祝来日!メイヴィス・ステイプルズ大特集「メイヴィスと黒人音楽の歴史」Vol.2
フォーク、ゴスペル、メッセージソング時代のステイプル・シンガーズ



ON AIR LIST
1.Freedom Highway/The Staple Singers
2.We Shall Overcome /The Staple Singers
3.For What It’s Worth/The Staple Singers
4.The Weight/The Staple Singers
5.How Many Times/Mavis Staples
3月に来日するメイヴィス・ステイプルズの大特集2回目です。
ステイプル・シンガーズはゴスペル・グループですが50年代後半から60年代にはキング牧師に傾倒し黒人の公民権運動にも積極的に参加しました。人種差別の反対や戦争反対などをテーマにしたメッセージ・ソングも歌い始めたのはその頃でした。
今日最初の曲は公平な選挙権を求めて、また人種差別反対の趣旨の元、キング牧師の主導のもとにセルマからモンゴメリまでの大きなデモ行進が1965年3月7日から25日にかけて行われました。この曲は行進参加者に捧げられた曲で「自由のハイウェイを行進しよう。来る日も来る日も前に進もう。私の決心は固い 私はもう引き返さない。自由のハイウェイを行進しよう」という内容です。シカゴの教会で行われたライヴから。
1.Freedom Highway/The Staple Singers
60年代の黒人音楽はR&Bがソウルと呼ばれるものに変わっていく時代で北部のモータウンレコード、南部のスタックスレコード、ニューヨークのアトランティックレコードなどが中心となって華やかな黒人音楽のシーンを作り、白人層もそこに魅力を感じて行った時代でした。
政治社会的には60年代は黒人公民権運動やベトナム戦争の反戦運動が盛り上がり、そんな中でよく歌われたのが次の有名曲”We Shall Over Come”日本語のタイトルは「勝利を我らに」ですが、直訳すると「私たちは打ち勝つ」。自分たちを励まし気持ちを鼓舞する内容で広くヒットし日本語でも歌われました。ご存知の方も多いと思います。
2.We Shall Overcome (Live)/The Staple Singers
この教会でのライヴ・アルバム”Freedom Highway”は60年代のステイプル・シンガーズのライヴ・ステージを聴くことができる貴重なものです。
60年代初めに白人層にも人気が出てきてゲイリー・クレイマーという敏腕マネージャーがつくようになります。クレイマーは当時の白人のフォーク・ソング・ブームを見透してフォークをステイプル・シンガーに歌わせました。次のバッファロー・スプリングフィールド(ニール・ヤング、スティーヴン・スティルス参加)の”For What It’s Worth”などのカバーやボブ・ディランの曲のカバーなども始めました。この時期に日本の民謡「ソーラン節」も録音しています。
次第に白人の若者ファンが増えロックコンサートにもオファーされロックの殿堂「フィルモア」にも出演しましたが、それが宗教的でなく商業主義的と捉えられ黒人教会では逆に反発を受けることにもなりました。60年代はまだまだゴスペル・シンガーが聖なるゴスペル以外の曲を歌うことに反感を持つ同胞黒人も多く、ステイプル・シンガーズもこの当時ある黒人教会で全く無視され拍手もなかったという話も残っています。
バッファロー・スプリングフィールドがヒットさせた”For What It’s Worth”なのですが、これは1966年に 10時以降の外出禁止令やロスで行われたデモへの弾圧に抗議してバッファロー・スプリングフィールドのメンバーであったステファン・スティルスによって作られたメッセージ・ソング。
3.For What It’s Worth/The Staple Singers
60年代中頃にメンフィスの「スタックス・レコード」と契約してゴスペルとフォークにメッセージ・ソングが混じったアルバムをブッカー・T&MG’sのギタリスト、スティーヴ・クロッパーのプロデュースでリリースするのですが、これがなんとも中途半端なもので選曲もあまりステイプル・シンガーズに寄り添っているとは言えないものだと感じました。
それが1968年リリースされたアルバム”Soul Folk In Action”と続けてリリースされた”We’ll Get Over”でした。”Soul Folk In Action”でのいちばん印象に残る曲はのちにザ・バンドのラストコンサート「ラスト・ワルツ」でステイプル・シンガーズが歌い、メイヴィスがいまも歌い続けているこの曲です。
4.The Weight/The Staple Singers
いい曲なんですが、この歌の内容はいろんな人の名前や宗教的な言葉も出てきてなんと理解したらいいのか難しいのですが、「自分が背負っている人生の重荷を下ろせよ」という風に僕は捉えてます。
スティーヴ・クロッパーはメイヴィスの初ソロ・アルバムもプロデュースしています。まあ、スタックスと契約していた関係でクロッパー・プロデュースになったのだと思いますが、ゴスペル界ではアレサ・フランクリンと双璧といっていい逸材のメイヴィスのプロデュースが成功したとは言い難いものでした。それでもメイヴィスは歌唱力が抜群にあるのでかろうじていい歌を聴かせていますが・・。
そして2枚目のソロ”Only For The Lonely”ではプロデューサーが変わります。敏腕プロデューサーとして名高いドン・ディヴィスに代わり録音スタジオもマッスル・ショールズに移りドラムのロジャー・ホーキンスやベース、デヴィッド・フッドといった当時の最先端のサザン・ソウルを作っていた連中が参加していいアルバムになりました。そのアルバムから。
「あなたは何度私の心を踏みつければいいのか。私は何度泣けばいいのか。私は何度試されるのか。私が這って戻ってくると思うのか」というひどい目に遭わされた男に向かって歌っている歌。メイヴィスのコントラルトの重い声が生かされたいい曲。
5.How Many Times/Mavis Staples
さてメイヴィス・ステイプルズ特集、来週はいよいよスタックスレコードでソウル・コーラスグループとしてステイプル・シンガーズが大きく花を開いた70年代に突入します。いまに残る名曲の数々をON AIRします。ではまた来週。Hey,Hey,The Blues Is Alright