2021.11.05 ON AIR

私が選んだブルース名唱15曲 その1

【BSR Playlist Archives】第3回 永井ホトケ隆
(https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/)

ON AIR LIST
1.Moanin’ At The Midnight / Howlin’ Wolf ( 1951 CHESS )
2.Rollin’ Stone / Muddy Waters (!950 CHESS )
3.Cross My Heart / Sonny Boy Williamson ( 1957 Chess/Checker )
4.Mojo Hand / Lightin’ Hopkins (1961 FIRE )

私がエッセイを連載している「ブルース&ソウルレコーズ」という日本で唯一のブルーズとソウル、ゴスペルの音楽雑誌のWEB版(https://bsrmag.com)というのがあります。
だれでも見れます。実はそのWEBに私が選んだ「ブルース名唱15撰」というのが発表されています(https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/)
歌を中心としたブルーズの素晴らしい曲を15曲選んだものです。そのサイトに行くとSpotifyで登録すれば曲が聴けるようになっているのでぜひ一度訪ねてみてください。
それで今日はその選んだ15曲の一部を紹介したいと思います。
まずそのサイトに私はこんな文を載せました。
「ブルース名唱15撰」       
昔、某音楽学校からブルース・ヴォーカル教室をやってくれないかという依頼を受けたことがある。すぐさま丁重にお断りした。ブルースの歌は教えるようなものではないし、教えられない。歌声が何オクターブ出るとか音域が広いとか発声がどうのとか歌唱テクニックが云々という音楽的な規範がブルースには全くない。だから今回挙げた15曲も私が個人的にこれぞブルースと感じる歌であり、一般的な「名唱」と言えるかどうかはわからない。
15人の偉大なブルースマンは声質も違えば歌い方も様々だ。泥臭い歌から洗練された歌、ゴスペルの影響が感じられる歌もあればダウンホームな歌もあり、語るように歌うものもあり地声に魅力がある歌もある。そのひとつひとつの曲にそれぞれのブルースマンの人間性や人生観を感じることもあり、歌った時の心象風景が浮かんだり、その時の社会状況を知ることもある。そしてもちろんダンス・ミュージックでもあるブルースのグルーヴに心と体を揺らす楽しさもある。長い歳月歌われ続け、聞き続けられて来たブルースをこれからもずっと楽しんでください」

ハウリン・ウルフを初めて聞いた時はいわゆる日本でいう「ダミ声」のような歌声が印象に残り、いいとか悪いよりもとにかくインパクトがすごい声だなぁと感じた。その大きな潰した声はハウリン・ウルフが憧れてギターや歌を教えてもらったチャーリー・パットンがそういう歌い方でその後パットンを聞いてなるほどと思った。きっちり言えば「歌唱法の伝承」ということでしようか。バンドのサウンドも同じチェスのマディ・ウォーターズと比べるとラフで土着的な感じで、それはウルフがシカゴにくる前にいたウエスト・メンフィスのブルーズがそういう荒々しいブルーズなんですね。選んだ”Moanin’ At The Midnight”は「真夜中に唸る」ということですが、実際モーン(唸り)から歌が始まります。南部の匂いがプンプンするアーシーなワン・コード・ブルーズです。「誰かが俺のドアをノックする。心配だ。俺は行くところもない」
1.Moanin’ At The Midnight / Howlin’ Wolf ( 1951 CHESS )
この歌を聞いた時、アメリカの広い荒野に乾いた風が吹いていて砂埃が舞って、月が煌々と照っている所に狼や鳥の鳴き声が聞こえてくる・・そんな寂しい風景を思い浮かべました。

ブルーズの名門レコード会社のひとつシカゴのチェスレコードは映画「キャデラック・レコード」のモデルにもなった有名な会社です。ブルーズだけでなくR&B,ソウル、ゴスペルと幅広く黒人音楽を提供したレーベルですが、ブルーズ部門の大看板が今聞いてもらったハウリン・ウルフと次のマディ・ウォーターズです。マディはベーシストでありプロデューサーでもありソングライターでもあったウィリー・ディクソンが作った曲とディレクションによって多くのヒット曲を出しました。私が選んだのはそれ以前のマディの録音初期、1950年の曲”Rollin’ Stone”この曲がマディのチェスからのデビュー曲。ご存知の方も多いと思いますがロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ」のバンド名はこの曲からつけられました。
歌詞はWell, I wish I was a catfish,swimmin in a deep blue seaと始まる歌詞で「もし、俺がナマズだったら深く青い海を泳いで」I would have all you good lookin women,fishin, fishin after me「きれいな女たちをどんどん釣り上げるやろな」と、女性にモテる自慢で始まり、3番の歌詞でWell, my mother told my father, just before I was born,I got a boy child’s comin,he’s gonna be, he’s gonna be a rollin stone「俺が生まれてくる前にお袋が親父に男の子が生まれるだろうけどこの子は転がる石になりそう(つまり落ち着かない不良になりそう)と言ったのさ」
2.Rollin’ Stone / Muddy Waters (!950 CHESS )
実はこのRollin’ Stoneには20年代にジム・ジャクソンというブルーズマンが歌った”Kansas City Blues”という元歌があり、そこから歌詞が取られていてそしてこのRollin’ Stoneはのちにウィリー・ディクソンが作ってマディに歌わせた”Hoochie Coochie Man”の元にもなっています。マディの声がまだ若いですがふくよかで色気があります。この時マディは35才。マディの弾き語りで彼の故郷ミシシッピのブルーズの匂いがします。歌声もいいのですがギターのリズムがしっかりしているのもマディの素晴らしいところで、デビュー前にハウスパーティなどで引っ張りダコだったというのもこのリズムの良さがあったからだと思います。
ウルフ、マディ、と来て次も同じチェスレコードのサニーボーイ・ウィリアムスン。
私はブルーズを聴き始めた20才くらいの頃、最初によく聞いたのがこういう50年代のシカゴ・ブルーズだったのです。まあ、その前に聴いていたブルーズ・ロックとの関連が深いということもあったのですが、なんか次のサニーボーイなどを聞くとロックが子供の音楽に思えました。何か奥深い、何か得体の知れないものが、人間の本質みたいなものがブルーズ隠されているのではないか・・・と感じたわけです。特にこのサニーボーイの”Cross My Heart”は歌うというより、語るようにというか訴えかけるようなヴォーカルで「これはなんなんや」「この切羽詰まったような歌は・・」とすごく惹かれました。私はブルーズの歌を選んで欲しいと言われると必ずこの曲を出します。
3.Cross My Heart / Sonny Boy Williamson ( 1957 Chess/Checker )
この曲のサニーボーイの歌を支えているのがギターのロバートJr.ロックウッドとルーサー・タッカー、そしてウィリーディクソ(B),フレッド・ビロウ(Dr)と50年代シカゴ・ブルーズの鉄壁のメンバーです。

今のサニーボーイと同じで私にとってはブルーズという音楽の本質と時代を超えた格好良さを教えてくれたライトニン・ホプキンス。「ルイジアナに行ってモジョ・ハンドを手に入れるんだ」と始まるこのMojo Handはいかにもギャブラーをやっていたライトニンらしい、アウトローな彼の人柄がやはり歌に出てるんですね。ああこの人堅気やないなとわかる。
4.Mojo Hand / Lightin’ Hopkins (1961 FIRE )

今日聞いた4人ともすごく個性的な声と歌い方でそれぞれに魅力があリます。やはり歌にはその人の人柄、性格とか出てくるんですね。今日の4人の中ではマディ・ウォーターズがいちばんかっちりしてて彼の真面目さと別な言い方すると細かい、スクウェアなところがあるように思います。
ウルフは自分の売りをよく知ってる感じで、決して器用ではないのでその声のインパクトとパワーで押しながら時折繊細さも聞かせる人です。
サニーボーイは何も気にしていないゴーイング・マイ・ウェイなスタイルで、でも歌っている内容とその声が物事の本質を俺は知ってるという不気味な深さがあります。
ライトニンの歌はストレートでさっき言ったようにどこかアウトローな感じがあり惹かれるものがあります。
是非「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEBを訪ねてください。アドレスはこちらです→https://bsrmag.com 最初の見出しのページの下の方にぼくの写真が出ているのでそこをクリックしてください。

 

2021.10.29 ON AIR

50年間封印されていた黒人音楽の歴史的な映像が映し出される必見の映画「サマー・オブ・ソウル」その2

ON AIR LIST
1.The Backlash Blues / Nina Simone
2.We Shall Overcome / The Staple Singers
3.How I Got Over / Mahalia Jackson
4.Everyday People / Sly & The Family Stone
5.Why?(The King Of Love Is Dead) / Nina Simone

前回に引き続きこの夏話題になった映画「サマー・オブ・ソウル」とその音楽の話です。
出演ミュージシャンはみんな素晴らしかったのですが、格別インパクトを残したひとりがニーナ・シモンでした。
まず今日は映画の中でも歌われていた「バックラッシュ・ブルーズ」を聞いてみましょう。これはニーナ・シモンがよくステージで歌っていた曲でとは「逆戻りとか反動」と言う意味があります「ミスター・バックラッシュ、あなたは税金を上げて賃金はそのままで、私の息子をベトナム(戦争)に送った。あなたは私に二流の家を与え、二流の教育とか受けさせず、黒人はみんな二流だと思っているんでしょう、ミスター・バックラッシュ(ミスター反動者)」つまり白人の大統領や白人の為政者に対して抗議した歌です。映画の中でもかなり過激なメッセージを観客にアジテーションしていたニーナですが、その変わらない姿勢はしっかりした音楽に支えられているからこそ素晴らしいのだと思います。

1.The Backlash Blues / Nina Simone
聞いてもらったのはニーナの”’Nuff Said!”というライヴ・アルバムに収録されているのですが、実はこのアルバムはキング牧師が暗殺された3日後に録音されたもので、キング牧師に捧げられた”Why”という曲も収録されています。ニーナのアルバムの中でも格別素晴らしい一枚です。
1965年にマルコムXが暗殺され、このコンサートの前年68年4月にキング牧師が暗殺され黒人政治指導者が相次いでなくなりました。貧困や人種差別に対する黒人たちの怒りで暴動も各地で起きました。そして、黒人たちは自らの存在を誇りに自信を持つように自分たちをブラックと呼び”Black Is Beautiful”(黒人は美しいのだ)という言葉も生まれました。

ニーナ・シモンのように白人への反発をはっきり主張はしませんでしたが、ゴスペルのステイプル・シンガーズもキング牧師を支持して60年代初めから公民権運動、反戦運動に参加したリベラルなグループでした。次の曲はそういう運動の際によく歌われたポピュラーな曲で知っている方も多いと思います。
ステイプル・シンガーズのライヴアルバム”Freedom Highway”から「私たちはいつの日か勝利する」
2.We Shall Overcome / The Staple Singers
ステイプル・シンガーズは70年代に入ると”I’ll Take You There”、”Respect Yourself”などメッセージのあるソウルのヒット曲でスターになります。
映画ではこのステイプル・シンガーズのリード・ヴォーカル、メイヴィス・ステイプルズと大先輩のゴスペルシンガー、マヘリア・ジャクソンのデュエットがハイライトの一つになっています。ネタバレになるのであまり言いませんが、そのシーンは黒人音楽史上、非常に貴重な歴史的な時間です。メイヴィスは「マヘリアと一つのマイクで歌えたことは自分の人生の中で最高の時間だった」と言ってます。
マヘリア・ジャクソンはゴスペルの有名な本「ゴスペル・サウンド」で「女王マヘリア」と書かれている最も有名なゴスペルシンガーの1人です。1911年ニューオリンズ生まれの彼女は世界中にゴスペル・ミュージックの素晴らしさを伝えた最初のシンガーで、日本でも60年代にレコードが発売されゴスペルで一番知られているシンガーはマヘリアでした。メイヴィス・ステイプルズが1939年生まれですからメイヴィスにとってはゴスペルの母のような、祖母のような存在でデュエットでメイヴィスが先に歌い出すシーンではさすがに緊張している様子が見えました。

ではその女王マヘリア・ジャクソンでよく知られた歌です
「どうやって私は乗り越えたのか。神様に守られて神様の力で私は乗り越え、生きてきた。私たちの為に命を差し出し、私たちをいつも導いてくれる神様に感謝します」
3.How I Got Over / Mahalia Jackson 
映画の中心になっているコンサート「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」にはブルーズ、ジャズ、ソウル、ゴスペル、ラテンと様々なアフリカン・アメリカンのミュージシャンが登場しますが、出演した中で当時若い黒人たちに最も人気があったのが「スライ&ファミリー・ストーン」でした。実際彼らがステージに現れると聴衆が前の方へ押し寄せます。
そこでスライはそれまでなかった新しいファンク・ミュージックを披露します。しかし彼らのステージを見ていると、彼らのグルーヴの源はやはりゴスペルの、教会のグルーヴだということがわかります。
4.Everyday People / Sly & The Family Stone

とにかく素晴らしい映画です。DVDもリリースされるかも知れませんが、できれば映画館で観てください。今日は最後にニーナ・シモンをもう一曲聞きます。アルバム”’Nuff Said!”に収録されている曲で、歌う前に「このコンサートは全てマーチン・ルーサー・キングに捧げます」とニーナが話してるように亡くなったキング牧師に捧げた美しい曲です。
「かってこの地球に愛と平和を仲間に話し続ける男がいた。彼はこの地球に平穏な日がくることを夢見つづけた。そして世界中にそのメッセージを広めた。なぜ愛の王様は死んでしまったのか」
5.Why?(The King Of Love Is Dead) / Nina Simone

「サマー・オブ・ソウル」は音楽映画なんですが、その後ろに60年代終わりのアメリカの世相、キング牧師の暗殺そして暴動、ベトナム戦争と徴兵されていく若い人たち、そしてアフリカン・アメリカンへの人種差別、そして彼らの貧困・・・そうした問題が浮き出てきます。そして、私たちも自分に差別の気持ちはないのか、平和と平等の気持ちはあるのか自分自身に問いかけないといけないと思います。いろんなことを考えさせてくれる映画でした。

2021.10.22 ON AIR

50年間封印されていた黒人音楽の歴史的な映像が映し出される必見の映画「サマー・オブ・ソウル」その1

ON AIR LIST
1.Why I Sing The Blues / B.B.King
2.Uptight (Everything’s Alright )/ Stevie Wonder
3.My Girl / The Temptations
4.I Heard It Through The Grapevine / Gladys Knight & The Pips

このドキュメント映画を観ることができて、大げさではなく心から「生きていてよかった」と思った。そして改めて自分が選んだ音楽、つまりこの番組の主体であるブルーズをはじめとするブラック・ミージック、黒人音楽に間違いはなかったと確信できた映画でした。
今回と次回と二回に分けて映画「サマー・オブ・ソウル」の話をしながら映画で歌われ、演奏された曲を聴きたいと思います。映画のいわゆるサウンドトラックのアルバムがリリースされていないので私が持っているそれぞれのミュージシャンの曲をON AIRします。
映画は1969年にニューヨークの黒人街ハーレムの公園で6日間に渡り行われた野外フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」のドキュメント映像を中心に、60年代終わりに黒人音楽は何を表現していたのか、そして黒人たちの生活や文化はどのように動いていたのかを描いたものです。中心になっているのは50年前の映像ですが、そこに描かれているのは今も変わらないアフリカン・アメリカンたちの貧しく厳しい生活や白人に抑圧されている人種問題、そしてそういう苦境から逃れようとするドラッグ悪用の問題だ。本当にアメリカの根本にある問題は何も変わっていないことがわかる映画でもあります。フェスティバルは無料で行われ会場は大人から子供までびっしりと満員です。真面目そうな人たちもいれば、音楽好きの若い人たち、ちょっと不良ぽい男たち・・いろんな人たちがいます。

この映画「サマー・オブ・ソウル」でブルーズマンで登場するのはブルーズの王様、B.B.キング。
1969年というのは彼にとって重要な年で映画の中でも歌われている”Why I Sing The Blues”が収録されたアルバム”Live And Well”がリリースされた年で、レコードのA面はいつもスリルあふれるライヴだがB面はスタジオ録音でブルーズにファンクのテイストを入れた新しい試みがなされていた。そしてその次のアルバム”Completely Well”で古いロイ・ホーキンスの”The Thrill Is Gone”を新しいファンクテイストで歌ったところこれがグラミーに輝いた。その3年後、来日したB.B.キングの大阪公演の前座を私はウエストロード・ブルーズバンドでやらせてもらった。つまりブルーズにファンクテイストを入れて新しい試みをしなければグラミーもなかっただろうし、その後の世界のB.B.キングもなかっただろうし、私が前座をやってB.B.と会うこともなかった。では映画の中でも歌われていた「なぜ、私はブルーズを歌うのか」
1.Why I Sing The Blues / B.B.King
ベースのジェリー・ジェモットはじめニューヨークの当時トップのスタジオ・ミュージシャンで録音されたB.B.の新しい時代のサウンドだった。

さて、映画「サマー・オブ・ソウル」にはブルーズ、ジャズ、ソウル、ラテン、ゴスペルといろんなミュージシャンが登場するのだが、多分一番若いのはスティーヴィ・ワンダーだろう。この1969年当時まだ19才。実は僕はスティーヴィと同じ年。70年代に入ると素晴らしいオリジナル曲で大ヒット連発するスティービーだが、この69年あたりはまだレイ・チャールズのフォロワー的な扱いをされジャズやスタンダード・ボビュラー曲を歌わされていた。
今日は映画の三年前、1966年リリースのR&Bチャート一位、ポップチャート3位のこの曲
「僕は貧しい家に生まれ、持っている服も時代遅れの一枚だしお金もない。でも彼女はあなたの気持ちが本物だからいいの大丈夫と言ってくれる」
2.Uptight (Everything’s Alright )/ Stevie Wonder

この映画の中心になっている「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」というコンサートは6日間行われたのですが、一日「モータウン・スペシャル」と言われたモータウンレコードのミュージシャンばかり出る日があります。今のスティービーもモータウンですが当時モータウンが黒人のソウル・レーベルとして飛ぶ鳥を落とす勢いだったことがわかります。モータウンのコーラスグループとして随一の人気を誇ったテンプテーションズ。そのテンプスから独立してソロ・シンガーになったばかりデヴィッド・ラフィンがコンサートに出てきます。やはりオーラがあるというか、ステージの立ち姿がすらっとしていてカッコいいです。歌ってる曲はテンプテーションズ時代の大ヒットのこれ。
3.My Girl / The Temptations
いつ聴いてもいい、素晴らしいい曲。映画ではデヴィッド・ラフィンの素晴らしい歌のフェイクが聞けます。

そして、モータウンからもうひと組、グラディス・ナイト&ザ・ピップス。
彼らは67年の大ヒット曲”I Heard It Through The Grapevine”(邦題:悲しい噂)を歌います。みんな溌剌としていてグラディスはミニ・スカートですごく可愛いです。映画に出てくるメイヴィス・ステイプルズも同じようにミニ・スカートでしたが、この映画は当時の黒人のファッションやヘア・スタイルなども見れて楽しいです。この悲しい噂という歌は「彼が昔付き合っていた彼女とヨリを戻すという悲しい噂を聴いた。でも私の方があなたのことを愛してる。でも、その悲しい噂を聞いてもう気が狂いそうになっている」という内容です。
4.I Heard It Through The Grapevine / Gladys Knight & The Pips
この曲は翌68年に同じモータウンレコードのマーヴィン・ゲイの録音でもヒットしましたが、ぼくはグラディス・ナイト&ザ・ピップスの方が好きです。

来週も映画「サマー・オブ・ソウル」に関連した曲を聞きながら、映画の話をしたいと思います。

2021.10.15 ONAIR

追悼チャーリー・ワッツ vol.2

the best of the Rolling Stones /Jump Back(Virgin VJCP-25155)

ON AIR LIST
1.Honky Tonk Women / The Rolling Stones
2.Brown Sugar / The Rolling Stones
3.Harlem Shuffle / The Rolling Stones
4.Start Me Up / The Rolling Stones
5.Jumpin’ Jack Flash / The Rolling Stones

ローリング・ストーンズのドラマーだったチャーリー・ワッツが亡くなった衝撃に世界中のファンはもちろん、多くのミュージシャンも心を痛めネットには彼を追悼するメッセージがあふれています。彼と関わった人たちの多くは彼の紳士的で優しい人柄を語っています。ストーンズの方向性や展開について語るのはいつもミックとキースで「サイレント・ストーン」と呼ばれたチャーリーから多くを語られることはなかったのですが、クールなプロフェッショナルとしてそしてロックのドラムの典型の一つを作ったドラマーとして彼は永遠に音楽の歴史に残っていくでしょう。

今回はチャーリー・ワッツ追悼の2回目です。

69年7月にシングルでリリースされた”Honky Tonk Women”は脱退し亡くなってしまったブライアン・ジョーンズの後にミック・テイラーが参加した最初の曲。カントリー・テイストとアメリカ南部のスワンプロックのテイストが混じったストーンズを代表する曲。メンフィスの安酒場でジンをばか飲みする女と出会い二階の部屋でその女と寝たという話から始まるこの曲はチャート一位を獲得。カウベルからチャーリーの力強いドラムが入りキースのギターがリフを弾くイントロの匂いが最高の曲で、ストーンズの代表曲というだけでなくロックの名曲の一つ。そしてミック・テイラーが加入したことでストーンズがさらに前進した記念碑的な曲でもあります。
1.Honky Tonk Women / The Rolling Stones
時々音の隙間があってそこでグルーヴしているドラムが聞こえてくる瞬間が最高。エンディングまでずっとロックしている。

今の曲も次の曲もまずイントロでキースとチャーリーがグルーヴを作って始まっていて、これがストーンズの一つのパターンになっていました。
キースのコードを絡めたキレキレのイントロのギターが最高で、それを受けるようにチャーリーが入ってきます。つまりロックというのは器用に指が早く動かなくてもこの曲のようにカッコイイリフとグルーヴするビートがあればいいという見本のような曲です。まあ、ロックの王道のような曲です。
2.Brown Sugar / The Rolling Stones

次はドラムの録音状態、つまりドラムの音が素晴らしくいい音で録音されていてぼくの好みです。チャーリーは相変わらず余計なことはせずにずっと太いビートを打ち続けている。
これはカバー曲でオリジナルはR&Bの男性デュオ「ボブ&アール」が1963年にリリース。そんなに売れた曲ではなくてチャートの40位くらいまでしかいかなかったが、69年に再発された時にイギリスでチャートの9位まで上がってます。うまく言えませんがイギリス人好みの曲です。ストーンズの86年リリースのアルバム”Dirty Work”でカバーしましたがほとんどオリジナルと同じです。
3.Harlem Shuffle / The Rolling Stones
独特のムードのあるいい曲です。

初来日公演の一曲目のこの曲のイントロのギターとドラムですごく興奮したのをおぼえています。その来日公演をぼくは三日間見たのですが、その初日客電が消えるとゴーッという地響きのような歓声が客席から起こり、次の瞬間にキースのギターがそれを裂くように始まりドラムがズドン!と入る瞬間があまりにカッコよくて思わず「チャーリー」と三日間叫びました。
4.Start Me Up / The Rolling Stones

インタビューでも饒舌ではなくステージでも全面に出てくることはなく、いつも淡々と後ろでドラムを叩いてバンドサウンドを支えてきたチャーリーの姿に感銘を受けてきた人も多いと思います。スーツとネクタイを愛用して他のメンバーとは違うおしゃれな人でもありました。
5.Jumpin’ Jack Flash / The Rolling Stones
ジャズが好きだったチャーリーが全くサウンドやグルーヴの表現が違うストーンズの音楽を本当はどう思っていたのか・・・とても興味深いところです。

一度ミックが「チャーリーは俺の専属ドラマー」と言った時にチャーリーはミックに「お前が俺の専属シンガーだ」と言ったことがあったそうです。ミックの不遜な図々しい言葉がぼくも嫌いですが、チャーリーはじつに的確なお返しの言葉を言ったと思います。実際、チャーリー以外のドラマーでミックがいい歌を歌ったことなんて一度も聞いたことがない。チャーリー無くしてミック、あなたはないし、ストーンズもない。なぜならチャーリーはストーンズの心臓だからだ。その心臓が止まったことでストーンズは終わったと僕は思ってます。
チャーリー・ワッツの冥福を祈り、たくさん楽しませてくれたことに感謝の言葉を言いたいと思います。
ありがとう、チャーリー・ワッツ

2021.10.08 ON AIR

追悼チャーリー・ワッツvol.1

the rolling stones single collection the london years (Abkco POCD-1938/40)

ON AIR LIST
1.I Want To Be Loved / The Rolling Stones
2.It’s All Over Now / The Rolling Stones
3.Little Red Rooster/ The Rolling Stones
4.Get Off Of My Cloud / The Rolling Stones
5.Satisfaction / The Rolling Stones

ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツが亡くなったことを知ったのは8/25の朝早くだった。
チャーリー・ワッツの英文の訃報がリツイートされていくつも出てきた。「ウソだろ?」と思ったが次回のストーンズのツアーを辞退して病気の治療に専念するというニュースが一週間ほど前に出ていたので気になって検索を続けてみたらやはりそれは本当だった。僕がロックを聴き始めた頃、好きな二つのバンドはビートルズとストーンズだった。だから最初にビートの洗礼を受けたのはリンゴ・スターとチャーリー・ワッツのドラムということになる。
それで今回はストーンズのアルバムに残されたぼくが好きなチャーリーのドラムの曲を聴いてもらおうと思う。
ストーンズは何かと言うとミックやキースの話になるが、僕はローリング・ストーンズは結局チャーリー・ワッツだと思っている。ストーンズの要であり、心臓であり、チャーリーのドラムのドライヴ感無くしてキースとミックがどんな曲をやっても意味がないとさえ思う。実際ミックもキースもチャーリー以外のドラマーと仕事をしているが、結局ストーンズ以上の成果はないように思う。それは多分半世紀以上チャーリーのグルーヴで音楽をやってきたから、彼らの体にはチャーリーのグルーヴが染み付いているんだと思う。

僕がストーンズと出会ったのは1964年か65年頃。中学2,3年。毎月の少ない小遣いを貯めてストーンズの1st.アルバムを買ったのは65年、15歳の時だ。実はLPレコードを買ったのはビートルズが最初でストーンズは自分にとって2枚目のLPだった。その前にストーンズのシングル盤(Come On/I Want To Be Loved)を買っていて、Side:AのCome OnよりSide:BのI Want To Be Lovedが気に入ってB面ばかり聞いていた。そして、その4年後くらいにその曲のオリジナルであるマディ・ウォーターズの原曲を聞くことになるのだが、ストーンズを聞いた頃はそれがブルーズの曲であることもマディのカバーであることも知らなかった。そもそもブルーズなんて何のことやら何も知らなかった。ただただストーンズこの曲がかっこいいと思って聞いていた。
1.I Want To Be Loved / The Rolling Stones
ダンサブルな曲にしたかったのだろう、ストーンズはマディのオリジナルよりテンポを速くしている。チャーリーのドラムの音がすごく耳に残る曲で、ミック・ジャガーの歌が少し浮ついている感じだがチャーリーのドラムがうまく抑えている感じがする

次はストーンズがイギリスのチャートで初めて一位になった曲。ソウルのボビー・ウーマックのカバーだ。ほとんど原曲通りのカバー。ここでもチャーリーのドライヴするドラムが気持ちいい。
2.It’s All Over Now / The Rolling Stones
まだ若いキースのギター・ソロが気持ちが先走っているというか、どこかあたふたした感じがするが、チャーリーのドラムが揺るがないビートを打ち続けるのでビートは安定している。
知っている方も多いと思いますが、ローリング・ストーンズは黒人ブルーズの素晴らしさをイギリスで広めたい、たくさんの人に知ってもらいたいという意図があって結成されたバンド。ブルーズを真摯に研究していた感じがする。多分初期の音楽的リーダーであったブライアン・ジョーンズの意図だと思う。次の曲のオリジナルはマディと同じチェスレコードの看板、ハウリン・ウルフがオリジナル。
ブライアン・ジョーンズのスライドギターの美しくクールな音とチャーリーのハイハットとスネアのリム・ショットだけのステディなビートが素晴らしい曲。60年代中頃にイギリスでブルーズを志向するバンドがいくつもあったが、やはりストーンズはバンド・サウンドの作り方がまず頭抜けてうまい。全員が余計なことをしないでビートのグルーヴを作ることにまず専念している。
3.Little Red Rooster/ The Rolling Stones

初期のストーンズの曲でドラムが印象に残る曲といえば次のオリジナル曲。これも僕はシングル盤で買い本当によく聴いた。チャーリーが同じパターンをずっと続けそれをやることでドライヴ感を出しています。
4.Get Off Of My Cloud / The Rolling Stones
初期のオリジナル曲では一番好きだったかも。

次はストーンズの永遠の定番。この曲はみんな聴きすぎてドラムにあまり注意して聞いてないと思うけれど、今日はドラムを中心に聞いてください。ストーンズのライヴだと音がラウドでチャーリーのやったいることがはっきりわからないけど、この65年のオリジナル録音を聞くとチャーリーはただひたすら一つのパターンを叩いているだけで、それがどんどんドライヴしている感じです。
「No No No!」のとこでドラムだけになりますが、そこでいかにビートが生きているか、そしていかにスネアを強くヒットしているかわかります。
5.Satisfaction / The Rolling Stones
ずっと続く「タット!タット!タット!タット!」というこのチャーリーのドラム無くしてこの曲はない。
チャーリーはインタビューでドラム・ソロをやったりするのは好きじゃないと言ってますが、ソロをやらなくても印象に残るドラマーです。

チャーリーは子供の頃、一番最初に手にした楽器はバンジョーだったそうです。それからドラムに興味を持ち始めデューク・エリントンやチャーリー・パーカーが好きでジャズをやってました。その内にブライアン・ジョーンズもメンバーだったこともあるアレクシス・コーナー「ブルース・インコーポテッド」というバンドに入り、そこからブライアンが自分のブルーズ・バンドを作りたいということでストーンズに参加。
チャーリーはストーンズが休みの期間に「チャーリー・ワッツ・クインテット」という名前で好きなジャズのバンドをやっていてYouTubeで楽しそうな様子を見ることができます。
やっていることは違うんですが、チャーリーの場合、基本にあるドラムで一つのグルーヴを貫く姿勢はストーンズもジャズも同じです。

次回は今もロックの歴史に残るストーンズの名曲からチャーリーのドラムの魅力を聞いてみようと思います。