2022.10.14 ON AIR

“Kick Off The Blues”リリース記念ライヴ at 弘前Eat & Talk vol.1

Live At Eat & Talk (photo by Ichigo Sugawara)

Kick Off The Blues /永井ホトケ隆

私の初めての弾き語りアルバム“Kick Off The Blues”がリリースされた去る8/17に弘前市にあるライヴ・レストラン”EAT & TALK”でリリース・ライヴをやらせていただきました。再びコロナ感染が広がっている中にもかかわらず、皆さんに感染対策をしっかりしていただき開催することができ、たくさんの方々に来ていただきありがたい限りでした。それで今日は完全に手前味噌ですが、その弘前でのライヴ音源を聞いていただこうと思います。
今回のアルバムは弘前のFM Apple Waveをキー・ステーションとした私がDJをやっているこの番組「ブルーズ・パワー」の15周年記念として作りました。当日は番組のスポンサーをされている青南商事の安東社長にも久しぶりにお会いできて、また社員の皆さんやアップルウェーブのパーソナリティの皆さんにも来ていただきました。同じアップル・ウエーブで音楽番組のDJをされている斎藤浩さんや以前ブルーズバー「ブルーズン」をやっておられた正井さんにも久しぶりに会うことができました。コロナが拡大してから弘前に行けなくなり、ずっとリモート録音で番組を続けて来たので久々の弘前は本当に嬉しかったです。本当は終わってから皆さんと弘前の夜の街へ呑みに行きたかったのですが、そこはぐっと自粛しました。
さて、ライヴですがアルバムと同じようにまずは私1人の弾き語りから始めました。1人で弾き語りはほとんどやったことがなく緊張しました。まず最初は自分の心を落ち着かせるアルバムにも入れたこの一曲で始めました。

1.Take A Little Walk With Me / 永井ホトケ隆

ずっとバンドで音楽をやって来たのでひとりで弾き語りというのは何か基準がわからない感じですね。音の感じとか演奏の良し悪しも全てバンド・サウンドを基準にして半世紀やって来たので、これでいいのかなぁという感じです。次の歌も半世紀ほど前に最初のバンド「ウエストロード・ブルーズバンド」で録音した曲ですが、ちょっとアレンジを変えて今回録音しました。自分の家ではこんな感じで歌ったり、ギターを弾いているのですがそんなものをそのまま録音して発売していいいのか・・という気持ちがどこかにあります。もう発売してしまいましたが・・。「何をしても俺がやったことだからほっといてくれよ」というこの歌の気持ちは黒人ブルーズを好きになってからずっと今も持っている気持ちです。

2.It Ain’t Nobody’s Business If I Do / 永井ホトケ隆

こうして自分がやったライヴの音源を聞いているだけで冷や汗ものですが、ミュージシャンには二つのタイプがいてひとつは自分が演奏して録音された音源を何度も聴く人、そういう人は自分の映像もよく観ますね。もうひとつは私のように自分の演奏を聴くのが嫌いな人。私は自分の映像を見るのも写真を見るのも嫌いです。なぜ自分の演奏を後から聞くのが嫌かといえば下手なところばかりに耳が行ってしまい落ち込むからですね。自分が理想とする歌や演奏があるのですが、そこに行けてないのに嫌気がさすわけです。「オレ、イケてる」なんて思ったことは半世紀の間に一度もないです。映像や写真もそうですが、自分がかっこいいと思ったことも一度もありません。
だから一番困るのがレコーディングですね。レコーディングは一曲録り終えるとプレイバックして演奏したテイクを聴くわけですが、あの時間が私には針のむしろです。その後トラック・ダウンとかミックス・ダウンとかマスタリングとか録音したものを何度も聞かなければ行けないあの作業が強烈な針のむしろです。誰かにOKテイクを決めてもらいたいです。すごく気分が落ち込む作業です、レコーディングは。
今回はサポートでギターのシュウこと上村秀右に来てもらったのですが、シュウは自分の演奏とか録音とかどう思ってるのでしょうか。
シュウにライヴでソロで歌ってもらった曲がなかなかいいい感じだったので1曲聴いてください。マディ・ウォーターズのブルーズのカバーです。

3.Gone To The Main Street/上村秀右

シュウとも随分長くなりました。彼はずっとイグノランツというトリオ編成のバンドをやりながら、ソロでも活動していてアルバムも何枚かリリースしています。これを機会にもっと2人でツアーもできたらいいなぁと思ってます。
ところでこのアルバムが売れていましてAmazonでは一位になった後品切れになってしまいまだ入荷できないようです。タワーレコードとHMVは最近やっと新たに入荷できたようです。たくさん買っていただきありがとうございます。そもそもがレコードの10インチアルバム完全限定販売ということでたくさんプレスしませんでした。まあ、売れるとは私もレコード会社も思ってなかったんですね。嬉しい誤算でした。後は私が持っている分しかないので、これもあまりないのですが、ライヴに来て会場でゲットしてください。

4.Nothing Takes The Place Of You / 永井ホトケ隆

今の曲でもそうですがシュウはギターが随分うまくなりました。上から目線ですが、歌の的確なバッキングがさらっとできるようになり。もっとたくさんのミュージシャンのバックもできると思うので彼と一緒にやりたい方、私に連絡してもらってもいいですよ。

今日は私の弾き語りアルバム“Kick Off The Blues”のリリース記念ライヴをやった弘前EAT & TALKでのライヴを聞いていただきました。

2022.10.07 ON AIR

1969年、オーティス・スパンとフリートウッド・マックの見事なブルーズ・コラボアルバム

The Biggest Thing Since Colossus/Otis Spain With Fleetwood Mac(BLUE HORIZON BH4802)

ON AIR LIST
1.Walkin’/Otis Spain With Fleetwood Mac
2.My Love Depends On You/Otis Spain With Fleetwood Mac
3.It Was A Big Thing/Otis Spain With Fleetwood Mac
4.Ain’t Nobody’s Business/Otis Spain With Fleetwood Mac

8月に自分の弾き語りアルバム”Kick Off The Blues”のリリース・ツアーで東北に行った折に、仙台の「パラダイス・レコード」という大きな倉庫のようなお店を構えているレコード屋さんに立ち寄りました。すごい数のレコードがあって全て見ることはできなかったのですが、そこで買ったレコードを今日は聞いてもらおうと思います。
シカゴ・ブルーズの偉大なピアニスト、オーティス・スパンとイギリスのブルーズバンド、フリートウッド・マック名義のアルバムでタイトルが“The Biggest Thing Since Colossus”直訳すると「偉大な人からのいちばん大きなもの」
当時イギリスで人気No.1ブルーズバンドだったフリートウッド・マックのメンバーのギタリストのピーター・グリーン、ダニー・カーワン、そしてベースのジョン・マクヴィ、そしてシカゴ・ブルーズのドラマー、S.P.リアリーがバックを務めたアルバムです。
これはフリートウッド・マックが所属していたイギリスのブルーズのインディーズ・レーベル「ブルー・ホライズン」がニューヨークのスタジオで録音したもので1969年の録音。この年フリートウッド・マックはアメリカ・ツアーを敢行し憧れのシカゴのチェス・レコードのスタジオでバディ・ガイやウィリー・ディクソンと”Jam At Chess”というアルバムを録音しています。その時にオーティス・スパンも参加していたので多分その流れでスパンをメインにしたアルバムを作る話になったのだと思われます。まずは1曲

1.Walkin’/Otis Spain With Fleetwood Mac

ロックとラテンとブルーズをミックスしたようなこういう激しい曲にも意外とオーティス・スパンは対応できていて、スパンのちょっと違う一面を聞いた感じです。
1969年にこの曲はシングルカットもされているので推し曲だったのでしょう。
次はスローブルースを聞いてください。スパンのピアノとピーター・グリーンのギターの相性がいいことがわかります。
“My Love Depends On You”「俺の愛はオマエ次第」という曲名ですが付き合っている女性に振り回されて疲れてどうしたらいいかわからないと、彼女を見つけたら俺のところに連れてきてくれと歌って結局「俺の愛はオマエ次第なんだなぁ」という内容です。

2.My Love Depends On You/Otis Spain With Fleetwood Mac

フリートウッド・マックは60年代から70年代にかけてイギリスのブルーズバンドの中では最もセンスのいいブルーズバンドだったと僕は思ってます。ピーター・グリーンはブルーズを弾かせたらイギリスで一番だったと思います。
当時イギリスで人気だったクリームはブルーズをデフォルメして時にオリジナルの本質を無くしてしまうように感じることもありました。でも、それが新しいロック(ニューロック)と呼ばれて人気になったのですが、ぼくはオリジナルの曲の良さがなくなっている感じがする曲も多いです。もう一つイギリスの代表的なブルーズバンド、ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズにある閉塞感のようなものがフリートウッド・マックにはなく、開放的で自由にブルーズをやり”Black Magic Woman”や”Albatros”のようなオリジナル曲も彼らならではのムードのある名曲でした。
次はミディアム・シャッフルの何気ない曲ですが、ギターにエフェクターをかけて弾くリフもいいムードを出しています。

3.It Was A Big Thing/Otis Spain With Fleetwood Mac

もうすこしピアノの音が大きいといいのですが。
次はオーティス・スパンの十八番と言ってもいい曲で”Ain’t Nobody’s Business”
スパンはこの曲を何度かレコーディングしていますが、このアルバムのバージョンも素晴らしい録音になっています。
ピーター・グリーンはギター・ソロもすごくいいのですがバッキングの時のオブリガードも少ない音数で曲にフィットとしたプレイをしてます。スパンのピアノが始まって4小節くらいで深いブルースのテイストが広がるところが素晴らしい。

4.Ain’t Nobody’s Business/Otis Spain With Fleetwood Mac

ピーター・グリーンのギターソロに呼応するように弾くオーティス・スパンのピアノ・・素晴らしいコラボだと思います。何か衝撃的なことがあるアルバムではないのですが、ずっと聞いているととても味のあるアルバムです。ピーター・グリーンやダニー・カーワンたちのプレイにはスパンへのリスペクトが感じられるし、スパンは白人のブルーズ大好きな若い彼らに溶け込もうとしているように感じます。マディ・ウォーターズもハウリン・ウルフもイギリスの白人ブルーズロック連中と録音を残しているのですが、どこか企画アルバムを仕事でやりましたという感じなのですが、このスパンとフリートウッド・マックは本当にいいコラボレーションができている内容のあるアルバムです。“The Biggest Thing Since Colossus”見つけたらゲットしてください。

2022.09.30 ON AIR

黒人音楽の殿堂アポロ劇場を描いた名著「黒人ばかりのアポロ劇場」の再版にちなんでJames Brown/Live At The Apollo を聴く

James Brown/Live At The Apollo

ON AIR LIST
1.MC/Introduction
2.Think/James Brown
3.Cold Sweat/James Brown(3:30cut out)
4.Kansas City/James Brown
5.Bring It Up/James Brown

ニューヨークのハーレムにある黒人音楽の有名老舗劇場「アポロ・シアター」
そのアポロ・シアターで繰り広げられたライヴを幼い頃から見ていたアポロの経営者の息子、ジャック・シフマンが書いた本”The Story Of Harlem’s Apollo Theatre”の翻訳本が新たに改訂されて出版されました。
タイトルは「黒人ばかりのアポロ劇場」翻訳されたのは武市好古さん。実は1973年に初版本が出版されてそれも持っているのですが、今回買い直して読んで見たら73年の時とは違う思いが湧いてきました。
とにかく「アポロ劇場」は黒人ミュージシャンにとって格別な場所でここで観客にウケなければダメという、エンターテイメントのランクが高い劇場で30年代からブルーズ、ジャズ、R&B、ソウル、ファンクといった音楽だけでなくコメディやミュージカル、ダンス、お笑いといった黒人エンターテイメントの殿堂です。ここで録音された素晴らしいライヴ・アルバムもいくつかありますが、今日は私が初めてアポロ劇場を知ったアルバムでもあり、聴いてもらうジェイムズ・ブラウンの素晴らしさを知ったアルバムでもある。ジェイムズ・ブラウンの名盤”James Brown/Live At The Apollo”を聴きながらアポロの話をしたいと思います。
まずは一曲
司会のMCから曲に入って行くライヴ感も楽しんでください。1967年6月25日のニューヨーク、ハーレムのアポロ・シアターへ

1.MC/Introduction

2.Think/James Brown

J.B.と一緒に歌っていた女性シンガーはマーヴァ・ホイットニー。彼女の強烈な歌声も印象に残りますが、J.Bの歌とバックのグルーヴがタイトに繰り出すスピード感がすごいです。
僕は初めてこのアルバムを聴いた時まだロックを聴いていたんですが、ロックにはないこのタイトなリズムや気持ちのいいグルーヴ感に虜になりました。ほぼ毎日このアルバムを聴いてました。
そして、そのあとにブルーズにハマってどんどんと黒人音楽の世界に入って行きました。だからこのアルバムは自分の記念碑的アルバムです。
J.B.は「ファンクの王様」ですが、そのJ.Bのファンクが完全に確立された曲が次の”Cold Sweat”
これを初めて聴いた時は自然と体動いて、リズムの渦の中に入ってる気持ち良さをすごく感じました。

3.Cold Sweat/James Brown(3:30cut out)

もうJBのあまりのカッコよさに今でもホレボレします。今でもこんなすごい演奏できるミュージシャンってそんなにいないと思います。
1962年にもJ.Bはアポロでのライヴ・アルバムをリリースしていて。これが2枚目です。
アポロの話をします。まずはニューヨークのハーレムという黒人たちが住む地域があり、そこではアポロができる前からベッシー・スミス、キャブ・キャロウェイ、ルイ・アームストロングなど黒人一流ミュージシャンたちが活躍し夜な夜な素晴らしいライヴが繰り広げられていました。アポロができる前から「コットン・クラブ」、ラファイエット劇場とかハーレム・オペラハウスなどクラブ、劇場がたくさんありましたが、時代の流れや景気などでなかなか長く続けるのは難しいことだったようです。そんな中、1930年代に開かれたアポロは黒人のための劇場で同胞の黒人観客にウケるかウケないか、ここでは観客の厳しい目がありました。そして有名なアマチュア・コンテストのイベント「アマチュア・ナイト」からも有名ミュージシャンが生まれている。エラ・フィッツジェラルド、ルース・ブラウン、グラディス・ナイト、ジャクソン5などアポロのアマチュア・ナイトに出演しています。
この本「黒人ばかりのアポロ劇場」にも書かれていますが、どんな有名なミュージシャンでもアポロのステージに上がる時はすごく緊張するといいます。それはやはり同胞に受け入れられるかどうかということが、それからの活動の源にもなるからでしょう。
次はブルーズのKansas Cityのカバーですが、J.B流のリズムとサウンドのアレンジがめちゃクールなかっこよさ。

4.Kansas City/James Brown

実は僕は三回アポロに行ってますが中に入ったことがないんです。70年代中頃に二回行ったんですが、その頃は経営が上手くいってなかったのかアポロがずっと閉められていた時期で、そのあと再開されて90年代にニューヨークにレコーディングに行った時も訪ねましたがその時は休みの日で、悔しかったのはその3日後がB.B.キングのライヴだったという・・・。
「黒人ばかりのアポロ劇場」にはステージからは見えない舞台裏の話(ギャラのことやステージ前のミュージシャンの姿など)が生き生きと書かれています。
ビル・コスビーはじめコメディアンたちのイタズラや辛辣な話も出てきます。ぜひ、ブルーズはじめ黒人音楽ファンには読んでもらいたい一冊です。
ではもう一曲、J.Bのクールなファンクを。

5.Bring It Up/James Brown

実はJBは4年前の1963年にアポロでライヴレコーディンしたアルバムも素晴らしいです。J.Bはいい演奏ができるアポロが好きだったんでしょう。

2022.09.23 ON AIR

エルヴィス・プレスリーに大きな影響を与えた歌手ロイ・ハミルトン

Mr. Rock and Soul/Roy Hamilton

On Air List
1.You Can Have Her/Roy Hamilton
2.Unchained Melody/Roy Hamilton
3.I’ll Come Running Back to You/Roy Hamilton
4.I’ll Come Running Back to You /Sam Cooke
5.Mr. Rock and Soul/Roy Hamilton

私も長い間ブラック・ミュージックを聴いて来たのですが、今日のロイ・ハミルトンは名前を知っているだけでなんとなくずっとスルーして来ました。しかしこの夏にエルヴィス・プレスリーを取り上げた映画「エルヴィス」が公開されて、エルヴィスに影響を与えたシンガーの中にロイ・ハミルトンの名前があり一度しっかり聴いてみようと今回アルバムをゲットしました。
エルヴィスは黒人のブルーズやR&B,ゴスペルそして白人の音楽であるカントリー&ウエスタンやヒルビリーに影響を受けて自分の歌唱スタイルを築き上げたシンガーです。貧しい白人家庭に生まれた彼は黒人たちが住むのと同じ地域に住んでいて自然と黒人音楽に親しんでいました。1950年代という時代に白人であるエルヴィスは音楽によって人種の壁を超えていったシンガーでもありました。その中に今日のロイ・ハミルトンが彼の大好きなシンガーとしていました。
ロイ・ハミルトンは1929年ジョージア州の生まれ。黒人シンガーとしては珍しくオペラやクラシックの歌唱法を勉強し、しかも教会でも歌っていたのでゴスペルの歌唱もできるシンガー。ハミルトンはエルヴィスはじめジャッキー・ウィルソン、”Good Rockin’ Tonight”の大ヒットがあるロイ・ブラウンはじめ多くのシンガーに影響を与えたシンガーです。特にプレスリーに与えた影響は強くて時々「ああ、こういう歌い方をエルヴィスは真似したんだな」とわかるところがいくつかあります。50年代の半ばに大手のエピック・レコードからデビューして”You’ll Never Walk Alone”がR&Bチャートの1位になり。そのあと次々とヒットを出すのですが、なんでも歌ういわゆるスタンダード・シンガーのスタンスなのでぼくはあまり興味がもてなかったのです。
エルヴィス・プレスリーはリトル・リチャードやジャッキー・ウィルソンなど黒人のブルーズ、R&Bシンガーの影響を受けたと言われているのですが、一番影響を受けたのは間違いなくこのロイ・ハミルトンでしょう。個人的にも2人は交流があったようです。

1.You Can Have Her/Roy Hamilton

基本的にバリトンの声なのですが高音へ行く時の声の伸び方が尋常じゃないです。音域の広さも歌のダイナミズムもすごいです。ライヴでこれを聴いたら興奮するでしょう間違いなく。
ロイ・ハミルトンはいくつかニックネームがあって”Mr.Rock And Soul”とか”The Gentle Giant”更には”The Golden Boy Of Song”なんていうのもあります。とにかく歌のうまさは最初から高く評価されていました。いろんな曲を聴いてみると彼を少し前に売れていたナット・キング・コールのように白人にも受けるシンガーにしょうとするレコード会社の意図が感じられます。バックはオーケストラでストリングスも入れてコーラスも入れてゴージャスなサウンドにしてますが、そこが僕があまり好きではないところです
次の歌なんかも彼の歌を聴かせるにはオーバー・アレンジで楽器が多すぎると思います。
白人のライチャス・ブラザースもロイの影響を受けたグループですが、次の曲は映画「ゴースト」で使われていたので知っている方も多いと思います。映画ではライチャス・ブラザーズのバージョンが使われてましたが、今日はロイ・ハミルトンで聞いてみてください。

2.Unchained Melody/Roy Hamilton

ロイさん、楽勝で歌っています。声の音域もすごく広いですし、元々の地声もいい声してます。そういう自分の特性を充分に発揮した上にクラシックの歌唱が入った朗々とした歌い方です。このあたりも好きになれるかどうかの分かれ目です。前今日のロイ・ハミルトンに強い影響を受けたジャッキー・ウィルソンも僕はすごく好きにはなれない。偉そうに言わせてもらうと歌いすぎ。歌が押しすぎというか目いっぱいありすぎて聴いているとしんどくなるんですね。こんな歌うまい人に本当に失礼ですれど。そこにオーケストラにストリングスと・・隙間がなくてちょっと息苦しい感じがします。

次はそのあたりを感じながら聴き比べを聞いてください。同じ曲ですが、ロイとサム・クックです。最初にロイを聞いてください。

3.I’ll Come Running Back to You/Roy Hamilton

4.I’ll Come Running Back to You /Sam Cooke

2人とも上手いのですが、この違いをなんて言うか難しいところです。どちらがいいと言うことではなくロイ・ハミルトンの方はやはりスタンダードな曲作りになっていて自分風のフェイクのテクニックを使ってを歌っていますがそのあたりが分かれ目で、サム・クックの方は歌も音もシンプルでサムが目の前で歌ってくれているような良さがあります。サムはこのあとソウル・ミュージックを作って行く偉大なミュージシャンになるのですが、この歌に関してもソウルの原型みたいなものを聞くことができます。ロイはやはり歌の上手いスタンダード・シンガーという立ち位置なんですね。
最後に”Mr.Rock And Soul”と呼ばれたロイのそのままのタイトルの曲です。

5.Mr. Rock and Soul/Roy Hamilton

エルヴィスはブルーズやカントリー・ウエスタンのカバーから始まり次第にスタンダード歌手になっていったのですが、そのプロセスで憧れたのがそしてお手本にしたのがロイ・ハミルトンでした。たぶんライヴを見たらロイ・ハミルトンの良さはもっとわかると思うのですが、ロイは1969年7月20日に心臓発作で40歳という若さで亡くなりました。

2022.09.16 ON AIR

評判の映画「エルヴィス」そのエルヴィス・プレスリーの初期の歌を聴く

Elvis At Sun/Elvis Presley (BMG BVCM-31120)

ON AIR LIST
1.That’s All Right/Elvis Presley
2.That’s All Right/Arthur Crudup
3.Blue Moon Of Kentucky/Elvis Presley
4.Good Rockin’ Tonight/Elvis Presley
5.Mystery Train/Elvis Presley
6.Milkcow Blues Boogie/Elvis Presley

映画「エルヴィス」が公開されてかなり評判になっていましたが、皆さんご覧なりましたか。
エルヴィス・プレスリーはビートルズ世代の僕よりひとつ前の世代になります。小さい頃、近所のやんちゃなお兄ちゃんたちがプレスリーを真似したリーゼントのヘアーで歩いていたのをおぼえてます。
今日はエルヴィス・プレスリーがその初期に録音を残した「サン・レコード」時代の音源を聴いてみようと思います。メンフィスのサン・レコードはブルーズ・ファンには愛着のあるレーベルでハウリン・ウルフ、ジュニア・パーカー、ジェイムズ・コットンなどのブルーズの録音をたくさんリリースしていました。メンフィスはエルヴィスの地元であることから彼も当然サン・レコードのブルーズをたくさん聴いていました。そして彼が子供の頃住んで地域が黒人たちの居住区と近かったために彼は自然とブルーズ、ゴスペルなど黒人音楽を耳にしていたと言います。
今日聴いてもらう”Elvis At Sun”というアルバムはエルヴィスが初期にどういう音楽的嗜好をしていたのかよくわかる一枚です。
ブルーズ派としてはやはりアルバムに収録されているブルーズ曲が気になりますが、まずは1946年にアーサー・クルーダップが発表した”That’s All Right”のカバー。この曲は1954年エルヴィスのデビュー曲となりました。最初に三曲録音した中の一曲で、他二曲のバラードがあまりバッとしなかった後に歌われました。プロデューサーでもあるサン・レコードの社長サム・フィリップスはこの曲でプレスリーの大きな可能性を見出したと言います。エルヴィスのアコースティックギターのリズムから曲に入ります。エレキ・ギターがスコッティ・ムーア ウッドベースがビル・ブラック。1954年7月のエルヴィスのデビュー・リリース

1.That’s All Right/Elvis Presley

ではここでこの曲の原曲、アーサー・クルーダップのオリジナル・バージョンをちょっと聴いてみましょう。

2.That’s All Right/Arthur Crudup

聴き比べてみるとエルヴイスはブルーズ・テイストもありますが、白人のカントリー・ウエスタンのテイストがありベースも弦をはじくスラップ奏法を使ってます。編成がギター、ウッドベース、そしてエルヴィスのアコースティックギターだけですが、リズムが良いのでグルーヴしていて音が薄いと感じさせません。その頃の社長のサム・フィリップスの口癖は「黒人のように歌える白人のシンガーが出てきたら売れるんだけどなぁ」でしたが、まさにその白人の若者がでてきた瞬間でした。
そしてB面は白人のブルーグラスのシンガー、ビル・モンローの曲のカバーでした。

3.Blue Moon Of Kentucky/Elvis Presley

いま思い出しましたが、確かこの曲、ビートルズのポール・マッカートニーがMTVのアンプラグドのライヴでカバーしていたと思います。
A面”That’s All Right”そしてB面”Blue Moon Of Kentucky”このシングルが売れたことで以後サン・レコードからリリースされたエルヴィスのシングルは片面がブルーズ、もう片面がカントリー、ヒルビリーというセットになりました。つまり、白人にも黒人にも買ってもらえるという目論見でしょう。しかしラジオで流れてくるのを聴いたほとんどの人はエルヴィスのことを黒人シンガーだと思ったようです。
2枚目のシングルのA面となったのはGood Rockin’ Tonight。オリジナルは1947年に黒人シンガーであり、この曲を作ったロイ・ブラウンによってリリースされた曲ですが、その後に歌ったワイノニー・ハリスで大ヒットしてチャート一位になりました。ロックン・ロールの始まりの1曲としても有名な曲です。
プレスリーは1954年9月、さっきのファースト・シングルのリリースから2ヶ月後の2枚目のリリース

4.Good Rockin’ Tonight/Elvis Presley

これもB面がカントリーの曲”I Don’t Care If The Sun Don’t Shine”でした。
今回聴いてもらってるエルヴィスのデビュー直後のサン・レコードの音源でブルース・ファンが気になる一曲は次の「ミステリー・トレイン」でしょう。同じサン・レコードの黒人ブルーズシンガー、ジュニア・パーカーが曲を作り歌った1953年の作品を2年後の1955年にエルヴィスがリリース。
「16両編成の列車がやってきた。俺の彼女を乗せて行ってしまったのさ」と彼女に逃げられた歌かと思いきや3番の歌詞では「線路の上を列車がやってくる。俺の彼女を乗せてやってくる」と彼女は戻ってきたみたいです。

5.Mystery Train/Elvis Presley

次の曲は少し前にON AIRしたココモ・アーノルドがオリジナル・シンガーの曲でミルクカウ・ブルーズ
この曲はスロー・ブルーズで始まるのですが、プレスリーが演奏を止めて「ちょっと変えようぜ」と言ってアップ・テンポのロッキン・ブルーズ、つまりR&Rになるというアレンジ。これでわかるようにロックン・ロールは基本的にそれまでの黒人ブルーズのビートを変えたもの、つまりダンサブルにした音楽だとわかります。
歌詞は出て行ってしまったカウ(乳牛)つまり彼女か、嫁さんに「お前は出て行ったけど、その内オレが恋しくなって俺にしたことを悔やむだろうよ」という曲。

6.Milkcow Blues Boogie/Elvis Presley

エルヴィスは黒人ブルーズにカントリーのテイストを入れて泥臭さを取り、それをロックする早いビートで歌いそれが当時の黒人のブルーズやR&Bを聴きに行けない白人の若者たちに受けたという面もあると思います。それに端正な顔、イケメンでありファッションも最先端。つまりとても歌の上手いルックスのいい白人のアイドルが50年代半ばに誕生したわけです。
来週はエルヴィスが歌手として最も影響を受けただろう、と言うか歌い方がそっくりのロイ・ハミルトンという黒人シンガーの特集です。