2023.10.13 ON AIR

ブルーズ・ライヴ名盤 vol.7

イギリスはじめヨーロッパのミュージシャンに大きな影響を与えたライヴ「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバル」

The Original American Folk Blues Festival (Polydor)

ON AIR LIST
1.We’re Gonna Rock/Memphis Slim
2.I Wanna See My Baby/T.Bone Walker
3.Let’s Make It Baby/John Lee Hooker
4.Hey Baby/Shakey Jake
5.I’m In Love/T.Bone Walker

60年代中頃にイギリスのロックがビートルズを筆頭に盛り上がりアメリカにまで飛び火して、多くのイギリスのミュージシャンたちがアメリカで売れたことを「ブリティッシュ・インベンジョン(British Invasion)」と言うのですが、ブリティッシュ・インベンジョン(イギリスの侵略)と呼んだくらいイギリスのロック・ミュージシャンたちの動きが活発でした。
ビートルズと並びその大きな動きのひとつがローリング・ストーンズやアニマルズ、ゼム、ヤードバーズといったブルーズをルーツに求めたバンドの活躍でした。いわゆるブリティッシュ・ブルーズも同時に盛り上がりそれはやがてエリック・クラプトンのクリームやジミ・ヘンドリックスといった新たなロックの元にもなりました。その火種のひとつが60年代最初にイギリスやヨーロッパをツアーして本物のブルーズを生で聞かせた「アメリカン・フォーク・ブルース・フェスティバル」というコンサートの開催でした。恐らくこの企画で初めて黒人ブルーズに接したヨーロッパ人も多かったと思います。これはブルーズだけでなくロック・ミュージックにも非常に重要な出来事で、ヨーロッパとりわけイギリスのロックに与えた影響はかなり強かったと思います。
今回のブルーズ・ライヴ名盤は”The Original American Folk Blues Festival 1962”
最初に開催されたのは1962年。ライヴ音源が残っているのはその62年のドイツ、ハンブルグのスタジオにお客さんを入れて開催されたものです。
まず、一曲
メンフィス・スリムがピアノとヴォーカル、ギターがT.ボーン・ウォーカー、ベースがウィリー・ディクソン、ドラムがジャンプ・ジャクソンというメンバー

1.We’re Gonna Rock/Memphis Slim

今のはメンフィス・スリムが得意としていたブギの曲で彼のブギ・ピアノの素晴らしさも存分に披露されています。スリムのピアノやT.ボーンの素晴らしいギターソロに自然と拍手が起こってます。
このライヴ・バンドでギタリストはT.ボーン・ウォーカーだけなのでメンフィス・スリムだけでなく、ジョン・リー・フッカーやサニー・テリーとブラウニー・マギーのバックもやるというとても珍しい貴重な音源になってます。
では、そのT.ボーンが歌っている曲を

2.I Wanna See My Baby/T.Bone Walker

お客さん、めちゃ盛り上がってます。やはり当時にしたらエレキ・ギターということもありますが、T.ボーンのギターの素晴らしいプレイには盛り上がるでしょう。
次の組み合わせはこのアルバムの中で最も貴重かも知れません。同じブルーズといってもフィールドは広くてジャンルも多いですからなかなかセッションする機会がないブルーズマン同士もいます。このジョン・リー・フッカーのバックでT.ボーンがギターを弾いているなんてこのアルバムしかないかも知れません。

3.Let’s Make It Baby/John Lee Hooker

曲のパターンと歌詞はジョン・リーの代表曲「ブーン・ブーン」なんですが”Let’s Make It Baby”なんて違う曲名をつけているところにジョン・リーのしたたかさを感じます。それにしてもワン・コードのブルーズなのか3コードなのか2コードなのかわからなくてT.ボーンも「おいおい!どうなってんねん」いう感じでしょうね。でも、これがジョン・リー・フッカーですから。

次はハーモニカ・プレイヤーのシェイキー・ジェイク。彼はマジック・サムの叔父さんでサムとの共演が多かったのでサムのアルバムなんかで知っている人も多いと思います。
歌っている曲は・・・これリトル・ウォルターの”Everything’s Gonna Be Alright”やんかとツッコミ入れたくなりますが、タイトルはHey Babyになっています。バックの演奏がさすがのクオリティです。

4.Hey Baby/Shakey Jake

メンフィス・スリムのピアノ、ギターがT.ボーン・ウォーカー、ベースがウィリー・ディクソン、ドラムがジャンプ・ジャクソンというメンバーによるバッキングのリズムとサウンドがグルーヴしているので、フロントのミュージシャンがだれになってもクオリティのある演奏になってます。1962年というこのライヴが録音された時代ではまだこういう安定したブルーズが楽しめたということですね。

もう一曲T.ボーンのテイクがすばらしいので聞いてください。ギター、歌とも彼でしかできないプレイでやはりモダン・ブルーズギターの父です。

5.I’m In Love/T.Bone Walker

ともかく縦横無尽に惹かれるT.ボーンのギターとドライな歌声がたまりません。
こういういい演奏をしたことでお客さんの評判もよく、「来年も来てくれないか」という要請があったのだと思います。またヨーロッパに行った黒人ブルーズマンたちもたくさんの人たちに歓迎され、演奏もじっくり聞いてくれたので満足だったのでしょう。ここから「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバネル」はシリーズ化されて続くことになります。
次回は翌年1963年のコンサートをライヴ名盤でとりあげたいと思います。

2023.10.06 ON AIR

魅惑のシルキーなバリトン・ヴォイス、ブルック・ベントンのベスト盤

Endleslly:Hits And Rarities / Brook Benton
(BSMF レコード BSMF-7696)

ON AIR LIST
1.Rainy Night In Georgia / Brook Benton
2.It’s Just a Matter of Time / Brook Benton
3.Kiddio/ Brook Benton
4.Hotel Happiness / Brook Benton
5.Thank You Pretty Baby/Brook Benton

アルバム・タイトルが「限りなく ヒット曲とレアリティーズ(珍しい、希少な曲)集」で二枚組CDです。7/21に日本のBSMFレコードからリリースされたR&Bシンガー、ブルック・ベントンのアルバムを今回は特集します。
ブルック・ベントンと言えばまず不朽の名作”Rainy Night In Georgia”でしょう。この曲は白人のシンガー・ソングライター、トニー・ジョー・ホワイトが1962年に作り歌ったものですが、1970年にカバーしたブルック・ベントンにとっては彼を代表するヒットとなりました。他にもレイ・チャールズ、デヴィッド・ラフィン、ボズ・スキャグス、ロッド・スチュワートなどこの曲をカバーしているシンガーは多いのですが、私にとってはリアルタイムで聴いてたブルック・ベントンのこのカバーがいちばんです。
「雨の夜にスーツケースを持って夜を過ごせる暖かい場所を探している。雨はひどくなる中。「大丈夫よ」と呼ぶ君の声が聞こえるようだ。雨のジョージア、雨のジョージア・・世界中で雨が降っているような感じだ」と始まる歌です。おそらく愛した彼女を思い出しながら寝ぐらを探しながら放浪している男の歌でしょう。

1.Rainy Night In Georgia / Brook Benton

僕はキーが高いのでこの曲を自分のキーに合わせて歌ったこどあるのですが、やはりこの曲は低いバリトンの歌声じゃないとなんかムードが出ないんで、それ以来歌っていません。
ブルック・ベントンは本当にいい声をしています。

ブルック・ベントンはR&B・シンガーなのかジャズ・シンガーなのかあるいはポピュラー・シンガーなのかジャンル分けが難しいシンガーで、ジャンル分けが好きな日本で人気が出ない理由の一つがそれだと思います。シャウトやモーンと言った黒人音楽特有の激しい唱法はしないところが物足りないと感じる人もいるようですが、バリトンの美しい歌声で歌われる彼のような大人のR&Bも味わって欲しいでするね。「ブルーズの詩人」と呼ばれた黒人のシンガー・ソングライターでもあるパーシー・メイフィールドにも似ていますね。

ベントンは元々は1950年代中頃ゴスペルを歌っていたのですが、マーキュリー・レコードと契約してからR&Bシンガーに転身しました。
次に聞いてもらう1959年の”It’s Just a Matter of Time,”というゆったりしたバラードがヒットして名前が知られるようになります。
「いつか、君は自分が盲目だったことに気づいて、そしてまたぼくを必要とするだろう・・それは時間の問題だよ。ある日、目が覚めてぼくの愛が本当だったことに君は気づくだろう・・それは時間の問題だ」フラれてしまった彼女への気持ちを歌ったいいバラードです。

2.It’s Just a Matter of Time / Brook Benton

一杯飲みたくなるような気持ちのいい曲です。

次の「キディオ」はブルック・ベントン自身と長年曲作りをしていたオーティス・クライドが共作したヒット曲ですが、日本のブルーズ・ファンにはシカゴ・ブルーズのジョン・リトル・ジョンのバージョンで知っている人もると思います。キディオは女性の名前でこれは愛の告白の歌。
「僕の心の女王になってください。あなたの愛をください。イエスとは言ってくれなのかい?ノーとは言わないでくれよ。キディオ、気持ちよくさせてくれ」

3.Kiddio/ Brook Benton

ブルック・ベントン以前にこのタイプの歌手というとやはりナット・キング・コールを思い出しますが、ベントンは下積み時代に曲を書いてキング・コールにも売り込んでいたらしいです。取り上げられてヒットということにはならなかったけど、のちに自分自身のヒットに繋がったわけですから努力の人だったのでしょう。
女性ジャズ・シンガーのダイナ・ワシントンとのデュオ・アルバムもありますが、それもいいです。
ベントンはモロのジャズ・シンガーではないので土俵が違いちょっとダイナに押されているかなという感じがしました。本当にベントンのようなジャズ、ブルーズ、R&B、ソウルといったテイストを全て持った歌手は日本では人気が出ません。アメリカのクラブで聞いたらこんなとろけるような歌に酒が進むと思います。
「ホテルロンリネスをチェックアウトするよ。孤独な日々は終わったんだ。そしてホテルハッピネスにチェックインするよ。なぜって君を見つけたからさ。涙も傷ついた心もホテルロンリネスに置いてきた。ホテルハピネスではもう必要ないんだ。だって君を見つけたから」こんな風な内容ですが、なんか日本語に訳すると安っぽいですが・・まあ、寂しいホテルから幸せホテルに移ったとそれは君を見つけたからだ・・と。これで女性が口説けるのでしょうか。

4.Hotel Happiness / Brook Benton

もう一曲ベントンの甘い声で聞いてください。

5.Thank You Pretty Baby/Brook Benton

今回7/21に日本のBSMFレコードからブルック・ベントンのベスト盤とも言える”Endleslly:Hits And Rarities”という二枚組のCDアルバムがリリースされました。なかなかアルバムが再発されることも少ないシンガーなので是非この際にゲットしてみてはいかがでしょうか。

2023.09.29 ON AIR

50年代の偉大なシンガー・ソングーライター、チャック・ウィリスの遺産-2

Let’s Jump Tonight! The Okeh Sessions 1951-1956/Chuck Willis(Sony Music/OKeh)
The Songs Of Chuck Willis /Chuck Willis(Jasmine)
I Remember Chuck Willis/Chuck Willis(Atlantic)

ON AIR LIST
1.Keep A-Knockin’/Chuck Willis
2.You’re Still My Baby/Chuck Willis
3.I Feel So Bad/Chuck Willis
4.Bless Her Heart/Chuck Willis
5.It’s Too Late/Chuck Willis

先週に引き続き偉大なシンガー・ソングライター、チャック・ウィリスの特集です。
ウィリスの”Let’s Jump Tonight! “というアルバムを先週から聞いているのですが、僕が気になったのがKeep A Knockin’という曲でこの曲を有名にしたのは58年に録音したロックンロールの王様、リトル・リチャードだと思っていたのですが、その4年前にチャック・ウィリスは録音していたのか・・と思ったのですが、調べてみるとこの曲は20年代からありいろんな歌手に歌詞を変えながら歌われてきたトラッドな曲だとわかりました。
“Keep A-Knockin’ (But You Can’t Come In)”まあ、「ドアをノックし続けても他に男を作ったお前なんか中に入れてあげないよ」という歌です。
聞いてみましょう。

1.Keep A-Knockin’/Chuck Willis

いいですよね。でもこの曲もそんなに売れなかった。
アップ・テンポの曲がなかなか売れないチャック・ウィリスの話を先週しましたが、その後やはり人気があったのは彼のバラード曲でした。
昔の彼女が忘れられない男の気持ちを歌った1954年のこの曲はチャートの4位まであがりました。

2.You’re Still My Baby/Chuck Willis

この曲はのちに60年代のソウル・レジェンド、オーティス・レディングもカバーしています。
スローのバラードにすっかり人気がありアップテンポのダンサブルな曲が売れなくてもまあ売れていただけ良かったと思います。
そして、今もブルーズ・シンガーに歌われている彼の曲となるとやはり次の.I Feel So Badでしょう。
エルヴィス・プレスリーが歌い、60年代にはブルーズのリトル・ミルトン、オーティス・ラッシュがカバーしてこの曲はブルーズのスタンダードとなって今も歌い継がれています。
彼女と別れようかどうしようかと悩んでいるときの気分でしょうか。歌詞は「めちゃ気分が悪いねん。野球の試合が雨で中止になったときのような気分なんや。時々もうやめようと思うんやけど、またしてしまうような。ここにいたいと思うけどいたくないような気持ち。汽車のきっぷは手に入れたし荷物持って出発しよかな」
そんな歌詞です。

3.I Feel So Bad/Chuck Willis

この曲がオーケー・レコードでの最後の曲となりました。
このアルバム”Let’s Jump Tonight! “にはオーケーでの後期の次のような未発表のいい曲も数曲収録されています。1956年の録音の素晴らしいR&Bナンバーになっていると思います。
「俺と彼女は歳をとってもR&Rで踊るんだよ。年寄りになってもね」

4.Bless Her Heart/Chuck Willis

そして今の1956年がオーケー・レコード最後の録音となりウィリスはR&Bレコードの名門、アトランティック・レコードに移籍します。
アトランティックでも変わらずヒットを出して活躍するのですが、その当時の写真を見ると頭にターバンを巻いています。黒人ミュージシャンではプロフェッサー・ロング・ヘアなどもターバンを巻いているのですが、ぼくは初めてジャケット写真を見た時なにやら怪しげな人やなと思いました。ウィリスがターバンを頭につけた理由は髪の毛が薄くなってきてカツラをつけていたのですが、彼はターバンの方が気に入ってたようです。
ツアーもよくやっていたようでサム・クックやエスター・フィリップス、ルース・ブラウン、ジャッキー・ウィルソンなど当時の売れっ子たちの一人として活躍しました。しかし、彼は派手な人ではなくとても無口で紳士的な人だったとみんなが語っています。
では、最後にそのアトランティックレコードに移ってからのヒット曲、今も歌い継がれています。ロックを好きな方はエリック・クラプトンが「いとしのレイラ」のアルバムでこの歌をカバーしてるのを知っているでしょう。

5.It’s Too Late/Chuck Willis

今の曲はバディ・ホリーもカバーしてます。
ルース・ブラウンのロマンティックなヒット曲”Oh,Waht A Dream”を書いたのもチャック・ウィリスですが、彼の書いた曲を一つずつ聞いて行くと本当にいい曲が多いです。ブルーズがジャンプ・ブルーズやR&RとなりやがてR&Bと呼ばれる時代に歌手としてもソングライターとしても立派な曲をたくさん残したチャック・ウィリス。ぜひ、アルバムをゲットしてじっくり聞いて見てください。番組のHPにアルバム出しておきます。

2023.09.22 ON AIR

50年代の偉大なシンガー・ソングーライター、チャック・ウィリスの遺産-1

Let’s Jump Tonight! /The Okeh Sessions 1951-1956/Chuck Willis (Sony Music/OKeh)

ON AIR LIST
1.Let’s Jump Tonight/Chuck Willis
2.It’s Too Late Baby/Chuck Willis
3.My Story/Chuck Willis
4.Going To The River/Chuck Willis
5.Don’t Deceive Me (Please Don’t Go)/Chuck Willis

1950年代の初めから中頃にかけて録音されたチャック・ウィリスのコンピレーション・アルバムを聴きます。
50年代の黒人音楽の代表的なレーベルにオーケー・レコード(OKeh Records)というのがあり、そのレーベルからチャック・ウィリスはヒットを連発しオーケーの看板シンガーとなりました。
また彼は優れたソング・ライターでもあり本人はどうもステージよりも曲づくりの方が好きだったようです。50年代というと黒人音楽はブルーズからジャンプ・ブルーズやロックンロールといったダンサブルな音楽が生まれていく時代で、特にロックンロールは人種の壁を超えて白人の若者たちも取り込んでいきました。その元になったのがジャンプ・ブルースでこのチャック・ウィリスも初期の曲はこんな感じのジャンプ・ブルース・スタイルでした。タイトルもまさに”Let’s Jump Tonight”

1.Let’s Jump Tonight/Chuck Willis

アルバム・タイトル曲”Let’s Jump Tonight”でした。
チャック・ウィリスは1928年アトランタの生まれで10代の終わりころには地元の人気シンガーとしてクラブやイベントに出たりしていました。そのウィリスの才能に目をつけたのがゼナス・シアーズというDJの男で、ウィリスを売り出そうとレコード会社と契約を結びますが最初はなかなか売れませんでした。確かに当時今の”Let’s Jump Tonight”のようなダンス・ナンバーは他にもたくさんありました。次のウィリスのオリジナルも歌はもちろんアレンジやバックの演奏も含めなかなかいい曲だと思うのですが、この曲も売れなかった。

2.It’s Too Late Baby/Chuck Willis

次の52年に録音したアップ・テンポの曲ではなく「彼女に逃げられて俺はもう生きていたくない」という失恋のスローバラードがじわじわとチャートを上がりR&Bチャートの2位まで登りつめました。
曲のタイプはそんなに斬新な曲でもないのですが、ウィリスの歌がとてもソウルフルで胸に迫るものがあり、途中のギターのブリッジも曲のムードをかき立てています。

3.My Story/Chuck Willis

しかし、大ヒットが出て広く知られることになったウィリスですが次のヒットが出ずに珍しくカバーを歌います。これは今日のアルバムの中で唯一のカバーです。オリジナルはニューオリンズの偉大なピアニスト、シンガーのファッツ・ドミノ。これが本当にいい曲で、ぼくも大好きな曲なのですが、アメリカでは珍しい自殺を示唆するような曲で彼女にフラれたから川に飛び込んで溺れて死んでしまいたいというネガティヴな歌ですが、いい曲です。最後の方の「惨めに生きるのが嫌になったんだ」という一節が胸に残ります。

4.Going To The River/Chuck Willis

こういうカバーを歌うとその歌手の力量がよくわかるのですが、ウィリスはオリジナルのファッツ・ドミノとはまた違うオリジナリティを感じさせるとてもソウルフルな歌唱を残しています。彼の歌手としての力はやはり相当なものだったと思います。

しかし、再びヒットしたのは前にヒットしたMy Storyと同じようなスロー・バラードの曲でした。R&Bチャートの6位まで上がったこの曲もさっきのMy Storyとあまり変わらななぁと僕は思うのですが、ヒットしました。
やはりファンは彼にこういう路線を望んでいたんですね。

5.Don’t Deceive Me (Please Don’t Go)/Chuck Willis

なかなか自分の思うように進まないのがミュージック・ビジネスの世界ですが、それでもウィリスはヒット曲をすこしずつ出せただけでも良かったと思います。まだまだ彼のいい曲がたくさんありますので来週もチャック・ウィリスの特集をします。

2023.09.15 ON AIR

数々の名盤にコーラスとして参加したクラウディ・キングのソロ・アルバム

Direct Me / Clydie King (BSMF Records)

ON AIR LIST
1.Bout Love/Clydie King
2.Direct Me/Clydie King
3.You Can’t Go On Without Love/Clydie King
4.The Long And Winding Road/Clydie King

今日はクラウディ・キングの1972年リリースのソロ・デビュー・アルバム”Direct Me”が日本のBSMFレコードから再発されたので聞いてみようと思います。
クラウディ・キングという名前をどこかで見かけたような、聞いたような・・・すぐに思い出せなかったので調べて観ました。
女性ソウル・シンガー、クラウディ・キングは1943年にテキサスのダラスで生まれています。幼い頃は多くの黒人シンガーと同じように教会で歌っていたのですが、50年代にロスに移り住んでからフレアズとかロビンズというデュワップ・コーラスで活躍していた歌手でありソングライターでもあるリチャード・ベリーという人に見出され、リトル・クラウディ&ザ・ティーンズというグループを作って活動を始めます。
でもあまり売れなかったのか、50年代終わりからバック・コーラスの仕事やスタジオワークを始めます。
それでも何度もシングルをいろんなレーベルからリリースしている形跡を見るとやはりソロ・シンガーとして有名になりたかったのでしょう。そして、確かにその実力もあったシンガーです。
71年にやっとシングルでリリースされ、R&Bチャート45位になった”Bout Love”が評判になり翌72年に今日聞いてもらうデビュー・アルバム”Direct Me”のリリースとなります。このあたりがソロ・シンガーとして這い上がる一番のチャンスだったも知れません。
ではまずその71年にシングル・リリースされた”Bout Love”

1.Bout Love/Clydie King

R&Bチャート45位ですから大ヒットというわけでもないけれどまあ次のシングル・リリースには繋がるランクでしょう。確かに彼女はその後もスペシャルティ・レコード、キング・レコードからもシングルを出しますがヒットには至りません。
そして、それ以前1965年から68年までレイ・チャールズのバックコーラス「ザ・レイレッツ」のメンバーとして活動してそのあたりからバック・コーラスが上手いという評判が上がり、ロックのハンブル・パイのバックコーラスや、有名プロデューサー、フィル・スペクターのスタジオワークなどコーラス・シンガーへと転身していきます。まあ、ソロで売れなかったから生活するためにもそれは仕方のなかったことだったのでしょう。
では今日のこのアルバムのタイトル曲を聞いてみましょう。

2.Direct Me/Clydie King

コーラス・シンガーとしては評判が高くハンブル・パイ、レナード・スキナード、B.B.キング(インディノアラ・ミシシピのハミング・バードに参加)、ボブ・ディラン、ジョー・コッカー、リンダ・ロンシュタットなど有名ミュージシャンの録音にたくさん参加するようになっていきます。
1970年ジェシ・デイヴィスのアルバム「ジェシ・デイヴィス」72年のローリング・ストーンズの「メインストリートのならず者」の”Tumblin’ Dise”などにもコーラスで参加。恐らく僕がなんとなくクラウディ・キングという名前を覚えていたのはジェシ・デイヴィスやストーンズのアルバムのクレジットを見ていたからでしょう。
コーラスとして信頼され多くのレコーディングに呼ばれるのはもちろん嬉しかったと思いますが、やはりソロ・シンガーとして売れたいという気持ちは重々あったと思います。そのあたりの葛藤はどうだったんでしょうね。
今のファンク・テイストも入った曲なんか売れそうな感じもあるのですが。
スローの曲を聴いてみましょう

3.You Can’t Go On Without Love/Clydie King

ちなみに今日聞いてもらっているアルバム”Direct Me”はキーボードにビリー・プレストン、ギターにデイヴッド・T・ウォーカーなど腕利きのミュージシャンが参加しています。アルバムとしては決して悪くはないし、彼女の歌もいいのですが、やはりこれという決定打になる曲がないんですよね。

74年にも”Brown Sugar”というアルバムもリリースしているのですが、ヒットには恵まれませんでした。

ボブ・ディランのコーラスはかなり長くやっていたようで、1998年に当時のボブ・ディランのガールフレンドだったスーザン・ロスはディランはクラウディ・キングと極秘に結婚していてこどもも二人いたと語って言いますが、真相はどうだったんでしょう。彼女はディランとのことは別にしても三回結婚しています。
2019年に血液感染の合併症で76才でクラウディは亡くなったのですがその時、ディランは「彼女は私の最高の歌のパートナーであり、誰もそこには近づけなかったし、私たち二人はソウル・メイトでした」とコメントしてますが、ソウル・メイト(ソウルの同志)・・微妙な表現ですがまあ大人の関係というところでしようか。
彼女の一生もまた次の歌のように長く曲がりくねった道だったのでしょうか。ビートルズのカバーですがなんとも言えない魅力のある歌です。

4.The Long And Winding Road/Clydie King

歌いすぎないしフェイクもあまりしないとてもストレートな歌で僕はすごく好きです。
本当に曲にさえ恵まれればブレイクした優れた歌手だと思います。
今日のこのアルバム”Direct Me”は日本のBSMFレコードから8/18に発売されています。多分あまり再発とかされないシンガーだと思うので気になった方はぜひこの機会にゲットしてください。
今日はソロ・シンガーとしては有名ではなかったのですが、コーラス・シンガーとして多くの録音とライヴに参加したクラウディ・キングを聞きました。
Hey,Hey,The Blues Is Alright