2025.08.15 ON AIR

祝50周年P-Vine Records!!! 第7回目

1981年に60年代のマジック・サムのライヴがP-Vineから二枚組LPでリリースされた衝撃

Magic Sam/Live(At Ann Arber Blues Festival,August,1969&West Side Club Recording,1963/64)/Magic Sam(P-Vine Special PLP-9031.32)

ON AIR LIST
1.Every Night About This Time/Magic Sam
2.Tore Down/Magic Sam
3.You Were Wrong/Magic Sam
4.I Just Got To Know/Magic Sam

「ブルーズのインディペンデント・レーベルとして始まり今や世界に誇るレコード・レーベルとなったP-Vineレコーズの50周年を祝して、P-Vineが今までリリースしてきたアルバムの中から私がこれは聞いてほしいと思うアルバムを紹介しているシリーズの第7回」
今日は1981年にP-Vineからリリースされ大きな反響があったアナログLP盤二枚組のマジック・サムのライヴ・アルバム。
1枚は1963年64年のシカゴ・ウエスト・サイドのアレックス・クラブでのライヴ。もう1枚は1969年アン・アーバー・ブルース・フェスティバルでのライヴ。このアン・アーバーのライヴは1970年代初期にカセット・テープで名古屋のブルーズ好きからもらったことがありました。もうダビングにダビングを重ねた音質の悪いものでしたが、演奏の内容はマジッ・サムのライヴを聴きたかったと思わせるのに充分な内容だった。それがとうとうLPでリリースされるというので当時のブルーズ好きたちはみんな心待ちにしました。
今日はもうひとつのライヴでマジック・サムの地元シカゴ・ウエスト・サイドのアレックス・クラブでのライヴを聞いてみましょう。
まずはMCの呼び込みで一曲目の演奏が始まるのですが、サムのファンだろう女性がイントロの歌を大きな声で一緒に歌っているのが聞こえます。そういう熱狂的なファンも少しずつ獲得し、そこからブルース・フェスやヨーロッパ公演にも呼ばれる上り坂のマジック・サムの数年間が始まります。このライヴはさほど大きなクラブではないでしょうが、その女性の声がクラブのいいムードを伝えています。
最初の曲はオリジナルはニューオリンズの偉大なミュージシャン、ファッツ・ドミノ
「毎晩この時間になると泣くのを我慢して寝ようとするんだ。あいつは街をフラフラと遊び回ってるんだろう。愛は金では買えないし、愛してくれる人がいないなら死んだ方がマシだ」

1.Every Night About This Time/Magic Sam

お聞きのように決して録音の状態がいいわけではないけど、60年代後半のブルーズのライヴの現場での生々しい様子とサムの生き生きとした歌とギターが存分にわかります。こういうクラブでこういうブルーズを生で聞きたかったと当時思ったものです。60年代のシカゴでサムと同世代のオーティス・ラッシュ、バディ・ガイそしてフレディ・キングが互いにしのぎを削っていた。その中で60年代初めに”Hide Away”などのヒットで早くから全国区になったのがフレディ・キングでしたが、次の曲はそのフレディ・キングの曲です。お前にメロメロやという曲です。

2.Tore Down/Magic Sam

サムとフレディは仲が良かったようです。フレディのテイクもこのサムのテイクも両方素晴らしいです。
次の曲は南部のブルーズ&ソウル・シンガー、Z.Z.ヒルの曲ですが、サムのヴァージョンは原曲よりロックしている感じがします。これも夜遊びばかりしている彼女への歌。You Were Wrongですからお前は間違ってるで。夜遊びばかりしているのはあかんよ。俺は正しいことをやろうとしてる。お前にもそうさせようとしたけどお前とは喧嘩になるばっかりや。お前はあかんよ」

3.You Were Wrong/Magic Sam

ブルーズだけでなくR&Bやファンクそしてロックのテイストも持ち合わせたサムは新しいものを感じさせる若いブルーズマンでした。なので日本でもロック・ファンの人がサムのファンになることも多いです。
次の曲はウエストコーストのブルーズ・ボス、ジミー・マクラクリンの曲ですが、マジック・サムはこういう正統派モダン・ブルーズのカバーも自分のものとして歌える実力のあるシンガーでした。
ギターも素晴らしいのですが、僕はこういう歌が胸に届いてくるマジック・サムが彼の同世代のブルーズ・シンガーより好きなところです。

4.I Just Got To Know/Magic Sam

1963年64年というとマジック・サムは26,7才くらいです。本当にエネルギー溢れる溌剌としたブルーズを一生懸命演奏しながらゲットーから抜け出て、友達のフレディ・キングのようにもっとメジャーになりたいと思っていたことでしょう。コブラレコードからデビューはしていたものの彼の名前はまだ黒人ゲットーでしか知られていないような状況でした。
結局四年後、1967年にサムはデルマーク・レコードから初ソロ・アルバム「ウエスト・サイド・ソウル」で自分のオリジナルを披露してやっとブルース・ファンに認知される存在になるのですが、その2年後に初めてヨーロッパに演奏に行ったりした後に心臓マヒで急死してしまいます。僕がブルーズという音楽にハマったときにはすでにマジック・サムは死んでいました。なのでこのライヴ二枚ぐみは彼を知るアルバムとして本当に貴重な音源でした。