2023.05.19 ON AIR

タジ・マハールの新譜はオールド・ジャズ・アルバム

Savoy / Taj Mahal (BSMF Records)

ON AIR LIST
1.Stompin’ At Savoy/Taj Mahal
2.Gee Baby Ain’t I Good To You/Taj Mahal
3.Sweet Georgia Brown/Taj Mahal
4.Baby It’s Cold Outside /Taj Mahal (with Maria Muldaur)

タジ・マハールは以前もON AIRしたことがあるのですが、今回”Savoy”というジャズヴォーカル・アルバムを新しくリリースしましたので今日はそれを聞いてみようと思います。ざっとタジ・マハールの略歴を言いますと本名がヘンリー・セントクレア・フレデリックスという立派な名前があります。1942年生まれですから現在80歳。ニューヨーク出身。お父さんがジャマイカ出身でジャズ・ピアニストで作曲家でアレンジャー、お母さんは学校の先生でゴスペルを歌っていたという音楽一家に生まれています。そういう環境なので幼い頃からいろんな楽器を覚えてブルーズやR&Rが好きでやっていたようです。大学に入って農業を専攻していましたが、その頃から音楽活動を始めてます。
お父さんがジャズ・ミュージシャンだったということは家の中でジャズがよく流れていたわけで、「三つ子の魂百まで」やないですが今度のジヤズ・カバー・アルバムに繋がったのですかね。
まず一曲

1.Stompin’ At Savoy/Taj Mahal

今の曲のStompin’ At Savoyは日本のタイトルでは「サヴォイでストンプ」なのですが、サヴォイというのは1920年代半ばから50年代半ばにかけてニューヨークのハーレムにあったすごく大きなダンスホールで、大きな特徴は白人でも黒人でも入れたことです。ジャズのデューク・エリントンやキャブ・キャロウェイのオーケストラがハウスバンドとなり有名になったダンスホールです。ストンプというのはダンスやビートの呼び名です。サヴォイはロマンスが生まれるところで、みんなが楽しく踊るところ・・という歌詞。
タジはニューヨーク生まれてですからサヴォイのことはよく知っていたでしようね。
次の曲はジャズ・シンガーもブルーズマンも歌う曲でT.ボーン・ウォーカーも歌っていますが、彼女にいろいろプレゼントするのだけど振り向いてくれない彼女に「オレじゃダメかな」とため息ついているような歌です。

2.GEE BABY, AIN’T I GOOD TO YOU/Taj Mahal

さっきの略歴の続きですが、タジ・マハールは64年ロサンゼルスに移住してライ・クーダーと知り合い「ライジング・サンズ」というバンドを結成し、66年コロンビアレコードからデビューしてシングル一枚出しただけで、アルバムを作っていたのにリリースされなくてバンドは解散に追い込まれました。その後ソロになりギタリストのジェシ・エド・デイヴィスとバンド作り68年に名盤『Taj Mahal』をリリース。
その後もブルースだけでなく、レゲエ、ケイジャン、ゴスペル、ハワイ、カリブ、アフリカなどに関連したルーツ・ミュージック・アルバムをリリースして3回グラミーを獲得しています。ジャズ・ヴォーカル・アルバムをリリースしたのは今回が初めてだと思います。
次も1925年と古い曲ですが、男たちはみんな夢中になり女たちは嫉妬してしまう美しい女性ジョージア・ブラウンのことを歌った歌。大御所のエラ・フィッツジエラルド、アニタ・オデイ、インストだとオスカー・ピーターソンからカウント・ベイシーなどたくさんのジャズ・ミュージシャンに取り上げられた曲です。

3.Sweet Georgia Brown/Taj Mahal

今回のアルバムにはジャズのデューク・エリントンが作った”I’m Just a Lucky So-and-So”、ジョージ・ガーシュウィンが作った”Summer Time”など名曲がずらっと並んでますが次の曲はタジとマリア・マルダーのデュエット。これも古くからある男女デュエットの曲で、エラ・フィッツジェラルドとルイ・ジョーダン、レイ・チャールズとベティ・カーター、比較的新しいところではウィリー・ネルソンとノラ・ジョーンズなどがあります。
付き合っている男女が男の家にいて女性の方が遅くなったから帰らなきゃというのを「外は寒いよ」からこのままここに居なよと引き止めている歌です。女性の方もそんなに帰りたくはないのですが、周りがうるさいから帰らなきゃと言ってるだけみたいです。まあ女性の方も引き止めて欲しい。でも、一応「私は帰るって言うたからね」と。

4.BABY IT’S COLD OUTSIDE/Taj Mahal (with Maria Muldaur)

アルバムの所々で印象に残るのですが、この素晴らしいギターはジャズ・ブルーズ系のギタリストでダニー・キャロン。
そしてアルバムのプロデューサーでもありピアノも担当しているジョン・サイモンはザ・バンドのファースト・アルバムはじめ、ジャニス・ジョップリン、サイモン&ガーファンケル、ボビー・チャールズのアルバムをプロデュースした名うてのプロデューサーです。
今回のこういうアメリカのオールド・ジャズの歌はメロディもよくできているけど歌詞もよく練られています。アメリカのシンガーはやはり一生に一枚はこういう子供の頃から慣れ親しんだジャズ・スタンダードのアルバムを作りたいんでしょうね。
タジ・マハールのニューアルバム「サヴォイ」とてもいいアルバムでした。4/28に日本のBSMFレコードから発売されています。