2025.09.12 ON AIR

LP中古盤放浪記その11

リトル・ミルトンの名作を中古カット盤でゲット!

If Walls Could Talk/Little Milton

ON AIR LIST
1.If Walls Could Talk/Little Milton
2.Baby I Love You/Little Milton
3.Poor Man/Little Milton
4.Blues Get Off My Shoulder/Little Milton
5.I Play Dirty/Little Milton

ちょっと久しぶりのLP中古盤放浪記でその11
私が中古盤でゲットしたこのアルバムは「カット盤」と呼ばれているもので、アルバム・ジャケットの左上にナイフが何かで入れた切り込みが入っています。こういうジャケットに切り込みやパンチホールと呼ばれる小さな穴、またはジャケットの端がカットされているものが中古盤にあり一般的に「カット盤」と呼ばれています。流通の問屋などが売れなくなったアルバムにわざとキズを入れて安い中古盤として再販する方法ですが、中身の音には何も関係ないし安いので私は平気で買います。
さて、今日の中古盤はブルーズ&ソウル・シンガーのリトル・ミルトンのチェス・レコードから1970年にリリースされたものです。1970年という時代の黒人音楽はニューソウルと呼ばれる音楽が流行り始めた頃でロバータ・フラックやダニー・ハサウェイ、マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーが第一線に踊り出てくる時代でした。ブルーズは・・・というと50年代から60年代に隆盛を誇ったシカゴ・ブルーズも、メンフィスそしてテキサス、ミシシッピーのブルーズも勢いが全体的に落ちてしまった頃です。そんな中でブルーズもソウルも歌うブルーズ&ソウル・シンガーのリトル・ミルトンは過去のブルーズマンとしてではなく現在形のミュージシャンとして生き残って行きました。
まず、アルバム・タイトル曲を。”If Walls Could Talk” そのまま訳すと「もし壁が喋ることができたら」ですが、もし、部屋の壁が喋ることができたら泣きたくなるようなことがいっぱい聞こえてしまうんだろうな」という歌詞で始まります。つまり部屋の中で不倫していたり、秘密にしていることを部屋の壁が喋ったらめちゃヤバいことがまずいことがたくさんある。だから壁が喋れなくてよかっただろうと言ってる歌です。

1.If Walls Could Talk/Little Milton

ブルーズに昔からあるダンサブルなリズム・パターンを使った曲ですが、サウンドが1970年なので当時の新しい感じが入ってます。
次の曲は60年代に素晴らしい曲を残したシンガー&ソングライターのジミー・ホリデーが作った私の好きなR&Bのいい曲です。

2.Baby I Love You/Little Milton

こういう曲を歌うとブルーズを期待している人たちは「こんなの歌うの?」ってなるんですが、ブルーズもR&Bもソウルもファンクも同じ黒人音楽で黒人の人たちは同じように聞いているし、ラジオの黒人ステーションからは同じように流れてくるわけです。まあ、今はヒップホッブとかラップしか聞かない若い黒人の人たちもいるでしょうが・・・
リトル・ミルトンは確かにブルーズから始まっているのですが、時代はブルーズからR&Bと呼ばれたものがすでにソウル・ミュージックに移り変わった時代なので当然ソウルの影響は受けるわけです。そして、リトル・ミルトンにはそれを歌える十分な資質があったということです。例えばライトニン・ホプキンズに今みたいな歌を歌えと言っても無理ですが。

次のファンク・テイストのブルーズなんかめちゃカッコいいです。特にベース。1970年のブルーズ&ソウルはこういうビートという典型みたいな曲です。こういう時代の流れに乗って行けた音楽的な力量があったわけです。歌の力は素晴らしいです。

3.Poor Man/Little Milton

リトル・ミルトンは若い頃メンフィスで活動を始めているのですが、その頃最も影響を受けたのが名ブルーズ・シンガーのボビー・ブランドです。時々、歌を聴いていると「ブランドか」と思うことがあるほどです。次の曲もそのボビー・ブランドからの影響を感じます。
現在第一線級のブルーズマンとなったロバート・クレイも録音している曲でオリジナルはボビー・パーカー。そういえばロバート・クレイもボビー・ブランド好きです。
「心がどんどん冷たくなっていく。ブルーズに触れることで心が重くもなっていく。ブルーズよ、俺の肩から降りてくれないか」リトル・ミルトンのディープなブルーズ表現が聴ける見事な歌唱です。

4.Blues Get Off My Shoulder/Little Milton

やっぱりボビー・ブランドの影響を感じますね。リトル・ミルトンはギターも弾きますが、ギターは少し先輩のB.B.キングの影響を受けたギタースタイルです。このアルバムは50年代からブルーズの大きなレコード会社であったチェス・レコードの系列レーベルのチェッカーから1970年にリリースされたものですが、その頃もうチェス・レコード自体が経営状態がよくなくて傾いていたのであまり強いプロモーションもされなかったのでは・・と思います。この”If Walls Could Talk”はチェスでの4枚目のアルバムでこれを最後にミルトンはスタックス・レコードに移籍します。そこではもっと明確なブルーズ&ソウルの路線になりいい時代を迎えます。
ではもう一曲

5.Your Precious Love/Little Milton

最初に言いましたが中古盤でジャケットに切り込みや小さな穴が開いているレコードは「カット盤」と呼ばれて、まあキズもの扱いで安いのですが、中身のレコード本体には関係なく全く同じですからオススメです。とにかく安い!
リトル・ミルトンは2004年に亡くなってしまったのですが、一度だけ1983年に来日してくれました。ぼくは渋谷のライヴインというライヴハウスで聞きましたが、もう圧巻の堂々たるステージでブルーズ&ソウルの真骨頂を聞かせてくれました。
またいい中古アルバムをゲットしたら紹介します。

2025.09.05 ON AIR

祝50周年P-Vine Records! 第10回

35年という短い人生だったがメンフィスの人たちを楽しませたワンマン・バンド・ブルーズマン、ジョー・ヒル・ルイス

The Be-Bop Boy/Joe Hill Louis

ON AIR LIST
1.Boogie In The Park/Joe Hill Louis
2.Tiger Man/Joe Hill Louis
3.Hydramatic Woman/Joe Hill Louis
4.We All Gotta Go Somtime/Joe Hill Louis
5.I’m A Poor Man/Joe Hill Louis

シリーズでON AIRしている世界に誇る日本のP-Vineレコード設立50周年記念お祝いシリーズ
今回は10回目。
1986年にP-Vine からリリースされて嬉しかったアルバム。ジョー・ヒル・ルイスの”The Be-Bop Boy”。これは亡き小出斉くんがコンピレーションしたもので音源は1950年から53年の間にジョー・ヒル・ルイスがメンフィスの有名なサン・レコードに録音したもの。サン・レコードはエルヴィス・プレスリーが最初に録音したレコード会社として有名ですが、ブルーズのハウリン・ウルフ、ジェイムズ・コットン、ジュニア・パーカー、リトル・ミルトンなど黒人ブルーズマンの録音をたくさん残した会社でもあります。
ジョー・ヒル・ルイスはいわゆる「ワンマン・バンド」で演奏していたブルーズマンですが、ワンマン・バンドとは一人でギター弾いて、ハーモニカを吹いて、バスドラムとハイハットを踏んで歌を歌うという曲芸みたいなスタイルで演奏した人ですが、これが実はすごい人気になりました。普通の弾き語りのブルーズマンは歌とギターですが、そこにハーモニカでアンサンブルに彩りを加え、さらにビートを強くするためにドラムのバスドラとハイハットを両足で踏むというスタイルを考え出しました。ジョー・ヒル・ルイスは、メンフィスのハンディ・パークといういろんなブルーズマンが演奏している公園でよく演奏していたようでそれでより目立つようにそしてみんなが踊りやすいように考えたのでしょう。そんな中彼の代表曲のひとつ「公園でブギ」なんていう曲が生まれたのかもしれません。
「オレのベイビーを見つけて公園でブギ。公園でブギや。ずっとブギや。日が暮れるまでブギしたい。昔、オレとベイビーは喧嘩ばかりやったけど今は仲良くやってる。太陽の下で二人でブギや」

1.Boogie In The Park/Joe Hill Louis

彼はB.B.キングもDJをやっていたWDIAというラジオ局でDJをやっていたことがあり、その時のニックネームがこのアルバムのタイトルにもなっているThe Be-Bop Boyでした。アルバム・ジャケットとかいろいろ彼の写真を見るといつもニコニコしていてファンキーな感じの人ですが、実際B.B.キングや昔メンフィスにいたミュージシャンの思い出話になると必ずこのジョー・ヒル・ルイスの名前が楽しい思い出として出てきます。
次の曲はエルヴィス・プレスリーがカバーしているので驚きました。エルヴィスもジョー・ヒル・ルイスが活動していたメンフィスの出身ですし、最初にレコードは同じサン・レコードからリリースされてますからね。ひよっとしたらエルヴィスもハンディ・パークでジョー・ヒル・ルイスを見たかもしれません。「俺はジャングルのキング、タイガー。みんなはタイガーマンって呼ぶんや。もし、俺の道を横切ったらお前はお前の命はその手に中にある」まあ、俺の道を横切ったらどうなっても知らないぞということでしょう。

2.Tiger Man/Joe Hill Louis

次の曲を聴いていたら何かに似てるなぁと思ったんですが、アイク・ターナーの大ヒットRocket88に似てます。ライナーで小出くんもそれを指摘してますがこの曲の別名が「オートマティック・ウーマン」というそうで、めっちゃキレイなイケてる女性を高性能の車に見立てた曲です。これはバンド・スタイルでめちゃ印象に残るハーモニカはウォルター・ホートンです。ホートンのハーモニカはじめ全体のリズムが良くて歌詞も含めてノリノリのダンス・ナンバーです。

3.Hydramatic Woman/Joe Hill Louis

次の曲はマディ・ウォーターズのFeel So Goodにメロディと曲の構成が似てますが、どっちが先かはちょっとわかりません。ジョー・ヒル・ルイスは売れてからピアノとドラムをつけるようになって録音してますが、ひとりでやっている時と基本的にあまり変わりません。南部のビートがサザン・ビートと呼ばれていたのですが、それが彼の体の中に入っているのでギターもハーモニカも南部のダウンホーム感と荒々しさを持ってます。

4.We All Gotta Go Somtime/Joe Hill Louis

1950年くらいから57年に破傷風で亡くなるまでの7,8年の短い活動期間でしたが、ジョー・ヒル・ルイスはメンフィスの人たちに愛されたブルーズマンでした。今調べて見たらエルヴィス・プレスリーはジョー・ヒル・ルイスがメンフィスの黒人街で人気になった頃にデビューしてますから、おそらく会ったことはあったのでしょう。エルヴィスはブルーズが大好きでしたから。そうやって遠い昔に想いを馳せるとなんか音楽はロマンティックでいいですね。
次の曲はこれまたメンフィスで同時期に人気だったハウリン・ウルフかと思うほど曲調も歌も演奏も似ている曲。わざと真似したような気がします。小出くんのライナーによるとジョー・ヒル・ルイスはメンフィスのWDIAというラジオ曲で番組を持っていて、片やウルフしはKWEMで番組を持っていて二人は張り合っていたそうです。なのでウルフとよく似た曲を録音してウルフを刺激したのかもしれません。
歌の内容が「俺は貧しくて行くところもない。寂しさと厄介ごとばかり、お袋はいないし親父は俺を捨てやがった。行くところがないんだ」

5.I’m A Poor Man/Joe Hill Louis

明るくファンキーなジョー・ヒル・ルイスですが本音は今の歌なのかもしれません。
今日のP-Vineレコードの50周年を祝うシリーズの第10回目は1986年に亡き小出斉くんがコンピレーションしたジョー・ヒル・ルイスのアルバム”The Be Bop Boy”をききました。ブルーズの源流のひとつがわかるいいアルバムで、なんか嫌なことを吹き飛ばすような勢いがあって元気出ます。アルバム・ジャケットも最高です。ぜひ、ホームページでみてください。

 

2025.08.29 ON AIR

祝50周年P-Vine Records! 第9回

1983年P-Vineレコードがリリースした名作チャック・ベリーLP 三枚組ボックスその2

VERY GOOD! /Chuck Berry (Chess/P-Vine PLP834-6)

ON AIR LIST
1.Carol/Chuck Berry
2.Memphis,Tennessee/Chuck Berry
3.You Never Can Tell/Chuck Berry
4.Around And Around/Chuck Berry
5.I’m Talking’ About You/Chuck Berry

日本が世界に誇るレコード・レーベル、P-Vine レコードが創立50周年を迎えたのを祝って過去のP-Vine のアルバムから僕の好きなアルバムをOn AIRするシリーズです。今回で9回目。前回のチャック・ベリーのボックス・セット三枚組LPから今日も聞きます。このボックスセットはチャック・ベリーがデビューしたチェスレコードでの彼の最もいい時期の音源からピックアップされたものでクオリティはめちゃ高い。
チャックの素晴らしい音源ということだけではなく、R&Rの始まりとその全盛期の音楽を聴くことができるわけですからもしどこかの中古盤屋さんで見つけたらゲットしてください。
ボックスのジャケット写真もカッコよくて1983年にリリースされた時これは売れるだろうなぁと思いました。チャック・ベリーとかリトル・リチャードはロックンロールのルーツでありロックやる人は一度は必ず出会うミュージシャンですから。

初めてチャックの曲を聴いたのは中学2年。ローリング・ストーンズのカバーでファースト・アルバムに入っていた「キャロル」か、彼らの最初のシングルの”Come On”かどっちだったか覚えてないのですが、どちらにしろストーンズとビートルズがカバーしているチャック・ベリーを聞いてた中学生時代です。
今日は私の好きなチャック・ベリーの曲を5曲選んでみました。まだまだ好きな曲はあるんですが・・・
まずはローリング・ストーンズのファースト・アルバムでカバーされていたこれから。

1.Carol/Chuck Berry

1959年6月にシングル盤”Back In The U.S.A.”のB面だった曲として発売された曲
メンフィス・テネシーってただの地名だけどどんな歌なのかと思えば、これがなかなかいい歌詞で。最初は電話のオペレーターにメンフィスにいる好きな彼女に電話したいんだけど電話番号がわからないから探してくれという歌なのかなと思っていたら、じつは彼女ではなくて6歳になる自分の娘に電話したいという内容でした。離婚して連れられていったマリーという娘が自分のいない間に電話してきたんですね。でも、娘の電話番号がわからない。メンフィス・テネシーから電話してくるのは娘しかいないから交換手に探して欲しいんだという切実な歌です。

2.Memphis, Tennessee/Chuck Berry

次はチェスでの後期1964年の曲です。若い10代の男女が愛し合って結婚するところから始まる歌で、二人は狭い部屋に安い給料でなんとかやりくりして生活する様子を歌ったものです。最後にIt Goes To Show You Never Can Tell「先のことなんてわからない」と歌われてます。
タランティーノ監督の映画「パルプ・フィクション」で主演のジョン・トラボルタとユマ・サーマンがダンス・コンテストで踊るときの印象的なシーンで使われていてそれでこの曲を知っている方も多いと思います。あの映画大好きです。

3.You Never Can Tell/Chuck Berry

次のAround And Aroundは日本のグループサウンドが流行っていた時代に確かスパイダーズがカバーしていしていてかっこいいなぁと中高生の頃テレビでみてました。この曲はストーンズやアニマルズもカバーしてます。
クラブでカッコいいクレイジーなロックでみんな盛り上がって夜明けまで踊り続けたんだという曲。
チャックのギターが本当にグルーヴしていてカッコいい。

4.Around And Around/Chuck Berry

次の曲はぼくもブルーズ・ザ・ブッチャーでカバーさせてもらってます。聞いているとそうでもないんですが、演奏して歌ってみるとなかなか難しい曲です。まあ、チャック・ベリーの曲は難しいです。歌詞も多かったりするので。
この曲でもチャックのギターは完璧です。
「アップタウンを歩いてるときにめっちゃ可愛い娘を見たんよ。俺のもんになってくれんかなって思ってんのやけど。メッセージ届けたいんや。誰でもないオマエのことなんやけど。ベイビー、オマエやオマエや。結婚したいなぁ」

5.I’m Talking’ About You/Chuck Berry

P-Vineレコードが83年にリリースしたこのチャック・ベリーのボックスセットは本当によくできたセットだと思います。そして、ポピュラー・ミュージックの中で偉大な革命的音楽、R&Rが生まれた時代を体験できるセットです。偉い!P-Vine!

2025.08.22 ON AIR

祝50周年P-Vine Records! 第8回

1983年P-Vineレコードがリリースした名作チャック・ベリーLP 三枚組ボックスその1

VERY GOOD!/Chuck Berry

ON AIR LIST
1.Wee Wee Hours/Chuck Berry
2.Thirty Days/Chuck Berry
3.Roll Over Beethoven/Chuck Berry
4.Havana Moon/Chuck Berry/Chuck Berry
5.Too Much Monkey Business/Chuck Berry

「ブルーズのインディペンデント・レーベルとして始まり今や世界に誇るレコード・レーベルとなったP-Vineレコーズの50周年を祝して、P-Vineが今までリリースしてきたアルバムの中から私がこれは聞いてほしいと思うアルバムを紹介しているシリーズの8回目」
R&Rの王様のひとり、チャック・ベリーと言えばその黄金期はチェス・レコードに在籍していた時代。そのチャックのチェス時代の録音を的確にコンピレーションして三枚のLPボックスにして出したP-Vineの秀作のひとつです。こういうボックスセットには詳しい録音クレジットや丁寧なライナーがあり時系列でその音楽の流れを知ることができるのでいいですよね。
チャック・ベリーはチェスレコードと契約してすぐに55年”Maybellene”の初ヒット以降、”Thirty Days”,”No Money Down”,”Roll Over Beethoven”,”Too Much Monkey Business”をヒットを飛ばし、50年代半ばには”School Days”,”Rock And Roll Music”,”Sweet Little Sixteen”,”Johnny B.Goode”と音楽史に残るR&Rの名作を数々リリース。チェスレコードはマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどブルーズの重要レーベルでもあり思いがけずロックン・ロールの重要レーベルともなったわけです。
チャックの特集はこの番組で過去何回かやっているので、今回はまず最初のヒット”Maybellene”のシングル盤のB面のブルーズ曲。Wee Wee Hoursのwee wee とは早朝、夜明け前のこと。「夜明け前に君のことを思い出す。君の愛は本物やったんかなぁ。狭い部屋で君のことを思い出す。君は二人でやったことをみんな覚えているやろうか・・・」チャックのブルーズです。

1.Wee Wee Hours/Chuck Berry

チャック・ベリーだからアップテンポのロックンロールを期待していた方には申し訳ない。スロー・ブルースでした。
途中の素晴らしいピアノ・ソロはチャックの音楽には欠かせなかったチャックの右腕のジョニー・ジョンソン。元々ブルーズをやりたくてセントルイスからシカゴにきてマディ・ウォーターズのバンドに入りたいと思ってたらしいのですが、芸風が合わずマディにチェスレコードを紹介してもらったらしいです。チャックはモダン・ブルーズの父、T.ボーン・ウォーカーがアイドルで後年に自分のライヴに大好きなT.ボーンが多分飛び入りで入ってギター弾いて歌う映像がYouTubeに出てますが、もうチャックは子供のようにはしゃいでます。今の曲もおそらくT.ボーンを意識した曲だと思います。
チャックは55年から65年までの10年間チェスレコードに在籍して66年からマーキュリーレコードに移籍しますが、70年にまたチェスに戻ってきます。でも、彼の全盛期は最初のチェスの10年間です。その10年間のシングルからコンピレーションしたこのP-VineのLP3枚組はどんなに転んでも間違いのない代物です。
次の曲は2枚目のシングルのB面です
曲はその前にヒットした「メイベリーン」と同じような曲調ですが、チャックのギター・ソロが素晴らしいです。特にリズムはさすがキング・オブ・ロックンロール。
曲名のThirty Daysは30日間ということですが、なんか理解するのがむずかしい曲で30日間の間に帰ってこいよということなのですが、どうも彼女は何か悪いことでもしたのか警察に捕まっていて、それをこの男が彼女を無罪にしてもらえるように裁判官に話をつけて釈放してもらえるようになった・・と。だから30日の間に俺のところに帰って来いよという歌だと思います。

2.Thirty Days/Chuck Berry

今の二曲だけを聞くと普通のブルーズマンと変わりない感じですが、翌年56年録音のこの曲になるとチャック・ベリーの定番になるロックンロールの形がでてきます。
リズムがシャッフル・ビートやブギウギにのちにはっきり8ビートになっていくその辺のリズムが混じった面白い曲です。
ビートルズもカバーした音楽史上大切な曲だと思います。

3.Roll Over Beethoven/Chuck Berry

次の曲「ハバナ・ムーン」ですが、これはロックンロールのキングとしては珍しい曲で南国ムードたっぷりの曲調です。ハバナはキューバの首都ですが、チャックは行ったことがあったのでしょうか。ハバナの月を見ながらひとりでラム酒を飲んで彼女が帰ってくるのを待っているという曲ですが、チープなラテン・ムードがなんともいい感じです。そのチープさで逆に曲が印象に残るというか・・。この曲はサンタナがカバーしていますが、それもすごくいいです。

4.Havana Moon/Chuck Berry/Chuck Berry

もう一曲、そんなにヒットした曲ではないのですが、このMonkey Businessという言葉をぼくはこの曲で知りました。Monkey Businessとはいい加減なくだらない仕事とか騙すような仕事、インチキの商売 「俺の周りにはくだらない、インチキな仕事ばかりだ」という歌詞です。ビートルズもプレスリーもこの曲をカバーしてますがショー・ビジネスの世界にいるとくだらない仕事やインチキみたいな商売をしているやつに出会います。チャック・ベリーもビートルズもブレスリーもそういう輩にたくさん会っていると思います。

5.Too Much Monkey Business/Chuck Berry

来週もこのP-Vineレコードが1983年にリリースしたチャック・ベリーのLP三枚組セットを聞きます。

2025.08.15 ON AIR

祝50周年P-Vine Records!!! 第7回目

1981年に60年代のマジック・サムのライヴがP-Vineから二枚組LPでリリースされた衝撃

Magic Sam/Live(At Ann Arber Blues Festival,August,1969&West Side Club Recording,1963/64)/Magic Sam(P-Vine Special PLP-9031.32)

ON AIR LIST
1.Every Night About This Time/Magic Sam
2.Tore Down/Magic Sam
3.You Were Wrong/Magic Sam
4.I Just Got To Know/Magic Sam

「ブルーズのインディペンデント・レーベルとして始まり今や世界に誇るレコード・レーベルとなったP-Vineレコーズの50周年を祝して、P-Vineが今までリリースしてきたアルバムの中から私がこれは聞いてほしいと思うアルバムを紹介しているシリーズの第7回」
今日は1981年にP-Vineからリリースされ大きな反響があったアナログLP盤二枚組のマジック・サムのライヴ・アルバム。
1枚は1963年64年のシカゴ・ウエスト・サイドのアレックス・クラブでのライヴ。もう1枚は1969年アン・アーバー・ブルース・フェスティバルでのライヴ。このアン・アーバーのライヴは1970年代初期にカセット・テープで名古屋のブルーズ好きからもらったことがありました。もうダビングにダビングを重ねた音質の悪いものでしたが、演奏の内容はマジッ・サムのライヴを聴きたかったと思わせるのに充分な内容だった。それがとうとうLPでリリースされるというので当時のブルーズ好きたちはみんな心待ちにしました。
今日はもうひとつのライヴでマジック・サムの地元シカゴ・ウエスト・サイドのアレックス・クラブでのライヴを聞いてみましょう。
まずはMCの呼び込みで一曲目の演奏が始まるのですが、サムのファンだろう女性がイントロの歌を大きな声で一緒に歌っているのが聞こえます。そういう熱狂的なファンも少しずつ獲得し、そこからブルース・フェスやヨーロッパ公演にも呼ばれる上り坂のマジック・サムの数年間が始まります。このライヴはさほど大きなクラブではないでしょうが、その女性の声がクラブのいいムードを伝えています。
最初の曲はオリジナルはニューオリンズの偉大なミュージシャン、ファッツ・ドミノ
「毎晩この時間になると泣くのを我慢して寝ようとするんだ。あいつは街をフラフラと遊び回ってるんだろう。愛は金では買えないし、愛してくれる人がいないなら死んだ方がマシだ」

1.Every Night About This Time/Magic Sam

お聞きのように決して録音の状態がいいわけではないけど、60年代後半のブルーズのライヴの現場での生々しい様子とサムの生き生きとした歌とギターが存分にわかります。こういうクラブでこういうブルーズを生で聞きたかったと当時思ったものです。60年代のシカゴでサムと同世代のオーティス・ラッシュ、バディ・ガイそしてフレディ・キングが互いにしのぎを削っていた。その中で60年代初めに”Hide Away”などのヒットで早くから全国区になったのがフレディ・キングでしたが、次の曲はそのフレディ・キングの曲です。お前にメロメロやという曲です。

2.Tore Down/Magic Sam

サムとフレディは仲が良かったようです。フレディのテイクもこのサムのテイクも両方素晴らしいです。
次の曲は南部のブルーズ&ソウル・シンガー、Z.Z.ヒルの曲ですが、サムのヴァージョンは原曲よりロックしている感じがします。これも夜遊びばかりしている彼女への歌。You Were Wrongですからお前は間違ってるで。夜遊びばかりしているのはあかんよ。俺は正しいことをやろうとしてる。お前にもそうさせようとしたけどお前とは喧嘩になるばっかりや。お前はあかんよ」

3.You Were Wrong/Magic Sam

ブルーズだけでなくR&Bやファンクそしてロックのテイストも持ち合わせたサムは新しいものを感じさせる若いブルーズマンでした。なので日本でもロック・ファンの人がサムのファンになることも多いです。
次の曲はウエストコーストのブルーズ・ボス、ジミー・マクラクリンの曲ですが、マジック・サムはこういう正統派モダン・ブルーズのカバーも自分のものとして歌える実力のあるシンガーでした。
ギターも素晴らしいのですが、僕はこういう歌が胸に届いてくるマジック・サムが彼の同世代のブルーズ・シンガーより好きなところです。

4.I Just Got To Know/Magic Sam

1963年64年というとマジック・サムは26,7才くらいです。本当にエネルギー溢れる溌剌としたブルーズを一生懸命演奏しながらゲットーから抜け出て、友達のフレディ・キングのようにもっとメジャーになりたいと思っていたことでしょう。コブラレコードからデビューはしていたものの彼の名前はまだ黒人ゲットーでしか知られていないような状況でした。
結局四年後、1967年にサムはデルマーク・レコードから初ソロ・アルバム「ウエスト・サイド・ソウル」で自分のオリジナルを披露してやっとブルース・ファンに認知される存在になるのですが、その2年後に初めてヨーロッパに演奏に行ったりした後に心臓マヒで急死してしまいます。僕がブルーズという音楽にハマったときにはすでにマジック・サムは死んでいました。なのでこのライヴ二枚ぐみは彼を知るアルバムとして本当に貴重な音源でした。