2024.12.20 ON AIR

クリスマス・ソングで大ヒット曲を2曲持つブルーズマン、チャールズ・ブラウンのクリスマス・アルバム

Sings Christmas Songs/Charles Brown

ON AIR LIST
1.Please Come Home For Christmas/Charles Brown
2.Merry Christmas Baby/Charles Brown
3.Christmas Blues/Charles Brown
4.Christmas In Heaven /Charles Brown

今年もクリスマスの季節になりました。この時期はウキウキする人もいるでしょうし、年末の忙しさでそんな暇もないという人も多いでしょうが、私は小さい頃からこのクリスマス・シーズンや年末は寂しい季節という印象です。子供の頃に私の家ではクリスマスやからと言ってプレゼントや特別なこともなく、ケーキを兄と分け合って食べていたくらいです。大人になってからも女性とロマンティックなクリスマスを過ごした記憶もなく、ライヴをたくさんやっていた思い出くらいです。
でもクリスマス・ソングは好きでいまもいろんなミュージシャンのクリスマス・アルバムを見つけると買ってコレクションしています。それで毎年この番組ではこの季節になるといろんなミュージシャンのクリスマス・ソングの特集をON AIRしているのですが、今年はとうとうブルーズのクリスマス・ソングの代表、チャールズ・ブラウンのクリスマス・ソング・アルバムをLPレコードでゲットしましたので今日はまるまるCharles Brown Sings Christmas Songsです。
なんとなくこのアルバムをいつも探していたので中古レコード店で見つけたときはかなり嬉しかったです。
このアルバムは1961年にリリースされているのですが、恐らくアルバム制作へのきっかけとなったのが、その前年60年に”Please Come Home For Christmas”がヒットしたからだと思います。しかもチャールズ・ブラウンには47年に”Merry Christmas Baby”というブルーズの枠を越えたクリスマスソングの大ヒットもあり「この際クリスマス・アルバムを作ってみようや。売れるんちゃうか」ということになったのでしょう・・・知らんけど。
ブルーズ界でクリスマスの大ヒット曲を持っている人はこのチャールズ・ブラウンぐらいで、しかも2曲もです。
まずはその久々のヒットとなったこの曲”Please Come Home For Christmas”(クリスマスには家に帰ってきてくれ)です。
「鐘の音が鳴り響いて喜びを告げるクリスマスやのになんでこんなブルーズやねん。クリスマスのお祝いをしてくれる彼女はおらんし友達もおらん。聖歌隊がサイレント・ナイトを歌い、キャンドルライトのそばにクリスマス・キャロル。クリスマスには帰ってきてくれへんか。もしそれが無理やったら新年の夜あたりにでも」と懇願してます。1960年リリース 。

1.Please Come Home For Christmas/Charles Brown

まあ私のような古い日本人はクリスマスソングが好きでも別にパーティやろやなんちゅうことにはなりません。昔、バブルの頃に若い男どもが一年も前から高いホテルを彼女のためにクリスマスに予約して・・いう話がよくありましたが、あんなんまだやってるヤツおるんでしょうか。そもそもクリスマスってキリストが生まれたのをお祝いするキリスト教の宗教行事ですからね。そんな聖なる夜に高いホテルで性なることをするってどうやねんいう話です。年寄りの愚痴みたいに聞こえるでしょうけどね。
ではチャールズ・ブラウンのもう一曲のクリスマス、大ヒットソング
「メリークリスマス、ベイビー、クリスマスの日に彼女はよくしてくれるねん。ダイヤモンドくれるし俺は天国にいる気分や。ラジオからもええ音楽が流れてくるしええ気分や。ヤドリギの木の下に立ってる間にお前とキスしたいなぁ。夜中の3時に煙突からサンタさんがやってきた見たこともない素敵なプレゼントを置いていってくれる。メリークリスマス。今朝はまだ酒飲んでないからクリスマスツリーのようにしっかり立ってるで」

2.Merry Christmas Baby/Charles Brown

「今朝はまだ酒飲んでないからクリスマスツリーのようにしっかり立ってるで」っていうところがブルーズ。ということはこいつはいつも朝から酒飲んでるのか・・・と。いいですね、この歌詞。
いま思い出したんですが、年末のカウントダウン・コンサートいうのもまだやってるんでしょうか。私も毎年のようにカウントダウン・コンサートに呼ばれてでていたんですが、あれ本当にイヤでした。特に年が変わる前からみんなで10,9,8,7・・ってカウントするやないですか、あれがね何が嬉しいのか楽しいのかわからないんです。アメリカみたいに隣にいる女の子にキスできるわけでもなく、みんなで秒読みするのがなんか子供っぽくて「しょーもな」と思ってました。
曲に戻りましょか。次の曲はチャールズ・ブラウンのピアノ始め参加メンバーがいかに腕の立つミュージシャンだったかよくわかる曲です。いわゆるジャズ系のミュージシャンたちですが、バックの演奏も聴いてください。

3.Christmas Blues/Charles Brown

メンバー全員が腕の立つミュージシャンです。
少しチャールズ・ブラウンの話をしますと、”Please Come Home For Christmas”と”Merry Christmas Baby”というクリスマス・ブルーズが有名なんですが、実は”Driftin’ Blues”が46年R&Bチャート2位、51年にはR&Bチャート1位になった”Black Night”というブルーズ史上に残る名作を作ったピアニスト&シンガーでブルーズ界のナット・キング・コールとも呼ばれる人です。聞いてもらっているように柔らかい歌い口でソフトなムードでありながら都会の孤独を歌ったブルーズがウエストコーストの都会に住む黒人たちにウケました。
かのレイ・チャールズはチャールズ・ブラウンのコピーからデビューしたようにピアノ・ブルーズマンの多くがチャールズ・ブラウンに憧れました。クリスマス・ソングのヒットで売れただけのポッと出のミュージシャンとは違います。

ブルースのクリスマス・ソングというのはたくさんあるんですが、やっぱり多いのはクリスマスの日に彼女がいないとか、クリスマスには戻ってきてくれよとかいう情けない内容です。次の曲はB.B.Kingのバージョンで何回かON AIRしましたが、今日はチャールズ・ブラウンで。
「君とここに一緒にいて天国にいるようなクリスマスだよ。もし、君がいなくなったら僕はどうしたらいいかわからない。クリスマスに天国にいる、君といると1年中クリスマスだよ。君がキスしてくれて、天使たちが聖夜の間歌いつづけてくれるのを聴く。雪が降って来て、やどり木があってもういい感じだね。君とここに一緒にいて天国にいるようなクリスマスだよ」

4.Christmas In Heaven /Charles Brown

ブルーズマンとして60年代にクリスマス・アルバムをリリースしたのはチャールズ・ブラウンくらいだと思います。B.B.キングは90年代になってからクリスマス・アルバムを初めてリリースしたとき「クリスマス・アルバムのリリースは私の念願だった」と書いていました。そこには私たち日本人にはわからない深い思いがあるのだと思います。