2023.12.29 ON AIR

朝ドラで話題の音楽「ブギ・ウギ」ってなんだろうvol.3

ON AIR LIST
1.It’s All Right Baby/Big Joe Turner & Pete Johnson
2.Boogie Woogie Country Girl/Big Joe Turner
3.Choo-Choo Ch’ Boogie/Louis Jordan
4.Ain’t That Just Like a Woman (They’ll Do It Every Time)/Louis Jordan
5.Guitar Boogie/Les Paul And His Trio

今年最後の放送です。
NHKTVの朝ドラ「ブギウギ」をやっているのでブギウギの特集を連続でやっているのですが、ドラマも佳境に入ってきましたね。
今回はブギウギ特集の3回目。
先々週聴いてもらったピート・ジョンソン、アルバート・アモンズ、ミード・ルクス・ルイスの3人のピアニストが有名プロデューサー、ジョン・ハモンド主催のコンサート「フロム・スピリチュアルズ・トゥ・スイング」でブギ・ピアノを披露したことで白人層にもブギが人気となり一大ブギ・ブームになりました。
その「フロム・スピリチュアルズ・トゥ・スイング」にピート・ジョンソンと出演したシンガー、ジョー・ターナーもブギウギのブームの中で有名になっていったシンガーです。元々はジャズ・クラブのバーテンダーをやっていて「歌うバーテンダー」なんて呼ばれていたらしいです。
ではまず、その1938年の「フロム・スピリチュアルズ・トゥ・スイング」のライヴ録音からピート・ジョンソンとジョー・ターナーがデュオでやっているブギの曲です。体がデカかったのでビッグ・ジョー・ターナーと呼ばれていました。1938年の録音で録音状態はあまり良くないですが聞いてください。

1.It’s All Right Baby/Big Joe Turner & Pete Johnson

ビッグ・ジョー・ターナーはジャズ・シンガーでもありR&Bシンガーでもあり、R&Rシンガーとも呼ばれ、かなり長く歌手として成功した人ですが、彼が歌っている感じは全くいつの時代も変わっていません。つまり、ブギというリズムが少し形を変えていつの時代にもあったからだと思います。いまの曲から20年近く経った1955年、ロックロールが人気の頃にも彼はブギウギと名のついた曲を歌ってヒットを出しています。

2.Boogie Woogie Country Girl/Big Joe Turner

ブギウギが少しずつ形を変えて50年代にR&Bやロックンロールになっていくのですが、その前40年代に現れたのがルイ・ジョーダンです。
ルイ・ジョーダンによって「ジャンプ・ブルーズ」と呼ばれる、後のR&RやR&Bの原型なる音楽が作られていくことになります。ルイ・ジョーダンはもともと「チック・ウエブ・オーケストラ」というジャズ・オーケストラでサックスを吹いていたのですが、大人数のオーケストラではなく7.8人編成の自分のコンボを作りコミカルな歌詞の曲でたくさんヒットを出しました。40年代の大スターでB.B.キングもチャック・ベリーも憧れ、B.B.は晩年ルイのトリビュート・アルバムもリリースしてます。そしてチャック・ベリーのノベルティな歌詞は実はこのルイ・ジョーダンの影響でもあります。
では、ルイ・ジョーダンのブギと名のつく最も有名なヒット曲、1946年に18週間R&Bチャートの1位に輝いた不朽の名作。

3.Choo-Choo Ch’ Boogie/Louis Jordan

先週、先々週聞いてきたピアノ・ブギのビートとサウンドの骨格にホーンとポップなメロディと歌詞を付け加えて、これはヒットするよなぁという気がします。しかし、忘れてはいけないのはブギのビートを作っているバンドの演奏のクオリティの高さです。まさにブギ・グルーヴとう感じです。
先ほどチャック・ベリーも影響を受けたと言いましたが、次の曲、特にイントロは絶対にチャックはコピーしたでしょう。チャック・ベリーの代名詞となったR&Rのイントロは実はルイ・ジョーダンのこの曲だったんですね。イントロよく聞いてください。

4.Ain’t That Just Like a Woman (They’ll Do It Every Time)/Louis Jordan

こういうブギのリズムをチャック・ベリーは次第に8ビートに変化させていってR&Rの誕生となるのですが、30年代のブルーズのブギが40年代にルイのジャンプ・ブルースとなり50年代にはチャック・ベリーのR&Rとなるという黒人音楽の変遷は本当に面白いです。
そして、ジャンプ・ブルーズはR&Rともう一つリズム&ブルーズという音楽のルーツにもなっています。
ピアノのブギの時代から次第に楽器の主役に乗り出してくるのがギターで1947年にはその曲名も「ギター・ブギ」という曲がリリースされています。ギタリストとはかのレス・ポール。優れたギタープレイヤーでありギターそのものの発展、制作にとてつもなく大きな貢献をしたレス・ポールのインスト曲です。

5.Guitar Boogie/Les Paul And His Trio

この40年代中後期にはブギという言葉は完全にアメリカの音楽の中でダンス・ミュージックの一種を表す言葉として認知されています。
たぶん、星の数ほどブギと名のつく曲が作られていると思いますが、来週新年第一回はいよいよ日本のブギの女王、笠置しづ子さんの特集です。
今年も番組を聞いてただきありがとうございました。日本で唯一のブルーズ専門番組としてまだまだ頑張ります。
新年も「ブギで踊れ!」永井ホトケ隆でした。