2020.03.13 ON AIR

Motown Records 60th Anniversary/モータウンレコード創立60周年を記念 vol.1

50th Anniversary/The Single Collection/1961-1969/Diana Ross & The Supremes (Motown Boo15943-02)

50th Anniversary/The Single Collection/1961-1969/Diana Ross & The Supremes (Motown Boo15943-02)

Please Mr.Postman/The Marvelettes(Tamla TM-228)

Please Mr.Postman/The Marvelettes(Tamla TM-228)

Do You Love Me/The Contours (Gordy/Wax Time 772206)

Do You Love Me/The Contours (Gordy/Wax Time 772206)

Soul Spectacular The Great Soul Hits All Time (Rhino R2 78300)

Soul Spectacular The Great Soul Hits All Time (Rhino R2 78300)

ON AIR LIST
1.Where Did Our Love Go/The Supremes
2.Baby Love/The Supremes
3.Money (That’s What I Want)/Barrett Strong
4.Do You Love Me/The Contours
5.Please Mr.Postman/The Marvelettes

60年代に設立されたソウル・ミュージックの名門レーベル、モータウン・レコードが創立60周年を迎えたということで雑誌で特集されたり、アメリカではドキュメント映画が作られたりもしてるみたいです。
それで今日は初期のモータウンの曲を聴いてみようかと思います。
実はモータウンの初期60年代の始めから終わりくらいまでは、ちょうど僕の10代の頃になります。当時、13才でビートルズを聴いて洋楽に目覚めた僕はビートルズを始めとするイギリスのロックバンドを主に追いかけて聴いていました。何しろ中高生で小遣いが少なくてたくさんレコードを買うことができないので、ラジオの洋楽番組をよく聴いてました。もちろん、目当てはビートルズ、ストーンズ、アニマルズ、ゼム、スペンサー・デイヴィス・グループとかブリティッシュ勢であとはアメリカのビーチボーイスが好きでした。そういう中に時々聴こえてきたのがモータウンレコードのミラクルズとかスプリームスといったコーラス・グループでした。
そして、最初に「ああ、このレコード欲しい」と思ったのが、シュプリームスの”Where Did Our Love Go”でした。
1964年、僕は14才、中学二年。思春期に入った頃ですが、シュプリームスの女性3人の歌声がロマンティックでなんか切なくて、英語の意味は全部わからないけどタイトルの”Where Did Our Love Go”は「私たちの愛はどこへ行ったの」というのはわかったので「ああこれは失恋の歌か」と大雑把に思ってました。

1.Where Did Our Love Go/The Supremes
いまみなさんがラジオで聴いてくれているように(その頃はネットラジオはもちろんなかったですけどね)僕はラジオにしがみついていまのシュプリームスを聴いていました。シングル盤を手に入れたときは嬉しかったです。
でも、しばらくすると次のヒット・シングルが出てそれも欲しかったのですが、ビートルズとかストーンズもどんどんシングルをリリースする時代だったので買えなかった。
それが次の”BaBy Love”で、この頃にリード・ヴォーカルがダイアナ・ロスという人だということがわかってジャケット写真の真ん中に写っているのが彼女だと思っていたら、クラスの友達に右の人だよと教えられました。初期はダイアナ・ロスはかならず右か左の端に写っていました。
2.Baby Love/The Supremes
途中からダイアナ・ロスがひとり目立ってきてグループ名が途中からダイアナ・ロス&ザ・スプリームスになりましたが、ダイアナ・ロス&ザ・スプリームスになってからはあまりいい曲は出なかったように思います。そしてダイアナ・ロスはソロになってしまい僕のスプリームス熱も冷めてしまいました。

60年代ビートルズやストーンズなどイギリス勢の勢いに対抗できる黒人レーベルはモータウンだけだったように思います。同じ時期にサザンソウルや他のR&Bやソウルがたくさんあったことを知りましたが、ポップチャート上位にまで出てくる黒人音楽はまずモータウンでした。
そして、当のビートルズがモータウンの曲をたくさんカバーしていたのですが、僕と同世代の人たちはビートルズを通して知らないうちにモータウンの曲を聴いていたと思います。次の曲もビートルズの方がカバーしました。ブルーズ・テイストがあるけどポップというモータウン独特のカラーです。
ビートルズは1963年のアルバム”With The Beatles”でカバー。オリジナルは1959年バレット・ストロングがモータウンからリリースして、R&Bチャート2位、POPチャート23位とモータウンレコードの初めてのヒット曲となりました。
3.Money (That’s What I Want)/Barrett Strong
この曲がヒットした初期はまだモータウンは自社でアメリカ全土にリリース、つまり配給する組織がなくチェスレコードの配給網などを使っていました。

モータウンはすごく洗練されたソウル・ミュージックを作っていたイメージがあるのですが、いまのMoneyもそうでしたが、初期のモータウンは次の曲みたいなワイルドというか、いなたい曲もレコーディングしていました。いまから聴くこの”Do You Love Me”という曲も10代の頃なんとなく知ってました。当時はデイヴ・クラーク・ファイヴ、あとからジョニー・サンダース、それからブルーズ・ブラザーズもカバーしてます。わかりやすくてノリやすいダンスナンバーでアマチュアバンドもよく取り上げていた曲です。コントゥアーズです。
4.Do You Love Me/The Contours
R&Bチャート1位、ポップチャート3位というすごいヒットでしたが、コントゥアーズはこの曲以外に売れた曲はなかったように思います。B級のR&Bテイストがあって僕は好きです。逆にいうとモータウン・サウンドはきらびやかにいろんな音が入ってゴージャスなんですが、同時代のサザン・ソウルなどを聴いているとちょっとToo Muchというか、サウンドを飾りすぎるときがあって好きではないものもあります。
モータウンレコードにはスプリームスより前に売れた女性コーラスグループ、マーヴェレッツがいました。1961年R&Bチャート、ボッブチャート共に1位になった大ヒット。
これもビートルズのカバーで知っている方も多いと思います。
「ちょっと待って郵便屋さん、私宛の手紙がその鞄の中に入ってないかな。そろそろ彼から手紙がくるはずなんだけど、このところ郵便屋さんはここを通り過ぎていくばかり、ねぇちょっと待って」

5.Please Mr.Postman/The Marvelettes

こういうモータウンの音楽を聴いていると中高生の頃に戻ってしまいます。いつも夜になると勉強すると言って実はラジオのヒットチャートを聴いていて、夜遅くも布団の中に小さなラジオを持ち込んで聴いてました。自分だけの小さな世界でしたが、洋楽を聴いているとすごく遠いところに行けてる気がしたものです。
来週またモータウンの続きをやりたいと思います。

2020.03.06 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード集vol.12/モダン・ブルーズ-1
モダン・ブルーズの双璧 B.B.KingとBobby Bland

Live At The Regal/B.B.King(MCA MCAD-11646)

Live At The Regal/B.B.King(MCA MCAD-11646)

Greatest Hits Volume One-The Duke Recordings/Bobby Bland (MCA MCAD-11783)

Greatest Hits Volume One-The Duke Recordings/Bobby Bland (MCA MCAD-11783)

Two Steps From The Blues/Bobby Bland (MCA 088-112-516-2)

Two Steps From The Blues/Bobby Bland (MCA 088-112-516-2)

ON AIR LIST
1.You Upset Me/B.B.King
2.Sweet Little Angel/B.B.King
3.I Don’t Want No Woman/Bobby “Blue” Bland
4.I Pity The Fool/Bobby “Blue” Bland
5.Two Steps From The Blues/Bobby “Blue” Bland

50年代に入ると盛り上がってきたのがB.B.キングやボビー・ブランド、ジュニア・パーカーたちメンフィス・ブルーズマンたちによるモダン・ブルーズでした。シカゴの若い世代のバディ・ガイ、オーティス・ラッシュ、マジック・サムといったブルーズマンたちもマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのシカゴ・ブルーズよりも音楽的にはB.B.キングやボビー・ブランドのモダン・ブルーズの影響を強く受けました。現在演奏されているほとんどのブルーズの大きな骨格はこの時代のモダン・ブルーズで作られました。
バックにホーンセクションを入れたオーケストラ・サウンドはゴージャスで、着飾った黒人たちが夜な夜なナイトクラブに出かけました。
モダン・ブルーズは作曲作詞に歌い方に演奏にゴスペルやジャズのテイストが入りこみ、新しさと同時にしゃれた音楽として都会の黒人たちに受けたのだと思います。一方、シカゴ・ブルーズのマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフたちの南部のアーシーなテイストをもつブルーズは次第に流行からは残されていきました。

50年代の最初からヒットを連発したB.B.キングはモダン・ブルーズの中心ブルーズマンで精力的にツアーも行い、全盛期には1年に300日ツアーライヴをやるというものすごさでした。メンフィスからやがて全米で知られる有名ブルーズマンへとまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで50年代を駆け抜けながら、自らの演奏スタイルと自分のショーのスタイルを完成させていきます。その完成されたB.B.キングの音を閉じ込めたのがこれから聴いてもらうライヴ・アルバム”Live At The Regal”
女性ファンたちの嬌声が飛ぶ中、ムンムンとした会場の熱気が感じられます。それに応えるB.Bとバンドの完成度の高い演奏はブルーズの頂点に立ったプライドさえ感じさせます。このアルバムがリリースされた64年あたりは次第にヒット曲が少なくなっていくB.B.ですが、ライヴパフォーマンスとしてはトップに立ちます。演奏曲目はほとんど50年代の自分のヒット曲で、最初に聴いてもらう曲も1954年のヒットですがまだ充分に聴衆に通用するパワーを持っていました。1964年B.B.キングのライヴです
1.You Upset Me/B.B.King

次の曲はB.B.が終生歌いつづけた曲です。「オレには可愛い天使がいてね。彼女が羽根を広げる姿がもう大好きなんよ。オレが5セントくれよというと20ドルもくれる。もし、彼女が別れるって言ったらオレは死んでしまうよ」
バディ・ガイなどカバーするも多い、間違いなくブルーズ・スタンダードの一曲でしょう。
2.Sweet Little Angel/B.B.King
バンドとB.B.が一体化した見事なライヴ・パフォーマンスです。このアルバム”Live At The Regal”はブルーズの名盤でもあり、是非一枚まるごと聴いてもらいたいです。1964年のシカゴのリーガル劇場でのライヴです。B.B.のバンドのメンバーもドラムのソニー・フリーマンを中心に強力な結束力でグルーヴしています。B.B.の歌とギターも完全に出来上り、エンターテイメントとしてのショーのスタイルも完成しています。
B.B.には他にもスタンダードな名曲があるのですが、B.B.だけで30分すぐ終わってしまうのでまたの機会に紹介します。

B.B.キングは50年代にメンフィスで頭角を表したブルーズマンですが、当時のメンフィスには優れたブルーズマンがたくさんいました。その中でも次のボビー・ブランドはB.B.と共にその後ずっとモダンブルーズの大きな看板を背負った人でした。ボビー・ブランドはボビー・ブルー・ブランドと呼ばれることもあります。
ただB.B.と違うところは、B.B.は70年代初めから白人のマーケットも意識しながらの活動に移っていきましたが、ボビー・ブランドは黒人マーケットでの絶大な支持をバックに黒人サークルで歌いつづけました。日本にも78年に初来日して黒人クラブでやるライヴをそのまま体験させてくれましたが、B.B.がギターを弾くブルーズマンに対してブランドは歌だけのブルーズマンということでブルーズにおける歌の重要性ということがわかるステージでもありました。
60年代中頃から主にイギリスのロック・ミュージシャンたちで始まったブルーズロックの流行がありました。インプロビゼーション(即興演奏)と称して演奏される長いギターソロが白人の間でウケ始め、そうすることで白人聴衆に人気が出るというやり方が黒人に定着していきます。そして、黒人以外の聴衆を相手にブルーズを演奏する時にはギターをたくさん弾かなければウケないといういびつなブルーズ蔓延していまに至っています。
フレディ・キングやアルバート・キングが白人の聴衆にウケたのもそのギターの力が大きかったのは間違いないです。だから黒人ブルーズギタリストたちは白人聴衆を前に演奏するようになってからギターソロが長くなりました。それは元々ヴォーカル・ミュージックであるブルーズということを考えるとやはり歪んだブルーズのスタイルです。
そういう流れの中でボビー・ブランドは別格のブルーズシンガーであることにブルーズを聴き進むとわかってきます。
では、ギターを弾かないスタンダップ・シンガーであるボビー・ブランドが遺した極上のブルーズを聴いてください。
「オレの生き方につべこべ言うような女はいらない、嫁はんもいらんよ」1957年リリース
3.I Don’t Want No Woman/Bobby “Blue” Bland
素晴らしいギターはテキサスの名ギタリスト、クラレンス・ハラマン。いまの曲はシカゴ・ブルーズのマジック・サムのバージョンで好きな方もいると思いますが、サムはこのボビー・ブランドをカバーしたものです。

次の曲はタイトルを訳すと「バカを哀れむ」ですが、バカは自分のことです。たぶん悪い女性に熱を上げて、結果だまされていて周りの人たちに「あいつアホやなぁ」と笑われているのもわかっている。ほんまにアホな自分を哀れむわという内容です。
4.I Pity The Fool/Bobby “Blue” Bland
これも1961年にチャート1位になりました。ギターはずっとブランドの右腕として活躍したウエイン・ベネット、ドラムはこのあとジェイムズ・ブラウンのメンバーになるジョン・ジャボ・スタークス 
ブランドのこういう後世に残っているブルーズスタンダードはデューク・ピーコック・レコードという会社からリリースされていましたが、そこには優れたアレンジャーや腕の立つレコーディング・ミュージシャンが揃って楽器を弾かない、歌だけのボビー・ブランドをしっかりサポートしました。
僕はいまの”I Pity The Fool”を自分のバンド”blues.the-butcher-590213″のアルバム”3 O’clock Blues”でカバーしたのですが、ボビー・ブランドの曲を録音できたことは本当に自分の生涯の誇りです。
次の曲はブランドの声の良さが堪能できるブルーズ・バラードの名作です。
5.Two Steps From The Blues/Bobby “Blue” Bland

50年代、ビールストリートというメンフィスの夜の街で「ビールストリーターズ」と呼ばれたブルーズ歌手たちがいました。B.B.キング、ボビー・ブルー・ブランド、ジュニア・パーカー、ジョニー・エース、ロスコー・ゴードンといった歌手たちでした。若い彼らは互いにしのぎを削り頂点を目指して切磋琢磨していました。それぞれに個性があり才能がありヒット曲もありました。その時代にたくさんのブルーズ・スタンダードの名曲が録音されました。また今日の続き、まだまだあるモダンブルーズのスタンダード曲集をやります!
今日はまずB.B.KingのYou Upset Me、Sweet Little Angelとボビー・ブルー・ブランドのI Don’t Want No Woman.とI Pity The FoolそしてTwo Steps From The Bluesをお送りしました。

2020.02.28 0N AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード集 vol.11/モダン・シカゴブルーズ-1

モダン・シカゴ・ブルーズの四天王、バディ・ガイ、ジュニア・ウエルズ、マジック・サム、オーティス・ラッシュが残したブルーズ・スタンダード

The Cobra Sessions 1956-58/Otis Rush (Cobra/P-Vine PCD-24038)

The Cobra Sessions 1956-58/Otis Rush (Cobra/P-Vine PCD-24038)

West Side Soul/Magic Sam (Delmark/P-Vine PCD-23639)

West Side Soul/Magic Sam (Delmark/P-Vine PCD-23639)

Messin’ With The Kid  The Chief/Profile/U.S.A. Session 1957-1963/Junior Wells (P-Vine PCD-20155)

Messin’ With The Kid  The Chief/Profile/U.S.A. Session 1957-1963/Junior Wells (P-Vine PCD-20155)

ON AIR LIST
1.First Time I Met The Blues/Buddy Guy
2.I Can’t Quit You Baby/Otis Rush
3.All Of Your Love/Magic Sam
4.Messin’ With The Kid/Junior Wells
5.All Your Love(I Miss Loving)/Otis Rush

先週は戦後エレクトリック・ブルーズのスタンダード・ブルーズ二回目ということでしたが、結局全部ハーモニカのリトル・ウォルターのヒット曲で終わってしまいました。今日はそのリトル・ウォルターの次の世代のシカゴ・ブルーズマンたちのスタンダード曲を紹介します。
最初にバディ・ガイなんですが、このブルーズ・スタンダードに選べるバディの代表曲ってなんやろ・・・と考えたときに、これ!というのがないんですよね。ブルーズギタリストとしてその演奏の実力は個性的で素晴らしいものがあるんですが、彼自身のオリジナルヒット曲というのがないのです。このブルーズ・スタンダード集という企画は後世にも残っていくいい曲を紹介するものなんですが、曲単位となるとバディのたくさんの音源からそれを見つけるのが難しいです。
それで僕が初めて聴いたバディの曲、それは僕をブルーズの世界に誘ってくれた曲でもあるのですが・・・オリジナルはブルーズピアニストのリトル・ブラザー・モンゴメリー。バディを聴いてしばらくしてリトル・ブラザーのバージョンを聴いたのですが、僕にとってはバディのインパクトの方が強かったのでモダン・シカゴ・ブルーズのスタンダードにこの曲を入れたいと思います。この曲をバディは何度か録音していますが、僕は1965年のヨーロッパでの「アメリカン・フォーク・ブルース・フェスティバル」のバージョンが好きです
1.First Time I Met The Blues/Buddy Guy
「初めてブルーズに出会ったとき・・」と始まるこの曲はブルーズを擬人化していて、ブルーズが追いかけてくる。ブルーズ、オレを殺さないでくれと取り憑かれるブルーズから逃れようとする歌ですが、とても緊張感があるこの頃のバディは歌もギターも素晴らしいです。そして、バックのストレートでムダな音がないサウンド作りは僕がバンドでブルーズ始めた時のひとつのお手本になりました。

1950年代初期のマディ・ウォーターズやサニーボーイ・ウィリアムスン、ハウリン・ウルフたちが最初のシカゴ・エレクトリック・ブルーズの世代で、その後がリトル・ウォルター、デイヴ・マイヤーズ、ルーサー・タッカーといった人たちで、その後にバディ・ガイ、オーティス・ラッシュたちの時代になります。彼らは先達のシカゴ・ブルーズの影響も受けつつもB.B.キングのモダン・ブルーズの影響が更に強かったことが演奏に表れてます。
ホーン・セクションを含めたダイナミックス溢れるバックに乗って繰り広げられるB.B.の縦横無尽なギターソロとゴスペル・ルーツのパワフルな歌が、バディたちの世代を夢中にしたのは当然のように思います。
次のオーティス・ラッシュもB.B.の影響下にありますが、彼はレフティ(左利き)だったのでギターに関してはアルバート・キングの影響もありました。実際アルバートの曲のカバーもいくつかやってます。しかし、ブルーズ・スタンダードに選ぶとなれば、ラッシュはやはりこの曲。1956年コブラ・レコードのリリース。ウィリー・ディクソンの作ったこのデビュー曲がR&Bチャートの6位。
2.I Can’t Quit You Baby/Otis Rush
幸せな家庭をひとりの愛する女のために壊してしまった男が、それでもその女と別れられないと歌う泥沼のブルーズ。苦悩する男の心情をヘヴィに歌えるシンガーは、当時のシカゴではラッシュだけだったかも知れません。
20代前半に彼がコブラ・レコードに残したブルーズはそのギターの切れ、歌の重量感、全体から溢れるエモーションなど明らかに新しいシカゴ・モダン・ブルーズの幕開けでした。

ラッシュと同世代のマジック・サムには新しい時代のファンキーさがありました。”That’s All I Need”のようなブルーズとソウルがミックスされた新しいブルーズン・ソウルの流れも敏感にキャッチしていたサムの早い死は本当に残念でした。
どこかロックするグルーヴ感もあり日本の若いロック・ファンの中にもサムが好きだという人は多いです。
有名ブルーズを自分のものとしてカバーする力もあり、ジュニア・パーカーの”Feelin’ Good”、ロスコー・ゴードンの”Just Want A Little Bit”もボビー・ブルー・ブランドの”I Don’t Want No Woman”も僕が最初に聴いたのはマジック・サムのカバーでした。
そして、僕が最初に好きになった彼の曲は、トレモロのエフェクターがかかったギター・パターンが印象に残るこの曲でした。
3.All Of Your Love/Magic Sam
この曲だけでなく、この曲が収録されている1968年リリースのアルバム”West Side Soul”が名盤なのでこれも是非アルバムごと聴いてください。

聴いてもらってわかるように50年代後半から60年代になると俄然ギターがブルーズの主役楽器になっていきます。その前まで主役もやっていたピアノやハーモニカが少し後ろに下がります。
ハーモニカ・プレイヤーであるジュニア・ウエルズはブルーズのハーモニカ・プレイヤーとしてあまり評価されていない気がしますが、僕はストリートの匂いがする彼の歌とハーモニカが当時のリアルなブルーズだったと感じます。この匂いは出そうとして出せるものではないです。
「子供の遊びのようなことはしないんだよ。大人なんだからほっといてくれよ」という歌です。1960年録音。シカゴのブルーズ・シーンで次第にのし上がってきたジュニアの勢いが感じられる曲です。
4.Messin’ With The Kid/Junior Wells
いなたいラテンビートを使ったこの曲はジュニアの終生の持ち歌でした。

5.All Your Love(I Miss Loving)/Otis Rush

このブルーズ・スタンダードのシリーズを始めたのは、プルーズというのは基本的にコード3つで自由に歌ったり、ソロを弾ける音楽なのですが、その前に当たり前なんですがひとつひとつ曲なんです。それぞれのメロディがありリズムがあり、それをバックで演奏している人たちのグルーヴがあり、その上に歌やギターやハーモニカ、ピアノなんかがあるわけです。もちろんその前に曲があるわけです。そのいい曲をいい演奏をして残っているブルーズを曲として紹介したいわけです。
1960年代に入ると黒人音楽の流れはブルーズからR&Bそしてソウル・ミュージックへと移っていく時代でした。その時代に自分たちの新しいブルーズを残そうと数少ないレコーディングの中でそれをつかみ取っていった彼らの意気込みを感じる、今に残るシカゴ・モダンブルーズのスタンダード曲でした。

2020.02.21 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード集 vol.10

戦後エレクトリック・シカゴブルーズ-2
シカゴブルーズで最もヒット曲を出し、スタンダードを残したリトル・ウォルター

Little Walter The Complete Chess Masters (1950-67)/Little Walter( Geffen BOO12636-02)

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ON AIR LIST
1.My Babe/Little Walter
2.Blues With A Feeling/Little Walter
3.You’re So Fine/Little Walter
4.Sad Hour/Little Walter

先週はルイジアナの有名ブルーズ・スタンダード曲を特集したのですが、そのルイジアナにも50年代のシカゴ・ブルーズの勢いは影響を及ぼしてました。とくにジミー・リードや今日聴いてもらうリトル・ウォルターは何曲もヒットチャートの上位に曲を送り込んだので全米に大きな影響を与えました。
天才ハーモニカ・プレイヤーと呼ばれるリトル・ウォルターはブルーズにおけるハーモニカという楽器のイノベーターでした。50年代はじめ、それまでハーモニカは歌を歌うマイクを使って吹いていたが、ハーモニカ用のマイクを使いそれをギターと同じようにアンプに入れて音を増幅させて聴かせるという方法、つまりアンプリファイドが生まれた。最初にそれを効果的に使いシカゴからヒットを何曲も出したのがリトル・ウォルター。彼の曲をたくさん作ったウィリー・ディクソンとともにブルーズへの功績はとても大きいものです。
前に「戦後エレクトリック・シカゴブルーズ-1」のON AIRをしたので、今日は「戦後エレクトリック・シカゴブルーズ-2」をやるつもりでしたが、結局最初に選んだリトル・ウォルターにスタンダード曲が多いので全部リトル・ウォルターの特集みたいになってしまいました。

ポップなテイストのあるこの曲。自分の彼女が真面目で、人をだましたり、馬鹿にしたりするのが大嫌いでしかも可愛いんだとのろけてる歌ですが、たくさんの女性たちに囲まれ大酒のみでホラ吹いて喧嘩ばかりしていたウォルターはどんな気持ちで歌ったのか・・と思うんですが、まあ女性を口説く手段のひとつだったのかも知れません。飲み屋で女性に「あの曲はな、オマエのことを歌ったんやでぇ」とか。
1955年R&Bチャート2位
1.My Babe/Little Walter
4ビート感をもったシャッフルで軽快にスイング。ドラムはフレッド・ビロウ、ベースはウィリー・ディクソン、ギター、ロバートJrロックウッドそしてハーモニカと歌のリトル・ウォルターと・・50年代シカゴブルーズ鉄壁のメンバーです。

13才で家を飛び出てニューオリンズのストリートでプレイし、そのあとシェリヴポート、ヘレナ、メンフィス、セントルイスと渡り歩き1945年シカゴのマックスウェル・ストリートにたどり着く。まだ15才、中学三年です。そして、17才の時にシカゴのマイナーレーベルでジミー・ロジャースのレコーディングでハーモニカを吹く。その後ジミー・ロジャースは御大マディ・ウォーターズに「めっちゃハーモニカのうまい小僧に会ったよ」と伝え、そこからウォルターの運は開けて行く。
マディの録音に呼ばれた彼はそこでハーモニカの新しいサウンドとグルーヴ、フレイズを残すことになった。
そして、御大マディの曲よりもたくさんヒット出すシカゴ・ブルーズスターなったリトル・ウォルター。

リトル・ウォルターはマディ・ウォーターズやジミー・ロジャースなど他のブルーズマンのバッキングに回ったときもハーモニカの素晴らしいサポートぶりを残している。例えば。マディの”I Just Wanna Make Love To You”の途中のウォルターのハーモニカ・ソロとバッキングはあの曲の色を決定づけている。あのハーモニカなくしてはあの曲にならないくらい強烈なカラーを様々な曲で残している。ハーモニカの超絶なテクニックと絶妙なフレイジングとタイミング・・・いまだにブルーズにおけるハーモニカの頂点に立つのはリトル・ウォルターだと思います。
次の重厚なミディアムテンポのグルーヴもフレッド・ビロウとウィリー・ディクソンのリズム隊。ギターはデイヴ・マイヤーズ。
この曲もR&Bチャート2位 1953年
2.Blues With A Feeling/Little Walter
いい意味でのラフな感覚も失わず、グルーヴは緻密。

1954年にも次のYou’re So Fineがチャート2位まであがる売れっ子ぶり。
「もうオマエがええねん。オレのこと好きになってくれや。オレのものになってくれるまでお金も全部あげるしダイヤやなんでも買ってあげるよ。オマエが他の男を好きになったら気が狂いそうになる。オマエが可愛いねん。オマエが最高やねん」
もうめちゃホレてしまった女性への歌ですが、この曲がリリースされた1954年というとチャック・ベリーやリトル・リチャード、そして白人のエルヴィス・プレスリーたちが台頭したR&Rのブームが起きた頃で、一方で黒人音楽の主流はレイ・チャールズ、ルース・ブラウンなどのR&Bへ移っていく時期です。その時代の流れにブルーズは追いついていかなくなります。でも、リトル・ウォルターのブルーズには時代のR&Bのテイストをもったものが多くヒットチャートに上がりました。
普通のブルーズ進行の曲ですが、リズムの感じとか歌のメロディにちょっとしたポップさがあり、マディやウルフの時代とはちょっと違う感じになってます。
3.You’re So Fine/Little Walter
ザクっザクっというシャッフルのリズムが実に気持ちのいい名曲です。

いままでの3曲はいまもカバーする人たちがたくさんいるけれど、次のインスト曲はチャート2位まで上がった割にはカバーする人があまりいないのはなぜか。リトル・ウォルターのハーモニカ・プレイの素晴らしさを存分に味わってください。
ハーモニカ・インスト曲の名曲、名演です。
4.Sad Hour/Little Walter
ギターのステディなビートが刻まれる中を縦横無尽に駆け巡るようなウォルターのハーモニカが素晴らしいです。
まだまだEverything’s Gonna Be Alright,Off The Wall,Who,Boom,Boom,Out Go The Light.Last Nightといい曲がたくさんあるリトル・ウォルター。
R&Bの感覚がありながらもその底辺に深いブルーズが潜んでいて何十年聴いていても新たな発見や味わいが浮かび上がってくる素晴らしいブルーズマンです。
今日聴いてもらった曲はベスト盤のアルバムに収録されているものですが、できればLittle Walter The Complete Chess Mastersというチェスレコード時代のCD5枚組というのをお薦めします。それはリトル・ウォルターが素晴らしいだけでなく、曲や演奏も素晴らしかったシカゴブルーズの全盛期を聴くことができるからです。バック・ミュージシャンのロバート・Jr.ロックウッドとかデイヴ・マイヤーズ、ジミー・ロジャースたちの絶妙なバッキング・ギター、そしてドラムのフレッド・ビロウやオディ・ペインの体を揺らすシカゴ・ビート、ウィリー・ディクソンのプロデューサー&ベーシストとしての音楽的な支えを知ることができます。詳しい解説とレコーディングデータも役に立ちます。

若くして売れたウォルターは酒と女の日々を過ごし、酔っぱらっては喧嘩三昧の生活を続けて結局喧嘩で負ったケガで37才で亡くなりました。
13才でルイジアナの家から飛び出していろんな街をさまよってシカゴに落ち着いて、いちばんの売れっ子ブルーズマンになった彼の心にあったのはその日暮らしを続けてきた厳しさや孤独や悲しさではなかったかと、彼のブルーズをずっと聴いているとそう思います。時代がR&Bに向かう時代に一見ファンキーにも聴こえる彼のブルーズの中に重く、ヘヴィなブルーズがあるのを感じます。

2020.02.14 ON AIR

南部のブルーズ・テイストをしっかり持ってブルーズを作り歌う「いま」のブルーズマン、ザック・ハーモン

Mississipi Barbq/Zac Harmon(BSMF-2684)

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ON AIR LIST
1.Gypsy Road/Zac Harmon
2.Baby Pleez/Zac Harmon
3.Mississipi Barbq/Zac Harmon
4.Making A Dollor Out Of Fifteen Cent/Zac Harmon

今日はBSMFレコードから送っていただいたザック・ハーモンのニューアルバムです。
正直言って僕はザック・ハーモンを聴いてなかった。名前はなんとなく知っている感じでしたが、彼がこんなにいいブルーズマンだと思ってませんでした。
まずザック・ハーモンの略歴から紹介しますが、何年生まれなのかはっきりしません。生まれたのが1960年頃と書いてあるのでいま60才くらいですか。生まれ育ったのはミシシッピー・ジャクソンです。16才でお父さんの友達だったジャクソンのブルーズマン、サム・マイヤーズのバックでギターを弾いたのが最初のキャリア。18才の頃にはジャクソンのマラコ・レコードでZ.Z.ヒルやドロシー・ムーアのバックでギターを弾きその後ロスへ。ロスではスタジオ・ミュージシャンとして活躍しながらソング・ライターとしてオージェイズやウィスパーズなどに曲を提供して、94年にブラック・ウフルに書いた曲はグラミーにもノミネートされています。プロデュースの仕事もしていますからまあ裏方的な生き方をしてきた人ですが、2003年に40才を過ぎて自分のファースト・アルバムをリリース。以降自分のバンドでライヴ活動を続け、いままでに5枚のアルバムをリリース。
聴いてもらえばわかるのですが、ブルーズだけでなくブルーズを真ん中に据えながらいろんなタイプの曲があるのですが、それぞれがしっかり練られて作られているいるところがいいなと思います。さすがいろんな仕事で裏方をやってきた蓄積を感じます。
まずは一曲
1.Gypsy Road/Zac Harmon
最初、ギターが始まったときはよくあるギター弾きまくりのヘヴィなブルーズロックかと思いましたが、歌が入ってくるとほっとします。歌声と歌い方がいいんですね。気張らず自然で、元々いい声してるんですね。黒人のミュージシャンと話しているとよく歌声の話をされます。例えば、ドクター・ジョンはインタビューで「僕は歌手やないんや、僕はピアノとギター弾いて歌っているプレイヤーなんよ。いい声やないしね。歌手というのはアーロン・ネヴィルのような素晴らしい歌声を持った人のことなんだよ」謙遜も入っていると思いますが、歌手に対しての考え方がよくわかりますよね。
今回このアルバムをOn AIRしょうと決めたのはザック・ハーモンの声と歌い方がいいなと思ったからです。そして、現在形で活動しているブルーズをやるミュージシャンでこんな風に歌のいい人が本当に少ないです。ギターだけやってきた人ではなくて、ドロシー・ムーアやZ.Z.ヒルといった素晴らしい歌手のバックもやってきたのでギターの出方もよく知っていて、あくまでも歌をメインに据えているところがいいです。
はっきり言うと黒人も白人も最近のブルーズ系のギタリストたちのやたらラウドなギター弾きまくり、歌がつまらいない、しかも、ギターのひとつひとつの音がはっきりしない、つまりギターが何を歌っているのかわからないそんなソロを延々と弾く人が多い。ブルーズと称して次々出されるそういうアルバムに僕は辟易しています。
なので今回のこのアルバムは有名ゲストもいないし、これ見よがしなところもないのですがストレートで飾り気がなくていいです。

2.Baby Pleez/Zac Harmon

彼は若い頃ミシシッピ、ジャクソンにあるマラコレコードでスタジオの仕事をしていたんですが、やっぱり南部のダウンホームなゆったりした感覚があるんですね。このアルバムもミシシッピ・バーベキューというのがアルバムタイトルなんですが、アルバムジャケットにはザックさんがエプロンしてめっちゃでっかい肉をフォークに差して持ち上げてにっこり笑っている写真です。それでこのアルバムタイトル曲もコテコテのブルーズかと思いきや、こんな曲でした。
3.Mississipi Barbq/Zac Harmon
オールドスクールのソウル・テイストでちょっとオシャレな曲なんですがなんかイナタイです。だいたいこんなメロディで「ミシシッピ・バーベキュー」と歌うところがディープ・サウス、ミシシッピです。たまらなくいいです。”We Gonna Have Mississipi Barbq”ですから、それそこZ.Z.ヒルとかリトル・ミルトンのマラコ・レコードの曲聴いてるみたいな感じになりました。

このアルバムのプロデュースはジム・ゲインズという人で、この人はサンタナやスティービー・レイボーンをプロデュースしてグラミーも取っている敏腕プロデューサーです。このアルバムはそういうしっかりしたプロデュースの力を感じます。
次の曲は女性ブルーズ・シンガー、シメキア・コープランドなどにも曲を書いているジョン・ハーンとザックの共作です。
ちょっとジョニー・ギター・ワトソンのファンク・ブルーズを思わせる曲調です。
4.Making A Dollor Out Of Fifteen Cent/Zac Harmon
ザックさんはオールド・スクールのR&Bですが、決め手はやはり彼の歌声と歌い方ですね。力まずでもパワフルなんですが、コントロールされていてでもスクウエアな感じがしない歌とギターのバランスがいいです。
ギター・スタイルは基本的にはB.Bキング源流のモダン・ブルーズ・ギターですが、やはりスタジオ・ミュージシャンでもあったのでコードワークとかカッティングにブルーズだけでない洗練されたものが時々あります。ミシシッピーのモダン・ブルーズとウエストコーストのジョニー・ギター・ワトソンのブルーズファンク・テイストもあるこのアルバム、ブルーズ系の新譜の中では久々にいいなぁと思いました。

落ち着いているいいアルバムです。オールド・スクール・テイストですが古い感じをさせないのは、彼がずっと現役でいるからではないでしょうか。このアルバムもほとんど彼自身のオリジナルですから作詞作曲もライヴ活動も精力的にやっているのがいい感じで音に出ているように思いすま。オールド・スクール・マナーですが、宿っているソウルがオールドではないです。
今日は1月22日に日本のBSMFレコードからリリースされたザック・ハーモン7枚目のアルバム「ミシシッピ・バーベキュー」を聴きました。ライヴ聴いてみたいです。誰かザックを日本に呼んでください。