2023.02.10 ON AIR

遠い昔に音楽は人種を越えていた
黒人音楽に素晴らしい曲をたくさん作った白人のソングライターたちその3/
ダン・ペン&スプーナー・オーダム

Moments From This Theatre / Dan Penn&Spooner Oldham(LIVE)
The Fame Studio Story
The Complete Gold Wax Singles

ON AIR LIST
1.Do Right Woman Do Right Man/Aretha Franklin
2.I’m Your Puppet/James & Bobby Purify
3.The Dark End Of The Street/James Carr
4.I’m Living Good/The Ovations Feat. Louis Williams
5.A Woman Left Lonely (Live)/Dan Penn

前回、前々回と黒人音楽に多くの曲を提供した白人のソングライター・チーム「ジェリー・リーバーとマイク・ストーラー」の話をしながら彼らの作った曲を聞きましたが、今回は彼らと同じように黒人音楽に素晴らしい曲をたくさん提供した白人のシンガー・ソングライター、ダン・ペンとスプーナー・オーダムの二人です。
ダン・ペンもスプーナー・オーダムも南部の黒人音楽が豊かなアラバマで育ちました。1940年代です。ダン・ペンの本名はWallace Daniel Pennington(ウォレス ダニエル ペニントン」そのダニエル ペニントンからダン・ペンという名前にしたのでしょう。クレジットでダン・ペンの文字を初めて見た時から「おもろい名前やな」と印象に残りました。彼は10代から曲を作っていて1960年にコンウェイ・トゥイッティというカントリー、ロカビリー歌手に作った”Is a Blue Bird Blue”という曲が少し売れたのが19歳の時です。でも、彼は自分でバンドも作っていて歌手としてデビューして売れたかったようです。地元では歌が上手いと評判だったようでしたが売れませんでした。その頃の彼のアイドルはブルーズとR&Bが好きなのがよくわかるボビー・ブルー・ブランドとレイ・チャールズでした。地元のマッスル・ショールズやメンフィスで活動するうちにソングライターでありプロデューサーでもあるチップ・モーマンやスプーナー・オーダムと知り合いになり一緒に曲を作り始めます。
彼の名前が広く知られるきっかけになったのはマッスル・ショールズに録音に来たアレサ・フランクリンが歌いミリオンセラーになったこの曲でした。1967年リリース。

1.Do Right Woman Do Right Man/Aretha Franklin

「女にちゃんとしていて欲しいと言うのなら男もちゃんとしてないとね。女も男と同じ一人の人間、遊び道具ではないからね」
この素晴らしい曲を毅然と歌ったアレサも素晴らしい。この曲はダンやスプーナーの仲間だったチップ・モーマンとダンの共作ですが、次の曲はダンとスプーナーの共作です。

たぶん、アトランティック・レコードがこれからイチ推しでいくアレサにいまのDo Right Woman Do Right Man曲を歌わせたのは、その前年66年にR&Bチャート5位、ポップチャートでも6位になったこの”I’m Your Puppet”のヒットがあったからだと思います。
歌ったのは黒人デュオのジェイムズ&ボビー・ピュリファイ。邦題が「恋の操り人形」。Puppetというのはあやつり人形のことで「君が糸を引っ張れば僕は君にウインクするしキスもする。もし望むなら面白いこともするよ。君は僕を思うように動かせるんだよ」という優しい恋の歌です。

2.I’m Your Puppet/James & Bobby Purify

ダン・ペンは前回、前々回ON AIRしたジェリー・リーバーとマイク・ストーラーたちと同じように子供の頃から黒人音楽が大好きでした。白人の中には黒人の音楽は聴かないという人も多かった時代ですが、彼らは人種差別はなかった人たちでした。スプーナー・オーダムは高校のバンドでピアノを始めてノース・アラバマ大学に入るのですが、あまり大学に行かずにアラバマ、マッスルショールズの音楽好きが集まるフェイム・スタジオにたむろしていたそうです。そこでギタリスト、ジミー・ジョンソン、ドラムのロジャー・ホーキンスたちと知り合いになりフェイム・スタジオのスタジオ・ミュージシャンになりそこで生涯の友、ダン・ペンと知り合います。
それから名前が知られてスプーナーはキーボード・プレイヤーとしてボブ・ディラン、ニール・ヤング、ジャクソン・ブラウンなどのバックや録音にも参加することになります。

僕はダン・ペンが作った歌を初めて聞いたのはたぶん黒人R&Bシンガー、ジェイムズ・カーが歌った次の”The Dark End Of The Street”だったと思います。
通りの突き当たりの暗闇で二人は許されない恋だとわかってるけど逢瀬を重ねるという不倫の歌です。欧米人はほんまに不倫ソング好きです。
たぶんいろいろ歌になるくらい普段から不倫があるんでしようね。

3.The Dark End Of The Street/James Carr

次の歌はダン・ペンが作った曲で僕がいちばん好きな曲です。時々、この歌が浮かんで自転車に乗ってる時とか歩いている時に口づさんでいます。
胸が暖かくなる曲です。
「住んでいる小さな家がぼくが持っている全てで、でもそれはお城のように思える。ボロい車はスタートしない時があるけど君と一緒に乗っていたらリムジンさ。君の優しい愛があるから僕は元気に気持ちよく生きているんだ」
歌っているのはこれも僕の好きなコーラスグループ、オヴェイションズ

4.I’m Living Good/The Ovations Feat. Louis Williams

最後はジャニス・ジョップリンがアルバム”Pearl”で歌っていた曲ですが、愛する人が去ってしまいひとりぽっちになった孤独を歌った歌です。今日は作ったダン・ペン本人の歌で聞きましょう。
1998年にダンとスプーナーがイギリスで行ったコンサートの素晴らしいライヴアルバム「モーメンツ・フロム・ジス・シアター」から聞いてください。

5.A Woman Left Lonely (Live)/Dan Penn&Spooner Oldham

ダン・ペンの歌は淡々としていますがソウルフルです。人を愛する時に生じる悲しみとか辛さとか苛立ちとか・・複雑な想いがその声の中に潜んでいます。彼は若い頃、黒人シンガーのような歌手になりたいと思っていたみたいですがなれなかった。でも、その歌手になれなかった気持ちを持ちながらやっぱり音楽からは離れないで曲を作っていた。そして出会った生涯の友、スプーナー・オーダムに手伝ってもらってまた歌い始めた。それはもう黒人シンガーのようになりたいという気持ちではなく自分でありたいと思った時だったのではなかと思います。このアルバムはもう軽く人種を越えています。素晴らしいです。
彼のソロ・アルバムもたくさん出ています。ぜひ聞いて見てください。今日は白人のソングライター・シリーズでダン・ペンとスプーナー・オーダムを取り上げました。

2023.02.03 ON AIR

遠い昔に音楽は人種を越えていた

黒人音楽に素晴らしい曲をたくさん作った白人のソングライターたちその2/ジェリー・リーバーとマイク・ストーラー vol.2

The Leiber & Roller Story
The Best Of The Drifters
Elvis’ Golden Records

ON AIR LIST
1.Spanish Harlem/Ben.E.King
2.There Goes My Baby/The Drifters
3.Searchin’/The Coasters
4.Jailhouse Rock/Elvis Presley
5.Chapel Of Love/The Dixie Cups

先週に引き続きブラック・ミュージックの作詞作曲をした白人の二人組、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの話です。
40年代後半から50年代に入ると黒人の音楽がかっこいいと思う白人たちがたくさん出てきます。エルヴィス・プレスリーもそうですが特に貧しい地域では黒人と白人は近所に住んでいるので当然黒人音楽が白人の耳に入るわけです。特にラジオが主体の時代は流れてくる音楽が白人のものか黒人のものかはわからないので(例えばエルヴィスをラジオで聞いた人の中にはこれは黒人だと思い、逆にチャック・ベリーは白人と思われたということがありました)自然と黒人のブルーズやR&Bを好きになる白人が出てきたのです。ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーはまさにそういう白人です。

一曲目、曲名の「スパニッシュ・ハーレム」はニューヨークのマンハッタンのイースト・ハーレムにある黒人や有色人種が多く住む地域ですが、作詞のジェリー・リーバーはそこで生きる女性のことを詞にしました。つまり黒人女性のことだと思います。この曲の作曲はマイク・ストーラーではなくジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの下で働いていた後に名プロデューサーとなるフィル・スペクター。
「スパニッシュ・ハーレムに一本のバラがある。真っ赤なバラがある。太陽の下では見られなくて月が輝いて星が出てくるとそのバラは現れる」
ということは夜の仕事をしている女性のことでしようか。1960年リリース。私の大好きな歌です。

1.Spanish Harlem/Ben.E.King

哀愁のある都会の歌ですね。ストリングス、サックス、コーラスなどいろんな楽器がすごくうまく使われている中にあるベン・E・キングがいい歌声でさらっと歌ってます。

次の歌は今歌ってたベン・E・キングが在籍したこともあるドリフターズなんですが、ベン・Eとあと二人が曲を作ってジェリー・リーバーとマイク・ストーラーはここではプロデューサーとしてクレジットされています。ヒット・メイカーとなったジェリーとマイクはそういう役割も任されていたんですね。これは彼女が出て行ってしまう歌で「なんでオレを置いて行ってしまうんや」と歌ってますが、2番の歌詞に”I broke her heartAnd made her cry”って出てくるんですが、彼女を泣かせるようなことをこの男はやったわけです。多分浮気したんでしょうね。それで怒った彼女が出ていくとなって慌てていると・・。

2.There Goes My Baby/The Drifters

次はジェリー・リーバーとマイク・ストーラー1957年の作品。歌ったのはこれもコーラスグループの「コースターズ」
R&Bチャート1位 ポップでも3位になってます。
R&Bチャートは黒人音楽のチャートでポップ・チャートは白人チャートですが、ポップで3位というのは白人層にもかなり支持されたということです。
Searchin’ですから「探してる」もちろん彼女を・・これも逃げられた歌です。彼女を探して探していつか連れ戻してやるっていう歌ですが、女性は出って行ったらなかなか戻りまへんで・・。

3.Searchin’/The Coasters

Searchin’,Searchin’ってあんまり追いかけると返って逃げられますけどね。私は「去る者は追わず」主義です。
曲を作ったマイク・ストーラーは正式な音楽教育を受けていて大学ではクラシック音楽を専攻していた。マイクもジェリーも黒人音楽が大好きでしたが、レコード屋で働きながら作詞をしていたジェリーがマイクに曲を作ろうと積極的に働きかけていたそうです。
二人は作詞作曲家チームとなり売れ始めるとアトランティック・レコードでプロデュースの仕事もするようになりました。その頃、二人の下で働いていたのがさっき話したビートルズのプロデュースもした名プロデューサーのフィル・スペクター。

ビッグ・ママが歌った”Hound Dog”をエルヴィス・プレスリーカバーしたことで大ヒットとなり、ジェリーとマイクはエルヴィスの曲も書くようになります。やがてエルヴィスの映画の主題歌も担当するようになりレコード業界で大きな成功を得ました。
エルヴィスの映画の主題歌となった曲のひとつが邦題「監獄ロック」。1957年リリース。アメリカでもイギリスでもチャート一位になった世界的なヒット曲で、ブルーズ・ブラザーズ、ジェフ・ベックはじめ多くのカバーを生みました。

4.Jailhouse Rock/Elvis Presley

曲を作ったジェリー・リーバーとマイク・ストーラーそして歌ったエルヴィスは3人とも白人ですが、人種差別が厳しかった50年代に彼らは黒人音楽の素晴らしさを感じそれを人種を超えて自分なりに表現をした偉大な人たちです。50年代に音楽ではすでに人種の壁を超えてくる人たちがいたわけです。
そしてジェリーとマイクは60年代に入るとレッド・バード・レコードという自分たちのレコード会社も設立しました。二人は作詞作曲からプロデューサーとして活躍しレコード制作の裏方としても活動します。
1964年次の曲はジェフ・バリーとエリー・グリニッチとフィル・スペクターの共作でジェリーとマイクのレコード会社からリリースされ全米一位に輝いた曲です。歌ったのはニューオリンズのガールズ・グループ、ディキシー・カップス「涙のチャペル」

5.Chapel Of Love/The Dixie Cups

教会に行って結婚しましようというハッピーな歌で”We’ll love until the end of time”(人生が終わるまで愛し合いましよう)なんてう歌詞が出てきますが、こういうのがチャート一位になるわりには離婚率の高いアメリカです。

2週に渡って50年代から素晴らしい曲をたくさん作った作詞作曲家チームのジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの音源を聴きました。黒人音楽の曲を白人たちが作っていたというのを初めて知った時は少し意外でしたが、考えてみればこうしてラジオから流れてくる音楽に黒人も白人もないし、作ったのが黒人か白人かもないわけです。ただいい曲かどうかだけです。音楽は早くから人種の壁を越えていたという話でした。
来週はマイクとジェリーのように黒人音楽が大好きで同じように黒人ミュージシャンにたくさんの曲を提供したシンガー・ソングライター、ダン・ペンの曲を聴きます。

2023.01.27 ON AIR

遠い昔に音楽は人種を越えていた

黒人音楽に素晴らしい曲をたくさん作った白人のソングライターたちその1、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラー vol.1

The Leiber & Roller Story

ON AIR LIST
1.Stand By Me/Ben E. King
2.Hound Dog/Freddie Bell&The Bell Boys
3.Hard Times/Charles Brown
4.Kansas City aka KC Lovin’/Little Willie Littlefield
5.Ruby Baby/The Drifters

私はブルーズやR&Bなどブラック・ミュージックを聴き始めた頃、ブラック・ミュージックは黒人たち本人が作詞作曲しているのだと思ってました。
当時はまず作詞作曲家があまり話に上ることもなく、アルバムのジャケットに出るわけでもないしネット社会でもなかったので写真が出回ることもなかったのです。ですから曲を普通に黒人の曲は黒人が作っていると思っていたわけです。そして、黒人のレコーディングも黒人ミュージシャンがやっていると思っていたわけです。そんな頃、白人のオールマン・ブラザーズ・バンドのギターのデュアン・オールマンがウィルソン・ピケットなど黒人の録音に参加していることを知りました。60年代の終わりくらいですかね。それはマッスル・ショールズにあるフェイム・スタジオの録音でした。そこからフェイム・スタジオの録音風景の写真を初めて見たのです。するとミュージシャンはほとんど白人でした。ウィルソン・ピケットの「ダンス天国」もアレサのI Never Loved A Man The Way I Love Youもエタ・ジェイムズのI’d Rather Go BlindやTell Mamaもパーシー・スレッジのWhen A Man Loves A Womanも全てフェイムの白人ミュージシャンがバックでした。そして実は作詞作曲も白人が書いている曲というのがかなりあることに気づきました。その中でよく名前を見かけたのがジェリー・リーバーとマイク・ストーラーのコンビでした。
まずはその二人が作った最も有名な曲を聴いてみましょう。
1961年 R&Bチャートで一位、ポップチャートでも4位という大ヒットでした。

1.Stand By Me/Ben E. King

実は歌ったBen E. Kingも作詞作曲に参加しておりクレジットには3人の名前が記されています。
Stand By MeはR&Bのヒットからポップのヒットになりこの曲から映画まで作られ有名曲となりましたが、実はジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの二人の最初のヒットは女性ブルーズ・シンガーのビッグ・ママ・ソーントンが歌った”Hound Dog”でした。録音は1952年で翌年53年にR&Bチャートの一位になりましたが、さらに三年後56年に白人のエルヴィス・プレスリーがこの曲をカバーして歌うとあっという間にポップ・チャート1位になりました。
ところが調べてみるとエルヴィスが歌う前にフレディ・ベル&ザ・ベルボーイズというグループが録音していました。今日はその珍しいバージョンを聴いてください。1954年録音。

2.Hound Dog/Freddie Bell&The Bell Boys

これはプレスリーより前にリリースされたのですが、なぜかプレスリーのようにヒットはしませんでした。

ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの作詞作曲コンビはポップ・テイストのあるR&BやR&Rを作る前、最初はブルーズの曲を作っていました。作詞を担当したジェリー・リーバーは早くから父親がいなくて母親が経営する小さな食料品店の配達の手伝いをしていました。彼は白人なのに貧しかったため住んでいる地域が黒人の住む地域でした。それで彼は自然と黒人音楽を耳にしてその楽しさや面白さの虜になっていました。配達に行くと黒人の家に入り込むこともあり、彼らの生活風景を見るわけです。彼らが聴いているラジオから流れている音楽もそうですが、黒人たちが喋るジョークや笑いのネタを知ることになったわけです。だから黒人歌手がジェリーの書いた詞を違和感なく、喜んで歌ったのにはそういう背景があったのです。
「家賃を払う為に服を質屋に入れなければならない貧しさ。つらい時をオレより知ってる奴はいるのか。愛した女は俺が金がなくなると手のひらを返した。あの世に行ってしまえば悲しいこともなくなり、このつらい時もなくなるんだろう」
生きて行くつらい思いを歌ったこういうブルーズの曲を作ったのが白人だったとは・・・。1952年リリース。

3.Hard Times/Charles Brown

これはチャートの67位とそんなにヒットしなかったのですが、チャールズ・ブラウンの代表曲のひとつでこの時代の世相を感じさせるブルーズです。
次は大ヒットしたブルーズですが、こちらはファンキーなブルーズです。この番組では大ヒットしたウィルバート・ハリスンのヴァージョンで何度も聞いてもらっていますが、今日はいちばん最初にこのブルースを歌ったLittle Willie Littlefieldの録音を聴いてください。
内容はカンザス・シティに行けばヒップな可愛い女の子たちと美味いワインがあるよ。飛行機で行くのか列車で行くのか、もし歩いて行くことになっても俺はカンザス・シティに行くよという他愛ないものですが大ヒットしました。
1952年リリース。 曲を作ったジェリー・リーバーとマイク・ストーラーはまだ19歳でした。

4.Kansas City aka KC Lovin’/Little Willie Littlefield

このリトル・ウィリー・リトルフィールドのバージョンは売れなかったのですが、1959年にカバーしたウィルバート・ハリスンのヴァージョンは7週連続一位という快挙。
今のKansas Cityもブルーズの音楽形式ですがサウンドとビートそして全体のムードはR&Bテイストです。それが次の56年リリース、50年代半ばになると流行りは白人の若者も巻き込んだR&BとR&Rになります。
いわゆるパーティ・ソングですがなかなか自分の彼女になってくれないルビーという名前の女の子にいつになったら彼女になってくれるんだ?と問いかけてる歌です。

5.Ruby Baby/The Drifters

ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーは当時「ホワイト・ニグロ」と呼ばれたんですが、本当に黒人の生活に近いところで曲を作り続けた人たちでした。二人はブルーズだけでなくジャズやゴスペルも含め心から黒人たちの歌が好きだったんですね。こんな風に音楽の世界では早くから人種の壁を越えた人たちがいました。
来週もジェリー・とマイクが作ったまだまだある素晴らしい曲の続きをお送りします。

2023.01.20 ON AIR

現役ブルーズン・ソウルシンガー、スタン・モズレーの新譜がいい!

No Soul, No Blues / Stan Mosley

ON AIR LIST
1.I’m Back To Collect/Stan Mosley
2.Blues Man (No Soul, No Blues)/Stan Mosley
3.I Can’t Get Next To You/Stan Mosley
4.Losing Hand/Stan Mosley

    先週はバディ・ガイのニューアルバムを聞きました。86才という高齢とは思えないパワフルなアルバムでしたが、やはり予想通りギター弾きまくりでブルーズのアルバム・・・というよりブルーズロックのアルバムだと僕は思いました。レジェンド・ブルーズマンの新譜ということで期待したバディのアルバムでしたが、歌が中心にないところがどうも諸手を挙げて勧められない気持ちです。
    いつも言ってることですが、新しいブルーズのアルバムを紹介したいのに歌がいいアルバムがなかなかリリースされないというのが昨今の状況ですが、今日は久々に自信を持ってお勧めできるブルーズの新譜というよりブルーズン・ソウルの新譜です。ブルーズン・ソウルというのはブルーズ・アンド・ソウルのことで、ブルーズとソウルのテイストが両方ある歌のことで”The Blues Is Alright”を歌ったリトル・ミルトン、”Who’s Makin Love”を歌ったジョニー・テイラーなどつまりギターではなく歌が中心のタイプのシンガーです。
    今日紹介する現役のブルーズン・ソウル・シンガーはスタン・モズレー。
    1952年生まれなので僕より年下ですね。現在はテキサス、ヒューストンに住んでいるそうですが彼の音楽の礎は生まれ故郷のシカゴで築かれ、ずっとシカゴのあるイリノイ州あたりで活動していました。
    まずは一曲、アルバムの最初の曲です。


    1.I’m Back To Collect/Stan Mosley
    骨太なシンガーということが今の一曲でわかりますが、僕は最初に聞いた時ウィルソン・ピケットやボビー・ウーマックといったソウル系のシンガーを思い出しました。
    今回のアルバムにスタンの先輩であるリトル・ミルトンのコメントが載っているんですが、「スタン・モズレーは偉大なブルーズの声の持ち主だ」と書かれているようにギミックのない、ストレートな強い声を持っていることがわかります。
    本人のライヴ映像をYouTubeで見てみるとブルーズよりもソウルのレパートリーが多いのですが、次の自作のオリジナルではもちろんオレはソウルマンであるけどブルーズマンでもあると歌ってます。
    スタンはインタビューでも「ブルーズとソウルはいとこ同志なんだ」と語っているように、ブルーズとソウルとゴスペルは背中合わせにある音楽でソウルの中にはブルーズとゴスペルの要素がたくさんあるのでジャンルの線引きをするのは難しいです。
    そんなことを歌った次の曲はサブタイトルに「ソウルのないブルーズはブルーズではない」とついています。
    のっけから強烈なシャウトで始まります。俺の名前はスタンでソウルマンだ。でも今夜はお前と一緒にブルーズを歌うよ・・と。

      2.Blues Man (No Soul, No Blues)/Stan Mosley
      今回このアルバムがいい仕上がりになったのはバックの録音ミュージシャンたちのクオリティの高さもあったからだと思う。かってテキサスのブルーズバンド「ファビュラス・サンダーバード」のメンバーだったギターのジョニー・モーラーはじめテキサスのブルーズ&ソウルをよく知ったメンバーというのも良かったのだと思います。
      そしてカバーだけでなく今の曲のようなオリジナルが4曲入っているのも意欲的でいいですね。
      次の曲は1969年にソウルのコーラスグループ。テンプテーションズがオリジナルを歌ってチャート一位になり、アル・グリーンのカバーでも有名な曲です。これもいい感じでアレンジされていて16ビートのアップ・テンポから途中でオリジナルのミディアム・シャッフルへリズムが変わるところなども聞きどころです。


      3.I Can’t Get Next To You/Stan Mosley
      自分は何でもできるけど君を自分のものにできない・・という歌。

      シカゴで歌い始めたスタンはブルーズはもちろんブルーズン・ソウルの先輩リトル・ミルトンやシカゴ・ソウルのタイロン・ディヴィスの影響も受けてます。そのリスペクトするリトル・ミルトンが歌った曲を豪速球でスタンが歌ってます。「ホレたおまえのためにいろいろやってみたけどもうどうすることもできへん」


      4.Losing Hand/Stan Mosley
      やっぱりストレートにこのくらい歌われると気持ちいいです。
      スタンは2000年前後に南部の黒人音楽レーベルとして有名なマラコ・レコードから三枚アルバムを出していましたが、これと言ったヒットはなく僕も名前は知ってましたがアルバムを買って聴くというところまではしませんでした。
      でも、これは久々に気持ちのいいブルーズ&ソウルのニュー・アルバムです。スタン・モズレーお薦めです。

      欲を言えばいいバラードの曲がひとつ欲しかったですね。スタン・モズレーをYou Tubeで検索するとボビー・ウーマックの”Harry Hippie”などバラード系もステージで歌っています。そして、とにかく日本で火をつけるには地方も含めて日本でいくつかライヴツアーをやらないと人気が出るところまではいかないので来日して欲しいです。

      2023.01.13 ON AIR

      86歳バディ・ガイの新譜”Blues Don’t Lie”を聴く

      Blues Don’t Lie/Buddy Guy

      ON AIR LIST
      1.I Let My Guitar Do The Talking/Buddy Guy
      2.What’s Wrong With That/Buddy Guy feat.Bobby Rush
      3.We Go Back (feat.Mavis Staples)/Buddy Guy
      4.Gunsmoke Blues/Buddy Guy
      5.King Bee/Buddy Guy

        アルバム・タイトルは”Blues Don’t Lie” 「ブルーズは嘘をつかない」
        ゲストにメイヴィス・ステイプルズ、ボビー・ラッシュ、エルヴィス・コステロまあこの辺まではわからなくもないけどジェイムス・テイラーが参加しているのにびっくり。
        僕は最近のバディ・ガイの音楽をブルーズというよりブルーズ・ロックとして聞いています。というのもオーセンティックなブルーズ・テイストよりもロック・テイストの方が強いからで今回のアルバムも基本的にはそういうサウンドです。恐らく彼自身も白人のロックファンを中心としたブルーズロック好きをターゲットにしていると思います。今回もそれ以前からもバディはインタビューで「ブルーズを死なせてはいけない」「ブルーズを次世代に橋渡ししなければいけない」と言ってますが、オーセンティックな(純正な)ブルースという感じは少なくてロックテイストです。
        ここでひとつ言わせてもらうと僕はブルーズロックがダメと言っているわけではなく、ブルーズロックと呼ばれるオールマン・ブラザーズやジョニー・ウィンターは好きだし、ブルーズの影響から名曲名演をたくさん残したジミ・ヘンドリックスも大好きです。

        まず一曲。アルバムの最初の曲からラウドでパワフルに歪んだギター・サウンドが全編に繰り広げられ、全体のアレンジもサウンドもこれはやはりロックと呼んだ方がいいと思う。

        1.I Let My Guitar Do The Talking/Buddy Guy

        オレはギターに喋らせるという意味ですが、本当によく、うるさいくらい喋ってます(笑)
        近年、バディに関して賛否が分かれていることは「レジェンドのブルーズマン」と呼ばれている割にはあまりブルーズという感じがしないということだと思う。例えばB.B.キングは歌もギターも60年代に作り上げた自分のブルーズ・サウンドからあまり離れることなく終生ずっと自分のブルーズ・サウンドとグルーヴを維持していました。ところがバディは60年代70年代に比べるとギターの音がロック志向になりフレイズの粒がよくわからない。方向性もアルバムごとに変わっていたりであまり確固としたものが感じられない・・そのあたりがオーセンティックなブルーズを好む人たちから敬遠されているのでしょう。
        このアルバムでもブルーズとしての統一感はあまりない。ジェイムズ・テイラーをゲストに迎えた曲もメイヴィス・ステイプルとの曲も悪くはないがアルバム全体のコンセプトがはっきりしてない。
        次のボビー・ラッシュをゲストに迎えたファンキーな曲はブルーズ濃度が濃いかなと思いきや、やはりギターソロになるとロックテイストになる。

        2.What’s Wrong With That/Buddy Guy feat.Bobby Rush

        ゲストがたくさん参加するアルバムも僕はあまり好きではないです。ゲストが多いとコンセプトがしっかりしていないとアルバムの印象がぼやけてしまうというか・・・このアルバムもバディだけで勝負して欲しかった。

        では、メイヴィスと歌っている曲を聴いてみよう。
        「どこもかしこもブルーズだった昔に戻ってる。キング牧師が撃たれた日を忘れない。そして生活は辛かったけどなんとか私たちはやってきた」と、ややゴスペル調の曲です。ゴスペル・ルーツのメイヴィスの音楽性を尊重してこういう選曲になったのだと思います。
        ギターも含めてこのアルバムで一番好きな曲かもしれません。

        3.We Go Back (feat.Mavis Staples)/Buddy Guy

          アメリカはいつまで経っても銃、ピストルを無くせない国でそれによって何度も大量殺人の悲劇が起きています。そういう野蛮な国なのに一番の先進国だと言ってるのが訳わかりません。そういえばシカゴに行った時、夜中のハンバーガー・ショップのカウンターに網と鉄格子みたいな柵があってお金を渡す手が入るだけの場所がありすごく怖いムードでした。しかも入り口に警官が座っていたので一緒に行ってくれた奴に聞いたら夜中になるとこのハンバーガー屋にも強盗がピストル持って入ってくる時があるって・・・どんな先進国やねん。
          次はそういう銃犯罪に反対するメッセージが込められた曲です。

          4.Gunsmoke Blues/Buddy Guy

          最後にバディと同じルイジアナ出身のブルーズマン、スリム・ハーポのブルーズ・スタンダードをアコースティックの弾き語りを録音してます。
          これもやや取って付けたような感じがしないでもない。

          5.King Bee/Buddy Guy

          他にはビートルズの”I Got The Feeling”などもやっているのですが、やはり選曲におけるアルバムの統一感があまり感じられない。
          ギターの音色やアルバムのサウンドの志向はもう聞く人の好き好きです。

          上から目線で申し訳ないが、86歳にしては歌もすごく歌えているし、ギターも弾けている。ツアーからはもう引退すると言ってますがまだやれると思います。今日はちょっと辛口なまた日本にも来て欲しいですし、誰かいいプロデューサーがついてもっといいアルバムも期待しています。