2020.05.22 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 Vol.19

戦後エレクトリック・シカゴブルーズ-3

Moanin’ In The Moonlight/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22004)

Moanin’ In The Moonlight/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22004)

THE REAL FOLK BLUES/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22019)

THE REAL FOLK BLUES/Howlin’ Wolf (Chess/MCA VICTOR MVCM-22019)

ON AIR LIST
1. Red Rooster/Howlin’ Wolf
2.Spoonful/Howlin’ Wolf
3.Killing Floor/Howlin’ Wolf
4.Sitting On Top Of The World/Howlin’ Wolf
5.Back Door Man/Howlin’ Wolf

今日はエレクトリック・シカゴブルーズのスタンダード曲の三回目。前回は有名曲、ヒット曲が多いリトル・ウォルターだけで終わってしまったのですが、今日のハウリン・ウルフもウルフだけでいい曲がたくさんあるのでウルフだけです。
ウルフはシカゴに来る前にメンフィスで活躍していたのでメンフィス録音にもいい曲があるのですが、今日はシカゴ録音の中だけで選曲してみます。

僕が最初にハウリン・ウルフを聞いたのは、1970年に日本ビクターからシカゴ・ブルーズのコンピレーション・アルバムで「シカゴブルース・ゴールデンパッケージ」というのがリリースされていて、そのアルバムにはマディ・ウォーターズ、サニーボーイ・ウィリアムスン、エルモア・ジェイムズなどシカゴのチェスレコードで録音したブルーズマンたちの曲が入ってました。
その中で歌声にまず圧倒されたのがハウリン・ウルフでした。
1. Red Rooster/Howlin’ Wolf
圧倒的なウルフの声にのけぞってしまいますが、バックのサウンドとリズムのグルーヴも素晴らしいこの曲。
歌詞は「オレの赤い雄鶏が怠け者で庭を荒らしてばかりいる。どっかへ行ってしまって帰ってこないけど見つけたら連れて来て欲しい、あいつはめんどうばかり起こすんだ」
R&Bではサム・クック、ロックではローリング・ストーンズがカバーしたブルーズのスタンダード”Red Rooster”です

ウルフは1964年にストーンズが出ているイギリスのテレビ番組に出たり、イギリスのミュージシャンと作ったロンドンセッションというアルバムもあり、イギリスでは大人気でした。次の”Spoonful”もイギリスのクリームがWheels of Fireという二枚組のアルバムでライヴ録音していますが、クリーム・ファンには悪いけど断然このウルフのオリジナルの方がいいです。
ドラムがサム・レイ、ベースがウィリー・ディクソン、ピアノ、ジョニー・ジョーンズ、ギターがジミー・ロジャースとウルフの右腕だったヒューバート・サムリンという鉄壁のウルフのメンバーでの1961年録音
「スプーン一杯のダイヤ、スプーン一杯の金、でもオレの心はスプーン一杯のオマエの大切な愛で満足だよ。金やダイヤでウソをついたり、死んだり、泣いたり、喧嘩の元になるスプーン一杯のことで」
2.Spoonful/Howlin’ Wolf
本名がチェスター・アーサー・バーネットといういい名前なのに一生「吠える狼」ハウリン・ウルフという名前で黒人たちに愛されたブルーズマン。体も歌声も大きくてしかも心も大きい人で仲間のミュージシャンにも慕われました。あまり悪い噂とか話が残っていない人です。そして、ウルフのブルーズを聞いていると歌が上手いとか楽器が上手いとかそいう次元ではない、人間そのものがその人のブルーズだということ感じます。

女性とモメているブルーズは山ほどあるんですが、次のこの歌に同感する男性も多いと思います。でも反対に人称を変えると同感する女性も多いと思います。
「あんな女、早く別れておけばよかった。別れてメキシコへでも行けばよかった。最初にそう思ったんやけどな。別れられんとつき合ってしまっていまや修羅場や。ああ、早く別れておけばよかった」
3.Killing Floor/Howlin’ Wolf
Killing Floorはモンタレー・ポップフェスのライヴ盤でジミ・ヘンドリックスがカバーしています。
すごく印象に残るギターのリフです。ウルフの右腕として生涯ウルフにつき合ったヒューバート・サムリンは決して器用なギタリストではないんですが、すごく印象に残るこういうギターを弾く素晴らしいギタリストです。
次の曲もクリームがカバーしていますが、本当にイギリスのロックミュージシャンに人気のハウリン・ウルフです。元々は「ミシシッピー・シークス」という1930年代に活躍した4人組のグループですごい人気でたくさんの曲を録音しました。
「ある夏の日に彼女は行ってしまった。でも大丈夫、オレは世界のてっぺんに座っているから、そんな気分やから大丈夫や。夏も秋もクリスマスの時期もオレはずっと働き続けたけど、彼女は行ってしまった。でも、大丈夫、オレは世界のてっぺんに座っているから、最高の気分」
なんかすごく男のやせがまんみたいに聴こえるブルーズですが、僕はこの曲すごく好きです。
4.Sitting On Top Of The World/Howlin’ Wolf
いまの曲、調べたらグレートフル・デッド、ナット・キング・コール、フランク・シナトラもカバーしてます。今日はハウリン・ウルフで終わってしまいますが、次の歌はいかにもブルーズらしい曲でどうしてもこのブルーズ・スタンダードに入れたいと思います。
「オレはバックドアマン(間男)、男たちは知らんやろけど、女たちは知ってるよオレのこと。みんなが寝ようとしている頃に夜ばいして、にわとりの鳴き声がしたらさよなら」
バックドアは裏口で裏口のドアからわからんように入ってきて女性とええことしてまた裏口から帰っていくというまさに間男のブルーズ。
5.Back Door Man/Howlin’ Wolf

今日はハウリン・ウルフのブルーズらしいブルーズの曲ばかりでした。ブルーズスタンダード曲集の16回目 シカゴエレクトリック・ブルーズの三回目、今日はハウリン・ウルフの名曲でした。

2020.05.15 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.18
フォーク・ブルーズ編

AMERICAN FOLK & BLUES ANTHOLOGY/LEADBELLY (NOT NOT3CD111)

AMERICAN FOLK & BLUES ANTHOLOGY/LEADBELLY (NOT NOT3CD111)

FRISCO BOUND/Jesse Fuller (ARHOOLIE CD-360)

FRISCO BOUND/Jesse Fuller (ARHOOLIE CD-360)

The Best Of Mississippi John Hurt/Mississippi John Hurt (Vanguard VCD-19/20)

The Best Of Mississippi John Hurt/Mississippi John Hurt (Vanguard VCD-19/20)

ON AIR LIST
1.Midnight Special/Leadbelly
2.Cotton Field/Leadbelly
3.Good Night Irene/Leadbelly
4.San Francisco Bay Blues/Jesse Fuller
5.Coffee Blues/Mississippi John Hurt

今回は「フォーク・ブルーズ」のスタンダード曲
「フォーク・ブルーズ」というのは、僕の中では50年代から60年代の白人のフォーク・ブームの時代に、弾き語りの黒人ブルーズマンが白人のフォークソングと同じような感覚で受け入れられ人気になった頃のブルーズを指しています。
50年代、ボブ・ディランなんかもそうですが、アメリカの民族音楽を過去にさかのぼって歌った人たちがいます。そういうミュージシャンたちは白人のカントリー&ウエスタンと一緒に社会的に弱者であった黒人のブルーズ、ラグタイムなどとくに戦前のアコースティック・ギターの弾き語りの黒人音楽に興味を抱いたようです。
最初に聴いてもらうレッド・ベリーの曲は白人シンガーにも広く取り上げられました。
レッド・ベリーは19世紀後半の生まれですが、生年月日がはっきりしません。生まれたのはルイジアナの農場ですが、若い頃はルイジアナとテキサスあたりのストリートで演奏してました。時には売春や賭博が盛んなヤバい場所で演奏することもあり、気の短い性格からもめ事も多かったのか殺人や殺人未遂で3,4回刑務所で服役しています。最初に聴いてもらう曲も刑務所で作った曲でロックバンドのCCRのカバーでも有名になった曲です。
「朝からろくな食べ物ももらえない刑務所で朝から仕事が始まる。でも、文句は言わない方がいいよ、いろいろとトラブルになるから。Let the midnight special Shine a light on meですから「ミッドナイトスペシャル、ライトで私を照らしてくれ」というサビの部分は、ミッドナイトスペシャルというのは刑務所の近くを夜中に走る急行列車のことで、その列車のライトが刑務所を照らすのですがそのライトを浴びたものは刑務所から出られるという噂というか迷信が囚人たちの間にあったそうです。だからオレを照らしてくれと。それでヒューストンあたりにいるんだったらギャンブルでもめ事を起こさない方がいいよ、喧嘩なんかしたら刑務所行きだからね」という歌です
1.Midnight Special/Leadbelly

中学生の頃に次の歌をニュークリスティ・ミンストレルスという白人のフォーク・グループのカバーで初めて聴きました。シングルレコードも持っていますが、高校生の頃に今度はさっきも言ったロックバンドのCCRがカバーしているのも好きになりました。
ブルーズ・テイストがあるかと言われればあまりないのですが、いわゆる民衆の歌としてフォークとブルーズが一緒に取り上げられた時代の代表的な曲として今回選びました。
2.Cotton Field/Leadbelly

1886年にガッシー・ディヴィスという人が歌ったのが最初と言われている曲をレッドベリーがカバーして、それをまた白人のフォークシンガーたちが歌って有名になった曲です。
少し前にストーンズのキース・リチャーズのソロアルバム”Crosseyed Heart”にも収録されていました。
3.Good Night Irene/Leadbelly
レッドベリーは主に12弦ギターを弾きながら歌いましたが、次のジェッシー・フラーも12弦ギターです。ブルーズのギター名人、ロバート.Jr.ロックウッドもよく12弦ギターを弾いてましたが、戦前の黒人の弾き語りブルーズマンには12弦ギターを使う人が多くいます。12弦の音の響きも好きなんでしようが、大きな音が出るということもうるさい酒場とかストリートで演奏するには役立った楽器だったのでしょう。
ジェッシー・フラーはギターだけでなく、歌、ハーモニカ、カズーそれに自分で作ったフットデラという楽器をひとつりであやつるいわゆるワンマンバンドで、YouTubeで一回見て欲しいんですがめちゃおもろいです。
そのジェシー・フラーのこの曲もフォーク・ブルーズの名曲「愛していた女性が船に乗って行ってしまいサンフランシスコ湾(ベイ)にひとり残されて泣きたい気分だよ」という歌。
1974年にシンガー・ソングライターのフィービー・スノウがリリースしたデビューアルバムがこのタイトルでした。もちろんこの曲も歌っているのですが、白人のフォーク好きな人たちなら必ず知っている鉄板の名曲です。
4.San Francisco Bay Blues/Jesse Fuller
1991年にアンプラグドのライヴをやったポール・マッカートニーがカバーしていました。

フォーク・ブルーズで忘れてはいけないのがミシシッピー・ジョン・ハート。1893年にミシシッピーに生まれたジョン・ハートは多くの黒人と同じように幼い頃から農園で働いてました。9才の時に母親に買ってもらったギターに夢中になり、独自の「スリーフィンガー・ピッキング」を修得し10代にはストリートで演奏するようになってました。34才の時に一緒にやっていたフィドルプレイヤーのウィリー・ナムールがオーケーレコードでレコーディングした際に、彼がジョン・ハートのレコーディングをレコード会社に薦めてくれて録音したもののまったく売れず、彼は故郷に戻ってしまいます。それでずっと地元で農作業をしながら夜の酒場やパーティなんかで歌っていたところ、1963年70才になった頃にハートを探していた民俗学者のトム・ホスキンズという男が訪ねてきてハートは多くの人前に出ることになります。トムはレコードで聞いていた伝説のジョン・ハートを探し続けていたのです。
5.Coffee Blues/Mississippi John Hurt
彼はブルーズマンではないという人もいます。フォーク・シンガーと呼んだ方がいいのかも知れない。実際彼のレパートリーは昔から伝えられてきたカントリー・ソングやフォーク、例えばYou Are My SunShineのようなポピュラーな曲まで入っています。もちろんブルースもあるのですが、聞いてもらったように彼の表現がきれいなギターワークに深みのある暖かい声の歌でブルーズ的な要素よりもカントリー、フォークの要素の方が強いです。でも、ブルーズを聞いているとこういう音楽にも出会うわけで一曲選んでみました。

2020.05.08 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集vol.17
ブルーズン・ソウル編-1

We're Gonna Make It/Little Milton(Chess/Checker MCA MVCM22024)

We’re Gonna Make It/Little Milton(Chess/Checker MCA MVCM22024)

Walking The Backstreets And Crying/Little Milton(Stax SCD 8514-2)

Walking The Backstreets And Crying/Little Milton(Stax SCD 8514-2)

RAW BLUES/Johnnie Taylor (Stax/P-Vine PCD-4473)

RAW BLUES/Johnnie Taylor (Stax/P-Vine PCD-4473)

Little BlueBird/Johnnie Taylor (Stax SCD 8558-2)

Little BlueBird/Johnnie Taylor (Stax SCD 8558-2)

ON AIR LIST
1.We’re Gonna Make It/Little Milton
2.Walking The Backstreets And Crying/Little Milton
3.Hello Sundown/Johnnie Taylor
4.Part Time Love/Little Johnnie Taylor
5.The Blues Is Alright/Little Milton

50年代シカゴ・ブルーズがエレクトリック化されマディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、サニーボーイ・ウィリアムスンなどやがて海外でも知られるブルーズマンが登場する。その後ブルーズからロックンロールとR&Bが生まれ、60年代のソウル・ミュージックの誕生へと繋がって行く。そのソウルの時代にブルーズとソウルの両方のテイストを持った音楽が生まれ「ブルーズ&ソウル」「ブルーズン・ソウル」と呼ぶようになった。そのブルーズン・ソウルの息吹はこのリトル・ミルトンの1965年の大ヒットあたりから始まった。人種差別の撤廃や黒人公民権運動が激しく動き出した時代だ。「家賃が払えんかも知れんし、毎日豆ばかり食べなあかんかもしれん、仕事が見つからなくて失業手当の窓口に立たなあかんかも知れん、でも、私たちは愛し合えばやっていけるよ」前向きな歌詞だけど、ある意味あまりに楽観的やないかと思える歌詞でもありますが、これがR&Bチャート1位になりました。いろんな政治的、社会的な動きの中で黒人たちは前向きに自分たちを主張してがんばって生きたいと表明したこの曲を支持したわけです。
1965年R&Bチャート1位
1.We’re Gonna Make It/Little Milton
豪快な歌いっぷりで気持ちいいです。日本にも三回くらい来てくれましたが素晴らしいブルーズシンガーでした。
いまの曲がブルーズかと言われれば、確かにメロディ、コードなどはR&Bと呼んだ方がいいと思うのですが、歌詞の内容がやはり報われない黒人たちの生活を表してして「私達の部屋は寒くて、私達の車は古くなってしまうかも」と歌詞が続きます。つつましい日常の生活にも困る様子が描かれていて、それはやはりブルーズと呼ぶものだと思います。でも、そこで打ちひしがれているだけでなくWe’re Gonna Make It(私達はやっていける)と歌ったところに60年代のソウルの前向きな気持ちが入ってます。だからブルーズン・ソウルと呼ぶのもわかります。ブルーズン・ソウルの初期の名曲です。
実は現在でも多くの黒人やカラードの人たちがこの60年代と同じところで苦しんでいるのは、みなさんご存知だと思います。
いまのはチェスレコードからリリースされた曲ですが、リトル・ミルトンはチェスのあとにメンフィスのスタックス・レコードに移ります。
別れを告げられて裏通りを歩きながら泣いているという歌
2.Walking The Backstreets And Crying/Little Milton
6分30秒くらいある長い曲なんですが、ここでもギターではなく歌で押して行くブルーズ・シンガー、リトル・ミルトンの真骨頂があります。

次のジョニー・テイラーもスタックスレコードで花開いたブルーズン・ソウルのシンガーですが、元々はゴスペルを歌っていてサム・クックの影響を受けサムのレーベルでも録音していました。彼は楽器をやらないシンガーなので日本のブルーズ好きな人たちでもあまり話にでませんが、黒人音楽ではブルーズのヒットもソウルのヒットも持つ超一級のシンガーです
この曲はチャートを上がって売れた曲ではないのですが、僕はブルーズん・ソウルの名曲だと思います。
この曲は不倫の歌です。
タイトルはHello Sundownですから「こんにちは夕暮れ、君に会えて嬉しいよ。君が現れるまで長い時間待っていた」と始まるこの歌は、陽が落ちて夜になると旦那がいる彼女と密会できるという不倫ソングです。こういう不倫の歌がブルーズだけでなく、ソウルにもたくさんあります。3.Hello Sundown/Johnny Taylor
ジョニー・テイラーは”Who’s Makin’ Love”というソウルのヒットで一躍知られるようになったのですが、それも「あんたが外で浮気している間にあんたの嫁はんも誰かとええことしてまっせ」という歌で、そういうのがチャートにあがるところがすごい国です、アメリカは。”Who’s Makin’ Love”はソウルの曲という認識なのでここではブルーズスタンダードには入れません。
次の曲も不倫ソングですが、タイトルがパートタイムラブです。
朝帰りしてきた彼女にどこへ行ってたんやと聴いたら、なんも訊かんといてもう一回出てくから。オレは彼女の欲しいものをなんでもあげた。できる限りのことはした。もうオレも束の間の愛を見つけよ。
4.Part Time Love/Little Johnny Taylor
では最後に僕もよく歌っていますが、ブルーズなんですが前向きな曲です。
「彼女にふられて彼女にブルーズをもらったけどオレかて新しい恋人を見つけるで、大丈夫や」
リトル・ミルトンが80年代ミシシッピーのマラコレコードから出したヒットです。ブルースはまだ死んでないというマラコレコードが宣言したような素晴らしいブルーズです。
”Hey,Hey,The Blues Is Alright!”
5.The Blues Is Alright/Little Milton

2020.05.01ON AIR

ブルーズ・スタンダード曲集vol.16/
ジャンプ&ジャイヴ・ブルーズ


ジャンプの人気兄弟といえば・・ジョー・リギンス&ジミー・リギンス

Pink Champagne/Joe Liggins and The Honey Drippers (Specialty /ODR-6355)

Pink Champagne/Joe Liggins and The Honey Drippers (Specialty /ODR-6355)

Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins (Specialty /ODR6354)

Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins (Specialty /ODR6354)

BLUE FLAMES(A Sun Blues Collection)(SUN/RHINO R2 70962)

BLUE FLAMES(A Sun Blues Collection)(SUN/RHINO R2 70962)

ON AIR LIST
1.The Honey Dripper/Joe Liggins
2.Pink Champagne/Joe Liggins
3.I’ve Got A Right To Cry/Joe Liggins
4.Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins
5.Cadillac Boogie/Jimmy Liggins
6.Rocket88/Jackie Preston

ブルーズ・スタンダード曲集の16回目でジャンプ&ジャイヴブルーズの3回目
ジャンプ・ブルーズといわれるジャンルでも前回のビッグ・ジョー・ターナーやワイノニー・ハリスのような大きな声で歌うシャウターではない歌手もいます。
今回のジョー・リギンスは柔らかい歌い口の歌手でバンドはジョーのピアノを中心とした小編成のコンボバンドで、そこもシャウターが大人数のオーケストラをバックに歌ったのと違っています。
曲も歌も演奏も激しくなくクラブでカクテルでも飲みながら聞くのにぴったりな音楽。
ジョー・リギンスはオクラホマ州の生まれですが、活躍したのはウエストコースト、ロスアンゼルスで1930年代に19才でデビュー。デビュー前にピアノ、サックスと演奏できてしっかりと音楽理論も勉強していたらしいです。いろんなジャズバンドで演奏して自分でも曲を作っていたのですが、歌のないインストの曲だった次の曲の評判がよくて、じゃ歌詞をつけてみようかとつけたらこれがヒット。
ジャンプ・ブルーズですが次の世代のリズム&ブルーズの匂いがします。ホーン・セクションがもたらす柔らかいサウンドもリギンスのもわっとした歌声も心地よくて当時の女性客たちにウケたのも納得です。
1.The Honey Dripper/Joe Liggins
いまのは1949年にスペシャルティ・レコードで再録音されたものですが、最初は1945年にエクスクルーシヴ・レコードというところからリリースされR&Bチャート1位に18週間も留まっためちゃ売れの曲。
ジョー・リギンスはヒットがたくさんありソングライターとしても才能のある人ですが、次の曲は1950年にR&Bチャート1位になった曲。音楽的にはブルーズ進行ですが、テイストはR&B的です。メロウという言葉が出てくるように全体のサウンドもメロウな感じがします。歌もハーモニーがついていて全体がしっかりとアレンジされていて即興性はなく、曲として全体を作り上げているところにジョー・リギンスのしっかりしたコンセプトを感じます。是非お酒飲みながら聴いてください。いい気持ちになります。
2.Pink Champagne/Joe Liggins
ゆったりとしたグルーヴの中で聴いている気持ちもメロウになる名作だと思います。
ブルーズを聴き始めた頃、この曲を聴いてブルーズという音楽の間口の広さを感じました。例えば戦前のロバート・ジョンソンのような弾き語りのブルーズでもなく、マディ・ウォーターズたちのようなギターやハーモニカを前面に出しているシカゴ・ブルーズでもなく、B.B.キングやボビー・ブランドのようなモダン・ブルーズでもない、何ともゆったりしたこういうブルーズもあるんやと思いました。

次もあまりブルーズ・テイストがある曲ではなくて、ちょっとヨーロッパの、例えばシャンソンのような洒落たメロディやテイストを僕は感じるのですが、40年代ロスの少しお金をもった黒人たちのクラブではこういう音楽が人気があったのでしょう。
3.I’ve Got A Right To Cry/Joe Liggins

まだジョー・リギンスのヒットした曲はあるのですが、僕がブルーズ・スタンダードに選ぶのはこの三曲です。
実はジョー・リギンスにはふたつ違いの弟がいまして、ジミー・リギンスといいます。このジミー君、最初はプロのボクサーやってたんですが親がですね、やっぱりボクサーって危険ですから「あんた、ボクサーなんかやめな」と言われて辞めたんですがこれと言ってもやることはなかったんでしょうか、その頃すでに売れていたアニキのジョーの運転手になります。兄がスポットライト浴びて女性にも人気があるのを見ていて「オレもやりたい」とギターを弾いてデビュー。アニキほど売れはしなかったのですが、一曲、彼を代表するおもしろい曲があるのでそれをブルーズスタンダードに入れておきたいと思います。
給料をもらった土曜日にテンションがめちゃ上がって飲みに行って、まわりの奴にもおごって大騒ぎして気がついたら日曜のお昼になってた。お金はなくなったけどめっちゃ楽しかったからまあええか」という僕が大好きなタイプの曲です。
「土曜日のブギウギ男」です。
4.Saturday Night Boogie Woogie Man/Jimmy Liggins
やがてこういうダンサブルなジャンプ・ブルーズがR&Rが生まれる下地になっていくのですが、そのR&R誕生の一曲と言われているのが有名な「ロケット88」という曲なんですが、実はこのジミー・リギンスのCadillac BoogieというのがそのRocket 88の元歌ではないかと言われているのですがちょっと聴き比べたいと思います。
5.Cadillac Boogie/Jimmy Liggins
いまのが1947年、その四年後にこれを元にして1951年にリリースされヒットチャートNO.1になりR&R誕生の最初の一曲と言われたロケット88を聴いてみてください。
6.Rocket88/Jackie Preston
まあ、ほとんどメロディはCadillac Boogieですが、歌詞が違うんですね。この歌詞が若い人たちにウケたんですね。そして、50年代のR&RそしてR&Bの時代へと黒人音楽は突入していきます。

2020.04.24 ON AIR

ロバート・クレイ快心のニューアルバム
Robert Cray/That’s What I Heard (Nozzle Records 72098CD)

ON AIR LIST
1.Hot /Robert Cray
2.You’re The One/Robert Cray
3.My Baby Likes To Boogaloo/Robert Cray
4.Burying Ground/Robert Cray
5.You’ll Want Me Back/Robert Cray

今日は久しぶりに気持ちよく紹介できるブルーズのニュー・アルバムです。
ロバート・クレイ・バンドの名義の新しいアルバムが2/28に約3年ぶりにリリース。アルバムタイトル”That’s What I Heard”
プロデュースがドラマーのスティーヴ・ジョーダン。プロデューサーとしての彼の手腕には素晴らしい定評がありますが、どんな風に彼がロバート・クレイをプロデュースするかということにも興味が湧きます。
とにかく現在のブルーズシーンはギターばかり弾くプレイヤーが多い中、クレイは歌がしっかり歌える、歌で勝負できる数少ないブルーズマンです。
このアルバムはどの曲をON AIRしょうか迷うほどムダな曲がありません。
収録されている曲はクレイのオリジナルとカバーが半分ずつくらい。最初に聴いてもらうのはクレイのオリジナルです。
1.Hot /Robert Cray
タイトルどおりすごく熱い演奏でスティーヴ・ジョーダンのドラムが火吹いてますが、クレイの歌とギターもそれに煽られるように燃えてます。
少し60年代のR&Bのテイストもあっていい感じです。

クレイが初めて日本に来たのは、1984年ジョン・リー・フッカーのオープニング・アクトだったんですが、その四年前に”Who’s Been Talkin’”というアルバムでデビューして日本にくる前年83年にリリースされた”Bad Influence”がすごく評判になりました。そのアルバムに収録された”Phone Booth”と “Bad Influence”というクレイ自身のオリジナル曲もすごく新鮮でブルーズ界に新しいスターが登場したというムードがありました。
実はその初来日ジョン・リー・フッカーのオープニングアクトのあと僕と近藤房之助たちとクレイは一緒に短いツアーをやりました。そのツアー最中にいろいろ話しをしたんですが、彼は1953年生まれで僕より三つ年下だとわかり、まずそれにびっくりしました。自分より年下の黒人ブルーズマンが出てきたのか・・と。彼の話ではブルーズをやる前にジミ・ヘンドリックスなんかが好きでロックをやっていたらしいんですが、高校の卒業式のイベントにブルーズマンのアルバート・コリンズが来てその演奏を観てブルーズにハマったそうです。それでブルーズの話をしているとクレイは知らないことがいろいろあって、僕の方が彼に教えるというすごく変な感じになって・・・例えば日本のレコード店のカタログを見ていると僕にこのアルパムはいいのか、とかこのブルーズマンは誰とか訊いてくるんですよ。すごく熱心で・・だからその時はまだブルーズを勉強している感じでした。
今回のアルバムでは僕も大好きな偉大なブルーズシンガー、ボビー・ブランドの曲を取り上げてくれていて嬉しいです。
オリジナルは1961年に発表されたボビー・ブランドの名盤”Here’s The Man”に収録されてます。
2.You’re The One/Robert Cray
あまりアレンジしないでオリジナルを尊重した、ボビー・ブランドへのリスペクトが感じられるクレイのカバー。

ロバート・クレイは1980年のデビュー以来ずっとコンスタントにアルバムをリリースして、僕がこう言うのも偉そうですがいつも平均点はクリアするアルバムをリリースしています。でも、いつもどこかコントロールしすぎな感じがして悪く言うと面白みに欠けるというか、ブルーズの優等生というか・・・もうちょっと破れたところがあってもいいのに・・と思ってきました。
それが今回は上手さだけではなくクレイのソウルフルなものがすごく出てきたような感じがします。
次の曲は60年代のR&Bのカバーです。シンガーであり、ソングライターでありドラマーでもあったドン・ガードナーが歌った曲です。60年代のテイストがあるんですが、決して古くないいまの感じに仕上がってます。
3.My Baby Likes To Boogaloo/Robert Cray
かっこいいです。歌がやっぱりいいです。パワフルでソウルフルです。

84年に一緒に日本を回った時に、毎晩演奏が終わると打ち上げがあるんですが、クレイはめっちゃ酒を飲む訳ではなく、すごく紳士的でもの静かに話をする人で、ある程度の時間がくるとさっとホテルに帰る真面目な人でした。来日黒人ブルーズマンの中にはすぐ日本の女性を口説きにかかったり、ずるずると飲んで泥酔したりする人を何人も観ていたんでちょっとびっくりでした。
長い時間をかけて真面目な彼は彼なりに中身の濃い音楽を作ってきたんやなと、このアルバムを聴いてちょっと感動しました。彼ももう66才です。B.B.キング亡き後先頭に立ってこれからのブルーズ界を引っぱっていって欲しいと思います。そういう風格が出来てきたような気がします。
次はゴスペルのセンセイショナル・ナイティンゲイルズの曲なんですが、センセイショナル・ナイティンゲイルズというのは1942年に結成されたゴスペル・カルテットの有名グループでゴスペルの話の中には必ず出てくる偉大なグループです。70年近くたったいまもたぶんまだ解散していないと思います。
このクレイの歌も熱いです。
4.Burying Ground/Robert Cray

もう一曲、カーティス・メイフィールドがオリジナル。1963年リリースされたカーティスがインプレッションズをやっていた初期の曲です
5.You’ll Want Me Back/Robert Cray
今日はロバート・クレイのニューアルバムThat’s What I Heardを聴いていただきました。ブルーズ界で久しぶりにお薦めのアルバムが出てきてすごく嬉しいです。是非ゲットしてください。