2025.08.08 ON AIR

祝50周年P-Vine Records! 第6回

P-Vineがサザン・ソウルをリリース始めた1980年の名作

In Time/Bobby Powell (P-Vine PLP-712)

ON AIR LIST
1.C.C.Rider/Bobby Powell
2.In Time/Bobby Powell
3.Into My Own Thing/Bobby Powell
4.Cry To Me /Bobby Powell
5.It’s Gettin Late In The Evening/Bobby Powell

ブルーズのインディペンデント・レーベルとして始まり今や世界に誇るレコード・レーベルとなったP-Vineレコーズの50周年を祝して、P-Vineが今までリリースしてきたアルバムの中から私がこれは聞いてほしいと思うアルバムを紹介しているシリーズ。祝50周年P-Vine Records!の第6回
1978年にオーティス・クレイが来日して79年にO.V.ライト、アン・ピーブルズ、シル・ジョンソン、ドン・ブライアントと続けざまにサザン・ソウルのシンガー達の来日があり、アルバムもたくさんリリースされました。サザン・ソウルはブルーズのテイストが濃いものが多くあるので日本のブルーズ・ファンだった人たちにも受け入れられました。この70年代後半に私もかなりサザン・ソウルを聞き込みましたが、今日聴いてもらうP-Vineレコードが80年にリリースしたボビー・パウエルの”In Time”というアルバムも気に入ってよく聴いたアルバムです。
ボビー・パウエルは1941年ルイジアナ州バトン・ルージュの生まれの盲目のシンガー&ピアニストで、ゴスペルとブルーズ両方のテイストを持ち合わせていて60~70年代にかけて濃くて熱いR&B、ソウルを残した名シンガーです。
1965年にウイットというレーベルからリリースした”C.C.ライダー”という曲がヒットして知られるようになりました。この”C.C.ライダー”は19世紀の終わり頃からあり、1920年代に女性シンガーのマ・レイニーが録音したのが最初だと思います。タイトルの”C.C.ライダー”はEasy Riderが語源の元で、つまり尻の軽い奴のこと、すぐにまぐわってしまう人のことです。彼女とベッド・インまでしたのに他の男(旦那か彼氏)が帰ってきてしまって、もうええよオレは出て行くよという内容です。しかし、ブルーズを聞いているとこういう不倫みたいな、二股、三股かけてるような歌が多すぎて呆れますが、おもろいです。

1.C.C.Rider/Bobby Powell

ボビー・パウエルは同じ盲目でピアニスト、シンガーだったレイ・チャールズの影響を受けているのですが、レイが持っているジャズ的な要素はあまりないです。ピアノも録音ではレイ・チャールズほどピアノ・プレイはフィーチャーされていません。ただ歌はやはりレイと同じように強烈なゴスペルのテイストがあります。そしてレイ・チャールズが「レイレッツ」という女性コーラス・グループを付けていたようにパウエルも女性コーラスを参加させています。
僕がボビー・パウエルを好きになった決定的な曲が次のアルバム・タイトル曲の”In Time”
「君が行ってしまってから時はゆっくりと過ぎ去っていく。でも、僕はまだ君が戻ってきてくれることを願っている」切ない歌です。

2.In Time/Bobby Powell

今日聴いてもらっているボビー・パウエルは南部のウイットやジュエルといったインディーズ・レーベルに録音されたものですが、70年代にはルイジアナの有名なエクセロ・レコードからアルバムも出してます。しかし、これだけ歌の実力があっても更に大きなメジャー・レーベルに行くことはできませんでした。
次の歌は1971年の録音でファンクテイストのダンス・ナンバー。バックのゴツゴツしたグルーヴのファンク・サウンドも太くていい感じですが、やはり歌はゴスペル風味の豪速球です。同時代のリトル・ミルトンなんかもこういうテイストですね。

3.Into My Own Thing/Bobby Powell

次のいかにも南部、サザンのソウルという感じのバラードも素晴らしいです。女性R&B歌手のベティ・ハリスがオリジナルだったと思いますが、ソウルの重鎮ソロモン・バークなどたくさんのカバーがあります。
Cry To Meですから「私に泣いて」「私の胸で泣いて」ということなのでしょう。愛する人が君をひとりっきりにして、誰も電話してくれない、そんな時泣きたくないか。ここにいるオレの胸で泣いてええんやで。部屋に一人でいて彼女の香水の匂いしか残っていない時泣きたくないか。泣いてええよ。一人でワインを飲むことほど悲しいことはないやろ。孤独は時間の無駄や。ひとりで歩かんでオレの手をとって一緒に歩いてくれへんか」

4.Cry To Me /Bobby Powell

サウンドとグルーヴは完全にゴスペル・フィーリングでやっぱり歌が素晴らしい。バックやコーラスを自分の歌で引っ張っている感じがよくわかります。最後の方の盛り上がりの高揚感はやはりゴスペル。
もう一曲聞いてみましょうか。これもソロモン・バークが歌っていそうな曲ですが、これもゴスペル・ルーツの曲です。

5.It’s Gettin Late In The Evening/Bobby Powell

P-Vineレコードは1980年前後からすでにON AIRしたカーター・ブラザーズやリトル・ジョニー・テイラーそして今日のボビー・パウエルなど南部のディープなブルーズとソウルをリリースしてくれました。大手のレコード会社からは絶対に出ないというか出せない音源、実力はしっかりあるミュージシャンの音源リリースはP-Vineでしかなし得なかったものだと思います。僕は今日のボビー・パウエルに感動した時、南部には自分が知らない宝石のようなソウル・シンガーがまだまだたくさんいるのだろうと思いました。
おめでとうP-Vine50周年。