2023.06.16 ON AIR

リクエストに応えてライ・クーダー!

Chicken Skin Music/Ry Cooder

ON AIR LIST
1.Smack Dab in the Middle/Ry Cooder
2.He’ll Have To Go/Ry Cooder
3.Chloe/Ry Cooder
4.Yellow Roses/Ry Cooder

リスナーの久保 光男さんという方からリクエストのメールをいただきました。
読ませていただきます。「金曜の夜はBLUES POWER、俺の生き返る時間…と勝手にTwitterで番宣をしている者です」はい、ツイートしていただきいつもありがとうございます。
「以前タジ・マハールとライ・クーダーのアルバムを特集して頂きそして今回タジのニューアルバムの特集もありと来て、私の勝手なお願いですがニューアルバムが出ているわけではないのですが、ここ数年個人的にハマっているライ・クーダーでホトケさんが好きなアルバムの特集をして頂けらばと思いメールしました」とメールをいただきました。久保さん、ありがとうございます。
ライ・クーダーは好きなアルバムがいくつかあります。
1971年の”Into The Purple Valley”(紫の峡谷)、74年の”Paradise and Lunch”、77年の “Show Time” ,97年のBUENA VISTA SOCIAL CLUB(ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ)」84年にヴィム・ベンダース監督の「Paris, Texas」での映画音楽も好きです。あの映画ではブラインド・ウィリー・ジョンソンの曲をベースにした全編に流れるライのスライドギターは絶品です。86年公開の「Crossroads」でもライは見事な映画音楽を作っていました。と、まあライの好きな音源はたくさんあるのですが、挙げるとしたらいちばん最初に聞いた76年リリースの”Chicken Skin Music”ですかね。実は最初にアルバムを買って聞いたライはこのChicken Skin Musicでした。「紫の峡谷」とかParadise and Lunch」はこのアルバムが気に入って後から聞いたアルバムです。なので今日は自分のアナログLPをデジタルにおとして来ましたのでノイズがかなりあるかも知れませんが”Chicken Skin Music”をON AIRします。
まずはライがライヴでもよく演奏していたこの曲。レコードではB面の1曲目です。

1.Smack Dab in the Middle/Ry Cooder

“Rock&Roll Satisfy My Soul”と歌われるところのコーラスがいつもたまらなく好きです。コーラスはテリー・エヴァンスとボビー・キングとハーマン・ジョンソンなんですが後年テリー・エヴァンスとボビー・キングの二人がデュオ・アルバム出したのも買いました。やはり底辺にゴスペルを感じさせる歌はさすがです。
ライはとにかく人を使うのがうまい。そういうと変な意味に取られそうですが、それぞれのミュージシャンの個性、特性をよくわかっていて自分のアルバムにどういう感じでその人を使うのかというのが本当に上手い。つまりいろんな音楽への理解度が高い人なんですね。だから多分企業の上司になっても部下を使うのが上手いと思います。次の曲のフラコ・ヒメネスも本当に彼の良さをよくわかっています。僕はこのアルバムでアコーディオン・プレヤーのフラコ・ヒメネスを知りました。
ボレロのリズムに乗ったヒメネスのアコーディオンは美しすぎる演奏です

2.He’ll Have To Go/3.Yellow Roses

本当にいいです。メキシコ生まれでテキサスで名前が徐々に知られていったフラコ・ヒメネスのきっかけを作ったのもライ・クーダーだったと思います。
知っている方も多いと思いますが、ライ・クーダーはアメリカのブルーズ、ジャグ、ラグタイム、R&B、ゴスペル、カントリーなど多くの音楽を若い頃から吸収し、そこから世界のいろんな音楽に興味を持ち、ハワイアン、メキシコ、キューバ、沖縄・・とその土地の音楽を自分の音楽に取り入れるのが本当に上手い人です。なんか嫌みがないし、無理な感じもないし、とってつけたような感じもないんですよね。
ではインストの曲です

3.Chloe/Ry Cooder

今の曲と次の「黄色い薔薇」にはハワイの伝説のミュージシャンであるスティール・ギターのギャビィ・パヒヌイとアコースティック・ギターの名手アタ・アイザークスが参加していますが、この二人の音色がこの二曲の色づけを決定していると思います。
こういうハワイアン・サウンドの素晴らしさをライの音楽を通して知った人も多いでしょう。

4.Yellow Roses/Ry Cooder

リクエストをいただいた久保さん、いかがだったでしょうか。ライはもちろんスライド・ギターの名手なのですが、そのスライド・ギターについてもブラインド・ウィリー・ジョンソンへの尊敬を語ったり、世界中にある音楽のオリジナリティに敬意をはらっている人です。
そして、いつも「さぁ、今度は何を作ってくれたかな」と楽しみにできるミュージシャン、それがライ・クーダーです。

2023.06.09 ON AIR

アイヴァン・ネヴィルのニューアルバム”Touch My Soul”を聴く

Ivan Neville / Touch My Soul

ON AIR LIST
1.Greatest Place On Earth/Ivan Neville
2.Dance Music Love/Ivan Neville
3.Hey All Together/Ivan Neville
4.This Must Be The Place/Ivan Neville
5.Beautiful Tears/Ivan Neville

ご存知の方も多いでしようが、アイヴァン・ネヴィルはニューオリンズのソウル・ファンク・バンド「ネヴィル・ブラザーズ」の名ヴォーカリスト、アーロン・ネヴィルの息子。
そしてファンク・バンド「ミーターズ」のキーボード・プレイヤー、アート・ネヴィルは彼の叔父さんに当たります。
しかし、彼が育ってきたニューオリンズの音楽というよりキース・リチャーズのバンド「エクスペンシヴ・ワイノーズ」への参加はじめロック・テイストの濃いミュージシャンという印象を持っている人も多いでしょう。デビュー・アルバムも確かロック的な音だったと思います。ストーンズへのゲスト参加もあったし、ロビー・ロバートソンなどロック・ミュージシャンと交流が多い人ですが、彼の中にはやはりニューオリンズの音楽がしっかりと蓄積されています。というよりあんなに地域性の強い音楽の街で育ってその音楽性がなくなるわけもなのですが・・・。
そして、ここ数年とてもいい感じで彼が吸収した音楽が実を結んできました。
今日聞いてもらうアイヴァンの新譜”Touch My Soul”では彼の様々な音楽性がうまく表現されているように思います。
まずはアルバムの前に先行発売されたニューオリンズ・テイストたっぷりの曲を。
「地球上で最高の場所」と名付けられた曲名はもちろんニューオリンズのこと。ニューオリンズのストリート・パレードを見ている思いがする楽しい曲です。

1.Greatest Place On Earth/Ivan Neville

ドラムにデヴェン・トゥルースクレア、ベースにトニー・ホール、ギターにイアン・ネヴィルとアイヴァンが組んでいるファンク・バンド「ダンプスタファンク」のメンバーが今回のアルバムの中心になっています。
次の曲にはちょっと70年代ソウル・ファンクを思い出しました。曲名は”Dance Music Love”なんですが、「踊って、歌って、愛し合おう。一緒にハーモニーを奏で、与えられてきたものを与えかえそう。一番大切なものは金では買えないよ」としっかりメッセージが入ってただのダンス・ミュージックではありません。

2.Dance Music Love/Ivan Neville

途中のギター・ソロはエリック・クラプトンンのバンドでも活躍している私も好きなレフティのギタリスト、ドイル・ブラムホールです。

このアルバムの一曲目の”Hey,All Together”には「こどもの頃は憎しみも知らず、楽しいことだけが待っていた。状況は良くなっていくものだと信じてた。でも、時が経つにつれて”みんなで一緒に”と言うのを忘れてしまった。さあ、みんな一緒に」というメッセージが込められています
お父さんのアーロン、ボニー・レイット、マイケル・マクドナルドなどがコーラスで参加しています。そして地元の友人でもあるトロボーン・ショーティがトロンボーンで参加。

3.Hey All Together/Ivan Neville

しかし、アーロン・ネヴィルの息子なのでまだ若いと思っていたらアイヴァンももう64歳!おっさんというよりもう孫でもいるおじいさんでもおかしくない年。それはまあ僕も年を取ったということですが。次の曲は83年のトーキング・ヘッズの曲のカバーだそうです。僕はトーキング・ヘッズをMTVでよく見ていたぐらいであまり知らないのですが、なんかこれもニューオリンズ・テイストがありホーンセクションが気持ちいい曲。そういうテイストにアレンジしたんですね、原曲知らんけど、多分。

4.This Must Be The Place/Ivan Neville

ニューオリンズはレジェンドのアレン・トゥーサンやドクター・ジョン、アール・キングなどが次々とこの世を去りどうなっていくのだろうと思いますが、今日のアィヴァン・ネヴィルやグラミーをたくさん獲得したジョン・バティースト、そしてこのアルバムにも参加しているトロボーン・ショーティなどが新しい音楽の中にしっかりと伝統の音楽っを継承しているように思います。
このアイヴァン・ネヴィルのニューアルバム”Touch My Soul”はナチュラルにそしてファンキーに表現されたいいアルバムだと思います。
最後はアイヴァンのピアノ・ソロで「美しい涙」

5.Beautiful Tears/Ivan Neville

2023.06.02 ON AIR

ブルーズ温故知新
「悪魔の養子(The Devil’s Son-In-Law)」と自称したブルーズマン、ピィーティー・ウィートストロー

The Devil’s Son-In-Law / Peetie Wheatstraw(P-Vine Records)

ON AIR LIST
1.Don’t Feel Welcome Blues/Peetie Wheatstraw
2.The Last Dime/Peetie Wheatstraw
3.When I Get My Bonus (Things Will Be Coming My Way)/Peetie Wheatstraw
4.Peetie Wheatstraw Stomp/Peetie Wheatstraw
5.Bring Me Flowers While I’m Living/Peetie Wheatstraw

ウィリアム・バンチという本名なのになぜ芸名がピィーティー・ウィートストローとなったのかはわかりませんが、ピィーティーはピートだと思いますがウィートストローって「麦わら」ですから。「麦わらのピート」ですか・・・。しかも自称「悪魔の養子(The Devil’s Son-In-Law)」と名乗っていたそうです。でも、ジャケットの写真を見るとにっこり笑っていて悪魔っぽい感じはしないのですが・・目立つのは鼻がめちゃでかいことぐらいです。そしてジャケット写真ではギターを持っているのですが、演奏してたのはほとんどピアノです。これもなんでかな?です。このへんで僕はこいつちょっとふざけた、おもろい奴やなぁ・・・と思っていたのですが、アルバムを聴き始めたら途中で「これ全曲テンポがほぼミディアムで曲のキーがほぼ全曲一緒やないか・・」と気づきました。まあブルーズではそんな驚くことでもないのですが、でも同じようなテンポ、同じようなキーで1930年から10年間くらいの間に160曲もレコーディングしてます。つまり人気者だったわけです。ピアノはすごくうまい訳ではないのですが左手で刻まれるビートはステディでいいリズムです。このリズムがいいということは当時ピアノやギターだけの演奏ですから踊るためにはリズムがよくないとね。

1.Don’t Feel Welcome Blues/Peetie Wheatstraw

「俺って歓迎されてないよね。でも行くところもないんだけど・・。彼女のドアから追い出されて・・でも街中が俺のことウェルカムじゃないムードだな」

ピィーティー・ウィートストローはブルーズの録音が残されている初期のチャーリー・パットンやサン・ハウスとほぼ同年代。彼らと同じように人気者だったのですが、人気があった理由のひとつは彼が作ったブルーズの歌詞にあったのではないかと・・。年下のロバート・ジョンソンはこのピーティーが作った歌詞からいろんな発想をもらっています。つまり「悪魔に魂を売り渡した男」と呼ばれたロバート・ジョンソンの先輩はこの「悪魔の養子」のピィーティー・ウィートストローとなるわけです。しかしピィーティーの歌詞はロバートのように深刻ではなくどこか笑いがあるものです。次の歌は曲名が”The Last Dime”つまり最後の10セント。なんとなくこの女はあかんよな・・と別れを感じて出て行った方がええよな・と思っている時に女に呼ばれて最後の10セントも取られるという笑える歌ですが、アメリカのドラマや映画観てると女性は別れ際に取れるだけ取って行きますからね・・。怖いですね。

2.The Last Dime/Peetie Wheatstraw

悪魔の養子(The Devil’s Son-In-Law)と自称してますが、別に暗くもないし重くもないです。歌は豪快で良く通る太い声ですが、歌い方は大味ではないです。つまり雑ではないです。そしてこの曲でもピアノのリズムがしっかりしていてます。
イントロのピアノのフレイズもどの曲もほぼ同じで笑えます。というかブルーズ・ギターやってる人、僕もそうですがギター・ソロ弾いてる時に「なんか同じフレイズばっか弾いてるな」と落ち込む人いると思いますが、大丈夫!ピィーティー・ウィートストローのイントロは同じフレイズで始まる曲いっぱあります。ソロの内容もテクニックあるなぁということはありません。だから大丈夫。ただ「リズムは良くないとダメです」よ。次もさっきの曲とイントロ一緒です。

3.When I Get My Bonus (Things Will Be Coming My Way)/Peetie Wheatstraw

ちょっと曲の感じが変わりましたが、有名な”Sitting’ On The Top Of The World”と同じ音楽形式です。

全曲ほぼテンポが同じと言いましたが、早い曲もないわけではないんですよ。次の曲は自分の名前をつけたダンス・ナンバーでリズムがストンプです。

4.Peetie Wheatstraw Stomp/Peetie Wheatstraw

ちょっとラグタイム調の楽しい感じのリズムでこれも悪魔の養子からほど遠い感じがしますが・・。

このアルバムの最後に入っている曲がライナーノーツで小出斉くんも書いているようにピィーティー自らの死を予感させるような歌詞です。
曲名が”Bring Me Flowers While I’m Living”ですが、「死んでから花を持ってこないで生きてるうちに花を持ってきてくれ。ベッドサイドにアイスポックスを持ってきて痛む頭を冷やしてくれ」そして最後に「天国に行けないのなら地獄で花なんかいらないから」と歌ってます。いいですね!

5.Bring Me Flowers While I’m Living/Peetie Wheatstraw

余談ですが1973年に「Petey Wheatstraw Devil’s Son In Law」というそのままの名前を使った映画が公開されています。ドタバタ・コメディ黒人映画らしいです。ちょっと見たい気がします。もちろん今日のピーティーから発想を得た映画だと思います。
このアルバムは日本のP-Vineレコードから2011年にリリースされ小出斉くんがコンピレーションしたものです。とてもいいアルバムで聞けば聞くほど味のあるアルバムで、最初は似たような曲ばかりだなと思っていたのですが、歌詞を聴きながら(歌詞カード入ってます)聞いているとひとりの男の生涯が見えてくるような聞くべきアルバムです。

2023.05.26ON AIR

90年代にもシカゴ・ブルーズの名作はあった/キャリー・ベル “Deep Down”

Deep Down / Carey Bell (Alligator Records)

ON AIR LIST
1.I Got To Go/Carey Bell
2.Jawbreaker/Carey Bell
3.Low Down Dirty Shame/Carey Bell
4.Easy/Carey Bell

シカゴ・ブルーズの全盛期というと50年代から60年代のあたまくらいということになっているのですが、それ以降もいいアルバムはたくさんあります。ただ黒人音楽全般の流れが50年代中頃からブルーズからR&Bそしてソウル、ファンクとなり、70年代になるとニューソウルそしてディスコ・ミュージックへとなったためにブルーズの存在が表面的には小さくなりました。しかし、60年代後期もファンクやソウルの要素を取り入れたブルーズン・ソウルやファンク・ブルーズのいいアルバムはあり、B.B.キング、リトル・ミルトン、アルバート・キング、ジョニー・テイラー、ボビー・ブランドなどはいいアルバムを出しています。
今日、紹介するのはなんと90年代の素晴らしいシカゴ・ブルーズのアルバムです。
ハーモニカ・プレイヤーのキャリー・ベルが95年にリリースしたアルバム”Deep Down”
リリースしたレコード会社はシカゴのインディーズ・レーベルのアリゲーター・レコード。インディーズと言ってもハウンド・ドッグ・テイラーやアルバート・コリンズ、ココ・テラーなどのメジャー級の名作を残している会社。
シカゴ・ブルーズにはリトル・ウォルター、サニーボーイ・ウィリアムスン、ビッグ・ウォルター・ホートン、ジェイムズ・コットンなどハーモニカの名プレイヤーがずらっと並んでいるわけですが、今回のキャリー・ベルはサニー・ボーイの35歳くらい年下、リトル・ウォルターより6歳年下、ジェイムズ・コットンとはほぼ同年代、年下には白人のポール・バターフィールドやチャーリー・マッセルホワイトなどもいてまさにシカゴはハーモニカ・プレイヤーの宝庫みたいな状態でした。
今日のこのアルバム”Deep Down”の1曲目にはシカゴ・ブルーズの大スターだったハーモニカ・プレイヤーのリトル・ウォルターの曲が選ばれています。

1.I Got To Go/Carey Bell

キャリー・ベルが生まれ故郷のミシシッピからシカゴに出てきたのは1956年。すでに売れていてキャデラックを乗り回して、パリッとしたスーツを着て、女性にもモテモテのリトル・ウォルターを見て「俺もいつかあんな風になるんだ」と思ったことでしょう。
ところがハーモニカの名手がたくさんいるシカゴで事はそううまくいかなくて、ベルはベースも上手く弾けたので一時ベース・プレイヤーとして活動します。そんな苦闘の日々が続いてソロ・アルバムが出せたのは1969年。しかしこれがイマイチので出来ばえで上に上がる事はできなかった。でも、その頃からハーモニカプレイヤーとしてマディ・ウォーターズの録音、ライヴに参加することになりステイタスは少し上がりました。実際、いまYou Tubeで見られる当時のマディのライヴ映像を見るといいハーモニカを吹いてます。
ではキャリー・ベルのハーモニカの素晴らしさを堪能できる曲を聴いてください。インストルメンタルの曲です。
曲名のジョウブレイカーはめちゃくちゃ大きいキャンディのことだそうです・・あとは想像してください。

2.Jawbreaker/Carey Bell

オルガンに聞こえたり、サックスに聞こえたりするベルのハーモニカですが、彼はクロマティック・ハーモニカと言う大きなハーモニカの名人です。
今までの二曲を聞いただけでもバックの演奏がすごくしっかりしているのがわかると思いますが、ギターは来日したこともあり僕も一緒にセッションしたことのあるカール・ウェザスビー、そしてもう一人はキャリーの息子ルーリー・ベルそしてピアノにラッキー・ピーターソン、とにかくこの若い3人のパワーに背中を押されたことは間違いないと思います。そしてベースはアルバート・コリンズのバンドにたジョニー・B・ゲイデン、ドラムはバディ・ガイやジュニア・ウエルズのバンドで活躍したレイ・キラー・アリソン。この二人のタイトなリズム・セクションもこのアルバムの成功の一因。
次のようなファンク・テイストのブルーズもすごくパワフルに演奏するバックにノセられるようにキャリー・ベルがいいプレイをしています。

3.Low Down Dirty Shame/Carey Bell

このアルバムはアリゲーター・レコードのオーナーであるブルース・イグロアが代表作がないベルの代表作を作りたいと考えたアルバムで実際すごく丁寧に作られている感じがします。
さっき言った録音メンバーの選び方から選曲などコンセプトも時間をかけてしっかり固めて録音されたいいアルバムです。
このアルバムにはベルが師と仰いだハーモニカ名人、ビッグ・ウォルター・ホートンの次の曲がカバーされています。

4.Easy/Carey Bell

本当に素晴らしい。キャリー・ベルはクロマティック・ハーモニカの名人です。クロマティック・ハーモニカというのはよくブルーズで使う10穴のハーモニカではなく、半音(クロマティック)も出せる大きなハーモニカで操作の仕方が違うので難しいと思います。太く豊かな音がでるので僕は好きです。

息子のルーリーとのアルバムもありますし、ジュニア・ウエルズ、ジェイムズ・コットン、ビリー・ブランチと四人のハーモニカ・プレイヤーで録音した”Heart Attack”といういいアルバムもありますが、まずは今日聞いた”Deep Down”を探してゲットしてください。中古レコード屋さんで時々見かけます。
残念ながらキャリー・ベルは2007年に心不全で70歳で亡くなっています。
アルバムタイトルのDeep DownというのはDeep Down In My Heart(心の奥深くで)などと使われる言葉ですが、長い歳月がかかってこのアルバムができたキャリー・ベルのディープ・ダウンな奥深いブルーズがたっぷり入ってます。

2023.05.19 ON AIR

タジ・マハールの新譜はオールド・ジャズ・アルバム

Savoy / Taj Mahal (BSMF Records)

ON AIR LIST
1.Stompin’ At Savoy/Taj Mahal
2.Gee Baby Ain’t I Good To You/Taj Mahal
3.Sweet Georgia Brown/Taj Mahal
4.Baby It’s Cold Outside /Taj Mahal (with Maria Muldaur)

タジ・マハールは以前もON AIRしたことがあるのですが、今回”Savoy”というジャズヴォーカル・アルバムを新しくリリースしましたので今日はそれを聞いてみようと思います。ざっとタジ・マハールの略歴を言いますと本名がヘンリー・セントクレア・フレデリックスという立派な名前があります。1942年生まれですから現在80歳。ニューヨーク出身。お父さんがジャマイカ出身でジャズ・ピアニストで作曲家でアレンジャー、お母さんは学校の先生でゴスペルを歌っていたという音楽一家に生まれています。そういう環境なので幼い頃からいろんな楽器を覚えてブルーズやR&Rが好きでやっていたようです。大学に入って農業を専攻していましたが、その頃から音楽活動を始めてます。
お父さんがジャズ・ミュージシャンだったということは家の中でジャズがよく流れていたわけで、「三つ子の魂百まで」やないですが今度のジヤズ・カバー・アルバムに繋がったのですかね。
まず一曲

1.Stompin’ At Savoy/Taj Mahal

今の曲のStompin’ At Savoyは日本のタイトルでは「サヴォイでストンプ」なのですが、サヴォイというのは1920年代半ばから50年代半ばにかけてニューヨークのハーレムにあったすごく大きなダンスホールで、大きな特徴は白人でも黒人でも入れたことです。ジャズのデューク・エリントンやキャブ・キャロウェイのオーケストラがハウスバンドとなり有名になったダンスホールです。ストンプというのはダンスやビートの呼び名です。サヴォイはロマンスが生まれるところで、みんなが楽しく踊るところ・・という歌詞。
タジはニューヨーク生まれてですからサヴォイのことはよく知っていたでしようね。
次の曲はジャズ・シンガーもブルーズマンも歌う曲でT.ボーン・ウォーカーも歌っていますが、彼女にいろいろプレゼントするのだけど振り向いてくれない彼女に「オレじゃダメかな」とため息ついているような歌です。

2.GEE BABY, AIN’T I GOOD TO YOU/Taj Mahal

さっきの略歴の続きですが、タジ・マハールは64年ロサンゼルスに移住してライ・クーダーと知り合い「ライジング・サンズ」というバンドを結成し、66年コロンビアレコードからデビューしてシングル一枚出しただけで、アルバムを作っていたのにリリースされなくてバンドは解散に追い込まれました。その後ソロになりギタリストのジェシ・エド・デイヴィスとバンド作り68年に名盤『Taj Mahal』をリリース。
その後もブルースだけでなく、レゲエ、ケイジャン、ゴスペル、ハワイ、カリブ、アフリカなどに関連したルーツ・ミュージック・アルバムをリリースして3回グラミーを獲得しています。ジャズ・ヴォーカル・アルバムをリリースしたのは今回が初めてだと思います。
次も1925年と古い曲ですが、男たちはみんな夢中になり女たちは嫉妬してしまう美しい女性ジョージア・ブラウンのことを歌った歌。大御所のエラ・フィッツジエラルド、アニタ・オデイ、インストだとオスカー・ピーターソンからカウント・ベイシーなどたくさんのジャズ・ミュージシャンに取り上げられた曲です。

3.Sweet Georgia Brown/Taj Mahal

今回のアルバムにはジャズのデューク・エリントンが作った”I’m Just a Lucky So-and-So”、ジョージ・ガーシュウィンが作った”Summer Time”など名曲がずらっと並んでますが次の曲はタジとマリア・マルダーのデュエット。これも古くからある男女デュエットの曲で、エラ・フィッツジェラルドとルイ・ジョーダン、レイ・チャールズとベティ・カーター、比較的新しいところではウィリー・ネルソンとノラ・ジョーンズなどがあります。
付き合っている男女が男の家にいて女性の方が遅くなったから帰らなきゃというのを「外は寒いよ」からこのままここに居なよと引き止めている歌です。女性の方もそんなに帰りたくはないのですが、周りがうるさいから帰らなきゃと言ってるだけみたいです。まあ女性の方も引き止めて欲しい。でも、一応「私は帰るって言うたからね」と。

4.BABY IT’S COLD OUTSIDE/Taj Mahal (with Maria Muldaur)

アルバムの所々で印象に残るのですが、この素晴らしいギターはジャズ・ブルーズ系のギタリストでダニー・キャロン。
そしてアルバムのプロデューサーでもありピアノも担当しているジョン・サイモンはザ・バンドのファースト・アルバムはじめ、ジャニス・ジョップリン、サイモン&ガーファンケル、ボビー・チャールズのアルバムをプロデュースした名うてのプロデューサーです。
今回のこういうアメリカのオールド・ジャズの歌はメロディもよくできているけど歌詞もよく練られています。アメリカのシンガーはやはり一生に一枚はこういう子供の頃から慣れ親しんだジャズ・スタンダードのアルバムを作りたいんでしょうね。
タジ・マハールのニューアルバム「サヴォイ」とてもいいアルバムでした。4/28に日本のBSMFレコードから発売されています。