2025.05.09 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その六

自分のアルバムを中古盤で救出する気持ち

West Road Blues Band/Junction

ON AIR LIST
1.Shot Gun/ West Road Blues Band
2.I Just Wanna Make Love To You/ West Road Blues Band
3.I’d Rather Drink Muddy Water/ West Road Blues Band
4.I’d Rather Go Blind/ West Road Blues Band

レコード店の中古盤ブルーズ・コーナーでアルバムを見ていると自分のアルバムが出て来ることがある。その時の気持ちはなかなか複雑で、恥ずかしいという思いもあるし「ああ、これ買った人このアルバム気に入らなかったのかなぁ」とか「金に困って売ったのかなぁ」「断捨離したのかな」といろいろ想いが巡る。とにかくその目の前にある中古盤の自分のアルバムはどういう経緯で売られたにしろ私自身にとっては愛おしいものなので私は「救出」と言ってますが大抵買います。
今日は2,3,ヶ月前に救出したウエストロード・ブルーズバンド再結成の時に録音したアルバム「ジャンクション」です。
ビクターのインビテーション・レーペルから1984年のリリースです。メンバーはウエストロードのオリジナル・メンバーでギターに山岸潤史、塩次伸二、ベースに小堀正、ドラムに松本照夫そしてヴォーカルの私、永井ホトケ隆です。
自分の昔のアルバムを聴くのは本当に好きやないんですが、今回はまあ中古レコードの話の流れということで私は約40年ぶりに聴きます。
まずレコードA面の1曲目
ジュニア・ウォーカー&ザ・オールスターズの1965年のヒット”Shot Gun”のカバーです。実は事務所の関係でクレジットされてないのですが途中のサックスソロはサックス・プレイヤーでありソングライターであり、かってグループサウンズ時代にブルー・コメッツのメンバーでもあった井上大輔さんです。もうお亡くなりになっているのですが、素晴らしくブロウするサックスソロを残してくださいました。井上さんは「ブルー・シャトー」「ガンダムの主題歌」ラッツ&スターの「ランナウェイ」、美空ひばりさん、中森明菜さんはじめたくさんの歌手に曲を提供した素晴らしい作曲家でもありました。

1.Shot Gun/ West Road Blues Band

井上さんはライヴにも来てくれてJIROKICHIでフルステージ吹いてもらったことがありました。とても優しい方で60年代の終わりにヨーロッパで観たジェイムズ・ブラウンの凄まじいステージの話もしていただきました。
それにしても録音のシンドラムの音が80年代初めやなぁという感じ。
実はこの録音のきっかけとなったのは、84年頃に高円寺のライヴハウス「JIROKICHI」のセッションでたまたまウエストロードのオリジナル・メンバーが揃っていました。それで亡くなったJIROKICHIのマスター荒井さんが「せっかくウエストのメンバーいるのに何曲かやったらどう?」って言われて久しぶりにメンバーで音を出したらすごく良くてそれで時々集まってやるようになったわけです。その流れでレコーディングの話も出たのだと思います。でも、もうそれぞれが個人的な活動をしていたのでそんなに頻繁にやれるわけでもなかったし、ツアーも単発でしかできませんでした。
84年の録音ですが、当時はシンセサイザー・ドラムとか録音機材もコンピューター関連のものが多くなっていた時代でその約10年前のウエストロードの最初のレコーディングとは録音方法もすっかり変わっていました。まあ、私はなるべくバンドと一緒に歌いたかったので後からの歌入れはほとんどやらなかった記憶です。ギタリスト二人のギター・ソロの別録音は時間かかったように思います(笑) ではそのギタリスト二人山岸潤史と塩次伸二のソロが交互にでて来る曲です。小堀のグルーヴするベースもよく聞いてください。

2.I Just Wanna Make Love To You/ West Road Blues Band

マディ・ウォーターズの50年代のブルーズを今のようにファンク・テイストにアレンジしたのは山岸潤史。当時ぼくらの間ではジョニー・ギター・ワトソンやジェイムズ・コットンのようなファンク・ブルーズが流行ってましてその流れです。
次の曲はジャズ・ブルーズのスタンダードでルー・ロウルズ、ジョニー・テイラーなどソウル・ブルーズ系のシンガーがよく歌う曲でした。
途中のピアノソロは佐山雅弘、続くギターソロは塩次伸二。二人ともなくなってしまったのですがいいソロ弾いてます。そしてやっぱりドラムの松本照夫のシャッフルは素晴らしいです。

3.I’d Rather Drink Muddy Water/ West Road Blues Band

基本的に私は自分のアルバムがリリースされたら以後聞きません。なので今日40年ぶりに聞いています。自分の歌はもう嫌なところばかり耳に付くので聞きたくないのです。
聴いてもらってわかると思いますがこのアルバムの特色の一つは豪華なホーンセクションです。ちょっとメンバーを紹介すると沢井原児、包國充、土岐英史、片山宏明、梅津和時、小林正弘、兼崎潤一・・とまあ日本を代表するホーン・プレイヤーたちが参加しています。
次の曲はその豪華ホーンセクションが見事に活躍してくれた曲です。
1975年に自分がロスアンゼルスでエタ・ジェイムズのライヴを観た時に彼女のこの歌に感銘していつか録音したいと思っていました。

4.I’d Rather Go Blind/ West Road Blues Band

サックスの包國くんと山岸が素晴らしいアレンジをしてくれました。
「君が他の男と去っていくのを見るくらいなら目が見えなくなった方がいい」というバラードですが、最近歌ってません。
当時は歌っても歌ってもなんかたどり着かない難しい曲でした。
今日は中古レコード屋さんで出会った自分の40年前のアルバム、1984年ウエストロード・ブルーズバンドのジャンクションを聴いてもらいました。いろんな思いが胸の中を駆け巡ります。
中古レコード店で昔の自分のレコードと出会うのは複雑な気持ちです。だれがどういう理由でアルバムを売ったのかわからないですが、自分としてはいろいろ思いもあるのでそのままにできず買ってしまいます。