴けることや、映像が見れること、そして自分と同じ音楽テイストの人と繋がれることをマコちゃんは教えてくれました。
「おもちゃみたいなもんやけど、いろんな情報が手に入るから楽しいよ」とマコちゃんはPCに夢中になっていました。
僕の知らない音楽も教えてもらいました。ジョージ・サラグッドやドクター・フィールグッドも次のリンク・レイもマコちゃんに教えてもらった。リンク・レイは60年代半ばから2000年まで長く活躍したギタリストで、ギターのイントルメンタル曲でギターという楽器の可能性を広げた人です。フーのピート・タウンゼント他、ジェフ・ベック、マーク・ボランなども影響を受けた偉大なギタリストです。
1958年にリリースされたリンク・レイの代表曲です。

3.RUMBLE/鮎川誠

この「ランブル」を聞いたときもマコちゃんと同じセンスを感じました。

マコちゃんも僕と同じで次の曲はローリング・ストーンズのカバーで最初に聞いていたと思う。ルイジアナの偉大なブルーズマン、スリム・ハーポがオリジナルだけどストーンズの1stアルバムに入っていて僕も中学生の頃、好きで良く聞いてました。まだ黒人ブルーズなんか知らなくて全て白人のロック・ミュージシャン経由で聞いてました。それがカバーかオリジナルかという認識もなくてただストーンズのかっこいい曲として聞いてました。

4.I’M A KING BEE/鮎川誠

次はシーナがヴォーカルをしています。ロネッツの大ヒット曲で、この曲は何度かシーナと一緒に歌ったことがあるぼくにとっても思い出の曲でもあります。
こういうスウィートでポップな曲がシーナは本当にうまかった。

5.BE MY BABY/鮎川誠&シーナ

一度誰かのパーティにマコちゃんとシーナとぼくの3人で行って、途中でチークダンスの曲が流れてシーナとマコちゃんは踊るのかな・・と思っていたら、シーナが僕に「ホトケ、踊ろうよ」と言ってきたので「いや、マコちゃんと踊りなよ」と言ったら「マコはこういうチークダンスとか踊らんうか踊れないから・・」と言われてシーナとチークダンス踊ったんですが、僕はもうずっとマコちゃんの視線が気になって気になって・・体も離して踊りました。いい思い出です。
シーナのところへ行ってしまったマコちゃんには言い尽くせないほど世話になり、精神的な支えにもなってもらいました。もう一緒にセッションできないのは本当に残念で寂しいかぎりです。
今回と前回、亡くなったぼくの盟友、鮎川誠、マコちゃんの追悼ON AIRをお送りしました。
また空の上でいつか会えるでしょう、マコちゃん。ありがとう!Hey!Hey! Mr.Rokket is Alright