スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集 第三回
Johnnie Taylor vol.2
ブルーズ&ソウル・シンガーとして黒人同胞に向かって歌い続けたジョニー・テイラー

ON AIR LIST
1.This Is Your Night/Johnnie Taylor
2.Lady, My Whole World Is You/Johnnie Taylor
3.Still Called The Blues/Johnnie Taylor
4.Crazy Over You/Johnnie Taylor
ジョニー・テイラーは1976年に当時のディスコ・ブームに乗って”Disco Lady”というメガヒットを出したのですが、基本はブルーズンソウル・シンガーですからディスコのブームが終わっても揺るがないものを持っていました。1984年には南部の「マラコ・レコード」と契約してブルーズンソウル・シンガーとしての本来の姿を再び見せてくれました。そのマラコ移籍第一弾のアルバム”This Is Your Night”からタイトル曲。不倫ソングから立ち位置を変えて黒人中年女性の心に寄り添う曲を歌い始めます。
1.This Is Your Night/Johnnie Taylor
「今夜スポットライトを浴びるのは君だよ。子供達はベビーシッターに任せておしゃれをして出かけよう。今夜は君のための夜だよ」と優しく語りかけるようなジョニー・テイラーの歌声に家庭を守り子育てをする黒人女性たちはうっとりしたことでしょう。オシャレな曲なんですが、どこかダウンホームな親しみやすさがある絶妙なさじ加減の曲は南部の名ソングライター、ジョージ・ジャクソンが書きました。
先週聴いた60年代の”Who’s Making’ Love”や”Jody’s Got Your Girl And Gone”あるいは”Part Time Love”のような不倫ソングからこういう中年女性の心に沁みる曲をジョニー・テイラーは歌い始めました。
ライヴには黒人中年女性がノリノリで時にうっとりした眼差しでステージのジョニー・テイラーを見つめ、そこ彼は次の曲のように「レイディ、私の世界の全ては君なんだよ」というとろけるようなラブ・バラードを歌います。ライヴ映像を見てるともちろんMy Whole World Is YouのYouで客席の女性を指差します。最高です。
2.Lady, My Whole World Is You/Johnnie Taylor
こう言うバラードを歌いながらもやはり、自分でブルーズン・ソウル・シンガーのブルーズは意識してたのかライヴではスタックス時代のブルーズの曲も結構歌っていました。
次の曲は”This Is Your Night”に収録された新しく作られたブルーズの曲でこれもライヴでよく歌っていました。タイトルは「ブルーズはまだあるんやで」
「お金があってもなんか問題はある。それを医者に行って解決しようとする。とにかくブルーズと呼ばれるものはまだあるんや。小さな子供には新しい靴、嫁はんには新しい服がいるやろ。とうちゃんはできる限り頑張っている。ほんでもな、ブルーズはまだあんねん。何をしても何を言うても気持ちが落ち込むこともある。悩みがもうすぐ終わると思たらまた始まって最初からやり直しや。土曜日はパーティで楽しくやって、日曜は教会へ行く。ほんで月曜はまたつまらん仕事や。どう考えてもまだブルーズはあるねん」最後の土曜は遊んで日曜は教会へ行って月曜は仕事や・・の歌詞は有名な「ストーミー・マンデー・ブルーズ」のに由来してる歌詞です。
3.Still Called The Blues/Johnnie Taylor
今回特集しているジョニー・テイラー、そして来週紹介するジュニア・バーカーと言った人たちはブルーズも歌うし、ソウルも歌う、時にジャズ・スタンダードも歌います。彼らはシンガーとして並外れた才能があるのでどんな曲でも歌えるわけです。例えばシカゴ・ブルーズの二大巨頭、マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフがジャズ・スタンダードもやソウルを歌ってもいいアルバムにはならないだろうとみなさん思うでしょう。B.B.キングも結構いろんなタイプの曲を歌いましたが、やはりいちばん本領を発揮したのはモダン・ブルーズでした。それは原点や出発点がどこなのかということもあり、どの時代にどこで生きたのかということもありますが、やはり歌の表現の巧みさは不可欠です。
次はCrazy Over You「会った時からずっとずっとお前のこと思ってる。他の男と愛し合ってるんやないかとヤキモチも焼く。一晩中お前と話していたい。お前にずっと夢中やねん。ちょっと他の女とあったけど許してほしい。もう2度とあんなことはせえへんから。どうしょうもないねん、この気持ち。ずっとお前に夢中や」途中のちょっと浮気したことを謝ってるとこなんか面白いです。愛してると言いながらなんかやらかしてしまう・・そういう歌多いです。
4.Crazy Over You/Johnnie Taylor
こういうミディアム・テンポのゆったりグルーヴする曲もオールド・スクールのソウルならではで、ぼくは好きです。
ジョニー・テイラーのキャリアを振り返ってみると少年の頃に「ハイウェイQC’s」というゴスペルグループにいてその後サム・クックが抜けた後のソウル・スターラーズというゴスペルの名門グループに入ってます。そしてそのサム・クックが売れて自ら立ち上げた「サー・レコード」とうレーペルでデビューしサムが亡くなった後スタックス・レコードに移籍して60年代後半にヒットを出して花開いたわけです。ルーツは確固としたゴスペルとブルーズ、そこからR&Bそしてソウル、ファンクという黒人音楽の流れを体験しそれに合わせて自分の音楽を作って行ったのです。そんな中で84年にマラコ・レコード契約して自分と同じ世代の黒人中高年層向きにブルーズとソウルを終生歌い続けられたことは本人にとって幸せなことだったのでは・・・と思います。で
これ、聴かなあかんやろ・・ジョニー・テイラーでした。