2023.09.15 ON AIR

数々の名盤にコーラスとして参加したクラウディ・キングのソロ・アルバム

Direct Me / Clydie King (BSMF Records)

ON AIR LIST
1.Bout Love/Clydie King
2.Direct Me/Clydie King
3.You Can’t Go On Without Love/Clydie King
4.The Long And Winding Road/Clydie King

今日はクラウディ・キングの1972年リリースのソロ・デビュー・アルバム”Direct Me”が日本のBSMFレコードから再発されたので聞いてみようと思います。
クラウディ・キングという名前をどこかで見かけたような、聞いたような・・・すぐに思い出せなかったので調べて観ました。
女性ソウル・シンガー、クラウディ・キングは1943年にテキサスのダラスで生まれています。幼い頃は多くの黒人シンガーと同じように教会で歌っていたのですが、50年代にロスに移り住んでからフレアズとかロビンズというデュワップ・コーラスで活躍していた歌手でありソングライターでもあるリチャード・ベリーという人に見出され、リトル・クラウディ&ザ・ティーンズというグループを作って活動を始めます。
でもあまり売れなかったのか、50年代終わりからバック・コーラスの仕事やスタジオワークを始めます。
それでも何度もシングルをいろんなレーベルからリリースしている形跡を見るとやはりソロ・シンガーとして有名になりたかったのでしょう。そして、確かにその実力もあったシンガーです。
71年にやっとシングルでリリースされ、R&Bチャート45位になった”Bout Love”が評判になり翌72年に今日聞いてもらうデビュー・アルバム”Direct Me”のリリースとなります。このあたりがソロ・シンガーとして這い上がる一番のチャンスだったも知れません。
ではまずその71年にシングル・リリースされた”Bout Love”

1.Bout Love/Clydie King

R&Bチャート45位ですから大ヒットというわけでもないけれどまあ次のシングル・リリースには繋がるランクでしょう。確かに彼女はその後もスペシャルティ・レコード、キング・レコードからもシングルを出しますがヒットには至りません。
そして、それ以前1965年から68年までレイ・チャールズのバックコーラス「ザ・レイレッツ」のメンバーとして活動してそのあたりからバック・コーラスが上手いという評判が上がり、ロックのハンブル・パイのバックコーラスや、有名プロデューサー、フィル・スペクターのスタジオワークなどコーラス・シンガーへと転身していきます。まあ、ソロで売れなかったから生活するためにもそれは仕方のなかったことだったのでしょう。
では今日のこのアルバムのタイトル曲を聞いてみましょう。

2.Direct Me/Clydie King

コーラス・シンガーとしては評判が高くハンブル・パイ、レナード・スキナード、B.B.キング(インディノアラ・ミシシピのハミング・バードに参加)、ボブ・ディラン、ジョー・コッカー、リンダ・ロンシュタットなど有名ミュージシャンの録音にたくさん参加するようになっていきます。
1970年ジェシ・デイヴィスのアルバム「ジェシ・デイヴィス」72年のローリング・ストーンズの「メインストリートのならず者」の”Tumblin’ Dise”などにもコーラスで参加。恐らく僕がなんとなくクラウディ・キングという名前を覚えていたのはジェシ・デイヴィスやストーンズのアルバムのクレジットを見ていたからでしょう。
コーラスとして信頼され多くのレコーディングに呼ばれるのはもちろん嬉しかったと思いますが、やはりソロ・シンガーとして売れたいという気持ちは重々あったと思います。そのあたりの葛藤はどうだったんでしょうね。
今のファンク・テイストも入った曲なんか売れそうな感じもあるのですが。
スローの曲を聴いてみましょう

3.You Can’t Go On Without Love/Clydie King

ちなみに今日聞いてもらっているアルバム”Direct Me”はキーボードにビリー・プレストン、ギターにデイヴッド・T・ウォーカーなど腕利きのミュージシャンが参加しています。アルバムとしては決して悪くはないし、彼女の歌もいいのですが、やはりこれという決定打になる曲がないんですよね。

74年にも”Brown Sugar”というアルバムもリリースしているのですが、ヒットには恵まれませんでした。

ボブ・ディランのコーラスはかなり長くやっていたようで、1998年に当時のボブ・ディランのガールフレンドだったスーザン・ロスはディランはクラウディ・キングと極秘に結婚していてこどもも二人いたと語って言いますが、真相はどうだったんでしょう。彼女はディランとのことは別にしても三回結婚しています。
2019年に血液感染の合併症で76才でクラウディは亡くなったのですがその時、ディランは「彼女は私の最高の歌のパートナーであり、誰もそこには近づけなかったし、私たち二人はソウル・メイトでした」とコメントしてますが、ソウル・メイト(ソウルの同志)・・微妙な表現ですがまあ大人の関係というところでしようか。
彼女の一生もまた次の歌のように長く曲がりくねった道だったのでしょうか。ビートルズのカバーですがなんとも言えない魅力のある歌です。

4.The Long And Winding Road/Clydie King

歌いすぎないしフェイクもあまりしないとてもストレートな歌で僕はすごく好きです。
本当に曲にさえ恵まれればブレイクした優れた歌手だと思います。
今日のこのアルバム”Direct Me”は日本のBSMFレコードから8/18に発売されています。多分あまり再発とかされないシンガーだと思うので気になった方はぜひこの機会にゲットしてください。
今日はソロ・シンガーとしては有名ではなかったのですが、コーラス・シンガーとして多くの録音とライヴに参加したクラウディ・キングを聞きました。
Hey,Hey,The Blues Is Alright