スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集 第五回
Junior Parker vol.2
洗練とダウンホームの絶妙な味わいの名歌手ジュニア・パーカー

ON AIR LIST
1.Seven Days/Junior Parker
2.Stranger In My Home Town/Junior Parker
3.I Need You Love So Bad/Junior Parker
4.Look On Yonder Wall/Junior Parker
5.Way Back Home/Junior Parker
先週ON AIRしたジュニア・パーカーのデューク・レコード時代はモダン・ブルーズからアーバン・ブルーズと呼ばれ.
る時代に移行する頃でした。洗練された都会的なサウンドをバックにパーカーの歌が冴え渡っていました。
実はジュニア・パーカーは1932年に生まれ1971年に39才で亡くなっています。若いですね。脳腫瘍の手術中になくなってしまったらしいです。70年代の最初はちょうど私がブルーズにハマりかけた頃なので、もう少し生きていてくれたら彼のライヴを見ることが出来たかもしれません。聴きたかったですね、彼のパワフルだけど柔らかい歌声。
今日は先週の続きで彼のデューク・レコード時代のノリノリの曲で始めたいと思います。
1.Seven Days/Junior Parker
ジュニア・パーカーはもちろん歌すごいんですが、バックのデュークレコードのスタジオ・ミュージシャンたちがみんな上手くてすごいグルーヴです。
10年間くらい在籍したそのデューク・レコードを66年に辞めた後はいろんなレコード会社で録音を続けましたが、大きなヒットは得られませんでした。でも、与えられたサウンドの中で彼はいつもレベルの高い歌を歌い続けました。
71年に彼が亡くなった一年後1972年にアルバムがリリースされました。”I Tell Stories Sad and True, I Sing the Blues and Play Harmonica Too, It Is Very Funky”という長いアルバム・タイトルなのですが、滑らかな洗練された歌声の中にブルーズ本来のダウンホームさが残っていて、彼の吹くハーモニカも師と仰いだサニーボーイ・ウィリアムスン直系のこれもダウンホームなテイスト。パーカーのハーモニカはバックにホーン・セクションが入っていてもうまくミックスされているのでいつもなんでかな・・と思っていたのですが、彼のハーモニカ・プレイには無駄な音がなくて吹きまくらないからです。
ギターを弾かないシンガーのブルーズマンのアルバムはギターがないので興味がないというアホな方がいますが、このアルバムでギターを弾いているのは「モダン・ブルーズ・ギターの父」と呼ばれたかのT.ボーン・ウォーカーが絶賛したギター名人ウエイン・ベネットです。そのベネットのセンスのいいソロも聞ける次の曲。
2.Stranger In My Home Town/Junior Parker
ベースとドラムの作っているグルーヴが本当に気持ちよくてかっこいい。そして吹きまくるばかりがハーモニカではない。ジュニア・パーカーのハーモニカがい味出しています。
1971年ジュニア・パーカーが亡くなったその年にリリースされた“You Don’t Have To Be Black To Love The Blues”(ブルーズを愛するのに黒人である必要はない)と題されたアルバムがあります。東洋系の男の子が大きなスイカを食べようとしているジャケ写真が記憶に残るので僕らの間では「あのスイカのアルバム」と呼んでました。
このアルバムが実にいいアルバム。71年というとブルーズの時代は過ぎブラック・ミュージックの流れはニュー・ソウルと呼ばれた時代で、ダニー・ハサウェイ、ロバータ・フラックなどがデビューしマービン・ゲイやスティービー・ワンダーたちのメッセージのあるソウルが主流になっていく頃です。そんな中、ジュニア・パーカーが当時の売れっ子のスタジオ・ミュージシャンたちと残した1970年録音のブルーズ。それがこのアルバム“You Don’t Have To Be Black To Love The Blues”
ブルーズの歴史に残るブルーズ・バラードの名曲名唱。本当にステディな締まったリズムなんですが窮屈やないんですよ。何ひとつ無駄のない演奏、余計なことをしない演奏の中をジュニア・パーカーの柔らかい歌声が淡々と君のことがすごく必要なんだ。愛してるんだと歌いかけてきます。ギターのオブリガードの入り具合も絶妙。
3.I Need You Love So Bad/Junior Parker
このアルバムは当時のNYのスタジオ・ミュージシャンたちが参加してますが、クレジットがないので正確ではないかもですが、演奏を聴いてて間違いないのがドラムがバーナード・パーディ、ベースがチャック・レイニー、ギターはコーネル・デュプリー、ビリー・バトラー、エリック・ゲイルなど。だから70年初頭の最新の黒人サウンドなのです。パーカーが歌ってるのはトラッドなブルーズです。ブルーズ本来のダウンホームさもありながらめちゃ最新のアーバンなサウンドという面白いテイストになってます。
次の曲は61年のエルモア・ジェイムズはじめフレディ・キング、ジュニア・ウエルズなどたくさんのカバーがあります。
4.Look On Yonder Wall/Junior Parker
スタンダップ・シンガーの特集なのに最後はインスト曲です。というのもこの曲すごく好きだからです。作曲したのはクルセイダースのベーシスト、ウィルトン・フェルダー。タイトルはWay Back Homeですから「家に帰る途中」イントロを聴いていると夕暮れの中、家に帰っていく風景が浮かぶのですが、次第にドラムのバーナード・パーティのグルーヴが強くなって大騒ぎになり急ぎ足で家に帰ってるような感じになってますが笑えます。早く帰ってビールでも飲みたいんでしょうか・・。他のフルーズ・ハーモニカ・プレヤーにはないジュニア・パーカーの個性ある独特なハーモニカのテイストを味わってください。
5.Way Back Home/Junior Parker
このアルバム“You Don’t Have To Be Black To Love The Blues”を見つけたら絶対買い!です。子供がスイカ食べてるジャケットです。
来週は先ほど聴いてもらった珠玉のブルーズバラードI Need You Love So Badのオリジナルシンガーであり、多くの黒人シンガーに敬愛されたリトル・ウィリー・ジョンの登場です。まためちゃクチャ歌上手いシンガーです。