2024.11.15 ON AIR

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集

スタンダップ・ブルーズ・シンガーの大本命、ボビー・ブルー・ブランド その1

ON AIR LIST
1.Farther on up the Road/Bobby Blue Bland
2.I Don’t Want No Woman/Bobby Blue Bland
3.I Smell Trouble/Bobby Blue Bland
4.Cry Cry Cry/Bobby Blue Bland
5.Don’t Cry No More/Bobby Blue Bland

ボビー・ブランドの正式な芸名はボビー・ブルー・ブランドと言います。このブルーが入るところに彼が歌ってきた歌におけるブルーズ濃度の濃さが表れているように思います。今回ギターなど楽器を弾かずに歌だけで勝負するスタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集でやはりスタンダップ・ブルーズ・シンガーと言えばまずこのボビー・ブルー・ブランドを思い浮かべる
人も多いと思います。
1930年生まれで同時代にメンフィスで活動を始めたB.B.キングの5才年下。幼少の頃からゴスペルを歌ったそのルーツはブルーズを歌う時に彼の大きな武器になりました。その彼がボビー・ブルー・ブランドとしてその名を知られるようになったのは1952年にデューク・レコードと契約してから。
最初のヒットは1957年の”Farther on up the Road”
「その道の行く先でおまえがオレを傷つけたようにオマエを傷つけるヤツが出てくるやろ。いつかオマエにもわかるよ。自分で蒔いた種は自分で刈らなあかんっていうことわざがあるやろ、あれは本当や。オマエが誰かをひどい目に合わせるように誰かがオマエをひどい目に合わせることになるんや。笑っているオマエがいつか泣くことになる。これから行く道の先でオレがウソを言うてないことがわかるやろ。この道の行く先でそのうちオマエはわかるはずや」
フラれた男の恨み節のようですが、実にブルーズという感じの歌詞です。

1.Farther on up the Road/Bobby Blue Bland

途中で熱いギター・ソロを弾いているのはブルーズギターの名手パット・ヘア。どっしりとしたシャッフル・ビートを叩き出しているのはのちにB.B.キングのバンドマスターになるソニー・フリーマン。このくらいのテンポのシャッフル・ビートは本当に難しいです。

同じ57年にリリースされたのが、これも今やモダンブルーズ・スタンダードの一曲になっている”I Don’t Want No Woman”
そしてその曲を少しテンポを上げて60年代終わりにギター・サウンドで見事にカバーしたのがマジック・サム。この原曲のギターはクラレンス・ホラマンでマジック・サムはほぼ完コピに近いカバーしてますのでサムも聞いてみてください。アルバム”West Side Soul”に収録されています。
「俺の人生にツベコベ口出すような女はいらん」と突き放すような男らしいブルーズですが、なんか裏があるかもです。

2.I Don’t Want No Woman/Bobby Blue Bland

いまの曲はホーンセクションが入ってないコンボ編成でしたが、ボビー・ブランドは次第に売れるようになるとホーンセクションがついてしっかりアレンジされたゴージャスなサウンドになっていきます。でも実はブランドはギターを重要視していてバット・ヘア、クラレンス・ホラマン、のちに出てくるウエイン・ベネットと必ずギターの名手を起用しています。
次の曲もギターはクラレンス・ホラマン。まさにブルーズという曲。なんか厄介なことが起きるような気がすることをI Smell Troubleつまり「トラブルの匂いがする」と表現しています。そのトラブルが具体的に何かということは歌われてなく、それは男女間のトラブルか金銭的なトラブルか、行く先々の漠然とした不安感なのかわからない、何か悪いことが起きるのではないかというブルーな気持ちが表現されてます。

3.I Smell Trouble/Bobby Blue Bland

途中で「そのトラブルに逃げたり隠れたりしないでオレは笑顔で立ち向かうよ。そしてそれが過ぎ去って行くのを願うばかりさ」という一節がいいですね。
ブルーズのスタンダードとなったこの曲もバディ・ガイ、アイク&ティナ・ターナー、この前特集したリトル・ジョニー・テイラーなどたくさんのカバーがあります。歌もギターもモダンブルーズの教科書のような曲です。

デューク・レコードで以前からアレンジや録音に参加していたトランペットのジョー・スコットが編成したオーケストラがボビー・ブランドのレコーディングバンドとしてつきます。1957年くらいです。トランペットにサックス、トロンボーンにピアノ、ギター、ドラム、ベースという豊かなサウンドになり、それがボビー・ブランドの歌声とうまくマッチしてのちに「デュークのブランド」と言われるようになります。

4.Cry Cry Cry/Bobby Blue Bland

後半に向かってブランドのゴスペル培った力強い歌声を聴くことができます。バックの演奏や録音のサウンドのクオリティが上がった感じがします。
いまの歌は”Cry Cry Cry”「オレのために泣いて欲しい。オレに涙を見せて欲しい。誰かが君を傷つけているように君は僕をずっと傷つけている。ひざまずいて泣いて欲しい。そして君への愛は無駄ではなかったと僕は気付くだろう」
なかなか複雑な大人の愛の歌です。

この頃の録音のドラマーはのちにジェイムズ・ブラウンのバンドに加入するジョン・ジャボ・スタークス、ギターはかのT.ボーン・ウォーカーも絶賛した名人、ウェイン・ベネット。もうこの頃のデュークのスタジオ・ミュージシャンは鉄壁です。そういう腕のあるミュージシャンがバックをしていたこともブランドの歌を引き立たせたと思います。次の曲ではジョン・ジャボ・スタークスのドラムが素晴らしくグルーヴしていて自然と体が動きます。
さっきの歌はぼくのために泣いて欲しいという歌でしたが、次は「泣かないで」です。
「君の愛が本物だとわかったからもう泣かないで。川のように海のように君はたくさん泣いた。わかってるよ君の愛が本当だということは。だからもう泣かないで」

5.Don’t Cry No More/Bobby Blue Bland

長くブルーズを聞いているとブルーズには本当にたくさんいい歌があり、れぞれの歌い方があります。例えば20、30年代のチャーリー・パットンやブラインド・レモン・ジェファーソンのような衒いなく思うままを吐き出すような歌、そしてその流れを汲むライトニン・ホプキンスやジョン・リー・フッカーのようなドライな、熱のある砂漠の風のような歌、そしてB.B.キングやこのボビー・ブランドのような力強いゴスペルの唱法の影響が強いアーバン・ブルースの歌・・・それぞれに魅力的です。その中でもボビー・ブランドがブルーズ・シンガーとしてブラック・ミュージックの世界で評価が高いのは黒人の人たちが感じる自分たちの生活の匂いをその歌から感じさせるからだと思います。
来週またスタンダップ・ブルーズ・シンガーの大本命、ボビー・ブルー・ブランドをお送りします。

2024.11.08 ON AIR

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集

不滅の名曲バラードを残した不世出のスタンダップ・シンガー、ジョニー・エース

ON AIR LIST
1.My Song/Johnny Ace
2.Don’t You Know/Johnny Ace
3.Pledging My Love/Johnny Ace
4.How Can You Be So Mean/Johnny Ace
5.Saving My Love For You/Johnny Ace

先週と先々週On Airしたリトル・ウィリー・ジョンにも匹敵する名シンガー、ジョニー・エースが今回のスタンダップ・ブルーズ・シンガーです。
ジョニー・エースは50年代前半素晴らしいブルーズマンたちが群雄割拠していたメンフィスの音楽シーンに登場してB.B.キング、ボビー・ブランドたちと並ぶ人気のシンガーでした。そのふたりとクラブが立ち並ぶメンフィスの”ビールストリート”から名前をとった”ビールストリーターズ”というグループにも参加していた実力の持ち主。
時代はブルーズからR&Bそしてソウルへと流れていく激しい変化の時代。その中で飾り気のないバラードを歌って真っ先に全国的なシンガーとなったのはB.B.よりもボビー・ブランドよりも早いジョニー・エースでした。
先週聞いたリトル・ウィリー・ジョンもバラードがすごく上手い歌手でしたが、ジョニー・エースはウィリー・ジョンより歌声の音域も低くて柔らかく奥深い朴訥な感じもある男っぽい声です。その歌声で珠玉のバラードを残したシンガーです。
まずデビューの1952年、22才の時にデューク・レコードで録音した最初の曲”My Song”
「君は涙して僕と別れると言った。いま君がいなくなって1時間が1年のように思える、だから愛する人よ、僕は僕の歌を歌う。僕はまだ愛してる。帰ってきてくれないか。僕たちは永遠に一緒のはずだよね」
「僕の歌」”My Song”

1.My Song/Johnny Ace

バックのサウンドのイナタさとジョニー・エースの飾らない歌声。歌い上げないでもソウルフルでじんわりと心に染み入ってくる歌。バラードシンガーの一つの手本みたいな人だと思います。実際B.B.キングもブランドもこのジョニー・エースの歌い方を研究したと言われてます。そしてアレサ・フランクリンが68年にこの曲を録音しています。

次の曲はまさに50年代中頃に流行ったジャンプ系のブルーズでスタンダップ・シンガーの本領発揮という感じです。
「オレが君のことすごく好きなこと、愛してること知らんのか」

2.Don’t You Know/Johnny Ace

どこかイナタさもあるバックのバンドがめちゃスイングしていて気持ちいいブルーズです。日本人でブルーズを好きだという人たちはギター・サウンドが好きな人が多いのですが、こういうオーケストラをバックにしっかりアレンジされたブルーズというのが苦手な人も多いんですがバックのギターにまで耳が行ってないのが残念です。いい録音には必ずいいギタリストが参加しています。                           
デビューしてすぐに全国的に売れまくっていたジョニー・エースは “Cross My Heart,” “Please Forgive Me,” “The Clock,” “Yes, Baby,” “Saving My Love for You,” そして”Never Let Me Go.” とヒット連発でその年のラジオで「最もONAIRされたシンガー」に選ばれました。
しかし1954年にビッグ・ママ・ソーントンとその年の長いツアーを終えてテキサスに着いて最後のライヴの前に彼は楽屋で酔っ払い、玉が入ってないと思った拳銃をふざけて自分の口に向けて撃ってしまったのです。それはクリスマスの夜でした。ロシアン・ルーレットの遊びで自分を撃ったという話もあるようですがちょっとふざけてみたのが真相のようです。それを目の前で見てしまったビッグ・ママは本当に髪の毛が逆立ったそうです。それにしても同時代の名シンガー、サム・クックは33才、リトル・ウィリー・ジョンは30才、そしてジョニー・エースは25才と次の世代を担う名シンガーが次々と若くして亡くなったのは本当に残念。
生涯に21曲しか録音しなかったのに8曲がヒット・チャートインしたジョニー・エース。その内3曲が1位という凄さですが、次は彼が亡くなった後にリリースされ10週間1位となった不滅のバラード。プロデュースしたジョニー・オーティスの演奏するビブラフォンの甘い音が印象的です。

3.Pledging My Love/Johnny Ace

1954年12月から10週連続1位の”Pledging My Love”

実は僕は自分のバンド”ブルーズ・ザ・ブッチャー”でジョニー・エースのジャンプ・ブルーズ・ナンバー”How Can You Be So Mean”をカバー録音しているのですが、ジョニー・エースはバラード・シンガーとして有名ですがアップテンポの曲でも見事な歌を残しています。丸みのある太い男らしい声で軽快に歌うのも彼の魅力です。「オレがおらん時にオマエは新しい男とキスしているやろ。オレの心は重くて冷たくなってる。これ以上続けたらオレは気狂ってしまう。オマエはどうしてそんなに意地が悪いんや。どうしてそんなにひどいことができるんや」

4.How Can You Be So Mean/Johnny Ace

次の曲ですが、内容がすぐに一緒にはなれないけど「僕の愛は君のために取ってあるんだ」という歌だと思う。「僕たちは一緒になるのにそんなに時間はかからない。そして一緒になったらその日から僕は君に愛してもらうよという内容。でも、なんで今すぐ一緒になれないのか気になります。大丈夫かこの男という勘ぐりもありますが、まあまあ・・ということで。

5.Saving My Love For You/Johnny Ace

この曲はリトル・ミルトン、アーマ・フランクリン、タイロン・ディヴィスと多くのシンガーがカバーしています。

ブルーズからR&Bに移っていく時代にやはり重要なのは歌の力と曲の良さだったと思います。ジョニー・エースには亡くなってからリリースされた「メモリアル・アルバム」という有名なアルバムがあります。是非、ゲットしてください。

 

2024.11.01 ON AIR

ブルーズは歌だ!スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集

ジェイムズ・ブラウンはじめ多くのシンガーに敬愛された稀代のシンガー、リトル・ウィリー・ジョン vol.2

ON AIR LIST
1.Let Them Talk/Little Willie John
2.Leave My Kitten Alone/Little Willie John
3.Leave My Kitten Alone/The Beatles
4.Sleep/Little Willie John/Little Willie John
5.I’m Stickin’ With You Baby/Little Willie John

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集は先週に引き続きリトル・ウィリー・ジョン。彼が活躍したのは50年代の中頃から60年代にかけてですから黒人音楽の主流はブルーズからR&Bへ、さらにソウル・ミュージックに移行していく時代です。曲調も色々なスタイルの曲が生まれリトル・ウィリー・ジョンにも様々な曲が提供されましたが、どれも難なく歌ってしまうところがすごいというか腹立ついうか・・(笑)。
今日の1曲目はリトル・ウィリー・ジョンを代表する曲で僕もいつか録音したい大好きな曲です。
歌詞の内容は「彼女とのことを悪く言いふらしてる奴らは言わせておけよと。どんなに君のことを愛しているか世界中の人に知ってもらいたいくらいだ。あいつらは俺たちの愛をぶち壊したいんだよ。でも、俺たちの愛はずっと続くんだよ・・・」と熱烈な愛の歌です。ウィリ・ジョンの強力な歌唱力にただただ感嘆するばかりです。

1.Let Them Talk/Little Willie John

この曲にはロバータ・フラックがテンポを落としてしっとりと歌い上げた素晴らしいカバー・バージョンもあります。

次の曲は1959年リリース。R&Bチャート13位。タイトルが”Leave My Kitten Alone”「オレのKitten(オレの子猫ちゃん)に手を出すなよ」という意味です。この曲のことを調べていたらビートルズがカバーしていることがわかりまして、そのアルバム僕持ってました。
この曲はビートルズが1964年にリリースした”Beatles For Sale”のためにレコーディングしたが長くお蔵入りになっていて94年に『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』に収録されました。”Beatles For Sale”はビートルズがたくさんカバーをやっているアルバムですが、しかしすごくメジャーな曲でもないこの曲をどうしてビートルズが知ったのか知りたいです。この曲を選んだビートルズの選曲のセンスの良さにも改めて感心します。どうもリード・ヴォーカルをとったジョン・レノンがこの曲を好きだったようです。ウィリー・ジョンのオリジナルの良さを壊さず、自分たちのテイストでカバーしてます。ジョン・レノンの素晴らしい歌唱が聞けます。ということでウィリー・ジョンとビートルズと両方聞いて見ましょうか。
最初にリトル・ウィリー・ジョン

2.Leave My Kitten Alone/Little Willie John

バックで「ミャ」っていうおもろい女性コーラスが入っているのはたぶん子猫の声を模したものだと思います。
次はそのミャは入ってないビートルズ・ヴァージョン。たぶんビートルズがデビューする前のハンブルグのクラブとかリバプールのキャバーン・クラブの下積み時代に何度もこの曲をやっていたんだと思います。

3.Leave My Kitten Alone/The Beatles

ビートルズもいいんですよね。リズムがすごくグルーヴしていて歌がしっかりしていてさすがビートルズです。

リトル・ウィリー・ジョンに戻ります。次の曲は1960年にR&Bチャート10位 Popチャート13位まで上がった曲です。
Sleepですからタイトルの意味は「眠る」
歌詞は「私たちは眠るのがめちゃ好き。一日の終わりにその日の喜びが消え去るとき、夢の中で日々の甘い思い出が繰り返される。眠っている間に眠ってる時に眠っている間に」

4.Sleep/Little Willie John

とてもPopなサウンド作りです。黒人音楽のヒット・チャートだけでなく白人のPopチャートにも13位まで上がった感じがわかります。ストリングスを入れたソフトなアレンジですがやはり白人層にも売れたいという制作側の気持ちがあったのでしょう。
歌が上手い人というのは逆に言うとなんでも歌えるのでいろんなプロデュースを受けやすく、ウィリー・ジョンもジャズやスタンダードにも手を出していますが、結局オリジナルのR&Bを歌った時にこそその本領を発揮しています。その辺はサム・クックなんかも同じでサムも先輩のナット・キング・コールを狙ったようなジャズ・アルバムを出しています。しかしキング・コールはもともとジャズ・フィールドのミュージシャンなので、ゴスペルからR&Bでスターになったサム・クックとは違います。サムももちろん歌が上手いのでクオリティはあるのですが、ジャズは「なんか違うなぁ」と言う感じがします。
やはりウィリー・ジョンもジャズ風味より次のようなJumpブルーズ風のR&Bの方が僕は好きです。

5.I’m Stickin’ With You Baby/Little Willie John

リトル・ウィリー・ジョンはもっとたくさんの人に知られてもいい優れたシンガーなのですが、同時代のサム・クックほど白人に受けずポピュラーにならなかったのですが、黒人ミュージシャンの中では偉大なシンガーとして認められています。そして海を渡ったイギリスのビートルズのように白人でも彼の歌の素晴らしさをわかっているミュージシャンもいたというのがなんとも嬉しいですね。
ウィリー・ジョンは喧嘩した相手をナイフで刺して殺してしまい、服役中の68年に刑務所で亡くなってしまいました。わずか30才でした。
スター・シンガーになるには歌唱力や曲の良さだけではなく、マネージメント側の売り出し方ビジネスのつながり、レコード会社のプロモーションの力、また本人のルックスや受ける印象などいろんな要素が必要です。しかし。歌だけで言えばウィリー・ジョンはとてつもない歌の才能と天性の資質があったシンガーでした。
今回の「スタンダップ・ブルーズ・シンガー」特集は不世出の名シンガー、リトル・ウィリー・ジョンでした。

 

2024.10.25 ON AIR

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集 第六回目

Little Willie John vol.1

ジェイムズ・ブラウンはじめ多くのシンガーに敬愛された稀代のシンガー、リトル・ウィリー・ジョン 

ON AIR LIST
1.All Around The World/Little Willie John
2.I Need You Love So Bad/Little Willie John
3.Talk To Me, Talk To Me/Little Willie John
4.Fever/Little Willie John
5.My Love-Is (Underdub Take 9)/Little Willie John

今回のスタンダップ・シンガーのシリーズでリトル・ウィリー・ジョンは特集しないのですかと言った人がいて「そや、このリトル・ウィリー・ジョンはやらなあかん」というくらいブルーズ、R&Bで大切なシンガーです。。
リトル・ウィリー・ジョンは50年代から60年代にかけて卓越した歌唱力を持ちヒットを連発したシンガーで私の中では同時代によりポピュラリティがあったサム・クックと同等の偉大なシンガーです。
彼の最初のヒット。1955年キング・レコードからのデビュー曲です。「オレがおまえを愛してないなんてことはモナリザが男だというくらいありえないことだ」要するにめちゃ愛してるという熱愛のブルーズ。R&Bチャート5位まで上がったヒット。

1.All Around The World/Little Willie John

ちょっとチリチリというノイズが聞こえるかも知れませんが、僕が持ってるアナログLPレコードからデジタルに変換してるのでノイズがありますが勘弁してください。
いや~めちゃ声出てますね。もう楽勝ですね。バックの演奏も素晴らしいです。これはキング・レコードのスタジオ・ミュージシャンたちです。
今の曲はブルーズのスタンダードとなって60年代にもリトル・ミルトンやルース・ブラウンにもカバー録音されています。
次の曲はこの前ジュニア・パーカーのアルバムからON AIRしましたが、オリジナルはこのリトル・ウィリー・ジョンです。
珠玉のブルーズバラード。

2.I Need You Love So Bad/Little Willie John

今のギターは多分ミッキー・ベイカーというキングレコードのスタジオ・ミュージシャンですが、この人がまたギター名人でバッキングもソロもめちゃ上手いし、センスもいいです。
次の曲は僕も昔録音して今もカバーして時々歌っていますが、これが初めて聴いたウィリー・ジョンの曲だったかも知れません。
「僕に話しかけてくれ、僕に話して、君が話してることを聞くのが大好きなんだ。君の甘く優しい話し方でね。前に聞いたことがある君が愛について話すところはいつもすごくい感じなんだ。僕が好きなそのところをもう一度話してくれよ」
最高です。

3.Talk To Me, Talk To Me/Little Willie John

同時代のスーパースター、サム・クックと実力的には同等の素晴らしいシンガーだと思います。もっともっと評価されていいシンガーです。
この曲を作った人を今回初めて知ったのですが、ジョー・セネカという黒人俳優で僕も観たことがある「クロスロード」という映画でウィリー・ブラウンンの役を演じていた役者。あの映画は確か音楽をライ・クーダーが担当していました。そのジョー・セネガさんがソングライターをやってた頃にこの曲を作ってたとは・・。僕もカバー録音させてもらったんですが、印税届きましたかね。

次は”Fever” リトル・ウィリー・ジョンの歌の中でいちばん有名な曲で、いまやブルーズでもR&Bでもジヤズでも取り上げられるスタンダードになっています。1956年R&Bチャートの1位。ペギー・リーのヴァージョンで知ってる方も多いと思いますが、ブルーズではバディ・ガイ、かのエルビス・プレスリーそしてマドンナもカバーしています。「どんなに貴女を愛しているか、どんなに貴女に恋い焦がれているか、貴女にキスされて抱きしめられると恋の熱(Fever)に浮かされてしまう」

4.Fever/Little Willie John

ようできた曲です。曲も歌詞も歌もアレンジもようできてます。
今のFeverはこのウィリー・ジョンがオリジナルシンガーです。ウィリー・ジョンは子供の頃、ジャズのデューク・エリントンの楽団で歌ったことがあったり、大人になってからもジャズ・オーケストラの専属歌手をやっていたこともある実力の持ち主ですが、やはり彼の本領はR&Bです。

ウィリー・ジョンが歌手として本当に素晴らしいということを証明するようなテイクを次の曲で聞いてください。ウッド・ベースとフィンガー・スナッピングだけで他の楽器は何もないけど、逆に彼の歌の上手さが浮き彫りになっている名唱だとぼくは思います。なんかあまりにも簡単に歌っているのでむずかしさを感じないのですが、これは相当難しいです。

5.My Love-Is (Underdub Take 9)/Little Willie John

リトル・ウィリー・ジョンは1937 年に生まれ68年に亡くなってますからわずか30年の人生だったんです。リトルと呼ばれてたのは背が低かったからなんですが、それでからかわれることも多くてしかも彼自身が短気な人で酒を飲んではよく喧嘩もしたそうです。それである日喧嘩相手をナイフで刺して殺してしまいムショ入りとなりました。結局その刑務所で肺炎で亡くなったそうなのですが、一説には肺炎ではなくて刑務官に暴行されたのでは・・とう説もあります。短気は損気といいますがなんか残念な人生です。あと歌手としてのプライドもあったと思います。亡くなった後にジェイムズ・ブラウンがトリビュート・アルバムも出してますし、アレサ・フランクリンも好きなシンガーでウィリー・ジョンの名前を出しています。来週もう一回リトル・ウィリー・ジョンの特集です。

2024.10.18 ON AIR

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集 第五回

Junior Parker vol.2

洗練とダウンホームの絶妙な味わいの名歌手ジュニア・パーカー

ON AIR LIST
1.Seven Days/Junior Parker
2.Stranger In My Home Town/Junior Parker
3.I Need You Love So Bad/Junior Parker
4.Look On Yonder Wall/Junior Parker
5.Way Back Home/Junior Parker

先週ON AIRしたジュニア・パーカーのデューク・レコード時代はモダン・ブルーズからアーバン・ブルーズと呼ばれ.
る時代に移行する頃でした。洗練された都会的なサウンドをバックにパーカーの歌が冴え渡っていました。
実はジュニア・パーカーは1932年に生まれ1971年に39才で亡くなっています。若いですね。脳腫瘍の手術中になくなってしまったらしいです。70年代の最初はちょうど私がブルーズにハマりかけた頃なので、もう少し生きていてくれたら彼のライヴを見ることが出来たかもしれません。聴きたかったですね、彼のパワフルだけど柔らかい歌声。
今日は先週の続きで彼のデューク・レコード時代のノリノリの曲で始めたいと思います。

1.Seven Days/Junior Parker

ジュニア・パーカーはもちろん歌すごいんですが、バックのデュークレコードのスタジオ・ミュージシャンたちがみんな上手くてすごいグルーヴです。
10年間くらい在籍したそのデューク・レコードを66年に辞めた後はいろんなレコード会社で録音を続けましたが、大きなヒットは得られませんでした。でも、与えられたサウンドの中で彼はいつもレベルの高い歌を歌い続けました。
71年に彼が亡くなった一年後1972年にアルバムがリリースされました。”I Tell Stories Sad and True, I Sing the Blues and Play Harmonica Too, It Is Very Funky”という長いアルバム・タイトルなのですが、滑らかな洗練された歌声の中にブルーズ本来のダウンホームさが残っていて、彼の吹くハーモニカも師と仰いだサニーボーイ・ウィリアムスン直系のこれもダウンホームなテイスト。パーカーのハーモニカはバックにホーン・セクションが入っていてもうまくミックスされているのでいつもなんでかな・・と思っていたのですが、彼のハーモニカ・プレイには無駄な音がなくて吹きまくらないからです。
ギターを弾かないシンガーのブルーズマンのアルバムはギターがないので興味がないというアホな方がいますが、このアルバムでギターを弾いているのは「モダン・ブルーズ・ギターの父」と呼ばれたかのT.ボーン・ウォーカーが絶賛したギター名人ウエイン・ベネットです。そのベネットのセンスのいいソロも聞ける次の曲。

2.Stranger In My Home Town/Junior Parker

ベースとドラムの作っているグルーヴが本当に気持ちよくてかっこいい。そして吹きまくるばかりがハーモニカではない。ジュニア・パーカーのハーモニカがい味出しています。

1971年ジュニア・パーカーが亡くなったその年にリリースされた“You Don’t Have To Be Black To Love The Blues”(ブルーズを愛するのに黒人である必要はない)と題されたアルバムがあります。東洋系の男の子が大きなスイカを食べようとしているジャケ写真が記憶に残るので僕らの間では「あのスイカのアルバム」と呼んでました。
このアルバムが実にいいアルバム。71年というとブルーズの時代は過ぎブラック・ミュージックの流れはニュー・ソウルと呼ばれた時代で、ダニー・ハサウェイ、ロバータ・フラックなどがデビューしマービン・ゲイやスティービー・ワンダーたちのメッセージのあるソウルが主流になっていく頃です。そんな中、ジュニア・パーカーが当時の売れっ子のスタジオ・ミュージシャンたちと残した1970年録音のブルーズ。それがこのアルバム“You Don’t Have To Be Black To Love The Blues”
ブルーズの歴史に残るブルーズ・バラードの名曲名唱。本当にステディな締まったリズムなんですが窮屈やないんですよ。何ひとつ無駄のない演奏、余計なことをしない演奏の中をジュニア・パーカーの柔らかい歌声が淡々と君のことがすごく必要なんだ。愛してるんだと歌いかけてきます。ギターのオブリガードの入り具合も絶妙。

3.I Need You Love So Bad/Junior Parker

このアルバムは当時のNYのスタジオ・ミュージシャンたちが参加してますが、クレジットがないので正確ではないかもですが、演奏を聴いてて間違いないのがドラムがバーナード・パーディ、ベースがチャック・レイニー、ギターはコーネル・デュプリー、ビリー・バトラー、エリック・ゲイルなど。だから70年初頭の最新の黒人サウンドなのです。パーカーが歌ってるのはトラッドなブルーズです。ブルーズ本来のダウンホームさもありながらめちゃ最新のアーバンなサウンドという面白いテイストになってます。
次の曲は61年のエルモア・ジェイムズはじめフレディ・キング、ジュニア・ウエルズなどたくさんのカバーがあります。

4.Look On Yonder Wall/Junior Parker

スタンダップ・シンガーの特集なのに最後はインスト曲です。というのもこの曲すごく好きだからです。作曲したのはクルセイダースのベーシスト、ウィルトン・フェルダー。タイトルはWay Back Homeですから「家に帰る途中」イントロを聴いていると夕暮れの中、家に帰っていく風景が浮かぶのですが、次第にドラムのバーナード・パーティのグルーヴが強くなって大騒ぎになり急ぎ足で家に帰ってるような感じになってますが笑えます。早く帰ってビールでも飲みたいんでしょうか・・。他のフルーズ・ハーモニカ・プレヤーにはないジュニア・パーカーの個性ある独特なハーモニカのテイストを味わってください。

5.Way Back Home/Junior Parker

このアルバム“You Don’t Have To Be Black To Love The Blues”を見つけたら絶対買い!です。子供がスイカ食べてるジャケットです。
来週は先ほど聴いてもらった珠玉のブルーズバラードI Need You Love So Badのオリジナルシンガーであり、多くの黒人シンガーに敬愛されたリトル・ウィリー・ジョンの登場です。まためちゃクチャ歌上手いシンガーです。