2025.05.09 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その六

自分のアルバムを中古盤で救出する気持ち

West Road Blues Band/Junction

ON AIR LIST
1.Shot Gun/ West Road Blues Band
2.I Just Wanna Make Love To You/ West Road Blues Band
3.I’d Rather Drink Muddy Water/ West Road Blues Band
4.I’d Rather Go Blind/ West Road Blues Band

レコード店の中古盤ブルーズ・コーナーでアルバムを見ていると自分のアルバムが出て来ることがある。その時の気持ちはなかなか複雑で、恥ずかしいという思いもあるし「ああ、これ買った人このアルバム気に入らなかったのかなぁ」とか「金に困って売ったのかなぁ」「断捨離したのかな」といろいろ想いが巡る。とにかくその目の前にある中古盤の自分のアルバムはどういう経緯で売られたにしろ私自身にとっては愛おしいものなので私は「救出」と言ってますが大抵買います。
今日は2,3,ヶ月前に救出したウエストロード・ブルーズバンド再結成の時に録音したアルバム「ジャンクション」です。
ビクターのインビテーション・レーペルから1984年のリリースです。メンバーはウエストロードのオリジナル・メンバーでギターに山岸潤史、塩次伸二、ベースに小堀正、ドラムに松本照夫そしてヴォーカルの私、永井ホトケ隆です。
自分の昔のアルバムを聴くのは本当に好きやないんですが、今回はまあ中古レコードの話の流れということで私は約40年ぶりに聴きます。
まずレコードA面の1曲目
ジュニア・ウォーカー&ザ・オールスターズの1965年のヒット”Shot Gun”のカバーです。実は事務所の関係でクレジットされてないのですが途中のサックスソロはサックス・プレイヤーでありソングライターであり、かってグループサウンズ時代にブルー・コメッツのメンバーでもあった井上大輔さんです。もうお亡くなりになっているのですが、素晴らしくブロウするサックスソロを残してくださいました。井上さんは「ブルー・シャトー」「ガンダムの主題歌」ラッツ&スターの「ランナウェイ」、美空ひばりさん、中森明菜さんはじめたくさんの歌手に曲を提供した素晴らしい作曲家でもありました。

1.Shot Gun/ West Road Blues Band

井上さんはライヴにも来てくれてJIROKICHIでフルステージ吹いてもらったことがありました。とても優しい方で60年代の終わりにヨーロッパで観たジェイムズ・ブラウンの凄まじいステージの話もしていただきました。
それにしても録音のシンドラムの音が80年代初めやなぁという感じ。
実はこの録音のきっかけとなったのは、84年頃に高円寺のライヴハウス「JIROKICHI」のセッションでたまたまウエストロードのオリジナル・メンバーが揃っていました。それで亡くなったJIROKICHIのマスター荒井さんが「せっかくウエストのメンバーいるのに何曲かやったらどう?」って言われて久しぶりにメンバーで音を出したらすごく良くてそれで時々集まってやるようになったわけです。その流れでレコーディングの話も出たのだと思います。でも、もうそれぞれが個人的な活動をしていたのでそんなに頻繁にやれるわけでもなかったし、ツアーも単発でしかできませんでした。
84年の録音ですが、当時はシンセサイザー・ドラムとか録音機材もコンピューター関連のものが多くなっていた時代でその約10年前のウエストロードの最初のレコーディングとは録音方法もすっかり変わっていました。まあ、私はなるべくバンドと一緒に歌いたかったので後からの歌入れはほとんどやらなかった記憶です。ギタリスト二人のギター・ソロの別録音は時間かかったように思います(笑) ではそのギタリスト二人山岸潤史と塩次伸二のソロが交互にでて来る曲です。小堀のグルーヴするベースもよく聞いてください。

2.I Just Wanna Make Love To You/ West Road Blues Band

マディ・ウォーターズの50年代のブルーズを今のようにファンク・テイストにアレンジしたのは山岸潤史。当時ぼくらの間ではジョニー・ギター・ワトソンやジェイムズ・コットンのようなファンク・ブルーズが流行ってましてその流れです。
次の曲はジャズ・ブルーズのスタンダードでルー・ロウルズ、ジョニー・テイラーなどソウル・ブルーズ系のシンガーがよく歌う曲でした。
途中のピアノソロは佐山雅弘、続くギターソロは塩次伸二。二人ともなくなってしまったのですがいいソロ弾いてます。そしてやっぱりドラムの松本照夫のシャッフルは素晴らしいです。

3.I’d Rather Drink Muddy Water/ West Road Blues Band

基本的に私は自分のアルバムがリリースされたら以後聞きません。なので今日40年ぶりに聞いています。自分の歌はもう嫌なところばかり耳に付くので聞きたくないのです。
聴いてもらってわかると思いますがこのアルバムの特色の一つは豪華なホーンセクションです。ちょっとメンバーを紹介すると沢井原児、包國充、土岐英史、片山宏明、梅津和時、小林正弘、兼崎潤一・・とまあ日本を代表するホーン・プレイヤーたちが参加しています。
次の曲はその豪華ホーンセクションが見事に活躍してくれた曲です。
1975年に自分がロスアンゼルスでエタ・ジェイムズのライヴを観た時に彼女のこの歌に感銘していつか録音したいと思っていました。

4.I’d Rather Go Blind/ West Road Blues Band

サックスの包國くんと山岸が素晴らしいアレンジをしてくれました。
「君が他の男と去っていくのを見るくらいなら目が見えなくなった方がいい」というバラードですが、最近歌ってません。
当時は歌っても歌ってもなんかたどり着かない難しい曲でした。
今日は中古レコード屋さんで出会った自分の40年前のアルバム、1984年ウエストロード・ブルーズバンドのジャンクションを聴いてもらいました。いろんな思いが胸の中を駆け巡ります。
中古レコード店で昔の自分のレコードと出会うのは複雑な気持ちです。だれがどういう理由でアルバムを売ったのかわからないですが、自分としてはいろいろ思いもあるのでそのままにできず買ってしまいます。

 

 

2025.05.02 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その五

昔買えなかったアルバムを中古盤で見つけ買ったら見本盤(Not For Sale)だった

“エヴェレスト・ブルースの真髄シリーズ第二弾” ビッグ・ビル・ブルーンジー

ON AIR LIST
1.Baby Please Don’t Go/Big Bill Broonzy
2.In The Evening/Big Bill Broonzy
3.See See Rider/Big Bill Broonzy
4.Ridin’ On Down/Big Bill Broonzy

中古盤を探している時に昔リリースされていた日本盤のブルーズ・アルバムに出会うことがある。見覚えのある懐かしいジャケットだけど当時はその手のブルーズには興味がなかったか、欲しかったけれど金がなかったか・・・買わなかったアルバムです。ブルーズという音楽の情報が少なかった70年代初期はそういう日本盤に書かれているライナーノーツの情報がその後アルバムをゲットするのに役に立ちました。中村とうよう、日暮泰文、桜井ユタカ、福田一郎、鈴木啓志といった方々がよく日本盤ブルース・アルバムのライナーを書かれていた。時々間違った情報もあったし、その書き手の個人的な思いや嗜好が自分と合わないと思うこともあった。でも、それも自分なりにブルーズという音楽を受け入れていくための土台作りに役立ったといまになって思う。
それで今日は今年になって中古盤でゲットした1969年日本コロムビアがリリースした”エヴェレスト・ブルースの真髄シリーズ第二弾”ビッグ・ビル・ブルーンジーのアルバムを聴いてみます。50年前の日本のリリースです。ライナー解説は中村とうようさんが書いています。
まず一曲。よく知られているビッグ・ジョー・ウィリアムスの有名曲ですがこのビッグ・ビルもいい感じです。ブルーズ・スタンダードとなっているこの曲「ベイビー、行かないでくれ」

1.Baby Please Don’t Go/Big Bill Broonzy

お聞きの通りギターのリズムが抜群によくアコースティック・ギターの名手でもあるビッグ・ビルは1929年の初録音から30年代40年代と録音の途絶えなかったブルーズマンで、ヨーロッパへも50年代にいち早く演奏に行き人気がありました。このアルバムの何曲かは1956年にヨーロッパへ行った際のミラノでの録音ではないかと中村とうようさんは書かれている。
次の曲はビッグ・ビルが何度か録音しています。当時はこういう弾き語りの録音はスタジオではなく普通の部屋かホテルの一室に録音機材を持ち込んですることも多くて、このアルバムも普通の部屋に簡単な録音機材を持ち込んで行われたのではないかと思います。
次の曲は曲が始まる前にブルーンジーが咳をしている音が入ってます。咳が入ってる録音なんて滅多にないですが・・笑えます。歌は思いっきりブルーズです
「夕暮れになって太陽が沈む頃、愛する人がそばにいないなんて寂しくないか。昨日の夜、オレはひとりでずっと眠っていた。俺が本当に愛する女は他でところで寝ていた。ああ太陽は沈んでいく」

2.In The Evening/Big Bill Broonzy

とにかくリズムがいいのとどこか洗練されているんですよね。
次はビッグ・ビルのギターの上手さが前面に出たインストルメンタルの曲です。ギターが上手いので他のブルーズマンのバックを頼まれることも多くてサニーボーイ・ウィリアムスン1やリル・グリーンなどいろんなブルーズマンのバックで印象に残る録音をたくさん残してます。

3.See See Rider/Big Bill Broonzy

これだけ弾けたら楽しいやろなと思います。このギターの演奏だけで踊れます。下手なバンドやったらいらんよね。
このアルバムは日本コロムビアの「ブルースの真髄シリーズ」という企画のシリーズもので第一弾がライトニン・ホプキンス、二弾がこのビッグ・ビル、そのあとオーティス・スパン、ビッグ・ジョー・ウィリアムス、ジョン・リー・フッカーなど全部で10枚リリースされました。1969年から70年という日本のブルーズ黎明期に必ずしもベストな録音ではないにしろ解説付きで重要なブルーズマンがシリーズでリリースされていたことはブルーズを知り始めた私にはありがたいものでした。次は語りのような歌のような弾き語りならではの曲調ですが、ビッグ・ビルのグルーヴ感が素晴らしい余裕のギター・プレイが聞けます。

4.Ridin’ On Down/Big Bill Broonzy

ビッグ・ビル・ブルーンジーは50年代に後輩のマディ・ウォーターズたちが盛り上がったシカゴ・エレクトリック・ブルーズのブームつまり新しいブルーズの流れから外れてしまったわけですが、ヨーロッパではフォーク・ブルーズとして最初にブルーズの人気を高めた立派な人でした。
実はこのアルバム買って開けてみてわかったのですが、私がゲットしたこのアルバムは見本盤でレコードの真ん中のいわゆるレーベルが真っ白でいわゆる白盤というやつで「見本盤」とハンコが押してあります。輸入盤だと”Not For Sale”書いてあります。誰か見本盤としてレコード会社から受け取った人が売ってしまったのでしょう。本来見本盤とかサンプル盤と言われるものは売買しないものですが、珍しさや中には音がいいと言われるものもあって少し高い値段がつく場合もあります。
こういう見本盤を偶然買ってしまうと誰が売ったのかなぁと前の持ち主のことを思ったりします。

今日のホトケのレコード中古盤放浪記 その五 今日は1969年に日本コロムビアからリリースされたビッグ・ビル・ブルーンジーのアルバムを聴きました。

 

 

2025.04.25 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その四

好きすぎて同じレコードを中古盤でもう1枚買う

If It’s Only For Tonight / O.V.ライト

ON AIR LIST
1.If It’s Only For Tonight/O.V.Wright
2.Why Don’t You Believe Me/O.V.Wright
3.Can’t Find True Love/O.V.Wright
4.Don’t Want To Sit Down/O.V.Wright
5.You’re Gonna Make Me Cry/O.V.Wright

先週のJ.B.ルノアのアルバムは中古盤屋さんで「あれ、このアルバム持っていたかなぁ・・」と自分が持っていたかどうかわからなくて同じものを二枚買ってしまったという話だったんですが、今回は持っているとわかっているのに同じものをもう一枚買ったという確信犯の私です。
なぜ同じアルバムを二枚買ったのかと言えば「好きすぎるからです」こんないいアルバムを売った人がいるって信じられないという気持ちになり、値段を見て安かったりすると「いやいや、これはもっともっと価値のあるアルバムですよ。これは救出しないと」という気持ちになって買ってしまうわけです。
何枚かそういうアルバムがあるのですが、今日はサザン・ソウル・シンガー、O.V.ライトの最初のアルバム1965年リリース”If It’s Only For Tonight”です。
まずアルバムA面の1曲目のアルバム・タイトル曲
「いま私はあなたの腕の中にいます(Here I am in your arms)」と始まります。そして「あなたをきつく抱きしめるのはあなたのキスを長く待ち望んでいたからなんだ。今夜だけなら私を愛していると言ってくれますか」という歌詞。今夜だけなら”If It’s Only For Tonight”

1.If It’s Only For Tonight/O.V.Wright

「今夜はすごく幸せだけれど明日には二人とも傷つくのだろう」
束の間の逢瀬で愛し合う二人ですが決してずっとは愛しあえない・・やはり不倫の歌でしょうか。何か情景が浮かんで来るような熱いO.V.ライトの歌は彼が尊敬していたサム・クックの匂いがします。
この実に切ないバラードでこのアルバムは始まります。この曲だけでも十分価値のあるアルバムですが、次がまたグッと胸の中に入ってくるバラードです。
「どうして私のことを信じてくれないのか。私が永遠に愛するのはあなただけなのに。寂しい心がここにある。あなたが奪える心がここにある。あなたはそれを取ることも捨てることもできる。あなたが求めるたった一つの心がここにあるのに・・・これ以上私に何ができるのだろうか」
「なぜ信じてくれないのか」

2.Why Don’t You Believe Me/O.V.Wright

今の曲は50年代に流行ったポピュラー・ソングでジョニ・ジェイムズという歌手でヒットしてパティ・ペイジなど白人のポピュラーシンガーがたくさん歌っていますが、O.V.ライトは完全にソウル・バラードにしてしまってます。本当にソウルフルな歌唱です。
バラードが連チャンで来たなぁと思っていたら更にもう一曲。立て続けにバラード三曲です。これも素晴らしい歌を歌っているO.V.です。
「窓ガラスに雨粒を見つけた。夏の雨の後に虹を見つけた。夜空に星を見つけた。でも俺には本当の愛が見つからない」

3.Can’t Find True Love/O.V.Wright

ここまでのバラード三連チャンでも十分に二枚買う価値はあります。
バック・ビート・レーベルのこのアルバムは比較的スロー・ミディアムの曲が多いのですが、やはりO.V.は歌が上手いので少し遅めのテンポで聴かせる歌をアピールしていこうという狙いがあったのかも知れません。ゴールドワックスというレーベルからリリースされ話題になったO.V.のデビュー・シングル”That’s How Strong My Love Is”もミディアム・スローでした。
でも、アップテンポでもスピード感のある歌を聴かせてくれてます。このアルバム”If It’s Only For Tonight”に収録されているシャッフルの軽快な曲です。

4.Don’t Want To Sit Down/O.V.Wright

このアルバム”If It’s Only For Tonight”はO.V.ライトのBack Beatレーベルのシングルを集めた初めてのアルバムでした。ここから大きなヒットは生まれませんでしたが、大好きなO.V.の初アルバムということで感慨深いものがあります。次も歌いたいと思っている好きな曲です。

5.You’re Gonna Make Me Cry/O.V.Wright

このアルバムはレアな部類に入っているので現在¥18,000くらいで売っている中古盤屋さんもあります。私が買ったときは¥2,000もしなかったと思います。私は高い値段のレコードには興味がないので今の値段だったら買わないです。いまは投資目的でこういう古いレコード、レアなレコードを買っている人もいるらしいのですが、やめて欲しいです。レコードは聴くもので資産運用のモノではありません。

 

 

2025.04.18 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その三

なぜか同じレコードが2枚・・・J.B.レノアの重要なアルバム

ON AIR LIST
1.DOWN IN MISSISSIPPI/J.B.Lenoir
2.BORN DEAD/J.B.Lenoir
3.Slow Down/J.B.Lenoir
4.Vietnam BLUES/J.B.Lenoir
5.Voodoo Music/J.B.Lenoir

中古盤屋さんでレコードを漁っていると「このアルバム持っていたかな・・・」とわからなくなる時があります。つまり自分が持っているアルバムが多くて持っているレコードをちゃんと把握できてないわけです。そういう迷った時はめちゃ高くなければ私は大抵買います。それでいそいそと家に帰ってレコード棚を見るとそのアルバムをすでに持っていることが発覚するわけです。そういう同じものが二枚あるアルバムがいくつかあるのですが、今日はその中のひとつJ.B.レノアの”Down In Mississippi”です。あとでHPに出しておきますから同じ二枚見てください。
このアルバムはブルーズの名盤のひとつです。
1966年のシカゴ録音です。J.B.レノアはバンドでもたくさん録音していますが、このアルバムはアコースティック・ギターの弾き語りがメインでそこにドラムのフレッド・ビロウが参加しウィリー・ディクソンがスパビジョン(監督)とコーラスで何曲か参加しています。
まず一曲、故郷のミシシッピについて歌ったブルーズでタイトル曲です。先日メイヴィス・ステイプルズの特集のときにもこの曲をON AIRしました。
「自分が生まれた遠く遥のミシシッピ。嫁さんの故郷でもあるし嫌いやないけどね。あのミシシッピの生活から抜け出せてよかった・・・」故郷は好きなところもたくさんあるけど、人種の差別とひどい貧しさの中暮らしていた嫌な思い出も多い故郷への複雑な思いが描かれています。

1.DOWN IN MISSISSIPPI/J.B.Lenoir

コーラスはウィリー・ディクソン。ご存知の方も多いですが、彼はシカゴ・ブルーズのベーシスト、ソングライター、プロデューサー、シンガーでもあります。このアルバムはブルーズにとっては珍しい政治的、社会的なことを歌ったアルバムなのですが、録音に至ったのはかなりウィリー・ディクソンの力もあったと思います。
珍しいプロテスト・ソングのブルーズ・アルバムです。
もちろんダンサブルな曲も入っているのですが、今の”DOWN IN MISSISSIPPI”や次の”Born Dead”のような黒人の生活の現状をリアルにブルーズで歌った曲が入っているアルバムは少ないです。
Born Deadの歌詞「神様、私はなんでミシシッビなんかに黒人で生まれたんでしょうか。黒人の子供はひどい環境の中で生まれてきて、生まれながらにして死んでいるみたいなものだ」という強烈な歌詞がJ.B.レノアの怒りを表しています。

2.BORN DEAD/J.B.Lenoir

レコードなのでノイズが聞こえますがすみません。
このアルバムが作られた1966年といえばベトナム戦争への反戦運動と黒人の人権を求めた公民権運動が盛り上がった時代でした。もちろんそれ以前にも黒人の貧困や差別について触れた曲はありましたが、ここまでしっかりした詞で強く訴えたブルーズ・アルバムはなかったように思います。

次はラブ・ソングです。曲名がSlow Downですからスピードを落としてゆっくりという意味ですが、「もっとゆっくりスピードを落として俺を乗せてくれよ。君の列車に乗りたいんだ。俺はいつもよそ者だからここにも長くはいられないんだ。だからスピードを落としてお前の列車に乗せてくれ」

3.Slow Down/J.B.Lenoir

次の歌は60年代にベトナム戦争が泥沼化してアメリカも引くに引けなくなり多くの若者が亡くなりました。僕は高校生でしたが毎日毎日報道されるベトナム戦争の状態になんとも言えないつらい気持ちになり、高2のときに初めてベトナム戦争反対のデモに出ました。その頃、レノアはこれを歌っていたんですね。
この歌「ベトナム・ブルーズ」は「ベトナムのことでみんなが叫んで泣いている、神様、ベトナムにいる兄弟たちを助けてください。ひよっとしたら自分たちの兄弟を殺すかも知れないんです。大統領、あんたは平和について話しているけど自分のケツは自分でちゃんと拭いてホワイトハウスを出なきゃいけないんだぜ」と歌っていますが、ここまで厳しく戦争について歌ったブルーズはちょっとありません。多分、心優しいレノアはもうベトナム戦争を終わらせない政府と大統領に怒り心頭だったのでしょう。

4.Vietnam BLUES/J.B.Lenoir

最後の曲はぼくが自分のバンド、ブルーズ・ザ・ブッチャーでカバーしているものがこの番組の最後のテーマ・ソングにも使われていますが、オリジナルはJ.Bレノアです。ブゥドゥ・ミュージックが若者たちを熱狂させて世界をめぐるという歌です。

5.Voodoo Music/J.B.Lenoir

J.B.レノアのこのレコードを二枚持っているのですが、二枚買ってしまったのも大好きなJ.B.レノアとの何かの縁のような気がします。特にこのアルバムを聴き始めてから彼の人間性にすごく惹かれるようになり今は五本指に入る大好きなブルーズマンです。
そして二枚あるこの同じアルバムは本当に大切な二枚です。

 

 

2025.04.11 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その二

CDよりもレコードが欲しい!!!

ESQUERITA! / Esquerita

ON AIR LIST
1.Hey Miss Lucy/Esquerita
2.Crazy,Crazy Feeling/Esquerita
3.Baby,You Can Depend On Me/Esquerita
4.I’m Battle Over Hattie_Esquerita
5.Believe Me When I Say R&R Is Here To Stay/Esquerita

このレコード中古盤放浪記は中古レコードを買うのが趣味な私の個人的な思いを話しながら音楽を聴いてもらうという趣向です。

CDで持っているアルバムなのにやっぱりレコードで欲しいというのがレコード・マニアの悲しいところで、今日聴くこのエスケリータもCDで持っているのに中古レコードでジャケットを見た途端に欲しいと思った1枚。正直に言うとそれほど好きという感じでもなかったのですがリトル・リチャードに与えた影響などを知り、やはりLPで欲しいと思っていたところにこのジャケットですから。あとで番組ホームページでジャケットを確認して欲しいのですが、とにかく一度見たら忘れられないインパクトのあるジャケ写です。
まず「ボンパドール」と呼ばれるリーゼントを食パンみたいに超盛り上げたヘア・スタイルに細い髭を生やしてキラキラにデコレイトされた派手なサングラスをかけて派手な衣装を来た男・・レコード・ジャケットにはエスケリータ!とだけ文字がある。見た目はR&Rのキング、リトル・リチャードに似ているので二番煎じかと思っていたら、実はリトル・リチャードにピアノを教えたのはこのエスケリータで、ピアノだけでなくファッションや高い声でホ~ッ!と叫ぶ(スクリームする)歌い方もオリジナルはエスケリータだったという。ということでリトル・リチャード・ファンとしてもこれはレコードで持っておきたいと購入。
今日聴くのはエスケリータの1958年のキャピタル・レコード・デビュー・アルバム。エスケリータ24才の時。キャピタル時代のシングルを集めたアルバム。まずは挨拶代わりのアルバムのサイドAの一曲目。

1.Hey Miss Lucy/Esquerita

ニューオリンズR&Bのテイストがたっぶりの曲で「ほゅ~っ!」という甲高いスクリームを出す芸風はやはりリトル・リチャードに似てます。というかリトル・リチャードがエスケリータに似てるのか・・・その辺はどうなのかわかりませんが、エスケリータは自分が最初だと言ってます。
ジャケット写真を見るともっとめちゃめちゃな人かと思いきや、すごくちゃんとした音楽性です。調べて見るとやはり歌は教会でゴスペルを歌って育ったようです。ピアノは全くの独学ですがめちゃ上手いです。次の曲はリズム・パターンがリトル・リチャードの”Slippin and Sliddin”と同じです。

2.Crazy,Crazy Feeling/Esquerita

リトル・リチャードがデビューした7年あと1958年にエスケリータがデビュー。ピアノを教えた先生エスケリータの方が後のデビューになったわけですが、58年というとR&Rのブームが下火になり始めた頃です。すでにリトル・リチャードがヒット曲を次々と出してすごく有名になっていたので同じような芸風なのでやはりエスケリータは二番煎じと思われたんでしょう。
しかし、デビューしたレーベルは大手のキャピタル・レコードです。でもあまりブロモーションしてもらえなかったのかも知れません。私も経験してますが大手のレコード会社だからプロモーションでプッシュしてくれるとは限りません。しかもR&Rのブームは下火に向かっていく時期ですから。彼の代表曲となるようなヒット曲が出なかったのが残念です。
次の曲もニューオリンズのR&Bの影響が強かったものでニューオリンズのファッツ・ドミノを思い出させるような曲調です。

3.Baby,You Can Depend On Me/Esquerita

ここでエスケリータの略歴。1935年11月20日サウス・カロライナ生まれ本名はエスキュー・リーダー(Eskew Reeder Jr.)です。ルーツはゴスペルで独学で覚えたピアノに魅せられて高校を退学して、ニューヨークのゴスペル・グループ、ヘヴンリー・エコーズに参加。1958年にソロとしてキャピトルからデビューしたがヒットも出ず、話題になることもなく故郷サウス・カロライナに戻りエスキュー・リーダーリーダーという名で活動、60年代にミニット、エヴァーレスト、オーケー、クロストーン、ブランズウィック、ノートンといろんなレーベルで録音するもヒットは出ず70年代にはシーンの第一線からは消えてしまっています。

4.I’m Battle Over Hattie/Esquerita

何曲か聴くとわかるのですが、リトル・リチャードと何が違うのかといえばまず楽曲、曲です。曲がリトル・リチャードはジャンプ・ブルーズやニューオリンズR&Bの影響があっても強烈なオリジナリティがあります。つまりエスケリータは曲が普通。悪くないですが普通。リチャードは「トゥッティ・フルッティ」、「のっぽのサリー」、「ルシール」、「リップ・イット・アップ」、「ジェニ・ジェニ」、「グッド・ゴリー・ミス・モリー」など印象に残るものがたくさんありました。あとは録音のバックバンドがリトル・リチャードはドラムがアール・パーマー、サックスにサックスのリー・アレン、ベースのフランク・フィールズ、ギターのジャスティン・アダムズなど優秀なスタジオ・ミュージシャンが揃っていました。それに比べるとエスケリータの方は劣る感じです。
歌はゴスペルをルーツにしたしっかりしたものですし、ピアノはリトル・リチャードに教えたくらいですから上手いです。もう少し早くデビューして何かきっかけさえあればエスケリータもR&Rのスターの仲間入りができた実力は十分あります。次の曲もエスケリータは素晴らしいのですがバック、特にドラムのビートがズレています。残念。

5.Believe Me When I Say R&R Is Here To Stay/Esquerita

70年以降も歌っていたようですがシーンの表舞台に出ることはなかったエスケリータは51才で86年に亡くなっています。インタビューとか映像とかがほとんどない人で一体どんな人柄だったかもわからない謎の多い人です。ひとつ、リトル・リチャードは初めてエスケリータに会った時のことを「エスケリータは今まで俺が会った中で一番大きな手をしていた。俺の二倍はあった」と言ってます。ほんまか?!!(笑)
今回のジャケットで買ったと言ってもいいかも知れないこのエスケリータのキャビタル盤は今も時々中古盤屋さんで見かけます。興味のある方は是非。今回のレコード中古盤放浪記 その二は謎の多きロックンローラー、エスケリータでした。