2022.01.28 ON AIR

昨年、突如リリースされたマディ・ウォーターズ全盛期1954年ライヴ

Muddy Waters and His Band LIVE IN LOSANGELES 1954 (GNP Record GNP9057)

ON AIR LIST
1.Baby Please Don’t Go/Muddy Waters
2.I’m Your Hoochie Coochie Man/Muddy Waters
3.I Just Want To Make Love To You/Muddy Waters
4.I’m Ready/ Muddy Waters
予備:5.Oh Yeah/ Muddy Waters

昨年、ブルーズ・ファンの間で評判になったアルバムがありました。マディ・ウォーターズのライヴの10インチ・アナログレコードです。LPより少し小さいサイズの10インチレコードで5曲収録されています。
1954年にロスアンゼルスのシュライン・オーディトリアムで行われたライヴで、素晴らしい内容ですがレコードでしかリリースされていません。
録音メンバーは歌とギターのマディ・ウォーターズ、ピアノにマディの右腕オーティス・スパン、ギターが名人ジミー・ロジャース、ドラムにエルジン・エヴァンス、ハーモニカはリトル・ジョージと記載されてますが、ジョージ・ハーモニカ・スミスのことです。鉄壁のメンバーです。

まず録音された1954年はマディ39才。ブルーズマンとして脂が乗り切った絶頂期です。収録されているのはA面が”BABY PLEASE DON’T GO” “HOOCHIE COOCHIE MAN” “I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU”の三曲。そしてB面が”I’M READY”そしてメンバー紹介のような喋りの録音が入っていて最後に”OH YEAH”。全5曲ですが、全盛期のライヴとしてとても貴重なものです。マディのライヴアルバムと言えば今までいちばん古いものは1960年のニューポートのライヴでしたが、これはそれより更に6年前ですからちょっと驚きでした。
まず最初から聞いてみましょう。ただひたすら「ベイビー、行かないでくれ」と歌うこの曲は古くからあるトラッドなブルーズですが、広く知られるようになったのはビッグ・ジョー・ウィリアムスが1935年に録音してから。マディは1953年にスタジオ録音してますからこれは翌年になります。

1.Baby Please Don’t Go/Muddy Waters

音のバランスが少し悪くてマディの歌とスパンのピアノの音が大きくて他が小さい。ベースがいないのでドラムがもう少し大きいと低音があっていいなぁと思ったりもしますが、なんせ1954年のライヴ録音で一つ一つの楽器の音を録ってないので仕方ないです。コンサートを主催した人が個人的な記録として録ったらしくてアルバムにするつもりは全くなかったようです。
でも、マディの歌とバンドの演奏の熱気は十分伝わってきます。
マディはすでにシカゴではかなり有名なブルーズマンになっていますが西海岸のロスあたりではどうだったのでしょう。

次はこのライヴが録音された1954年の1月にスタジオ録音された曲でR&Bチャート3位になり13週もチャートインしていたマディを代表する曲I’m Your Hoochie Coochie Man。
恐らくこのヒットがあったからロスのこの大きな会場のコンサートにも呼ばれたんだと思います。このシュライン劇場は5,6000人はキャパがある大きな会場でサム・クックのソウル・スターラースズ時代のライヴ録音もこの会場でした。あとグラミー賞の受賞式の会場としても知られていて、シカゴのクラブで歌ってきたマディにすればかなりのステイタス。「西海岸でもオレのブルーズぶちかましたるで」と気合いも入っていたと思います。この日のライヴにはあとギター・スリム、ジョニー・ギター・ワトソンも参加したようでかなり大きなコンサートだったと思われます。
シカゴから悠々とこの会場にやってきたマディの顔が見えるようです。そこで歌ったのがこの曲。

2.I’m Your Hoochie Coochie Man/Muddy Waters

脂ぎったマディが「俺はお前の精力絶倫男だ」と自信満々に歌う様子が目に見えるようです。
こういう音源が急に出てくることはたまにありますが、ブルーズマンとしては超有名なマディ・ウォーターズの音源はもう出尽くしたと思われていたので驚きでした。

すごく生々しくマディの歌声が聴けるこのライヴレコードなのですが、特に次の曲の生々しさはマディの真骨頂を捉えています。セクシーなブルーズ・スターとしてマディが女性たちにウケたわけもよくわかります。1960年のニューポートのライヴより6年前の更にギラギラしたマディが聞けます。まだまだこれから登っていく時代ですから。
きれいに言えば「お前と愛し合いたいんや」ストレートに言えば「お前と何をすごくしたいんや」という意味ですが、そう思って聞いてください。なるほど・・・と思うマディの歌です。

3.I Just Want To Make Love To You/Muddy Waters

もうマディの声の出方が半端やないです。パワーが有り余っている感じです。
2曲目、3曲目そして次の曲も全てこの年1954年のヒットです。つまり、マディの全盛期でありエレクトリック・シカゴ・ブルーズが作り上げられたその年のライヴです。だからこのライヴ盤はブルーズの歴史上にも大きな意味があります。
「俺は準備できてるけど、お前も準備できてるといいな」

4.I’m Ready/ Muddy Waters

いやもうマディがバリバリにノッてますね。こんな感じでライヴやってたんですね。
では全五曲聞いてもらいたいのですぐに次行きます!

5.Oh Yeah/ Muddy Waters

もう一度紹介しますと、このアルバムのタイトルは「Muddy Waters and His Band LIVE IN LOSANGELES 1954」です。
タワー・レコード、ディスク・ユニオンは売り切れてますが、名古屋のレコード店「ウォルターズ・ジューク」さんにならまだあるかも知れません。
貴重な素晴らしいアルバムです。是非ゲットして脂ぎったマディを聞いてください。ただしレコードしかありません。CDはありません。
ではまた来週Hey Hey The Blues Is Alright!