2025.08.22 ON AIR

祝50周年P-Vine Records! 第8回

1983年P-Vineレコードがリリースした名作チャック・ベリーLP 三枚組ボックスその1

VERY GOOD!/Chuck Berry

ON AIR LIST
1.Wee Wee Hours/Chuck Berry
2.Thirty Days/Chuck Berry
3.Roll Over Beethoven/Chuck Berry
4.Havana Moon/Chuck Berry/Chuck Berry
5.Too Much Monkey Business/Chuck Berry

「ブルーズのインディペンデント・レーベルとして始まり今や世界に誇るレコード・レーベルとなったP-Vineレコーズの50周年を祝して、P-Vineが今までリリースしてきたアルバムの中から私がこれは聞いてほしいと思うアルバムを紹介しているシリーズの8回目」
R&Rの王様のひとり、チャック・ベリーと言えばその黄金期はチェス・レコードに在籍していた時代。そのチャックのチェス時代の録音を的確にコンピレーションして三枚のLPボックスにして出したP-Vineの秀作のひとつです。こういうボックスセットには詳しい録音クレジットや丁寧なライナーがあり時系列でその音楽の流れを知ることができるのでいいですよね。
チャック・ベリーはチェスレコードと契約してすぐに55年”Maybellene”の初ヒット以降、”Thirty Days”,”No Money Down”,”Roll Over Beethoven”,”Too Much Monkey Business”をヒットを飛ばし、50年代半ばには”School Days”,”Rock And Roll Music”,”Sweet Little Sixteen”,”Johnny B.Goode”と音楽史に残るR&Rの名作を数々リリース。チェスレコードはマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどブルーズの重要レーベルでもあり思いがけずロックン・ロールの重要レーベルともなったわけです。
チャックの特集はこの番組で過去何回かやっているので、今回はまず最初のヒット”Maybellene”のシングル盤のB面のブルーズ曲。Wee Wee Hoursのwee wee とは早朝、夜明け前のこと。「夜明け前に君のことを思い出す。君の愛は本物やったんかなぁ。狭い部屋で君のことを思い出す。君は二人でやったことをみんな覚えているやろうか・・・」チャックのブルーズです。

1.Wee Wee Hours/Chuck Berry

チャック・ベリーだからアップテンポのロックンロールを期待していた方には申し訳ない。スロー・ブルースでした。
途中の素晴らしいピアノ・ソロはチャックの音楽には欠かせなかったチャックの右腕のジョニー・ジョンソン。元々ブルーズをやりたくてセントルイスからシカゴにきてマディ・ウォーターズのバンドに入りたいと思ってたらしいのですが、芸風が合わずマディにチェスレコードを紹介してもらったらしいです。チャックはモダン・ブルーズの父、T.ボーン・ウォーカーがアイドルで後年に自分のライヴに大好きなT.ボーンが多分飛び入りで入ってギター弾いて歌う映像がYouTubeに出てますが、もうチャックは子供のようにはしゃいでます。今の曲もおそらくT.ボーンを意識した曲だと思います。
チャックは55年から65年までの10年間チェスレコードに在籍して66年からマーキュリーレコードに移籍しますが、70年にまたチェスに戻ってきます。でも、彼の全盛期は最初のチェスの10年間です。その10年間のシングルからコンピレーションしたこのP-VineのLP3枚組はどんなに転んでも間違いのない代物です。
次の曲は2枚目のシングルのB面です
曲はその前にヒットした「メイベリーン」と同じような曲調ですが、チャックのギター・ソロが素晴らしいです。特にリズムはさすがキング・オブ・ロックンロール。
曲名のThirty Daysは30日間ということですが、なんか理解するのがむずかしい曲で30日間の間に帰ってこいよということなのですが、どうも彼女は何か悪いことでもしたのか警察に捕まっていて、それをこの男が彼女を無罪にしてもらえるように裁判官に話をつけて釈放してもらえるようになった・・と。だから30日の間に俺のところに帰って来いよという歌だと思います。

2.Thirty Days/Chuck Berry

今の二曲だけを聞くと普通のブルーズマンと変わりない感じですが、翌年56年録音のこの曲になるとチャック・ベリーの定番になるロックンロールの形がでてきます。
リズムがシャッフル・ビートやブギウギにのちにはっきり8ビートになっていくその辺のリズムが混じった面白い曲です。
ビートルズもカバーした音楽史上大切な曲だと思います。

3.Roll Over Beethoven/Chuck Berry

次の曲「ハバナ・ムーン」ですが、これはロックンロールのキングとしては珍しい曲で南国ムードたっぷりの曲調です。ハバナはキューバの首都ですが、チャックは行ったことがあったのでしょうか。ハバナの月を見ながらひとりでラム酒を飲んで彼女が帰ってくるのを待っているという曲ですが、チープなラテン・ムードがなんともいい感じです。そのチープさで逆に曲が印象に残るというか・・。この曲はサンタナがカバーしていますが、それもすごくいいです。

4.Havana Moon/Chuck Berry/Chuck Berry

もう一曲、そんなにヒットした曲ではないのですが、このMonkey Businessという言葉をぼくはこの曲で知りました。Monkey Businessとはいい加減なくだらない仕事とか騙すような仕事、インチキの商売 「俺の周りにはくだらない、インチキな仕事ばかりだ」という歌詞です。ビートルズもプレスリーもこの曲をカバーしてますがショー・ビジネスの世界にいるとくだらない仕事やインチキみたいな商売をしているやつに出会います。チャック・ベリーもビートルズもブレスリーもそういう輩にたくさん会っていると思います。

5.Too Much Monkey Business/Chuck Berry

来週もこのP-Vineレコードが1983年にリリースしたチャック・ベリーのLP三枚組セットを聞きます。

2025.08.15 ON AIR

祝50周年P-Vine Records!!! 第7回目

1981年に60年代のマジック・サムのライヴがP-Vineから二枚組LPでリリースされた衝撃

Magic Sam/Live(At Ann Arber Blues Festival,August,1969&West Side Club Recording,1963/64)/Magic Sam(P-Vine Special PLP-9031.32)

ON AIR LIST
1.Every Night About This Time/Magic Sam
2.Tore Down/Magic Sam
3.You Were Wrong/Magic Sam
4.I Just Got To Know/Magic Sam

「ブルーズのインディペンデント・レーベルとして始まり今や世界に誇るレコード・レーベルとなったP-Vineレコーズの50周年を祝して、P-Vineが今までリリースしてきたアルバムの中から私がこれは聞いてほしいと思うアルバムを紹介しているシリーズの第7回」
今日は1981年にP-Vineからリリースされ大きな反響があったアナログLP盤二枚組のマジック・サムのライヴ・アルバム。
1枚は1963年64年のシカゴ・ウエスト・サイドのアレックス・クラブでのライヴ。もう1枚は1969年アン・アーバー・ブルース・フェスティバルでのライヴ。このアン・アーバーのライヴは1970年代初期にカセット・テープで名古屋のブルーズ好きからもらったことがありました。もうダビングにダビングを重ねた音質の悪いものでしたが、演奏の内容はマジッ・サムのライヴを聴きたかったと思わせるのに充分な内容だった。それがとうとうLPでリリースされるというので当時のブルーズ好きたちはみんな心待ちにしました。
今日はもうひとつのライヴでマジック・サムの地元シカゴ・ウエスト・サイドのアレックス・クラブでのライヴを聞いてみましょう。
まずはMCの呼び込みで一曲目の演奏が始まるのですが、サムのファンだろう女性がイントロの歌を大きな声で一緒に歌っているのが聞こえます。そういう熱狂的なファンも少しずつ獲得し、そこからブルース・フェスやヨーロッパ公演にも呼ばれる上り坂のマジック・サムの数年間が始まります。このライヴはさほど大きなクラブではないでしょうが、その女性の声がクラブのいいムードを伝えています。
最初の曲はオリジナルはニューオリンズの偉大なミュージシャン、ファッツ・ドミノ
「毎晩この時間になると泣くのを我慢して寝ようとするんだ。あいつは街をフラフラと遊び回ってるんだろう。愛は金では買えないし、愛してくれる人がいないなら死んだ方がマシだ」

1.Every Night About This Time/Magic Sam

お聞きのように決して録音の状態がいいわけではないけど、60年代後半のブルーズのライヴの現場での生々しい様子とサムの生き生きとした歌とギターが存分にわかります。こういうクラブでこういうブルーズを生で聞きたかったと当時思ったものです。60年代のシカゴでサムと同世代のオーティス・ラッシュ、バディ・ガイそしてフレディ・キングが互いにしのぎを削っていた。その中で60年代初めに”Hide Away”などのヒットで早くから全国区になったのがフレディ・キングでしたが、次の曲はそのフレディ・キングの曲です。お前にメロメロやという曲です。

2.Tore Down/Magic Sam

サムとフレディは仲が良かったようです。フレディのテイクもこのサムのテイクも両方素晴らしいです。
次の曲は南部のブルーズ&ソウル・シンガー、Z.Z.ヒルの曲ですが、サムのヴァージョンは原曲よりロックしている感じがします。これも夜遊びばかりしている彼女への歌。You Were Wrongですからお前は間違ってるで。夜遊びばかりしているのはあかんよ。俺は正しいことをやろうとしてる。お前にもそうさせようとしたけどお前とは喧嘩になるばっかりや。お前はあかんよ」

3.You Were Wrong/Magic Sam

ブルーズだけでなくR&Bやファンクそしてロックのテイストも持ち合わせたサムは新しいものを感じさせる若いブルーズマンでした。なので日本でもロック・ファンの人がサムのファンになることも多いです。
次の曲はウエストコーストのブルーズ・ボス、ジミー・マクラクリンの曲ですが、マジック・サムはこういう正統派モダン・ブルーズのカバーも自分のものとして歌える実力のあるシンガーでした。
ギターも素晴らしいのですが、僕はこういう歌が胸に届いてくるマジック・サムが彼の同世代のブルーズ・シンガーより好きなところです。

4.I Just Got To Know/Magic Sam

1963年64年というとマジック・サムは26,7才くらいです。本当にエネルギー溢れる溌剌としたブルーズを一生懸命演奏しながらゲットーから抜け出て、友達のフレディ・キングのようにもっとメジャーになりたいと思っていたことでしょう。コブラレコードからデビューはしていたものの彼の名前はまだ黒人ゲットーでしか知られていないような状況でした。
結局四年後、1967年にサムはデルマーク・レコードから初ソロ・アルバム「ウエスト・サイド・ソウル」で自分のオリジナルを披露してやっとブルース・ファンに認知される存在になるのですが、その2年後に初めてヨーロッパに演奏に行ったりした後に心臓マヒで急死してしまいます。僕がブルーズという音楽にハマったときにはすでにマジック・サムは死んでいました。なのでこのライヴ二枚ぐみは彼を知るアルバムとして本当に貴重な音源でした。

2025.08.08 ON AIR

祝50周年P-Vine Records! 第6回

P-Vineがサザン・ソウルをリリース始めた1980年の名作

In Time/Bobby Powell (P-Vine PLP-712)

ON AIR LIST
1.C.C.Rider/Bobby Powell
2.In Time/Bobby Powell
3.Into My Own Thing/Bobby Powell
4.Cry To Me /Bobby Powell
5.It’s Gettin Late In The Evening/Bobby Powell

ブルーズのインディペンデント・レーベルとして始まり今や世界に誇るレコード・レーベルとなったP-Vineレコーズの50周年を祝して、P-Vineが今までリリースしてきたアルバムの中から私がこれは聞いてほしいと思うアルバムを紹介しているシリーズ。祝50周年P-Vine Records!の第6回
1978年にオーティス・クレイが来日して79年にO.V.ライト、アン・ピーブルズ、シル・ジョンソン、ドン・ブライアントと続けざまにサザン・ソウルのシンガー達の来日があり、アルバムもたくさんリリースされました。サザン・ソウルはブルーズのテイストが濃いものが多くあるので日本のブルーズ・ファンだった人たちにも受け入れられました。この70年代後半に私もかなりサザン・ソウルを聞き込みましたが、今日聴いてもらうP-Vineレコードが80年にリリースしたボビー・パウエルの”In Time”というアルバムも気に入ってよく聴いたアルバムです。
ボビー・パウエルは1941年ルイジアナ州バトン・ルージュの生まれの盲目のシンガー&ピアニストで、ゴスペルとブルーズ両方のテイストを持ち合わせていて60~70年代にかけて濃くて熱いR&B、ソウルを残した名シンガーです。
1965年にウイットというレーベルからリリースした”C.C.ライダー”という曲がヒットして知られるようになりました。この”C.C.ライダー”は19世紀の終わり頃からあり、1920年代に女性シンガーのマ・レイニーが録音したのが最初だと思います。タイトルの”C.C.ライダー”はEasy Riderが語源の元で、つまり尻の軽い奴のこと、すぐにまぐわってしまう人のことです。彼女とベッド・インまでしたのに他の男(旦那か彼氏)が帰ってきてしまって、もうええよオレは出て行くよという内容です。しかし、ブルーズを聞いているとこういう不倫みたいな、二股、三股かけてるような歌が多すぎて呆れますが、おもろいです。

1.C.C.Rider/Bobby Powell

ボビー・パウエルは同じ盲目でピアニスト、シンガーだったレイ・チャールズの影響を受けているのですが、レイが持っているジャズ的な要素はあまりないです。ピアノも録音ではレイ・チャールズほどピアノ・プレイはフィーチャーされていません。ただ歌はやはりレイと同じように強烈なゴスペルのテイストがあります。そしてレイ・チャールズが「レイレッツ」という女性コーラス・グループを付けていたようにパウエルも女性コーラスを参加させています。
僕がボビー・パウエルを好きになった決定的な曲が次のアルバム・タイトル曲の”In Time”
「君が行ってしまってから時はゆっくりと過ぎ去っていく。でも、僕はまだ君が戻ってきてくれることを願っている」切ない歌です。

2.In Time/Bobby Powell

今日聴いてもらっているボビー・パウエルは南部のウイットやジュエルといったインディーズ・レーベルに録音されたものですが、70年代にはルイジアナの有名なエクセロ・レコードからアルバムも出してます。しかし、これだけ歌の実力があっても更に大きなメジャー・レーベルに行くことはできませんでした。
次の歌は1971年の録音でファンクテイストのダンス・ナンバー。バックのゴツゴツしたグルーヴのファンク・サウンドも太くていい感じですが、やはり歌はゴスペル風味の豪速球です。同時代のリトル・ミルトンなんかもこういうテイストですね。

3.Into My Own Thing/Bobby Powell

次のいかにも南部、サザンのソウルという感じのバラードも素晴らしいです。女性R&B歌手のベティ・ハリスがオリジナルだったと思いますが、ソウルの重鎮ソロモン・バークなどたくさんのカバーがあります。
Cry To Meですから「私に泣いて」「私の胸で泣いて」ということなのでしょう。愛する人が君をひとりっきりにして、誰も電話してくれない、そんな時泣きたくないか。ここにいるオレの胸で泣いてええんやで。部屋に一人でいて彼女の香水の匂いしか残っていない時泣きたくないか。泣いてええよ。一人でワインを飲むことほど悲しいことはないやろ。孤独は時間の無駄や。ひとりで歩かんでオレの手をとって一緒に歩いてくれへんか」

4.Cry To Me /Bobby Powell

サウンドとグルーヴは完全にゴスペル・フィーリングでやっぱり歌が素晴らしい。バックやコーラスを自分の歌で引っ張っている感じがよくわかります。最後の方の盛り上がりの高揚感はやはりゴスペル。
もう一曲聞いてみましょうか。これもソロモン・バークが歌っていそうな曲ですが、これもゴスペル・ルーツの曲です。

5.It’s Gettin Late In The Evening/Bobby Powell

P-Vineレコードは1980年前後からすでにON AIRしたカーター・ブラザーズやリトル・ジョニー・テイラーそして今日のボビー・パウエルなど南部のディープなブルーズとソウルをリリースしてくれました。大手のレコード会社からは絶対に出ないというか出せない音源、実力はしっかりあるミュージシャンの音源リリースはP-Vineでしかなし得なかったものだと思います。僕は今日のボビー・パウエルに感動した時、南部には自分が知らない宝石のようなソウル・シンガーがまだまだたくさんいるのだろうと思いました。
おめでとうP-Vine50周年。

 

2025.08.01 ON AIR

祝50周年P-Vine Records! 第5回

入手困難だったオーティス・ラッシュの音源を日本盤でLP化したP-Vineレコード

Groaning’ The Blues/Otis Rush (P-Vine Special PLP-9012)

ON AIR LIST
1.I Can’t Quit You Baby/Otis Rush
2.Sit Down Baby/Otis Rush
3.Violent Love/Otis Rush
4.All Your Love/Otis Rush
5.Double Trouble/Otis Rush

日本が世界に誇るレコード・レーベルP-Vine レコードの創立50周年をお祝いするシリーズ「祝50周年P-Vine Records!」の第5回目です。
今回のタイトルが「入手困難だったオーティス・ラッシュの音源を日本盤でLP化したP-Vineレコード」
自分が70年代初めにブルーズにずっぽりハマってしまいレコード店巡りが常習化し始めた頃、いつも探していたのがコブラのラッシュだった。そのアルバムが素晴らしいと知ったのはどういう経緯だったかもうすっかり忘れてしまったが、レコード店を巡っているときはいつも心の中で「コブラのラッシュ、コブラのラッシュ」と呪文みたいに唱えていた。コブラというのはレーべル名でラッシュはもちろんオーティス・ラッシュ。アルバム・タイトルは”This One’s A Good ‘Un”でラッシュの写真の周りが赤い色で縁取りされているものだった。リリースしていたのはイギリスの「ブルー・ホライズン」というレーベルで、それが当時オーティス・ラッシュをまとめて聞ける唯一のアルバムだった。なかなか手に入れることができず、それをやっと手にいれたのは探し始めて2年後くらいだった。しかし残念なことに70年代終わり頃とあるブルーズ・バーに貸していたら盗まれてしまった。しかし、そのコブラ・レコードの音源をアウトテイクも含めて二枚のLPにしてP-Vineレコードが1980年にリリースした。嬉しかったなぁ。自分だけでなく多くのブルース・ファンが喜んだアルバムでした。今日はそのコブラ音源、1980年P-Vineレコードリリース”Groanin’ The Blues”を聞きましょう。
まずはオーティス・ラッシュの代表的な曲から。
1956年立ち上がったシカゴのインディーズ・レーベル「コブラ・レコード」が初リリースしたシングル。ビルボード・R&Bチャートのなんと6位まで上がったヒット。自分の家庭まで壊してしまった不倫をしてそれでもその不倫相手と別れられないと苦しい胸中を歌った曲。

1.I Can’t Quit You Baby/Otis Rush

まあ、「自分で不倫しといて何が胸が苦しいやねん」とツッコミたくなる方も多いでしょうが、これがまた人間の性というやつで。
この曲はロックのレッド・ツェッペリンのデビュー・アルバムに収録された他カバーがたくさんあります。曲を作ったのはシカゴ・ブルーズのベーシストでありソングライターでありプロデューサーでもあるウィリー・ディクソン。
ラッシュの魅力というのはふくらみと翳りのある歌声とシャープなギター。日本で人気があった原因はラッシュのブルーズにそういう翳りあったからだと思います。暗い感じがして嫌いという人もいますが、70年代前半日本のブルーズ・ファンのラッシュへの期待は大きかったです。しかし、リアル・タイムのブルーズマンとしては決定打の曲がなくていつも引き合いに出されるのが50年代のこのコブラの音源でした。
次はリズムの歯切れのいいダンス・ナンバー。

2.Sit Down Baby/Otis Rush

サビがついてホーンが入ってサウンドもしっかり構築され、ビートはステディなシャッフルビート・・1956年時点のモダンさを感じさせるシカゴ・ブルーズだったと思います。
次の曲では更にそのモダン化をポップに推し進めた曲。プロデュースのウィリー・ディクソンが進めました。それはラッシュがよりポップな曲も歌える歌唱力のある歌手だとわかったからだろうと思います。ブルース・ファンの中にはギター・ソロもないし、曲もポップなこの曲を嫌いな人もいるのですが、僕は結構好きです。もし、このタイプの曲でヒットが出ていればラッシュは違う道を歩んでいったかも知れません。

3.Violent Love/Otis Rush

次はエリック・クラプトンが若き日、ジョン・メイオール・ブルーズブレイカーズ時代にカバーし有名になった曲で私も高校生の頃にそれを聞いて衝撃を受けたのですが、ラッシュのこのオリジナルを聞いて更に衝撃を受けました。1958年録音。

4.All Your Love/Otis Rush

途中でリズムがシャッフルに変わりマイナーからメジャーに行く、そこを尽かさず切り込んでいくギター・ソロの素晴らしさ。歌もいいしほぼ完璧に出来上がったブルーズだと思います。
このコブラ・レコードでのレコーディング・セッションは1956年から58年の2年間にリリースしたシングル。メンバーはべースとプロデュースのウィリー・ディクソン、ドラムはアル・ダンカンとオディ・ペインのどちらか、ギターにはアイク・ターナー、ピアノはリトル・ブラザー・モンゴメリーと当時のシカゴ・ブルーズの精鋭たちが集まってます。
シカゴと言えばチェス・レコードが最も有名なレーベルでしたが、チェスはマディ・ウォーターズ始めハウリン・ウルフ、サニーボーイ・ウィリアムスンなどすでに売れているブルーズマンで堅実なビジネスをするだけ、若手のブルーズマンたちの売り出しに積極的ではなかったようです。それに反発したウィリー・ディクソンがこういう小さなレーベルで若手のブーズマンの録音を始めたわけです。
次はラッシュ自身が作ったブルーズ。「恋もうまくいかず、夜も眠れない。仕事もない。みんなは頑張ればできるというけど、そして金持ちになっている奴らもいるけど俺には着ていく服さえないんだ」
トレモロを入れたギター・サウンドで印象に残るオブリガードを弾いているのはアイク・ターナー

5.Double Trouble/Otis Rush

まさにブルーズです。歌がいかにもオーティス・ラッシュらしいです。
今日は1980年に日本のP-VineレコードがLPレコードでリリースした”Groanin’ The Blues”を聴いてもらいましたが、現在はCDでも”I Can’t Quit You Baby”というアルバム・タイトルでリリースされています。

 

2025.07.25 ON AIR

ブルーズ暑中お見舞

ON AIR LIST
1.Ice Man/Albert Collins
2.Give Me Back My Wig/Hound Dog Taylor
3.Cotton Boogie/The James Cotton Band
4.Hot/Robert Cry Band
5.Back Door Man/Howlin’ Wolf

暑い日が続きますが、今日は当番組からブルーズ暑中見舞いです。
暑中見舞いというと水羊羹とか素麺とかアイスとか送られたりすると思いますが、昔うちの親父は「暑い日には熱いお茶を飲め」と言ってました。暑いからと言って冷たいものばかり飲んだり食べたりしているとお腹を壊すから熱いお茶も飲めと言ってたのですが、親父本人は冷たいビールを旨そうに飲んでました。
それで毎年言ってるのですが「涼しいブルーズ」はないか・・と、つまりビーチボーイズのようなサーフ・ロック、カルロス・ジョビンやアストラッド・ジルベルトのボサノヴァのような涼を感じるブルーズ。結論からいうと基本的には涼しいブルーズはありません。ただ、フォーク・ブルーズのミシシッピ・ジョン・ハートやソニー・テリー&ブラウニー・マギーやカントリー・ブルースのレッド・ベリーに涼しさを感じることはあります。
なので「暑い日には熱いお茶を飲め」という自分の父親の言葉通り、今日はブルーズの中でも特に熱いと感じるブルーズを暑中見舞いとしてお送りします。
まずはアルバート・コリンズ。コリンズは1965年にザ・クール・サウンド・オブ・アルバート・コリンズというアルバムを出してまして、ジャケット写真は涼しげな氷の入ったレモンが添えられたコップのカクテルのようなものでした。そのアルバムにはFrosty(凍ったとか霜のついてる冷たさ)とかFrostbite(凍傷)というタイトルの曲も入っていていかにも涼しげな、いやめっちゃ冷たい感じのイメージがジャケットと曲名からあったんですが、演奏は冷たいどころかめちゃ熱いです。ではタイトルも「アイスマン」

1.Ice Man/Albert Collins

「俺は君のアイスマン。君を冷やすためにここにいるんやないんよ。俺はテキサスのレオナを出て一番クールな場所(かっこいい場所)を熱くするために来たんだ」という歌詞ですが、クールというのはかっこいいという意味もありますから、かっこいい場所で俺のかっこいいギターで君をホットにしてやるという意味やと思います。

次はもう名前聞いただけで暑いハウンド・ドッグ・テイラー。曲名がGive Me Back My Wigですから「俺のウイッグを返してくれ」
確かにハウンドドッグ・テイラーもカツラかぶっている写真がありますが、あれ、アメリカのミュージシャン特にブルーズマンってなんやモロにウイッグってわかるかぶり方してるいうか、頭のサイズに合ってないいうか、その辺大雑把なんですよね。ライトニン・ホプキンスなんかカツラズレてるやんいう写真あります。
日本は今はもうウイッグも普通になりましたが、アメリカはウイッグの歴史が古い割りに大雑把です。
歌詞は「俺のウィッグを返してくれよ。お前の頭、坊主にしてまうぞ。ほんま仕事がないねん。お前に買ってやるウィッグはほんまないねん。」
ってこれウイッグを彼女と共有してるんですかね。

2.Give Me Back My Wig/Hound Dog Taylor

いい感じに暑苦しい曲ですが、最後に「俺にウイッグ返したらお前の好きにしたらええから」ってそんなにウイッグ大事なんですかね。
次はジェイムズ・コットンです。まあ歌もハーモニカも熱いブルーズマンですが、聞いてもらうのはライヴのインスト曲で歌がなくても熱いです。リズムもめちゃ早いブギでグルーヴがバシッと決まっているので気持ちいいですが汗だくで演奏してるのが目に浮かびます。

3.Cotton Boogie/The James Cotton Band

次は比較的新しい録音でロバート・クレイ。クレイもデビューして45年経っていまやブルーズ界の大物ですが、聞いてもらうのは2020年五年前にリリースしたアルバム”That’s What Heard”から曲名も熱いです”Hot”。

4.Hot/Robert Cry Band

クレイの歌もギターもバックもめちゃ熱いです。でも、クレイの芸風が熱いけど彼が本来持っているスマートさがあるのでさっきのコットンほどの暑苦しさは感じません。まあ、性格、人格はやっぱ音楽に出ます。
このアルバム”That’s What Heard”はドラムのスティーブ・ジョーダンがプロデュースしてゴスペル曲を今風にうまくアレンジしたり、クレイの歌唱力を生かしたボビー・ブランドのカバーを入れたりオリジナルもあったりいろんなカインドが入っているけど統一感のあるいいアルバムです。

最後にもう一曲。歌が熱いブルーズマンといえばこの人、ハウリン・ウルフ
「俺はバックドア・マン(裏口から入ってくる間男)。みんなが寝た真夜中に他人の嫁さんの家に忍び入って、朝ニワトリが鳴く頃に出ていく。町の男たちは知らないけど女たちはみんなわかってる」間男の歌。間男言うてももう若い人たちわからないかもしれないですが、辞書を紐解くと「結婚して夫がいる女性が、夫以外の男と肉体関係を持つこと。またはその相手の男のこと」とあります。だからこの男はこっそり裏口のドアから夜中に入って朝方に出ていくと歌っております。こんなこと丁寧に説明してどないすんねんですが。

5.Back Door Man/Howlin’ Wolf

今回はブルーズ暑中見舞いでした。私はここ数年夏は極力ライヴを減らしてます。天気予報で猛烈な暑さから最近危険な暑さという言い方が多くなってますが、まあ外に出るないうことです。外に出るな言われてもね。まあ、みんな気をつけてください。ほならHey Hey The Blues Is Alright